NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN VOL.152

 お陰様で「ご好評!」じゃなくて、“ご珍評”を頂いておる「ロック・ファッション・ルーツを辿る旅」。 珍評”なんて日本語はないが、「参考にはなった」とか「もっと詳しい図解入りで」とか、まあイロイロ頂いておる。 中には「現在オーダーメイドできるテーラーはあるか? 幾らぐらいなのかってトコまで取材しろ」なんてお声も。 読み手の立場になって考えれば、それも至極当然とは思うが、実はそんなこと、とっくに調べとるわい! じゃが、生地やスタイル、テーラーさん、そして型へのこだわり度によってお値段は大幅に変わってくるので一概には載せられんのじゃ。 「まあまあ、まずはロック・オリジナル・ファッションの追及が先決! The-Kingでのお買いものを先にしなさい!」と返答しておこう。 今回の新作はアクセサリー実に16点じゃぞ。 ファッションのサイドラインをキメるセンスを磨く絶好の機会を見逃さぬようにな!
 さてと、「ロック・ファッション・ルーツを辿る旅」連載5回目にあたる今回は、これまでご紹介したアメリカン・ストリート・ファッション「バギースーツ」「ズート・スーツ」「ボールド・ルック」。 そしてイギリスで生まれて「テッズ」のプロローグとなった「ネオ・エドワーディアン」の簡単なおさらいからスタートしてみよう。 それからアメリカン・ストリート・ファッションの歴史を更に遡って、「ジャズ・スーツ」なるアイテムを解説してしんぜよう。


ロック・ファッション・ルーツを辿る旅 〜第5回 ジャズ・スーツ
黄金、狂乱の1920年代に輝いた、
元祖セクシー&レベル・スーツ



■プロローグ■

 まずはこれまでご紹介した4つのルーツ・スタイルを時代順に並べてみよう。

◆「バギースーツ」(1920年代中期〜1930年代中期) (七鉄コラム VOL.146 5/10
◆「ズート・スーツ」(1930年代後半〜1940年代前半) (Vol.145 4/24
◆「ボールド・ルック」(1940年代後半〜1950年代前半) (Vol.150 7/10
※「ネオ・エドワーディアン」(1940年代後半〜1950年代前半) (Vol.151 7/23

 いずれも、その時代時代のオフィシャル・スーツとはかけ離れた独特のスタイルで仕立てられておっただけに、愛用者も下記の通り限定されておった。
◆「バギー」はギャング
◆「ズート」は下層階級の黒人
◆「ボールド」は白人の若者
※「ネオ・エドワーディアン」は下層階級のイギリスの白人

次に「ロック・オリジナル・ファッション」(ナッソー/ハリウッド・ジャケット)との共通点を挙げてみよう。
◆「バギー」との共通点は、特権的な成功者(「バギー」はギャング)の正装スタイル、及び数々のサイドアイテムとの融合性
◆「ズート」とは、既成社会への反逆性のシンボル、及び音楽ブームとの融合性(ズートはスウィング・ジャズ)
◆「ボールド」とは、白人の若者の新しいライフスタイルのシンボル、及びファッション・リーダーの存在(「ボールド」はヴィクター・マチュア)

 こうして振り返ってみると、いわばアメリカン・ストリート・ファッションという火山が約30年間で3回噴火を起こしておるようじゃのお。 火山は噴火の度に形状が変わり、やがて富士山のように、二度とないような大噴火によって美しい景観が形成されるもんじゃが、アメリカン・ストリート・ファッションは1956年にキング・エルヴィスのロックン・ロールと融合することで「ナッソー」という大噴火を起こして、それは「ロック・オリジナル・ファッション」としてその名を永遠にすることになったワケじゃ。 ではおさらいはこれぐらいにしておいてだな、今回の本題に入るとしよう。


黄金の1920年代〜アメリカに初めて訪れた“娯楽と若者の時代”

