ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.53


 そろそろビールの美味い!季節が到来じゃ。 (と去年のこの時期も同じことをほざいた気がするが、許せ!) わしの愛しいガソリンちゃんであるビール、ここ数年は夏が近づくと発泡酒や第3のビールとかいうヤツも交えた「ビール戦争」が異常に盛り上がっておる。 第3だろうが、第4だろうが、うまけりゃ何でもいいが、どうにも分からんのは各社やたらと「喉ごしスッキリ」「洗練されたクリアな味わい」を追求、強調しおって、中には「雑味なし」なんてのもあることじゃ。 これはわしから言わせてもらえば、まったくもってドアホッ!じゃ。 ビールは生鮮飲料水ではないぞこらあ〜。 それに雑味があってこそビールなんじゃ!ってのがビール歴云十年のわしの本音じゃ。 それに「売上No.1」ってのは何ぞや。 そんなことはわしにはカンケーねー!
 しかしまあ考えてみれば、ビールだけではなく、肝心のロックにもイカシタ雑味がなくなって久しいのお。 いつ頃からこんなことになってしまったのじゃろうか。 だからわしらは「黄金のフィフティーズ」時代のモノホンのロックをいつまでも求めてしまうのじゃ。 そうじゃろう?諸君。 ロックの雑味とは何か? ここら辺を諸君にビシッと説明して、来るべき夏をビール、いやロックでぶっ放すぞ!


“すっきり” “さわやか” 偏重時代にモノ申す!
ビールもロックも「雑味」と「アク」が命! 
あの狂おしい刺激の果てに恍惚と衝動がやって来るのじゃ!!


ールの詳しい醸造法はさておき、要するにだな、かつてのビールにあった「雑味」とは、ビールをビールたらしめるホップが他の主成分と混じり合うことによって生まれる目に見えない“アク”じゃ。 “アク”とは漢字で書くと“灰汁”になって何だか役目を終えた必要のない成分のようじゃが、捨てるべき灰汁はあくまでも目に見える泡状の灰汁だけでええ。 液体の中で生じる(一種の化学反応)“アク”こそ大人の男の舌と喉をシビレさせ、飲んだ後の余韻をもたらすあのにが味を生みだしておるのじゃ。 それを取っ払ったとかほざいておる最近のビールとやらは、もはやビールではなく、お子ちゃま向けのアルコール入り清涼飲料水じゃ、アホンダラ!
 ここで“アク”の効果をもう一発。 わしの友人であるカレー職人は、野菜やら肉やらを一緒に煮込んだ時に生じる、目に見える“アク”も取り除かないそうじゃ。 それがカレーに深い味わいをもたらす一因であると断言しておった。 ちなみに「アクの強いヤロー」って言う時の“アク”も、この灰汁からきとるんじゃ。(悪ではないぞ)


てロックにおける“アク”の方じゃ。 ご存じの通り、ロックという音楽は様々なルーツ音楽がミックスされて出来上がっただけに、音楽形式や演奏形態にはっきりとした定義はない。 定義がないから様々なルーツ音楽同士のぶつかり合いがあり、場合によっては不自然、いびつと感じる共存パートもあり得るが、これこそがロックの“アク”であり、それが他の音楽にはないダイナミズムの原点になっておるんじゃ。
 オキニのロック・サウンドを聴き終えた後の、あのえもいわれぬ恍惚と衝動、こいつをもたらしてくれるのはロック・ミュージック独自の“アク”以外の何物でもないのであ〜る!
 それがだなあ、録音技術やPAシステムの進化とともに、口当たりならぬ耳当たりがよい“良い子ちゃん”サウンドに加工されるようになってしもうて、ああエルヴィスたちのいた時代は遥かかなたに去りにけりじゃよ、まったく。
デ、デジタル・リマスターとは一体何ぞや?


体だな、プロデューサーが必要以上に脚光を浴びてサウンドをいじくりまわし、スタジオテクニックで“アク”抜きをするようになってから、ロックはヤスリにかけられたようにどんどん鋭さを失ってしもうた。
 わしの尊敬するアメリカン・ロック史に残る名プロデューサー、ポール・ロスチャイルドはかつてこう言い放った。 「プロデューサーの最大の仕事とは、ミュージシャンをアーティストとして最高の状態にしてスタジオやライブに連れて来ることだ。 それはボクシングのトレーナーと同じだ」 エ、エライ! それでこそロックのプロデューサーじゃ。
 しかしその反面、「今のはなっとらん、最高ではない!」と判断した時はスタジオで何度でもやり直しを強制するキビシ〜お方だったそうじゃ。 だから時にはロッカーから「ふさげんなコノヤロー何様のつもりだ!」となってスタジオで大ゲンカをやらかしたことも少なくなかったそうじゃ。 優れたロックとはこういう緊張感や殺伐とした対立関係から生まれてきたのじゃ。

