ROCK FIREBALL COLUMN by NANATETSU Vol.77

 今年も早や中盤に差し掛かった訳じゃが、ここに来て我々ロッカーに向って「エンジンをターボに入れよ!」とばかりに、THE-KINGがまたまたグレイトなナッソーをかましておったな! エレガント&アクティブ、レジェンダリー&コンテンポラリー(伝説的&現代的)、スマート&カラフル、わしが現代のフィフティーズ・アイテムに求める相反する魅力の共存を、THE-KINGはいつもハイレベルで実現してくれるのお〜。 今回の作もその極みじゃの。 わしの“お宝”がさらに増えてしまうのお〜♪
 さて、“お宝”ついでと言っては何じゃが、わしのささやかなレベルでの“お宝”も紹介してしんぜよう。 右下の写真の古ぼけたポスターじゃ。 20年ぶりぐらいに書斎の壁に貼っておるこのポスターは、懐かしのレコード「フィルモア最後の日」に封入されておったものじゃ。 フィルモアとは、前回のコラムでも紹介した通り、1971年に閉鎖になったサンフランシスコとニューヨークにあった伝説的なライブ・ハウスじゃ。 このポスターはヴィンテージものではないが、わしにとっては大切な逸品なのじゃ。 というのも、フィルモアの経営者、故ビル・グレアム(1991年没)はいまだに「ロック史上最大の裏方」「不世出のロック・プロモーター」と言われており、わしが心から尊敬できる人物だからじゃ。

 今年はフィルモアの閉鎖から38年目にあたり、閉鎖記念日の6月27日に合わせるように、長らくお蔵入りしとった映画「フィルモア最後の日」がDVD化されて、この6月から日本でも手軽に入手出来るようになったのじゃ。 これを機に、ビル・グレアムという男を諸君にも知ってほしいのじゃ。
 エルヴィスが人種の壁をぶち抜いて世界中に広めたロックという音楽。 それを流行りの娯楽ではなくて、きちんとした表現手段として、また興行演目として世の中に定着させた男こそ、このビル・グレアムなのじゃ! イベント・プロモーター(プロデューサー)なる職業が花形とされる現代にこそ、ビル・グレアムという男の功績にもっともっと光が当てられるべきじゃ!と願っておるロックファンは、わしだけではないじゃろう。 この男こそ、真のプロフェッショナルなプロモーターであり影の大仕掛け人なのじゃ!


来たる6月27日は「フィルモア最後の日」。ロック史上最大のプロモーター、ビル・グレアムを偲ぶ


●はじめに 
 まずグレアム氏の牙城「フィルモア・イースト」の入り口前で睨みをきかせるこの不敵な面構えを見よ! 興行主、ビジネスマンというよりも、こりゃあどう見ても用心棒の風体じゃな!
 ボクシング界のビッグ・ボスじゃったドン・キング、映画界の偉大なる山師と言われたマイク・トッド、ヤンキースの超ワンマン・オーナーのジョージ・スタインブレナーなど、アメリカで名を馳せたプロモーターってみんな見事な悪漢ヅラじゃのお〜。 世界中の海千山千の業突く張りを相手に巨額の収益を吸い上げることの出来る男ってえのは、相手にナメられんようなツラ構えじゃないといかん!ってことじゃな。
 実はな、映画「フィルモア最後の日」が日本で公開された1970年代初頭、わしは公開最終日に新宿か池袋かの深夜映画館に観にいったんじゃが、不覚にも途中で寝てしもうてな、トホホ・・・。 恐らく映画館に行く前に異常な興奮状態になり大酒かっくらっていたと思われる・・・目が覚めた後、グレアム氏のコワ〜いお顔を思い出して、まるで人生最大級の失態をやらかしたような気分になったもんじゃった いかにも酒が好きそうなトコだけはわしと似ているかもしれんな!


●ロック・イベント史イコール、ビル・グレアムの歴史
 グレアム氏が手がけたビッグ・ロック・イべントってのはそれこそ数限りない! 60年代は「モンタレー・ポップ・フェスティバル」「ウッドストック」に代表される大型野外イべント、70年代は「ザ・バンド・ラストコンサート」「ローリング・ストーンズ全米ツアー」などの大物ロッカーの記念碑的イべントの数々、80年代はあの「ライヴ・エイド」をはじめとするビッグ・チャリティー・イベントの数々・・・要するにロック史に残る有名イべントのほとんどを手がけておるのじゃ。 
 グレアム氏にとっての東西2つのフィルモアとは、愛する自前の会場であり、英米のビッグ・ロッカーを次々と出演させることで、ロック界でのし上がっていく武器でもあったのじゃ。
 (右の写真は、上がフィルモア・イーストの入り口付近。下がフィルモア・ウエストの全景)
 そしてグレアム氏の名を永遠にしとるのが、その天才的な交渉力、説得術じゃ。 我がままロッカーを一同に集結させて、ギャラの配分や出演の順番などの超難問題を魔法のように解決していく手腕は空前絶後じゃったらしい。
 また観衆を無視した横柄な態度をとる出演者に対しては、たとえ出演直前であっても平気でハリ倒していた!っつうぐらいの絶対的なドンだったのじゃ。 ハリ倒されたロッカーの中には、ナント!ジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックス、ミック・ジャガーもおった。