 「バギー」よりも早く登場し、「ズート」よりも早く音楽のブームと融合し、アメリカン・ストリート・ファッションの“はしり”ともいうべきスーツであり、1910年代末期に登場して「黄金の1920年代」の幕開けの一端を担ったのが「ジャズ・スーツ」じゃ。
 アメリカの黄金時代と言えば、我々は即座に1950年代を連想するが、あの時代は第二次の黄金時代じゃ。 第一次黄金時代は1920年代なのじゃ。 一方では「狂乱の20年代」と言われるほど、アメリカは空前の経済発展を遂げ、多彩な文明、文化、娯楽が一気に開花した時代なのじゃ。 実は、約4年前のこの七鉄コラムにおいて、1920年代のアメリカの実態を2回に分けてご紹介しておるので、詳しくはVol.50Vol.51をご覧頂きたい。

  1920年代のアメリカをシンプルに説明するとだな、第一次世界大戦が終わり、その大戦特需で景気が大上昇! 庶民が好景気に湧き返る時代になったんじゃ。 そして現在の我々の基本的な生活アイテム(住居や車から家電や雑貨に至るまで)からインターネット・システムだけを除いた他の全てがこの時代のアメリカに普及したというべきじゃろう。
 文化、娯楽も同様じゃ。様々なスポーツの観戦、音楽や映画の鑑賞、ファッションの享受。 オフタイムを楽しむにも多彩な選択肢が出来あがったのじゃ。 まさに現在の先進国の大量消費型ライフスタイルの原型が90年も前のアメリカにおいて完成されたのじゃ。 国民の多くがジャズとダンスとベースボールに熱狂した「ジャズ・エイジ」とも呼ばれておる時代じゃった。 またジャズ時代の到来は、同時に黒人の社会進出の第一歩となって、黒人がその存在をアピールする最初の自由が与えられたんじゃな。 そんな風潮の中で「ジャズ・スーツは誕生してきたのじゃ。


■ ボディラインにフィットした初めてのスーツ ■
    
 「ジャズ・スーツ」を考案したのはアメリカの既製服デザイナー、ハリー・ダヌンツィオとされておる。 このお方、いくら調べてもその素情がはっきりと分からんから、「ジャズ・スーツ」製作の背景とかはご勘弁願いたい。
 わずかな資料によれば、ハリー氏がヨーロッパ旅行中に閃いたアイディアが元になっとるらしい。 そこから連想していくとだな。 当時のヨーロッパは、フランスを中心にして絵画、詩歌、演劇等の分野で自由主義(古典的なスタイルから自由なスタイルで脱却するという意味)がブームになっており、そんな創造的な空気を吸ったことがインスピレーションとなったのじゃろう。 そしてこの時代にシカゴで花開いたジャズのミュージシャンに愛用されたことにより、その後長く「ジャズ・スーツ」と呼ばれるようになったんじゃ。 ではそのスタイルの特徴を挙げてみよう。

上着
・ナローショルダー(袖付け線をショルダーポイントの内側にとって肩幅を狭くしたもの)
・胸部は極端にフィット
・腰元は極端にシェープ
・腰から裾にかけてフレア(広がっている)
・胸のVゾーンはかなり高め
・シングル・ブレストが主流(ダブルもあり)
・前ボタンは1〜5個と多種
・深いセンターベント
・ベントの上部はプリーツ入り
以上のように全面、背面、側面、全てにおいて上半身にピッタリとフィットしたスタイル。

パンツ
 
・ペッグトップ(腰周りはゆったりとして、裾に向かって先細りになった型)
・強調されたクリース(折り目)

 全体のイメージとしては、かなりシャープでタイトなスーツであり、スーツ史上初のスタイルじゃな。 「ナッソー」というよりも、イギリスの「モッズ」のルーツのようじゃ。 このスタイルが黒人のジャズマンたちに人気を呼び、当時のジャズがニューオリンズからアメリカ各地へと広がるのと同時に「ジャズスーツ」の存在も知れ渡っていくことになるのじゃ。 ファッション分野に音楽の名前が登場するのはこの「ジャズ・スーツ」が初めてであり、まさに音楽とともに誕生、流行していった最初のファッションだったのじゃ。


