ROCK FIREBALL COLUMN by NANATETSU Vol.78

 キング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソンの訃報に、世界中のポップ・ファンがお嘆きのご様子なので、ここはキング・オブ・ロックのファン代表として、わしからも御悔みの意を表しよう。 
 しかし久しぶりにメディアから「キング」という言葉が連発されておる。 「キング、キング」と連発される度に、わしらはどうしてもエルヴィスと「THE-KINGブランド」とを連想してしまうのお〜。 しかしこの単純明快な思考回路こそ、筋金入りのロック・ファンの証なのじゃ! さて季節は夏じゃ。 「おいおい、アンタ今年もまたビールのハナシかい?」と茶々を入れるんじゃない! いや、季節のお約束としてかましたいのはやまやまじゃが、今回は“さわやか〜”に「朝/モーニング」のオハナシといこう!
 7月は1年の内でもっとも清々しい朝を感じることができる季節じゃ。 ロック・ファンってのは夜型人間が多いし、また昼間の暑さのために夜の酒量が増えることでついつい朝寝坊しがちになるもんじゃが、たまには諸君、健康志向で気持ちよく朝を迎えてみようではないか! そのために、わしが様々な寝起きの気分を予測して、それにピッタリのモーニング・ナンバーをセレクトしてしんぜよう。 もちろんタイトルに「モーニング」が冠されておるナンバーじゃ。 これでバッチリ目が覚めたら、あとはまばゆいばかりのタマムシ・ジャケットを羽織ってストリートへ繰り出せ!


これで朝からエンジンは全開!夜型ロッカーの眠気を吹っ飛ばす“モーニング・ロック”集


まずは・・・モーニング娘・・・のワケないじゃろう! 肩の力を抜いていただくとして、お気楽極楽、ウキウキ・モーニングを演出してくれそうな3曲から。

♪グッドモーニング・リトル・スクール・ガール/ヤードバーズ 
 「やっぱ夏はカワイイベイビーがいないとね!」と朝からお盛んな方にはぴったり! ブルースの古典として数多くのロッカーがカヴァーしておる曲じゃ。 わし個人としてはヤードバーズ・バージョンがおススメじゃな。 今聞くと、ヴォーカルがなんとも古臭くて、それがトボケタ感じでなかなかエエ。
 こーいう曲はあんまり真剣にやったり、聞いたりせん方がええんじゃ。 ストーカーになってしまうからのお。 まあ朝からお盛んなことは結構なことじゃが、本当に朝からカワイ子ちゃんを待ち伏せすることは控え目に頼むゾ。


♪モーニング・トレイン/シーナ・イーストン
 これは新婚さんやおニューのカップルに聞かせたい! 新しい異性のパートナーが出来たてホヤホヤの頃ってのは、もう朝から世の中がバラ色に見えるじゃろう。 そんなウキウキ気分で仕事に出ていく様子が歌われた曲だけに、そのハッピー・フィーリングは最好調じゃ。
 80年代初頭じゃったかのお。 シーナー・イーストン嬢はデビュー間もない頃のこのシングル曲で、あっという間にイギリスの国民的歌姫になってしもうたな。 決してロックではないが、足取りも軽く颯爽とモーニング・ストリートを闊歩するには、確かにふさわしい一曲じゃ。 わしもこんな曲をBGMにして目覚めるような人生を味わってみたかったもんじゃのお〜。


♪チェルシー・モーニング/ジョニ・ミッチェル
 「例えばサ、目覚めとともに天使が降りて来てサ、耳元でやさし〜言葉なんか囁いてくれたらサ・・・」なんて、いつまでたってもお伽噺みたいなことを夢見て夏を過ぎしたいなら、これを聞くように! ロック界の永遠のミューズ(女神)ジョニ・ミッチェルがそんな夢を叶えてくれる(ような気がする)ナンバーじゃ。 わしは何度この曲をアラーム・ソングにセットしたことか!
 最近は女性シンガーはきれいどころが多いし、男を骨抜きにするようなラブ・ソングも多いが、こんなファンタジックなナンバーはなかなかないよのお〜。
 

 
さてと、そろそろロッカーらしく凛々しくビシッと朝を過ごすためのナンバーといくか!

♪モーニング・デュー/ジェフ・ベック・グループ
 「ロッカーたるもの、どんなに朝が清々しくともニヤニヤしてはいかん。 ニヒルにスマートに1日をスタートさせるべし」なんてお堅いお方にはこれじゃ。 しかも朝のお散歩にもぴったりのスローテンポのブルース・ナンバー。 若き日のロッド・スチュワートが“美しいしわがれ声”で早朝の美しいストリートの情景を控え目に歌っておるぞ。 朝からドカンと一発ロックンロール!ではなく、一日の経過とともに、じっくり、じっくり己のロック・フィーリングを高めていくのにもまたよし!


