ROCK FIREBALL COLUMN by NANATETSU Vol.83


THE START of 「The 3rd decade of Rock‘n’Roll」
「ロック・ニュー・ムーブメントの産声」〜後編/1976、77年のロックシーン
    
エルヴィスのメジャーデビューから20年、硬派と軟派に二極化した第三次ロック革命期


 前回はエルヴィス・チルドレンたちが巻き起こした、1966〜7年のロックの大文化革命期のオハナシをさせていただいた。 今回は更に10年進んで「The 3rd decade of Rock‘n’Roll」じゃ。 この頃もまた、ロック界の様相が大きく変わったロック史上に残る転換期なのじゃ。 タイトルの硬派と軟派とは、超大衆迎合路線とロック原点回帰路線と言い換えてもええ。 要するに両極端な2つの路線にロック界が色分けされたっちゅうこっちゃ。
 それにしても、判で押した様に10年きっかりで再びロックの歴史が大きく動くんだから不思議なもんじゃな。 驚くなかれ、更に10年後の1986〜87年にもロック界には三度(みたび)大きな波がやってくるんじゃ。 しかし、ロックの変化が多くの人々の生活を変えるほどの真の「革命」は、この「The 3rd decade of 〜」が今のところ最後と言えるじゃろう。 そしてその最中の1977年8月16日にエルヴィスは亡くなったのじゃ。 キング・オブ・ロックン・ロールは、20年前に自らが起こした「ロック革命」の最後の変貌を見届けるようにして黄泉の国へ旅立ったこともあるので、そうじゃのお〜、今回ばかりはTHE-KING製の礼服ナッソーに身を包んで厳かな気分で読んでいただけるとありがたい! その後は新しいロック革命のための装いである「クロピン・ブルゾン」を迷わずゲットせよ!



■プロローグ 〜時代背景 

 ロックは時代を映し出す鏡じゃ。 社会情勢の大きなうねりが新しいロックを生み出すのじゃよ。 この時期の社会情勢とは、アメリカでは10年余りに亘って続いたベトナム戦争が、敗戦によって1974年に終結したこと。 更に1976年に建国200周年がやって来たことじゃ。 泥沼化していたベトナム戦争とその敗戦は、アメリカという国家と国民に深い打撃を与え、建国200周年を期に強くて明るくて楽しいアメリカを取り戻さなければならなかったんじゃ。 そう、あのフィフティーズの頃の夢と希望と遊び心に満ち溢れていたアメリカじゃ。 
 一方イギリスは超ヤバイ経済恐慌時代。 職に就けない若者がロンドンのストリートにあふれ返っておった。 スラム化する若者社会を再生しなければいかん急務があった。 
 アメリカ、イギリス両国のこんな超くら〜い社会を再生させる起爆剤、旗振り役としてロックは大きく関与することになるんじゃが、それではこの時期のロック界の代表的エピソードをアメリカ側から紹介していこう。



■episode-1 二大アメリカン・バンドのフェアウェル・ワーク
 ロックが大きく変化する前に起こった、いわば旧ロックの終焉ともいえる2つのサプライズからじゃ。 まず建国200周年に合わせて、アメリカの国民的ロック・バンドであるイーグルスが名作「ホテル・カリフォルニア」を発表。 かつて栄華を誇った老舗ホテルをアメリカになぞらえて、「夢や希望を失っても、“そこ”から出ていくことが出来ない者」の心情を赤裸々に歌い、アメリカの古き良き時代を連想させるメランコリックな楽曲で統一されたアルバムは、イーグルス最後の超力作となった。
 そしてもうひとつの国民的バンド、ザ・バンドも、これまた古き良きアメリカ的装飾で彩られたラストコンサート「ラスト・ワルツ」を開催。 真のロックも真のアメリカも行き場所が無くなってしまったことを、一種時代錯誤的な祝宴様式でシンボライズすることで、長いキャリアに自ら終止符を打った
 2つのナショナルバンドの終焉は、ロックの新たな革命がそこまで来ていることを予知させるには十分過ぎる大事件じゃった。


■episode-2 サタディ・ナイト・フィーバー!