■ エドワーディアンのモデル・チェンジが参考になったアメトラからの脱却 ■

 わしが「ジャズスーツ」を最初に見た時の印象は、「モッズスーツ」のそれとまったく一緒じゃった。 「タイトでカッコええが、これを着て演奏するのは、さぞキツカロウ」。 まあジャズマンはロッカーほど派手には動き回らんが、特にトランペットやサックスは肺呼吸運動がナンボのプレイじゃからあんなに上半身を絞ったスーツでは見ている方が窒息しそうじゃよ。 「ジャズ・スーツ」の発案者ハリー氏が、実際にジャズ・マンたちに愛用されることを念頭にデザインしたとは到底思えないのお。 「ジャズ・スーツ」発案には、恐らく次の二つの背景があったに違いない。

@「アメリカン・サック・スーツ」へのアンチテーゼ
 それまでアメリカにおけるスーツとは、1860年頃に完成されたサック・スタイルじゃ。 わきの下から裾まで一直線にド〜ンとドロップした長方形の袋(サック)みたいなスタイルじゃ。 アメトラ(アメリカン・トラディショナル)ってヤツじゃ。 これがクールか、否か、はさておき、「サックスーツ」が当たり前の時代にしてみれば、「ジャズ・スーツ」はかなり非常識、反抗的なスタイルじゃな。

Aエドワーディアン後期のスタイルの影響
 @の“アンチ・サックスーツ”のような斬新なアイディアが唐突に出てくるはずはなく、必ず参考、下地となったモデルがあるはずじゃ。  それは恐らく「ジャズ・スーツ」よりも7〜8年前に登場したイギリスの「エドワーディアン」の後期型スタイルじゃろう。 20世紀到来とともにもてはやされたエドワード7世スタイル直系の「エドワーディアン」もまた元来ルーズフィットのジャケットじゃった。 これが1910年代になると腰元がシャープに絞られたスタイルに変化し、パンツもやや細身になったんじゃ。
 この「エドワーディアン」のモード・チェンジは、1910年にエドワード7世が逝去すると同時に皇太子に即位したプリンス・オブ・ウエールズ(後のエドワード8世)を称えたものとも言われておる。 「テディ」の愛称で親しまれた7世に劣らずスタイリッシュなプリンス・オブ・ウエールズは、イギリスの淑女たちの「憧れの男性像」を変えたほどのスマートな美男子であり、「エドワーディアン・スタイル」に「恰幅の良さ」から「繊細でシャープ」なモデル・チェンジをもたらしたのじゃ。

 この「エドワーディアン」のモデル・チェンジが、ハリー氏にアメトラからの脱却のインスピレーションをもたらしたに違いないとわしはヨンデおるぞ!

 
■ 元祖メンズ・セクシー・ファッション!・・・か? ■
 

 最後に、ジャズマンたちは演奏には不向きと思えるタイトな「ジャズ・スーツ」を何故好んだのか? ボディラインを強調したようなファッションは、メンズでもレディースでも概して「セクシー」という形容詞が付いてくるが、今から100年近くも前に、ファッションを作る側にも着る側にもそんな発想や嗜好はあったかどうか?
 恐らく黒人のジャズマンは、ジャズ時代の到来でようやく陽の目を浴び始めた黒人という存在を斬新なファッションでアピールしたいという純粋な思考によって「ジャズスーツ」をセレクトしたんだとわしは思う。 白人の良識派と言われる階級から「ジャズは悪魔の作った音楽だ!」と言われるのはもうちょっと後の時代じゃし、悪い風評を逆手に取るためのセクシー路線を狙ったファッション作戦ではなかったはずじゃ!


