リサ・マリーが亡くなり、エルヴィスの“周辺”がにわかに騒がしくなっておるが、ロック界全体は只今偉大なるギタリストの訃報のショックに覆われておるようじゃ。
ジェフ・ベックが亡くなった。享年78歳。キース・リチャーズとは別の意味で不死身というイメージが強かっただけにジェフの“不在”を未だに受け入れられないファンも多いじゃろう。

ネット上で散見出来る追悼文の多さとその内容を見るにつけ、わしは42年前のジョン・ボーナム（レッド・ツェッペリンのドラマー）の急死事件をちょっと思い出した。あからさまな弔辞や哀悼文は少なく、各人が粛々と訃報を受け止めながら懸命に冷静になろうと自分自身を言い聞かせておるようじゃ。それは自発的に喪に服しておるようであり、ファンにこうした厳粛な姿勢を示されるアーティストの死こそ、「ひとつの時代が終わった」と言えると思う。
ジェフ・ベックは日本では古くから“三大ギタリスト”の一人として確立された存在じゃった、年齢相応の渋い活動を続けるエリック・クラプトンや、未だレッド・ツェッペリンという偉大な遺産のリメイクに精を出すジミー・ペイジとは異なり、ジェフは定期的に新しい才能あるミュージシャンとのコラボを図りながら真の現役であり続けておった。
2018年発表の最新アルバム「18」ではジョニー・ディップと共演し、「18歳であり続けることが楽しくてしょうがない」といった彼らしいコメントで健在をアピールしておった。

わしは音楽家ではないし、ギターもろくすっぽ弾けないんで、ジェフ・ベックのギタリストとしての凄さを専門的に語ることは出来ない。素人なりに言わせてもらえば、その魅力は一聴して「おお～ジェフのギターだ！相変わらずやってるね～♪」って分かる独特の音色や手癖に支えられた強烈な質感じゃ。
音楽的に異常に多趣味な方であり、様々なジャンルの音楽へ向かって、その誰にも真似のできない質感をもったギターで立ち向かっていくのがジェフ・ベックじゃった。
ある音楽評論家がジェフの訃報に際し「時代劇やウエスタンに出て来る一匹狼の用心棒みたいなギタリスト」と書かれておった。確かに言い得て妙じゃが、わしはジェフと言えば長距離ランナー（マラソンランナー）のイメージが強かった。
相手との距離を測りながら冷静なペースを堅持し、やがて強靭な肉体と精神力でトップににじり出てくる。そして圧倒的な勝負勘を発揮して最後はぶっちぎりでゴールテープを切ってしまう。勝っても余計な能書きは一切言わないが、ニヒルな笑顔にはこう書いてある。「まあ、ざっとこんなもんよ」！

ジェフ・ベックの長い活動期間においては、わしは1968年から1972年、第一期＆第二期ジェフベック・グループの時代がもっとも好きじゃ。何故って、ジェフは一体何をやりたかったのかさっぱり分からんような「ひっちゃかめっちゃか」な時代なんじゃ。エルヴィスのカヴァーをやったり、デトロイトのモータウン・サウンドのスタジオやメンフィスのスティーブ・クロッパーのスタジオでレコーディングをしたり。この度追悼文として、この期間のジェフの行動や作品について最新の七鉄コーナー（第403回）で書かせてもろうておるので、お手すきの時にでもご一読のほどを。