ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.64


 年の瀬が迫り、来たるべき新年にむけて厳かな気分が深まるところじゃが、THE-KINGの新作のセンスもグッとクールに、そしてホットに深まってきたようじゃのお〜。 う〜んスバラシイのお、あのパンツ4連発は! 特にわしはピストルパンツ2種にイレコミそうじゃ! レッドホットパンツもええが、歳も歳だけに“赤パンジジイ”なんて冷やかされそうなんで、コイツだけは遠慮しとくかのお〜♪
 さて、アメリカのド真ん中というべき、ネブラスカ州で一息付いた前回。 日本人には馴染みが薄い地域だけに、想像力が豊かな諸君の中にはドデカイ大平原にたった一人取り残されたような気分になった方もおるじゃろうが、心配ないぞ! エルヴィスが活動の拠点としてチョイスしたテネシー州メンフィスもだいぶ近づいておるし、ナビゲーターはこのわしじゃあ〜!!
 ところで旅を再開する前に諸君にレクチャーしておくが、音楽の宝庫アメリカでは曲のタイトルに具体的な場所の地名を付けることは「クールじゃない」という古い習慣があるそうじゃ。 ましてやバンド名に使用することなどは「アタマもワリ〜」とされておるのじゃ。 これは大陸の右半分、つまり今回の行路に該当する地域の方に根強く残っておるそうじゃ。
 州のひとつひとつが独立した国家のように成立しておるアメリカは、州によっては法律も違うし、人間の気質も全然違う。 それは自分が属する州、地域に対しての誇りとか強い愛着につながっており、そこに地名でもってダイレクトにアピールすることは「芸がなさすぎる」ってことなのじゃ。
 逆にだ。 そんな習慣を無視してまで地域名や都市名を掲げた曲ってのは、作る側、演奏する側にそれなりの「覚悟」がある!ってことなんじゃな。 では「ミュージシャンの覚悟」を受け止めながら、旅をリスタートすることにしよう。


ロック曲名世界旅/ロックとポップスに描かれた世界の都市〜その3 アメリカ編(中編)
 


♪tune-1 アラスカ/UK
 大陸を南下する前に、シャレで寄り道でもしてみるかのお。 飛行機に乗って一気にアラスカまで北上じゃ。 陸地の大半は雪と氷に覆われた極寒の地じゃが、かつては日本からヨーロッパへ飛ぶ際の経由地として利用された州都アンカレッジが有名じゃな。 人間よりトナカイとかアザラシが多い(?)土地の曲なんか・・・と思っておったら一曲あったぞ。 その名もズバリ「アラスカ」じゃ。 
それならTOTOの「アフリカ」だってあんじゃん、ってまぁ〜慌てる出ないぞ!
 ブリティッシュ・プログレ界最後のスターバンドじゃったUKのナンバーであり、アラスカの壮大な大雪原を想起させるシンセサイザーの神秘的な調べによるインストじゃ。 ライブでは、壮絶なインプロビゼーションを披露するナンバーじゃった。


♪tune-2 テキサス・フラッド/スティーヴィー・レイ・ヴォーン
♪tune-3 ダラス/ジョニー・ウインター

 さて、ここからが本題じゃ。 アラスカを除く、アメリカ本土内の最大の面積を誇る州であり、バディー・ホリー先生の故郷であるテキサスに行くぞ。
 これはもうテキサス人の大エリート、第43代大統領ジョージ・ブッシュじゃなくて、ご当地出身者でエレクトリック・ブルースの巨人スティーヴィー・レイ・ヴォーンの「テキサス・フラッド」じゃ。 「いいか諸君、エレクトリック・ブルースってのはこう弾いてこう歌うってもんさっ!」っつうまさにモダン・ブルースのお手本のような曲。 そう言えばスティーヴィーの日本でのデビューアルバムの邦題は「テキサス・ハリケーン」じゃったな。
 
 テキサスでブルースと言えば、もうお一人、スティーヴィーを見出した大先輩ギタリスト兼シンガーのジョニー・ウインターがおる。 ジョニーはテキサス第三の都市(と言っても人口は100万人を越えとるぞ!)の都市名をタイトルにした「ダラス」を歌っておる。 まあこっちはブルースの典型的なコード進行に乗って「ダラスにゃ、オレのオキニがなんでもあって・・・」という、ブルースの王様ロバート・ジョンソン直系のブルースの王道的ナンバー。 「ダラスはたまらんぜ、文句あっか!」って身勝手な迫力で押しまくるナンバーじゃ。