■ エピローグ ■

 でもわし個人の見解としては、やはり「ジャズ・スーツ」はストリート・ファッション史において初めての「セクシー・ファッション」だと思うぞ。 “セクシー”と言えば、最近はご近所の某国のポップ・アイドルちゃんたちが、整形美白の限りを尽くし、オシリを振ったり美脚を露わにしたり露出度をアップしたりして「超セクシー!」なんてマスコミや一部のファンは騒いでおるが、あのな〜「セクシー」と「セックス」とは全然違うぞバカたれ! 特に男性の場合、己の信念をブレることなく貫き通す姿勢が「セクシー」なのであり、その姿勢のシンボルとして着用するファッションが「セクシー・ファッション」なのじゃ。 いわばその原点となったファッションが「ジャズ・スーツ」なのじゃ! 
 諸君なら、もう分かっておるな! そう、「ジャズ・スーツ」のスピリッツは「ロック・オリジナル・ファッション」を経て、現代のThe-Kingブランドへと脈々と受け継がれておるということじゃ。 「ということは、The-Kingのカスタマーのオレ様はセクシーってことだ!」と早合点して、鏡の前でナルちゃん(ナルシスト)するでないぞ! まあナルちゃんしたくなる気持ちは分からんでもないが、もう一度言うぞ。 「セクシー」とは己の生き方をブレることなく貫き通すことじゃ! The-Kingのボスやわしがモデルじゃあ〜分かったな!? 


七鉄の酔眼雑記 〜PC修理代って“どんぶり”なのか?

 久々の痛〜い、というか、どうも判然としない万単位の出費を喰らってもうた。 自宅作業用のノート型PCが作動不能状態になってしまい、その修理代なんじゃが、どうもなあ〜。 何とか自力で修復しようと一週間ばかりネットで同じ症状とその解決法を探したが、結局は製造業者の手に委ねることに。 問題はその業者の修理手続きのプロセスじゃ。
 最初電話で症状を報告したら、とても丁寧な口調ながらも、数分もしないうちに「要修理」と診断。 さらに一両日中に見積書をメールで送信するから、その金額の振り込みが確認出来次第、引き取り便をよこす、という段取りじゃ。 一瞬「え?」って時間が止まったぞ。

 世の中悪いヤツが多いから、先にお金を受け取らないと修理しないぞ!ってのは分かる。 しかし、製造側(修理する側)が実際に不良症状を確認する前に「見積もり金額」が出てしまうってのが信じられん。 まして今回の場合、特定のエラーコードは出ておらん。 「場合によってはハードディスクの“初期化”もあります」って、おいおい原因がまだ特定出来ていないってことじゃろう。 そんな段階で修理代が決まるって・・・それが常識なんじゃろうか。 まるでわしが大昔に住んでいた街の電気屋さんみたいじゃないか。 何をどう修理したのかの説明もなく(あっても専門知識がなければさっぱり分からんが)、言われるままに請求額を払わされたなあ・・・。

 後日見積金額ってのがメールで知らされたが、これがまた「もし高いとお思いなら、もう1台お買い上げ頂きましょうか」ってな実にビミョーに上から目線的な金額じゃった。 偶然にも、ひと月ほど前に勤め先のデスクトップ型PCを修理に出しておったが、シロウト目で判断してもこちらの方が重傷だったのに修理代はほぼ同額。こういうのってわしの見解では「どんぶり勘定」ってもんじゃよ!ってか、The-Kingのナッソージャケット1着手に入るような額なんで、ぐ、ぐ、ぐやじい〜。 

 PCにしろ、プリンターにしろ、デジカメにしろ、本体の価格が一昔前なら考えられんような安価になったのは嬉しい。 しかし修理代とか消耗部品交換代(ドライバとかインク)が本体の価格に迫るようでは、長いスパンで見ると請求される金額は大して変わっとらんことになるな〜。 PCユーザーも、ユーザー一人当たりのPCの所有台数も増え続けてPC製造数(出荷数)は跳ね上がっておるんじゃろう? だったら修理代や部品代をもうちょっとお勉強してほしいもんじゃ。

 結局修理する方を選択したんじゃが、唯一の救いは、ハードディスク側ではなくて液晶側の故障であり、バックアップを取っていなかった幾つかのデータの消失を免れたことじゃった。 「頑固七鉄コーナー」用の予備原稿、下書き、参考資料のデータも復活してひと安心。 こりゃもう、原稿書きまくって修理代を早く回収する!っつう方向にアタマ切り替えるしかなさそうじゃ!!



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