 やって来ました!ディスコ・フィーバー大狂乱時代!! ジョン・トラボルタのセクシーダンスが炸裂する映画「サタディナイト・フィーバー」は空前のメガトンヒットとなり、アメリカ中がミラーボールとディスコサウンド一色になってしまったのじゃ。 ディスコティックじゃないと音楽じゃない!ってな風潮に、ロック界もあっという間に飲み込まれてしまったのであ〜る!
 エルヴィスがデビューした時の衝撃度には適わんが、まあトラボルタ君のダンスの影響力はすさまじかったのお〜。 一時的にせよ、それまでのロックのノリが一気に「古臭い」と勘違いされてしまうほどのスーパーパワーじゃった。
 そのブームは当然日本をも巻き込んだんじゃが、まだ若かったわしは「いまさら“ですこ”で“ひーばー”なんざできるか!」とちょっと及び腰じゃった。 あの硬派のローリング・ストーンズまでが、ディスコ調の曲「ミス・ユー」を大ヒットさせた時は、正直なところ「ストーンズよ、オマエもか!」と憤慨したもんじゃった。 わしはTHE-KINGブランド同様、いつの時代も簡単に流行に心を奪われたりはせんのじゃ! 
とはいいつつも、チャッカリとディスコでナンパをしたこともあるが、一度も成功したためしはなかった・・・。


■episode-3 “魅惑のそよ風ロック”
            ウエストコースト・サウンド

 ドデカイ流行が起きれば、その正反対の流れが生まれるのが世の常じゃ。 大ディスコ・ブームの一方で、耳に心地よいフォーク調のアコースティック・ロックも幅をきかせてきおった。 カリフォルニアのそよ風が吹いてきそうなソフト&メロウな感じが日本でもウケておったな。
 演奏の基本がアコギだけに、老若男女様々なアーティストが登場してきて、全部ひっくるめて「ウエストコースト・サウンド」と日本では呼ばれておった。
 二ール・ヤングや我が愛しのリンダ・ロンシュタッド嬢など、60年代末期から活躍しておったもんは別として、彼らのファッションはアクセントのないカントリー調か、古典的なカウボーイ・スタイルであり、時代を一気に50年ぐらいさかのぼったような垢抜けないもんばかり。 サウンドはさておき、ファッション性に対してわしはちょっと「ごきげんよう、さようなら」じゃったな。
 このブームは、70年代初頭から全米規模で続出していたシンガーソングライターたちの手によるものじゃ。 アコギ抱えて、やさし〜く、訥々と歌う彼らは、日本では「平和の伝道師」「ラブソングの先生」みたいに取り上げられておったが、実は歌っておる内容は反社会的で内省的じゃった。
 そんな彼らが蒔いていた種が、この時代に「ウエストコースト・サウンド」として大輪の花を咲かせたのじゃ。 「ウエストコースト」「シンガーソングライター」という言葉が日本で根付いたのも、この頃と記憶しとる。
 (写真は、上がリンダ・ロンシュタッド&JDサウザー、右がジャクソン・ブラウン)
■episode-4 
 イーストコースト・ヒーローの出現

 
 盛り上がっていたのはウエストコーストばかりではないぞ。 シンガーソングライター・ブームは、正反対の地域イーストコーストからも偉大なるロッカーを生み落とすことになったのじゃ。 
 それは後にアメリカン・ロックの天下を取る“ザ・ボス”ことブルース・スプリングスティーンと、“ピアノマン”ことビリー・ジョエルじゃ。 この時期に大ブレイクを果たした2人は、イーグルス、ザ・バンド亡き後のアメリカン・ロック界を長く牽引していくことになるのじゃ。



episode-5 アイドル・ロッカーの乱造
 ディスコブームの影響で、ロック界がド派手な極彩色で塗りつぶされていく過程で、もうひとつ生まれた“あだ花”的ブームがあった。 イギリスのベイシティ・ローラーズの大ヒットに触発されたように、アイドル・タレントたちが大ブレイクしたことじゃ。
 中にはパツキンのシンガーがエッチな下着姿で歌うギャルバンドまであった。 こいつらが有名ロッカーと一緒に、レコードカタログの中でデカイ顔しておったもんじゃ。 「ロック界はどうなってしまうんじゃろう・・・」と、わしはロックの将来を真剣に憂いていたもんじゃ。 しかし所詮レコード会社が作り出したお人形ちゃんたち。 その寿命は至って短かったもんじゃ。