♪tune-4 ミシシッピー・クイーン/エミルー・ハリス
♪tune-5 ニッティ・ギルティー・ミシシッピー/ライ・クーダー

 テキサスのお次はブルースの故郷ミシシッピーじゃ。 ロバート・ジョンソンをはじめ、数々のブルースの神様の魂が宿る場所じゃ。 ここを訪れる装いとしては、ナッソーもパンツもロカタイもシブい逸品でキメておくべきじゃな。 THE-KINGの歴代のアイテムをしっかりチェックしとくように!
 ところで「なんとかミシシッピー」というナンバーはそれこそ腐るほどある。 みんながみんなブルースへの敬意と情念を懸命に歌おうとするから、もうドロドロ、デレデレのブルージーソングが多い。 それはエルヴィスがロッカーとしてデビューしたテネシー州メンフィス、ジャズの聖地ルイジアナ州ニューオリンズも同じこと。 じゃからこれはもう、わしの好みのナンバーのセレクトでご了承願おう。
 「ミシシッピー・クイーン」は、本当のタイトルは「イヴァンジェリン」じゃが、サブタイトルとも言うべきこっちの方が有名じゃ。 全てのロッカー、ミュージシャンにとっての聖地ミシシッピーの女神をイメージして、ザ・バンドからカントリー界の清楚な歌姫エミルーに捧げられた曲じゃ。
 エミルーは、60〜70年代にミシシッピー州、アラバマ州、ジョージア州が隣接するアメリカン・ミュージック黄金地帯を地道に活動しており、この曲を歌ってからは、まさに「ミシシッピー・クイーン」として当地域の聴衆により深く愛されるようになったのじゃ。

 「ニッティ・ギルティー・ミシシッピー」は、珍しくクールに淡々とミシシッピーという土地が歌われたナンバー。 まあお遊びのセッションナンバーと言えなくもない地味な一曲じゃが、よく聞いておると単調なノリとメロディーが、知らず知らずにズブズブとブルースの深みにはまっていく恐怖を煽るような、ある意味でミシシッピーと名乗るのに相応しい曲かもしれんな。
 ちなみに“ニッティ・ギルティ”という言葉は、“核心”“真髄”とかいう意味じゃ。 ミシシッピーをタイトルに掲げた覚悟が伺えるのお。


 そろそろメンフィスが近づいてきたので、どこまで来ておるか地図で確認してみよう。
 左の地図内でレッドがテキサス、ライトブルーがミシシッピー、ブルーがアラバマ、グリーンがジョージア、オレンジがテネシーじゃ。 テネシーの上はカール、いやカーネルおじさんで有名なケンタッキーじゃよ。 テキサスはデカイのお。
 実際にこのような旅をしておったら、そろそろ旅の装いにも本腰が入ってくる頃じゃ。 ナッソーにピストルパンツ、それにロカタイなど、とっておきのヤツをトランクからおんどれゃ〜!って出さにゃあならんってとこじゃな。


♪tune-6 メンフィス・テネシー/エルヴィス・プレスリー
♪tune-7 ナッシュビル・スカイライン・ラグ/ボブ・ディラン

 いよいよお待ちかねのテネシー州メンフィスじゃ! この地ではもうこのナンバーを外すわけにはいかんじゃろう。 ここまで辛抱強く付いて来てくれた諸君にとって、とっておきの予定調和じゃもんな! 諸君なら死ぬほど聞いたと思うが、これを機に襟元を正してはいもう一度!

 さて、メンフィスばかりに気を取られていないで、テネシー州の州都ナッシュビルを放っておいたらいかんぞ!  ここは60年代はカントリーミュージック系のストリートミュージシャンがうじゃうじゃいて、誰もがジョニー・キャッシュやボブ・ディランのバックバンドのメンバーになることを夢見ていた地じゃ。 そんな熱い情景を歌ったのが「ナッシュビル・スカイライン・ラグ」じゃよ。 「ラグrag」とは俗語で「ボロキレ、ビンボー野郎」とかいう意味じゃが、このタイトルはジョークじゃ。
 同曲収録のアルバム「ナッシュビル・スカイライン」のオープニングナンバー「北国の女」(春ではないぞ!)はジョニー・キャッシュ大先生とディランのデュエットじゃ。


♪tune- 8 アラバマ・ソング/ドアーズ、デヴィッド・ボウイ
♪tune- 9 アラバマ/ニール・ヤング
♪tune-10 スイート・ホーム・アラバマ/レイナード・スキナード
 アラバマ州は古くから白人にとっての理想的な古き良きアメリカがある!と言われてきた。 1962年にアカデミー賞に輝いた名画「アラバマ物語」にもそのことがよ〜く描かれておる。 ところが、これがロック系音楽に描写されると少々色合いが異なってきよるからオモロイ。
 「アラバマ・ソング」は、原曲はヨーロッパの劇作家ブレヒトによって書かれた異色のナンバー。 「だ、誰かあ〜。 つ、次のウイスキー・バーを教えてくれえ〜。 そいつがダメなら、もう一人カワイコちゃんを紹介してくれえ〜。 オイラのママが死んじまったんだぁ!」っつう悲しいヤケッパチ男の一曲。
 このナンバーが有名になったのはドアーズが67年にカヴァーしてからじゃ。 それにいたく感激したデヴィッド・ボウイは、78年に発表したニッポン賛歌「クリスタル・ジャパン」のシングルB面用に収録。 “カワイコちゃん”ってフレーズを“ダラー(お金)”に代えており、何ともいやしい一曲になっておった。 なんか香典詐欺みたいじゃな。なんて書くとデヴット゛ファンズからお叱りがくるので、いいアレンジだぁ〜。