 

●ロックをこよなく愛した男
 ビッグなロッカーでさえも平気でハリ倒せたその真意とは何か? それはグレアム氏がロックを限りなく愛していたからだという。
 「ロックとは、大人から供給されたものではなく、若者たちが自分たちの手で作り上げた本当のヤング・カルチャーだ」と公言しており、ロックをプロモートすることに無上の喜びを感じていたからなのじゃ。 だからこそ、プロ意識に欠けるロッカーはたとえ大物であっても許せんかったんじゃろうな。
 一方、その名伯楽ぶりも素晴らしく、エリック・クラプトンのスター性と才能に着目して最初にアメリカに呼んだり、不遇時代のカルロス・サンタナにラテン・ロックへの転向を徹底させて売り出したり、 ボブ・ディランのバックバンドだったザ・バンドの才能を見抜いて独立を支援したりと、ロック・センスもまた冴えわたっておった。 
 やがてフィルモアに出演し、ライブアルバムを発表することがロッカーたちにとっての重要なステータスになっていったのじゃ。 ジミ・ヘンドリックスオールマン・ブラザーズ・バンドハンブル・パイ、ローラ・ニーロ、ジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッドなどなど、フィルモアでの歴史的な名ライブ盤を発表したロッカーは多いのじゃ。 またロック界のみならず、ジャズ界からもマイルス・デイビスを筆頭に多数のビッグ・アーティストがライブ盤を発表しておる。



●ロックのリアリティ衰退を予言した男
 自らが仕掛けた60年代のビッグな野外フェスのブームに警鐘を打ち鳴らしたのもグレアム氏自身じゃった。 コンサートが大型化すると、当然ミュージシャンは小規模なコンサート・ツアーを嫌い、デカイ会場で一度にガッポリ稼ぐ方を選ぶからじゃ。 それはもはやコンサートではなくお祭りなのじゃ。 「デカイコンサートってのは、演奏者は怠慢になり、観客にはサウンドのリアリティが無くなる。 いいことなんてひとつもない。 有名ロッカーが一堂に集まるイべントだけで充分だ」と。
 その言葉通り、70年代後半以降にグレアム氏が企画するビッグ・イべントは、あくまでも「有名ロッカー集結大会」だけに留められておった。 
わしは呼ばれんかったぞ!
 フィルモアが経営的に潤ってウハウハ状態であったにもかかわらず、半ば強引に閉鎖してしまったのは、巨大化し過ぎたロック・ビジネス、形骸化(中身がなくなる)していくロック・コンサートへのグレアム氏のアンチテーゼ(反抗的意思表示)だったとも言われておる。 


●コンサートを華麗に演出したフィルモア・アート 
 「フィルモア・イースト」「フィルモア・ウエスト」、さらに「ウインターランド」という自らが所有するコンサート会場におけるライブにおいて、グレアム氏は出演者の知名度に任せて集客してガッポリ儲けるだけのプロモーターではなかったのじゃ。 当時流行りのサイケデリック・アートとモダニズムを融合させた斬新なアートポスターをコンサート毎に作成して斬新なPR活動を展開し、そのレプリカを大量に印刷しては来場者に無料配布しておった。
 またカラフルなライティングを駆使したフィルモア独特のイリュミネーション・アートを自ら指揮して、コンサートのより効果的な演出に尽力しておったのじゃ。 まさにプロモータ以前に「熱心なコンサート・プロデューサー」と言えるじゃろう。 
(左の写真は、「フィルモア・ラストコンサート」を告知するメインPRポスター)
 一説によると、グレアム氏がロッカー側に提示してくるギャラはかなり安かったらしく、口の悪いロッカー連中からは「ドケチ野郎」と陰口を叩かれていたらしいが、ファンサービスに関しては金を惜しまなかった男なのじゃ。


●お客様は神様デス 
 コンサートの企画演出、出演者との契約交渉など、興行のすべてを取り仕切っていたグレアム氏。 その情熱の根底には、「熱きロックファン」という嗜好性とともに、なによりもまず「お客様第一主義」があったのじゃ。 下積み時代にレストランの皿洗いやウエイター、映画館の掃除やモギリをしていた時に「接客業の快感」を学んだと本人は語っておる。
 「あの頃オレは下っ端だったけど、お客から“楽しかった”“美味しかった”“いい一日になった”と声をかけられることに人生最初の喜びを学んだのだ。 その喜びを追及していったらロック・コンサートにたどりついたって訳さ。 お客がどれだけ喜んでくれたかが、オレの報酬なんだ」
 スバラシイコメントじゃのお〜。 テキトーな会場借りてテキトーな出演者呼んでテキトーに盛り上げて「我こそはイベント・プロデューサーなり」なんてデカイ顔をしている連中に聞かせてやりたい言葉じゃ。 そう、お金とは「人様を喜ばせたことに対する報酬」なんじゃ。 わしも見習わんとな!