■episode-6 ジョン・レノンの活動休止宣言 
 
ここからはもう一方の本場イギリスのオハナシ。 こちらにもシーン激変の予兆があった。 元ビートルズのジョン・レノンが、1975年にソロ活動休止宣言を出したのじゃ。
 独自の社会派ロックを歌い続けて社会情勢と戦ってきたジョンも疲れたんじゃろうな。 最後にオールド・ロックンロールのフルカヴァー・アルバムを発表して“主夫生活”に入ってしもうた。 長らくロック界のオピニオン・リーダー(精神的先導者)じゃったジョンの半引退宣言にショックを受けたロックファンは多かったもんじゃ。
 さらにジョージ・ハリスンもこの頃からシーンの表舞台に出てこなくなった。 ビートルズ解散直後からソロ活動を全開させてきた4人のビートルじゃったが、そのうち2人がこの時期にロックシーンの最前線から消えていったのじゃ。 
 ちなみに、ポール・マッカートニーは自身のバンド、ウイングスを率いて絶好調! 75年年末に予定されていた日本公演が、麻薬所持の前科によって中止になるという“お手つき”も今となっては懐かしいアクシデントじゃ。
■episode-7 ビッグ・バンドたちの休養/解散
 激変のもうひとつの予兆、それは大物バンドが次々と休養、解散していったことじゃ。 もしくは大幅なイメージチェンジに出た。
 ハードロック系では、レッド・ツェッペリン、バッド・カンパニー、ブラック・サバスらが長期休養、ディープ・パープルが解散。 プログレ系では、キング・クリムゾンが解散、エマーソン・レイク&パーマーやジェネシスがポップ路線へ転身してかつての威光が消えた。 ソロ活動組でもエリック・クラプトンがレイドバック化、ジェフ・ベックはフュージョン化、ロッド・スチュワートもポップ路線へ転身。
 まるで労働組合のストライキやプロ・スポーツチームのフランチャイズ移転のようになってしまったのは、やはりディスコブームによるアメリカの市場が激変したことじゃろう。 さすがの大物たちも動揺していたのである。
 しかしイギリス中のロックファンは「やつらは大金が入って、俺たちを捨てたんだ!」と俄然色めき立った。 無視と裏切りへのファンの怒りは、やがて“とんでもない事件”を引き起こすことになるのじゃ!

■episode-8 アナーキー・イン・ザ・UK! ロンドン・パンク大爆発!!
 “とんでもない事件”、それはロンドン・パンクじゃ! 「もうベテランなんざ信じられねえぜ! 俺たちがモノホンのロックをやってやる!!」とばかりに、昨日まで一ロックファンに過ぎなかったような若者たちがバンドを組みまくりシーンに殴りこみをかけてきた! 作詞や演奏のテクなんざ二の次三の次で、ただただ若いエネルギーを爆発させてシャウトしまくるロンドン・パンクのメガトン・ブームは、ロックの歴史を一気に原点へと押し戻したといっていいじゃろう。 現代には、この元気が必要じゃ!
 折からの経済恐慌状態もパンク・ロックへのまたとない強力な追い風となり、さながら一夜にしてブリティッシュ・ロック界はパンク一色に塗りつぶされたのじゃ!
 しかしまあ、初期のセックス・ピストルズを含めて、どいつもこいつも下手クソじゃったなあ〜。 パンクはこれでいいのかもしれんが、もうちょっと何とか・・・と思うとったら、やはりしっかりした音楽性をもった連中も現れ始めた。 それがクラッシュでありストラングラーズであり、スティングのいたポリスじゃった。
 オモロかったのは、パンクの標的になっていたメジャーな連中が、このブームを賞賛していたことじゃ。 デヴィッド・ボウイなどは「これだよ! オレはこんな革命の時代が来ることを望んでいたんだ!」とまで言っておった。 とはいうものの、本人はやっぱり、チャッカリ長期休養をしておった。 

 
 