♪七月の朝/ユーライア・ヒープ
 「今日も一日、時間を無駄にすることなくいい仕事をするぞ!」と、寝起きから気合が漲っておる逞しいお方にはこの曲じゃな。 重厚で美しいオルガンソロにヘヴィーなギターソロが絡んでくる強烈なイントロ、一転して控え目に7月の朝の情景をリリカルに歌い上げるボーカル。 クラシック系の様式美がお好みの方なら、まあ聞き始め2分ぐらいで脳ミソにばっちり血が巡ってくることじゃろう!
 ちなみにこの曲が収録されたアルバムのタイトルは「対自核/Look at Yourself」、つまり「自分自身と向き合え!」ってことで、ジャケもロック史上初の紙製の鏡が貼り付けられていたもんじゃった。 朝からチトへヴィーな行為を要求されておるようでプレッシャーがかかるが、そんな朝もたまにはええかもしれんな。


♪夜明けのない朝/テン・イヤーズ・アフター 
 「今日もまたクソ暑い一日か! 冗談じゃねーよアホンダラ!!」と何かにヤツ当たりしたくなるような朝もあるじゃろう。 そんな朝は思い切ってこんな絶望的なナンバーがええかもしれん。 この曲は古いブルースナンバーのリメイクであり、原題は「Woke up This Morning」。 「夜明けのない朝」とは見事な意訳邦題であり、“朝起きたらどーにもならねーことばかりだぜ”ってな歌詞じゃ。
 ミディアム・テンポのちょっとモタレテしまう曲調じゃが、70年代前半に「超早弾きギタリスト」として名を馳せたアルビン・リーが随所に冴えたギターテクをかましておるのでチョイとばかり聞き入ってしまうな。 案外開き直って一日を送れる気分になれるかもしれんぞ!


さてと・・・人生は山あり谷ありであり、エネルギーがみなぎる毎日ばかりではないもんじゃ。 ブルージーやホワイティ(頭ん中真っ白けの虚脱状態)な日もあるじゃろう。 次の3曲はそんなダウンな朝にオススメじゃ。

♪日曜日の朝/ベルベット・アンダーグラウンド
 「なんつうかさあ〜、今朝からどーも気合はいんないんだよな〜」と、理由もなくダレた朝。 こんな時はだな、無理は禁物じゃよ。 気分に合わせてダラダラと1日をスタートさせるにゃあ、これじゃな。 いや冗談抜きで、そんな気分の時のために書かれたんじゃねえのか?と思えるほど、のほほ〜んとして退廃美漂うナンバーじゃ。 脳みそが溶けて耳から流れ出してきそうじゃな〜。 間違っても月曜日に聞かんようにな。


♪うつろな日曜日/ジョニー・キャッシュ&クリス・クリストファーソン
 原題は「Sunday Morning Coming Down」。 作者のクリス・クリストファーソンってのは、ニューヨーカーにやたらと人気のあった自閉症気味のシンガーソング・ライターじゃ。 気が滅入ってきそうな歌詞をほのかにロマンチックな感じて歌うことのできるお人じゃったが、ジョニー・キャッシュ御大がクリス氏の曲を取り上げるたのは少々意外じゃった。
 しかしやっぱり御大! 見事にジョニー節になっており、いつものシブ〜いお声でキメており、「お休みの日とはいえ、かったるいな〜」なんてノンビリ構えて聞いておったら、大沢親分バリに「喝っ!」とかお叱りを受けそうなカンジじゃが、これが「人様の曲を自分のモノにする」っていうスゴイ才能なんじゃろう。


♪アーリー・モーニング・レイン/キングストン・トリオ、エルヴィス・プレスリー
 行動派のわしとして「せっかくの日曜日の朝がうつろだ、なんてけしからん!」とも言いたくなるが、気分の晴れない朝も笑って迎えるためには、エルヴィスも熱唱しとるこの曲じゃ。 日本では「雨の朝=アンラッキー」ってな風習もあるが、広大なアメリカ大陸ではまた違った趣で見ることが出来るってことを想像させてくれるぞ。 
 もちろんオリジナルのキングストン・トリオの耳に心地よいコーラスもグレイトじゃ。 「まあまあ急ぐでない。 朝の雨もまたヨロシイようで。 コーヒーでもすすって・・・」とゆとりある朝のひとときを迎えられそうじゃな。 「昨日までのイヤな気分をこの雨が洗い流してくれそうだあ〜」ってフンドシ締め直す気分になれるかもしれんぞ!


おまけ〜
 ♪ロードハウス・ブルース/ドアーズ
 いろんな朝の気分を想定して選曲をしたつもりじゃが、まだなんか足りんような気がしてならん・・・。 そうじゃ、わしにとって絶対にやって来る、つまり「ううむ、寝起きに一杯やりたいゼ!」って朝じゃ。 そんなどうしようもない時はコレしかない!ってな一曲がある。 タイトルに「朝」は付いておらんが、歌詞がノッケから「♪〜朝目覚めにビールをかましてやった! キクゥ〜、さあベイビー、モーテルに繰り出そうゼ!!」っつうトンデモナイ不謹慎な曲じゃ。 ロック史上最強の酔っ払いシンガー、ジム・モリソンの面目躍如たるナンバーじゃが、諸君にとってこの曲が必要ない日々が続くことを祈る?!


