我が愛しのロッカーの逝去に対しては、出来るだけ冷静になって一定期間はコメントを控えておるつもりじゃが、先日のチャーリー・ワッツの訃報にはちょっとだけ触れておきたい。涙が出てしまったんでな。

　チャーリー・ワッツは、簡単に言っちゃえばジャズ・ドラマーがロックンロール・バンドに居たってお方。わし個人にとっては「ウェルカム・トゥ・ザ・ローリング・ストーンズ・ワールド」をして下さったお方じゃった。若かりし時はチャーリーのドラミングの魅力が分からなかったが、“その時”は突然やって来た。あれは1970年代の終わりじゃったか。わしの学友にストーンズ狂、しかもブートレッグ（海賊版）ばっかり聞いとる変わったヤツがいた。彼に聞かせてもらった1枚のブートレッグによって、わしはストーンズの世界にのめり込むことになったんじゃ。
　まあ当時のブートレッグらしく音質はひでえもんじゃったが、まるでドラムセットのすぐ横に置かれたレコーダーで録音されたように、ドラムの音だけが異常にクリアでデカくてな。ミックのヴォーカルなんてライブ会場の外から聞こえて来る様なか細いヴォリューム、ギター2本も「なんかテキトーにガチャガチャやっとるなあ」程度。でもこの1枚にわしは脳髄からシビレタんじゃ。

　なんつうのかな、一糸乱れぬリズムキープをしながら、「テメーラ（ミックやキース）、客がキャーキャー喜ぶ演技ばっかりやってたらタダじゃおかねーぞ！」ってな凄みのある“おかず”のブチ込みがバッチリ過ぎるぐらいに聞けたのじゃ！
　確か1974～5年頃、チャーリーが長髪を五分刈りにして「脱ロックンロールスター」の意志表示をした様な時期のライブ録音盤だったはずじゃ。タイトルは忘れてしまったが、いわば「チャーリー・ワッツ・アンド・ローリング・ストーンズ」！

　それから随分沢山のストーンズのアルバムを聞くことになったが、「チャーリー・ワッツ・アンド～」みたいなモンは無かった（当たり前か！）強いて言えば、現在のところストーンズの最新スタジオアルバムにして全曲ブルースのカバーで占められた「ブルーロンサム」（2016年発表）が近いか。「ブルーロンサム」は死ぬほど聞いておるが、その要因はチャーリーのドラムの音がデカイから！今夜も酒をチビチビ「ブルーロンサム」を聞き、チャーリー・ワッツのスティックさばきに酔いながら涙を流す予定であります。