ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.69


 時折真冬の寒さを思わせる冷気に包まれる日本列島じゃが、そろそろ梅、桜、つつじの「花祭り」の声が聞こえており、わしは乙女のようにウキウキしとるぞ。 もちろん花見酒はウマい!が、それだけではないぞ。 2月の終わりから4月にかけての雪解けの季節こそ、「日本人に生まれて良かったのお〜♪」と心から思えるからじゃ。 やっぱり日本人は四季を感じてナンボのもんなのじゃ!
 かつて十年近く東南アジアの亜熱帯地方をほっつき歩いておったわしは、年がら年中の猛暑だけはどうしてもなじめんかった。 季節がワンパターンだと食事もワンパターンだし、酒の飲み方までワンパターンになり、人間そのものがワンパターンになってしまっていた気がするんじゃな。 深みも渋みも、なあ〜んにもなくなってしもうて、ただただ欲望に走るだけになってしまいそうでな。 だからこそ、これからの季節は、四季のある日本という国に生まれた有難味をじっくりと味わうことができるってもんじゃ。
 ところで、ロックという音楽は欧米で生まれ、発展してから日本に渡ってきただけに、そのスピリッツの中に“にっぽん的”なスパイスを感じ取ることは難しいもんじゃ。 マニアックに掘り下げていったら、日本の民族音楽や文学からの影響があるのかもしれんが、そんなコムズカシイことはわしには分からん。 
 でもロッカーたちにとって日本の魅力が「ジャパンマネー」だけとは考えたくもないので、誰にでも分かる「にっぽんがロックに与えた影響」ってもんを振り返ってみたい。 これらがロック界全体に与えた影響がいかほどのものかは不明じゃが、欧米のリスナーにとって日本を紹介する大きな機会になったことは間違いないじゃろう。 本来ならは英文でもスラスラと紹介もしたいところじゃがの。


わが心のニッポン! ロッカーたちが唄った日本の「花鳥風月」(?!)や、これいかに?!

♪tune-1 京都の恋、京都慕情/ベンチャーズ
 まずは異色の作品から。 外国人が日本の歌謡曲を作曲して大ヒットしたのはべンチャーズが唯一じゃろう。 60年代に頻繁に日本公演を繰り返していたべンチャーズはすっかり親日家となり、日本を意識した曲作りをするようになり「キョウト・ドール」ってな曲を発表。 これを聞いた日本の某音楽プロデューサーが「これはイケる!」と判断して急遽作詞家に依頼して詞をつけて「京都の恋」と題して、渚ゆう子なる新進女性歌手に歌わせたらこれが1970年春のオリコンで8週連続No.1の大ヒット! 続く「京都慕情」も連続大ヒットとなったのじゃ。
 その他にも「雨の御堂筋」(歌・欧陽菲菲)、「北国の青い空」(歌・奥村チヨ)などもヒットするという異例の事態となり、「ベンチャーズ歌謡」などと呼ばれたもんじゃった。 全て、外人さんが作ったとはとても思えん見事な和風メロディであったが、こうした奇跡的な現象は後にも先にもベンチャーズだけじゃった。 今後は逆に諸君がブラック・ブルゾンをかまして「メンフィス・ドール」的なヤツをアメリカのヒットチャートに送り込んでくれい!
 しかし左上にジャケ写を掲載したアルバムを聴き直してみるとだな、「東京の夜」「横浜の灯」「銀座の光」など、収録曲の大半が日本が題材になっておる。 ここまでやられりゃあ、曲が良かろうがなんだろうが、「お見それ致しました〜」の一言じゃな。 


♪tune-2 荒城の月/スコーピオンズ
 来日公演を行う欧米のロッカーたちは、片言の日本語を駆使したり、日本の曲をインストで演奏してみたりして聴衆にサービスするもんじゃ。 その中でも極めつけはドイツのハードロックバンド・スコーピオンズのこれじゃ。 
 日本の歌をフルコーラスでやってみせ、しかも歌謡曲や演歌ではなくて、なんと滝廉太郎の歌曲じゃぞ。 「♪〜は〜あるこおろおの〜はなのえん〜♪」とそれはそれは見事な日本語で歌いおった! 曲の後半にはロック・アレンジの伴奏も付いて、これまたお見事であった!
 これは79年日本公演の際の特別サービスなんじゃが、後に発表されたライブ盤「トーキョー・テープス」にも収録され、「Kojo No Tsuki」としてヨーロッパのロックファンの間で一躍有名になったのじゃ。 しかし演奏前のMCでは「ジャパニーズ・フォークソング・・・」と紹介されており、これはお笑いの勘違い。 ルドルフ・シェンカーにギターの手ほどきをしたのは、わしじゃ! んな訳ネーじゃろう、ドアホッ!
 