ラストはキング・エルヴィスに〆ていただこう。 キングはファンがどんな気分の時でも元気づけてくれるもんじゃ。

♪2人の朝、マリー・イン・ザ・モーニング/エルヴィス・プレスリー
 
いずれもエルヴィスが円熟期に入った70年代初頭のバージョンが名高い。 うむ、今更ながらなんじゃが、とにかくエルヴィスの歌がうま過ぎるぞ、おいっ! 常々感じておったが、この頃のエルヴィスの歌は、「登り詰めた領域(聖域)から放つ崇高さ」に満ち溢れておる。 つまり「音楽が天から降ってきている」って感じじゃな。 すでにキングは音楽のゴッドになっておったのじゃ。 また自分自身を癒すために歌っているようでもあり、胸が痛くなる時もあるのお。
 目覚めの気分がどうであれ、とにかく聞きほれてしまって仕事に遅刻しそうじゃ! よって「明日は気持ちよく目覚めよう」と願う夜に聞くべきか?! 強いて朝に聞くことにこだわるとすれば、そうよのお、夜勤明けの朝ならバッチリかもしれんな!


 諸君のハッピー・モーニング、ハッピー・デーを祈りながらのこの度の選曲、オキニの一曲が見つかるとウレシイぞ! ブラックコーヒーでもロイヤル・ミルクティーでも「アルギンZ」でもたしなみながら、ゴキゲンなモーニング・タイムを過ごしてくれ〜。
 しかしこれらはあくまでもBGMじゃ。 キモチイ〜朝、いやキモチイ〜一日を送るためには、THE-KINGアイテムをまとうことであろう。 今回のニットタイのセレクトから一日をスタートさせることが一番効果的じゃあ〜。 頼むぞ諸君! 






七鉄の酔眼雑記
 〜7月の朝、K君の思い出

 誰にでも、少年時代の忘れられない友人がおることじゃろう。 わしにも、毎年7月になると必ず思い出される懐かしいお人がおる。 中学校2年生の時に教室の座席が隣になったK君じゃ。
 当時はロックなんてのは“海の向こうのワケのワカランやかましい音楽”としか認知されておらず、日本の中で「ロックの情報」を集めることは大変困難な時代じゃった。 ましてや中学生のロック・ファンなんて超マイノリティ(少数派)だったもんじゃ。 わしはまだ種類が少なかった洋楽関連の雑誌をまるごと暗記するほど読みふけり、深夜は頭から布団をひっかぶってラジオから流れてくる洋楽をむさぼり聞いておった。
 そんなわしの前に表れたK君に対して、「同志がいた!」という喜びはもとより、わしよりもはるかに豊富な知識と、中学生では考えられないほどのレコードコレクションに圧倒されてしもうた。 わしら2人はくる日もくる日も終わりなきロック談義を続け、K君に録音してもらったロックのレコードは100枚は下らなかったじゃろう。
 わしとK君とは残念ながら別々の高校に進んだが、彼はお手製のベスト・セレクション・テープに手書きの曲目解説を添えて定期的に郵送してきてくれたのじゃ。 わしも1曲づつ「感想文」を書いて返信しており、そんなやりとりが20回ぐらい続いたんじゃなかろうか。 その定期便の中に、たった一行「七月になったらこの曲を聞いてみてください」とだけ紹介された曲があった。 それが今回ご紹介したユーライア・ヒープの「七月の朝」だったのじゃ。 この曲を一発で気に入ったこともあり、「7月イコールK君」という不変の方程式が頭ん中に出来あがり、それがもう云十年と続いておるのじゃ。

 最近は少年たちが楽しめる娯楽も多くなり、またインターネットを介して見知らぬ相手との交信も可能な時代になった。 そんな現代の少年たちにとって、「ひとつのことをたった一人のファンと熱く語り続ける」なんてことは笑い話なんじゃろうな。 でも「ひとつの事に夢中になり、その純真な心を同志と膝つき合わせてぶつけ合う」ことは、少年時代だけの特権じゃ。 そんな少年時代を送ることができた世代に生まれたことを、わしは神様に感謝しておる。 
 わしの育った時代と、現代の少年たちの時代と、どっちが少年にとって幸せなのかは分からんが、ことモノホンのロック、ロック・ファッションを口承、継承していくことに関しては アナログ時代に育ったわしら世代にお任せ願いたいもんじゃ。 「ロックへのこだわり方」と言うとカッコよ過ぎじゃから「ロックへのしがみつき方」としておくが、それがわしらはハンパじゃなかったからのお〜。 これからも老骨にムチ打って拙文をふるわせていただきたい! THE-KINGの若いファンたちよ、ロックとロック・ファッションに関しては年寄りの意見にも耳を貸すようにな!


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