■エピローグ 〜キング崩御
 片やアメリカはきらびやかなディスコティック・ブーム、此方イギリスは嵐のようなパンク・ブーム。 しかし極論を言えば、人民の本音はただひとつーストレス解消! 明日を忘れてひたすら楽しむ快楽派か、不満をぶちまけて行動に出る世直し派か、のどちらかってことじゃ。 それだけ米英ともに当時の社会情勢は深刻であり、人々が全身を貫く音楽そのものを激しく求めていた証拠じゃ。
 こんなシーンの激変ぶりをキング・エルヴィスはどんな目で見つめておったのじゃろう。 1977年年初にデビューした、ロンドンパンクのヒーロー、クラッシュには「1977」という曲がある。 デビューシングル「白い暴動」のB面の曲じゃ。 わしはこの「1977」に密かに着目しておった。 クラッシュのサウンドは、フィフティーズ・ロックに強い影響を受けているものの、この曲に限っては「1977年にはエルヴィスもビートルズもストーンズもいらねえっ!」って歌っておる。 エルヴィスがかわいい後輩から面と向かって否定された初めての曲じゃろう。
 B面じゃったから大して話題にもならんかったが、わしは何かいやな予感がしたもんじゃった。 そしてその年の晩夏、エルヴィスは息を引き取ったのじゃ。 アメリカのディスコ、イギリスのパンク。 ともに音楽的にも思想的にも原点に返ったようなロックに対して、エルヴィスは明るい未来を見ることが出来たのか?  エルヴィス関連の書籍は星の数ほどあるが、この辺の記述はまったく見当たらんな。 もしわしが天国に行くことができてエルヴィスに会えたら、真っ先に聞いてみたい質問のひとつじゃ! まあまだ若い諸君は、とお〜い先々のことなんぞよりも、「THE SART OF The 4th decade of Rock‘n’Roll第4次ロック革命のための必需アイテム、クロピン・ブルゾン、超カスリナッソーへまず走れ! 革命もまたナリからじゃ!!



七鉄の酔眼雑記
 〜葉巻はいかが?

 最近は愛煙家の肩身がめっきり狭くなったもんじゃが、わしはかねてからのプラン、タバコから葉巻へのチェンジにトライしとる毎日じゃ。 嫌煙ブームに反抗して「チキショー、もっと大量の煙をかましてやる!」と息巻いておる訳ではないぞ。 数年前にわしの大好きだった洋モクの銘柄が生産中止となり、以降オキニの銘柄にどうしても巡り合えないジレンマがあり、さらにタバコ1箱1000円なんて脅迫状の様な噂も現実味を帯びておるだけに、そろそろ紙巻タバコにオサラバしたい気分なのじゃ。 大体最近のタバコは葉っぱの詰め方がスカスカでケチくさい! フィルターの底部をトントン叩くと1割は目減りするぞ、バカモノ!
 さて葉巻じゃが、保管ケースやらカッターやら専用の灰皿やら小道具が多くて、また吸い方も「自分流」にたどり着くまでの過程が長くて実に楽しそうな世界じゃ。 火の付け方&消し方、煙のふかし方、保管の仕方等などいちいち能書きが多くて紙巻タバコよりも明らかに奥が深い世界のようじゃ。
 自分流のタバコの美味しい吸い方ってのは、わしは憧れのロッカーや映画スターの真似を繰り返しておるうちに自然と身に付いたもんじゃ。 じゃが葉巻にはまず守らねばならん基本動作やマナーがたくさんあり、それをマスターせんとオリジナリティへの道は開けてこないようじゃ。
 大体ロッカーが葉巻を吸っとるシーンって、ほとんどお目にかかったことがない。 葉巻やパイプは、パーカー大佐のような金勘定が似合う太ったジャーマネさんってイメージが強い。 これを追求する気分にはなれんから、やはり基本のマスターからコツコツとやっていかねばならん。 でもこーいう努力って、ちっとも苦にならんな! 酒、コーヒー、葉巻、わしの周りはこれからも嗜好品でいっぱいじゃあ〜。 もちろんまずロックンロール・アイテムありきじゃ!! わしはやっぱり骨の髄まで「道楽者」なのじゃ!と再認識した次第であ〜る!!!
 でも好きな物に囲まれてはしゃいでおる老いぼれってのは、あんまりカッコよくないんじゃないか?という不安もつきまとうのお。 カッコいい老いぼれとは「道楽者」ではなくて「風流人」じゃ。 好きな物に対してはしゃぐのではなくて、じっくりと味わいながら、時の流れに穏やかに身を任す・・・それが風流人ってもんじゃ。 わしは風流人になれるじゃろうか。 その手始めとして、早急な快楽とは無縁の葉巻と戯れるとは悪くないのお〜♪ 立ち昇る濃厚な煙の向こうに明るい未来があるに違いない!ってこの自画自賛のノリ、やっぱり道楽者のノリじゃな・・・。 まあどっちでもええ。 今夜はピンク・フロイドの名曲「葉巻はいかが」でも聴くとしよう。


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