♪tune-3 禁じられた色彩/デヴィッド・シルビアン&リューイチ・サカモト
 1983年英国アカデミー賞音楽賞を受賞した曲であり、日本映画の巨匠、大島渚監督の映画「戦場のメリークリスマス」の主題曲として坂本龍一が作曲した名曲じゃ。 映画ではインストじゃったが、後にデヴィッド・シルビアンなる英国シンガーが英語の歌詞をつけて吹き込んでおる。
 映画のメインシーンにおいて、英国人捕虜(デヴィッド・ボウイ)が日本人大尉(坂本龍一)に対して「同性愛」(全人類愛?)的行為に及ぶシーンがあるが、あれは極限状態を打破する性愛っつうか、「究極の非常行為」「尊き禁止行為」であり(実は大島監督の十八番)、その深〜い観念性をデヴィッド・シルビアンは歌詞に転用してじっくりと歌っておる。 まあ「わが心のにっぽん」というより、大島監督へ捧げた「素晴らしき日本人」ってな作品じゃろう。
 そう言えば、シルビアンさんは大の日本好きで、70年代後半は自分のバンドにジャパンっつう名前を付けて、「ライフ・イン・トーキョー」なる曲を歌っておった。 オシャレな美男子として日本のギャルに大人気じゃったのお〜。


♪tune-4 クリスタル・ジャパン/デヴィッド・ボウイ
 前述の映画「戦メリ」では、映画出演したものの音楽制作には携わらなかったデヴィッド・ボウイさんじゃが、映画出演の数年前にはにっぽん賛歌ともいうべきインストナンバーを発表しておる。 それがこれじゃ。
 なんでも神戸山麓の美しい情景を眺めておる時にメロディーが浮かんできたそうじゃ。 そういえばボウイは「トーキョーは極端に西洋ナイズされた超近代都市だ。 ニッポン人はどうして独自の文化をもっと大切にしながら都市づくりをしないのか?」と大きなお世話のようなことを言っておったな。 まあ、その言葉を噛みしめながら聞くと、この曲は「ひょっとしたら雅楽形式でやったらバッチリじゃないか?」と思えてくる不思議な趣きを湛えておる
 ちなみにこの曲、当時新発売になった焼酎のCMに使われておった。 焼酎のお味の方は・・・クリスタルとはいかんかったのお・・・。


♪tune-5 トーキョー・ジョー/ブライアン・フェリー
♪tune-6 フローズン・ジャップ/ポール・マッカートニー
♪tune-7 ショート・ピープル/ランディ・ニューマン

 ここらでちょっとシャレで、日本人をコバカにした(とされる)ナンバーもご紹介しておこうかのお。
 まずtune-5。 デヴィッド・ボウイと並ぶ70年代ロックシーンを代表するダンディ・ロッカー、ブライアン・フェリーが「日本男性(ジョー)を唄った!」として日本人は単純に喜んどったが、どうも真相はそんな簡単なもんではなかったらしい。 欧米男性のカッコよさを真似ようとしているコッケイな日本人男性への皮肉を唄ったらしいぞ。 発表当時(77年)にTHE-KINGブランドが存在しておったら、まったく逆の内容の曲になっておったことじゃろう!
 
 tune-6はポール・マッカートニーが1980年の年頭に大麻所持で日本に入国出来ず、拘留された揚句に本国へ強制送還されたことに対するイヤミの曲じゃ。 ポールはその5年前にも若かりし日のドラッグ事件を蒸し返されて日本行きのビザが取得できなかった経緯があり、日本の外務省へ一発なにか言っとかんと気が済まなかったんじゃろうな。 

 お次は日本人が勘違いして「日本人蔑視だ!」と騒いだtune-7。  背の小さい人種に向けて「オメエたちは要らねえよ!」と歌った放送禁止ナンバーであり、確かアメリカへの日本製品の過剰輸出による弊害が最初に問題視された時期に発表されたことから誤解を生んでしもうたんじゃ。
 じゃが実際は、歌った本人は背が低く、要するに単なる自虐的パロディーソングだったんじゃな。

 まあこれらは20〜30年以上前の曲だし、まだ日本人の欧米コンプレックスが強い頃で、恐らくコンプレッスクゆえの深読み勘違いじゃから、いまさら腹は立たんな。 とにかくスターたちのご愛敬として笑って済ませるのが器の大きい男ってもんじゃ。 しかも現代においてはTHE-KINGブランドという強〜い味方が我々にはあるから、「フローズン」(閉鎖的な)とか「ショート」じゃなくて、「クール」「グレイト」と歌ってもらえるじゃろう! そういう意味ではいい時代になったもんじゃ!!