つてのロッカーのプロ根性だってハンパじゃなかった。 見よ、このショット。(←) あのキング・エルヴィスがスタジオの大音響システムではなくて、当時のポータブルプレイヤーで自分のレコードを真剣にチェックしておる。 いつも聞く者の位置に立って、やりたい音と求められている音との妥協点を必死に模索しとるのじゃ。
 ベーシックトラックだけやって、あとはプロデューサーにヨロピク〜! さあウチアゲウチアゲ!なんつってなんも打ち上げとらんハンパもんのくせに、騒ぐことだけは一人前の今どきのミュージシャンとは大違いじゃ。 あ、いかんいかん。 ジジイのタワゴトになってしもうた・・・これは“アク”ではなく悪じゃな、失礼、失礼。

こでちょっとハナシが横道にそれるが、昔からよくいうじゃろう、「モテル男は悪の匂いがする」と。 しかしわしは“悪(わる)”ではのうて“アク”と言ってしまった方が相応しいと思う。 “アク”が強い男とは、異分子との戦いを続け、ある時は勝ち、ある時は負け、そしてある時は和解するという、そのハードな道程が独自の“アク”を発散するようになり、そいつが女性たちを魅了するのじゃ。 真のロッカーそのものではないか!  
 キラキラと輝いておる若いもんと、シブ〜い中年、今風の言葉で言えば“ちょいワルオヤジ”ってなるんじゃろうが、この両者の違いは、まさにこの“人生のアク”があるか、ないかってとこじゃな。 レコード会社によって作り上げられたお人形ちゃんロッカー(もどき)とフィフティーズ・ロッカーとの違いもまた然りじゃな。 エレベータに乗せてもらったモンと、厳しい修行の階段を自らの足で一歩一歩昇っていったモンとの違いじゃ。 ちなみにTHE-KINGブランドは階段を選ぶという・・・。

回のテーマをまとめるとだな、フィフティーズ・ロックが今も輝きを失っておらんのは、“悪魔だ、騒音だ、クズだ、世も末だ”と果てしない罵声を浴びせてくる世間様との戦いがあったからなんじゃ。 世間様と生まれたばかりのロックとの間に生じた“アク”まで一緒くたにして「これでどうだ!」と叩きつけてみせたからこそ、その命は永遠のものとなったのであ〜る! 世間体を気にするあまりにアク抜きをして、「この辺が無難だな〜」なんてヘーコラしていたら、とても時代を凌駕(りょうが)することは出来んかったじゃろう。
 諸君、フィフティーズのロッカーたちは、ロッカーである前に戦士だったのじゃ。 その戦士たちの戦闘服、身だしなみ、正装着こそがTHE-KINGが果敢にアプローチして現代に継承しているフィフティーズ・ロック・ファッションなのじゃ。 そこにはロッカーとしての神聖なスピリッツってやつが宿っておるのじゃ。 
 一言付け加えておくが、「悪の匂いがする男」とはほぼ例外なくお洒落であることじゃ! ギャングしかりマフィアしかり、偉大なるロッカーしかり。 ロッカーであることを自負している諸君、THE-KINGのアイテムをまとって純度100パーセントのロッカーを目指すなら、「アクの匂い」ってのを意識しておくのも悪くないぞ。 前回のハンドステッチパンツや今回のサックスブルーのピストルパンツも、まさに「アクの匂い」が漂っておるのお。 ”ただし“悪(わる)”ではないのでくれぐれも勘違いせんようにな!




七鉄の酔眼雑記   

 チャンポンはいかん!というのがわしら酒飲みヤローどものモラルじゃ。 いろんな種類の酒を代わるがわる飲んだら悪酔いするってことじゃ。 わしも過去の体験でいやというほど実感してきた。 ビールから始まって、焼酎にウイスキー、それからワインにいって、締めはビール・・・なんてやったら、飲んどる時は精神力で耐え抜いても、翌日は“あったかい死体”状態になっておった。 だからわしはどんなにエー気分になってもその晩の酒は2種類まで!とかたくなに守り通しておった。 人様はわしを“大酒飲み”と呼ぶが、わしはわしなりに節度をもって(?)酒をたしなんでおるんじゃよ。
 しかし最近、この歳になって肉体が変調をきたしてきおった。 先日、不覚にもその場の勢いからつい数種類の酒を飲んでしまったんじゃが、悪酔いするどころか全然酔わん。 五感が冴えわたるどころか第六感までバッチシ!となって、酒量はとどまるところを知らず!となってしまった。 翌日もどうってこともないんっじゃ、これが。 ミョーに気を良くしたわしは、それから時々チャンポンをやるようになったが全然ヘーキなんじゃ。 これは一体どういうことなんじゃろう?
 久し振りにわしは考えた。 いや、人生で一番考えた。(5分ほどじゃが) こ、これはひょっとしてロックの神様とお酒の神様とのお二方がお与え下さったこの身の「変身現象」なんじゃなかろうかと! 様々なルーツ音楽が混じり合うことによって生まれたロックは言い方を変えればルーツ音楽のチャンポンンであり、そいつを云十年も愛し続けたド根性が讃えられて(?)、お酒のチャンポンにもお許しが出たんじゃろう! いやあ〜まったく人生は楽しいもんじゃのお〜♪ これがわし流の“前向きの思想”じゃ。 諸君、ひとつのことを愛し続けると、そのうち必ずえ〜ことあるぞ!

 

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