 どうじゃろうか。 ビル・グレアムという男に興味を持っていただけたかのお。 エルヴィスを極限までスターに仕立て上げ、利益最優先のカネゴン状態だったとされるパーカー大佐もスゴイが、こんな人間臭くて、男臭くて、ロックを愛し続けたビッグ・プロモーターもまた魅力的じゃろう。 顔はコワいが、男が尊敬出来る「男の中の男」ってな気がするぞ。
 最後にビル・グレアム氏が「これこそオレの理想!」と語っておったコンサートについて触れておこう。 それはフィルモアではなく、もうひとつの自分の家「ウインターランド」において、1976年に開催してみせたザ・バンドの解散記念コンサート「ラスト・ワルツ」じゃ。 ザ・バンド解散を惜しむビッグ・ロッカーを大勢集結させて代わる代わる演奏させたことはあまりにも有名じゃが、集まったお客さん2400人に対しては豪華なディナーサービスをふるまい、更に室内楽団を招へいしてお客さん用のダンス(ワルツ)パーティーまで盛り込んだ究極のエンターテイメント・パーティーを催したのじゃった。 レストランの皿洗いからスタートして、ロック界のドンまで登りつめたビル・グレアム氏の人生と、会得してきた接客業のノウハウの全てが凝縮したロック史上随一の豪華なロックン・ロール・パーティーじゃった。  あ〜わしもウエスタンコンビシューズに足をすべらしナッソー羽織って行きたかったのお〜。
 「七面鳥とパンプキンパイとワイン、大勢集まってくれたロッカーの演奏でゴキゲンになったお客が、みんな仲良くワルツを踊っているのを見て、オレはもういつ死んでもいいと思ったよ」 純白のスーツで身を包んでバルコニーの奥から客席を観ていたビル・グレアムは、そう言って一筋の涙を流したという。 
(右写真は「ラストワルツ」「フィルモア最後の日」のDVDパッケージ)
 今やグレアム氏のプロモートしたコンサートを観ることは叶わない。 ならば残された映像をわしは正装して鑑賞するぞ。 そう、新作ナッソーをキメてな! 諸君ならこの熱い気持ちをお分かりいただけるじゃろう。 これを機に、鑑賞用正装ラインナップに新作ナッソー、鑑賞ラインナップにビル・グレアム・プロデュース・コンサートを加えてくれ! もちろん新作ナッソーは外出着としてキメることもお忘れなく!






七鉄の酔眼雑記
 

 実を言うと、この6月はノッケから体調が悪くて参っておった。 持病のギックリ腰の再発こそなかったものの、極度の不眠症、ふくらはぎの突然の炎症、神経性(?)の胃炎を併発してしもうてな。 普段は風邪すら滅多にひかないわしも、ここ数年は一度体調を崩すと複数の病にまとめて見舞われてしまうことが多い。 う〜ん、やっぱり歳なんじゃろうか。
 しかし病院なんぞには行かず、市販の薬も最低限しか服用しないわしは、身体の自然治癒能力に任せっぱなしじゃが、胃がやられるのは勘弁してほしいもんじゃ。 そう、酒が飲めんからじゃ。 何年かぶりに一週間ほど断酒を余儀なくされてしもうた。 「久しぶりに断酒したら、アタマはスッキリするし、身体が軽くなったようで・・・」なんてのはわしに限ってはタワゴトじゃい! わしの場合、酒を絶ってしもうたら自然治癒療法にならんのじゃ! ストレスが溜まるから、飯は不味いし、仕事ははかどらんし、毎日楽しくない! まあそんな訳で、体調がひと段落したところで、ちょいとバカンスに出かけようと思ったのじゃ。
 わしがバカンス好き、しかも外国好きってのは大きな理由がある。 それは当地で知り合う外国人の実にシンプルな考え方に触れることが出来るからじゃよ。 金持ち連中も、わしのような一時のあぶく銭(わしは大した額ではないがのっ)の持ち主も、みんな公私に渡って目的が明確であり、その目的が達成されたら、別の目的をこれまた明確に設定できる「潔さ」ともいうべき思考回路が実に眩しいのじゃ。
 もちろん彼らがその都度設定する目的は「あくまでも等身大」であるからクリアし続けることが出来るのじゃが 彼らとそんな話をしていると、「日本人ってのは、大き過ぎる目的、小さ過ぎる希望などをたくさん持ち過ぎていて疲れているんじゃないだろうか」とも思えてくるのじゃ。 目的や希望が重荷になってしもうたらシャレにもならんよのお。 まさにシンプル・イズ・ベスト、ベターじゃな。
 さてわしの方は、いい歳こいてもまだロックンロール・ドリームにしがみついておるワケであって、シンプルというより、ワンパターンな男じゃな。 シンプルとワンパターンとは似ているようで実は全然違う気がするが、それがわし、七鉄自身なのでどうにもならん。 ただワンパターンとはいえ、それを続けていられて、「継続は力なり!」と信じていられるのは、THE-KINGとTHE-KINGをひいきにしてくれておる諸君のお蔭じゃよ。 ありがとう諸君!どうか身体だけはくれぐれも大事にな!

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