♪tune-8 手をとりあって/クイーン

 日本で最初に人気に火が付き、やがて世界的なバンドへと成長していったクイーン。 我々日本人には感謝してもしきれんじゃろうが、そんな気持ちを歌に込めて、日本語の歌詞を大々的にフューチャーした曲がこれじゃ。 「♪〜テヲ トリアテ コノマア〜マイコ〜 アイスルヒイトヨ〜♪」と少々たどたどしい発音ながら誠実に歌っておったな。
(ご紹介する映像では2分22秒あたりから日本語が登場。)
 日本語歌詞を書いたのはチカ・クジラオカなる日本人女性で、熱狂的女性クイーン・ファンの憧れだったのじゃろうな。 わしもエルヴィスのために書いてみたかったのお〜。


♪tune- 9 ウーマン・フロム・トーキョー/ディープ・パープル
♪tune-10 サムライ/マイケル・シェンカー・グループ
 ではおしまいは、ハードロックに込められた日本への熱い想いで〆よう! 
 tune-9は、72年のジャパンツアーが大盛況になり、それが元で名ライブ盤「ライブ・イン・ジャパン」を完成させたディープ・パープルの日本賛歌
 トーキョーの女性が彼らに何をしてあげたのか?なんてことはわしゃ知らん! じゃが、各楽器が交互にソロをとりまくる曲の構成はファンの期待に十分に応える演奏じゃった。
 
 tune-10は、これまた日本で人気が高かったマイケル・シェンカーの作品。 日本のお侍さんってのはその剣術はもとより、剣の道に人生を賭ける一直線な精神が欧米人には魅力的に映るようじゃな。 
 「サムライ、あなたは何のために戦っておられるのですか? 私はあなたの到来をお待ち申し上げまする」と、ヴォーカルのザ・グラサン野郎のグラハム・ボネットが芸術的な中音域でのヴォーカルで歌いあげておる!

 ロッカーたちが歌った、にっぽんの街、女性、男性、風情、伝統、いかがだったかのお。 やっぱり日本はロックを輸入する側の国じゃったから、ロック創成期のスターであるエルヴィス、コクラン、ヴィンセントらの曲に込められたラブコールはないもんじゃ。 もしわしが聞き落していたらぜひとも教えてくれ!
 まあ歴史を変えることはできんが、だからこそ、こっちから強烈なラブコールをロックへ送るんじゃ。 わしらには、ロック創成期のファッションを彷彿とさせるTHE-KINGならびに、あの時代の熱き想いを大シャウトし続ける8鉄先生とわしがおるではないか!
 わしは余計か? ええか、新作ブルゾンをしかとゲットして、春の訪れを待つストリートに飛び出してロックン・ロール愛をアピールしてこいっ! その声は必ずや天空のキング・エルヴィスやプリンス・コクランにとどくに違いない! このスーパーパワーの行動力がわがにっぽんと本場のロックとの新しい歴史を作っていくのであ〜る! 






七鉄の酔眼雑記


 スポーツ好きの輩にとって、来月には楽しみなイベントがあるな。 そう、先日最終代表メンバーが決定したワールドベースボール・クラシック(WBC)じゃ。 ロック大好き、アメリカン・カルチャー大好きの諸君も、サッカーのW杯とともに、この大会の開催中は「にっぽん愛国者」になることじゃろう! 野球マニアでもあるわしとしては、WBCについてはそのシステムとかメンバー選考法とか最近の選手の心構えとかに一家言あるところじゃが、本文の方でちょいとばかり1970年代を振り返っておるので、その当時の野球の記憶をリンクさせて思い出を語らせてもらいたい。

 1970年のプロ野球は、巨人と阪神の大デッドヒートが続き、最後の最後に甲子園球場で両軍の激突があった。 そのテレビ放映において、今でも忘れられんシーンがある。 試合の終盤、時の阪神のエース・江夏投手が巨人・王選手に投げ込んだ一球が「ボール」と判定されてフォアボールになった時のこと。 江夏は「なぜだ!」と激高して主審に詰め寄ろうとしたその瞬間、膝元からガクッとマウンド上に崩れ落ちてしまったんじゃ。 一瞬気を失ってしまったんじゃな。 マウンドにうずくまった江夏は1分間ぐらい動かない(動けない?)。
 同僚に抱き起こされた江夏は投球を再開するが、次打者・長嶋選手への初球に逆転タイムリー打を浴びてしまうんじゃ。 もう打者に立ち向かう力が残ってなかったんじゃよ。 その江夏の魂が抜けた状態を見抜いていた長嶋の武道家のごとき集中力にも身震いしたもんじゃ。 スポーツとか野球とかのレベルを越えた、生死を賭けた凄まじい戦闘を見せ付けられた思いがしたもんじゃった。

 現代の野球選手たちに江夏投手や長嶋選手のような心意気、精神力、集中力を求めることは酷なんじゃろうな。 でもわしがジャパン・チームの監督だったら、相手チームの分析映像よりも先に、こうした失われた日本野球の素晴らしい歴史映像を見せて選手を奮い立たせるんじゃがのう。
 ましてや今回のジャパン・チームのニックネームは「侍ジャパン」なんじゃろう? 斬るか斬られるかの闘いに臨む気でおるならなおさらじゃ。 国を背負う、チームを背負うということはどういうことなのか? 39年前のあのシーンの中に、その答えがあるとわしは思うとる。


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