 ニール・ヤングの「アラバマ」は、人種差別の習慣の強い当地の政策を非難した一曲であり、71年に発表されるやいなや、南部は大騒ぎとなって「ニール・ヤングは今後一切出入り禁止じゃあ〜」とアラバマのお役人を激怒させてしまったいわくつきのナンバー。 
 そしてそんな騒ぎを収拾するべく、「アラバマ良いトコ一度はおいでえ〜」と返してみせたアンサーソングが「スィートホーム・アラバマ」じゃ。 
 レイナード・スキナードやオールマン・ブラザース・バンドなど、ここら辺の南部出身のロックバンドたちは、70年代にはサザン・ロックと呼ばれたブームを巻き起こしておったもんじゃった。 何の因果が、レイナードもオールマンも、絶頂期において中心メンバーが次々と事故死してしまって、70年代後期にはサザン・ロック・ブームも下火になってしもうたのぉ。 



 “やっとこさミシシッピー、メンフィスくんだりまでやってきたぜ”-そんな曲が確かあったが、タイトルが思い出せん。 またスペースの関係で紹介出来ないナンバーもぎょうさんあるんで、なんか次の土地に移るのにも、後ろ髪を引かれる思いがするもんじゃ。 わし自身、アメリカのデカさ、地域ごとに根付いた曲の膨大な数に、あらためて驚いておるんじゃよ。 
 これはTHE-KINGのボスや8鉄先生にご協力を仰いで、シラミツブシに調べまくって資料にしてみたいもんじゃ。 日本語で翻訳された本で、そういうもんってまだないはずじゃ。 地域ごとのファッションの歴史なんかも同時に調べ上げていったら、音楽とファッションの気付かなかった関連性なんかも分かるかも知れん。 これはまだまだくたばれんな〜って、全部終わるまで寿命がもつかどうか?! まあええか、おかげ様で想像力の旅をしとったらわしも元気が出てきたわい! さあ、諸君もTHE-KINGのおNEWのパンツ4連発をゲットして、華やかなクリスマスシーズンにクールなステップを踏めるようなオシャレをキメてくれっ!
 さあ次回はニューヨークを終着点とした、東海岸への旅じゃ。 ここまで付き合って下さったんじゃから最後までよろしゅう頼むぞ!



七鉄の酔眼雑記 
 
  

 ロックと酒と旅の人生を送ってきたわしじゃが、一年でもっとも旅をしたくなるのが、実は師走なんじゃ。 師走といやあ、一年の〆の時期であり、世間様はお仕事やご家庭の整理整頓に何かと大忙しになって、お足元をきれいになさるんじゃろうが、わしはそういう気分にはほとんどなれんな。
 来たるべき新年はどんな年にしようか?何をしようか?という考えばかり先走ってしもうていてもたってもいられなくなる。そうなったら気分は旅の空へと行ってしまう。
 しかし“ここではないどこか”の妄想に浸っておったら、周囲に多大な迷惑をかけてしまうので、もちろんこの時期の日本脱出は毎年のように泣く泣く見送りじゃ。 そんなフラストレーションが忘年会、新年会で大爆発するという訳じゃ!

  しっかし、く、暗いのお〜、世の中。 去る12月5日(金)の晩、わしは某大都会の繁華街で飲んどったんじゃが、当日は世間のサラリーマン諸氏の冬のボーナス支給日じゃったようで、普段の3倍、4倍のスーツ族の波で街全体が夜通し膨れ上がっておった。
 じゃがみんな基本的に元気がないんじゃな。 言葉が悪くて申し訳ないが、「持ちなれない金を持ってオタオタしておる」という表現がピッタリで、「どこへ行きゃあいいのか、何をしたらオモロイのか、さっぱり分からん・・・」と顔に書いてある。 そんな顔してちゃあ〜、うまい酒もまずくなるぞ。 性悪な風俗の客引きに騙されてボッたくられるぞ、おいっ!
 「そんな時こそ、ロックであり、おシャレであり・・・」なんて言ったら「ほっといてくれ!」で逆ギレされるんじゃろうか。 諸君のようなホットなロック・ファンはもちろん、ボーナス支給日でさえも冴えない顔をしとる方々をなんとかロックとTHE-KINGブランドで元気にしてやりたい!と真剣に考えてしもうたよ、わしは。 そのためには、まずわしと諸君が元気でなきゃいかん!まずは忘年会でロック・スピリッツ爆発じゃ〜! 「黒霧島ちゃん」に「いいちこくん」、そして「ジャックダニエル殿」、今年の師走も世話になるぞお〜!

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