ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.50



 このコーナーもお陰様で区切りのいい50回目に到達じゃ。 なにはともあれ、根気強くお付き合い下さっておる諸君にあらためてお礼を言うぞ!
 どんな世界でも数字の積み重ねってもんは、3ケタに達っしてから重みが出てくるものであり、50回ぐらいでは「記念寄稿」なんてエラソーにかますもんでもない。 しかし、THE-KING新作チェックのついでにわしんとこまで読んで下さっておる諸君に敬意を表して、一応「50回記念」として普段はなかなか読めんネタを前篇、後編に分けてお届けするぞ。
 それはアメリカの「黄金の時代」である1950年代の前にあった、「幻の黄金の時代」のオハナシじゃ。 そいつは時代をもっともっと遡って、1920年代じゃ。
 「おいおい七鉄さんよ、いくら何でも80年前のハナシなんざ付き合ってられんわい!」ってお気持ちもよ〜わかるが、1920年代の繁栄があってこそ、真実の黄金時代の50年代がある!って信じとるんで、“50回のよしみ”でウイスキーでもガブガブ飲みながらお付き合いいただきたい。 この時代の資料はイシアタマ教授が筆をとったようなお堅いモンが多くて、これでは若いモンが興味を持たんではないか!っつうことでわしが分かりやすーくテーマごとに分類しながら、ちいとばかしご紹介してしんぜよう。



 
 「ガンコ七鉄コーナー」50回突破記念企画
 
ゴールデン・フィフティーズ以前に存在した幻の黄金時代
 
1920年代のジャズ・エイジ、ロスト・ジェネレーションのオハナシ〜前篇



 「ジャズ・エイジ」「ロスト・ジェネレーション」とは1920年代の若者たちをシンボライズする言葉じゃが、わしに言わせれば、もっと過激に「ファースト“3R”ジェネレーション」といきたいところじゃ。
 “3R”とは、「rebel」(反抗)「revenge」(復讐)「revolution」(革命)であり、チト大袈裟じゃが、要するに新しい価値観を激しく求めるというスピリッツじゃな。 人類史上はじめて“3R”のスピリッツが文化育成のエネルギーになったのがこの時代なのじゃ。 それまでの文化は、伝統の「継承」、時代性との「共存」の繰り返しじゃった。 ここんトコが、わしが20年代があったからこそ後に黄金の50年代が到来したと強調する所以なのじゃ!


 

■ 
Section-1 歴史上初の若者の時代が到来!■


 
え〜1920年代といや〜、日本では大正から昭和初期の時代であり、ある口の悪いアメリカ軍事司令官からは「ニッポンの文明レベルはジュニアハイスクール程度だ」と完全にバカにされておった時代じゃ。 第一次世界大戦が終結したこの時期、アメリカは建国以来最大の経済の繁栄期に突入しおった。 それは「永遠の繁栄」と言われたほど華々しいもんじゃった、そうじゃ。 わしは体験しておらんぞ。 そこまで年寄りではないわい!
 国の経済が潤えば、生活を便利にして楽しむことができるブツが売れ、若者たちは瑞々しく羽ばたくことになる! 20年代のアメリカは、ジャズ、ミュージカル、映画などの若者文化が一気に花開いたのじゃ。 いや人類の歴史において、初めて若者たちが時代を作り始めたのがこの1920年代なんじゃ。
 「ロストジェネレーション」(失われた世代)とは、世界大戦によって青春時代を黒く塗りつぶされた世代ってことであり、彼らの鬱積していたエネルギーがこの時代に一気に爆発したんじゃ。


■ Section-2 禁酒法とギャングの活躍 


 「禁酒法」−この世にも恐ろしいドアホ的な法律は1920年から1933年までアメリカで執行されておった。 当時はよほどタチの悪い酔っ払いが多かったようじゃな。 しかし事実上は「ザル法」(あってないような法)じゃったらしく、お隣のカナダからは大量のカナディアン・ウイスキーが密輸され、また国内の密造酒もかなり出回っておったそうじゃ。 密造酒は真夜中に月明かりの下でひっそりと作られるので、「ムーンシャイン」と呼ばれておったらしい。
 このカナディアン・ウイスキーの密輸で大儲けして社会を牛耳っていたのがギャングどもであり、そのボスがかの悪名高きアル・カポネじゃ。 しかしギャングこそ、1920年代の最大のヒーローと言えるかもしれん。 血なまぐさい抗争は別として、法律と渡り合いながら、庶民がもっとも求めていたブツ(酒)を供給して大儲けをするといった単純明快なサクセス・ストーリーは誰もが憧れるところじゃろう。    なんて書くと飲みたくなるのお〜


■ Section-3 第一次ジャズ全盛時代 ■

 ニューヨーク、シカゴ等の大都市でジャズが爆発的にブレイクした時代じゃ。 この時代からラジオが大量生産され、ナイトクラブが夜の繁華街で幅を利かすようになり、当然メインメニューはジャズじゃ。 そして最大のスターはルイ・アームストロング、デューク・エリントン、ベッシー・スミス。 諸君も名前ぐらいは聞いたことがあるじゃろう。
 ロックはまだまだ影もかたちも見えない頃なので、このパートはこれでおしまい・・・ってわけにもいかないので、ロックの親玉であるブルースの発展状況をお話しておこう。 当時のブルースは、南部の黒人のオッサンが手製のギターで呑気に「♪〜はあ〜スイートホームなんとかあ〜♪」とやっておった原始的な時代じゃ。 サンハウス、チャーリー・パットンらブルース黎明期の巨人たちが登場するのは30年代の足音が聞こえるあたりからじゃ。
 20年代のブルースの記念すべき足跡は、1923年に女性シンガーたちのオムニバス・アルバム、続く24年にギターの弾き語りのブルースが初めて録音されたことじゃ。
 この2枚のアルバムはわしも持っておるが、なんつうかそのお〜聞いておるとだな、もう人生なんざどーでもよくなってくるんじゃな。 その虚無的な魅力に引きづり込まれるのがとてつもなくコワイ、ある意味で悪魔的なサウンドじゃ。 後にロックというエネルギッシュなチルドレンを生み出す兆候なんざまったくないんだから、文化の歴史というのは実にオモシロイ。


■ Section-4 英国のダテ男がもたらした、甘くて儚い快楽主義 

 若者、それも男がオシャレをすることを覚えたのもこの時代からじゃ。 そのリーダー的存在となったのが、イギリスからやってきた舞台俳優兼脚本家のノエル・カワードじゃ。
 髪をオールバックでかっちりキメ、絹のYシャツを華麗に着込み、スカーフをなびかせ、足音を立てずに優雅に歩くそのスタイルは、戦争しか知らない若者たちの垂涎の的となった。
 またノエルの書く脚本や彼が演じる役柄は、美女、美しい花、清潔で艶やかなスーツ、高級酒、そして甘い恋の会話・・・華やかな小道具がふんだんに用意され、一部の金持ち連中しか許されないと思われていた習慣を、大胆にヤングカルチャーとして仕立て直してみせたのじゃった。 「人生は短い。 光輝いているうちに美しいものを存分に楽しんでしまおう」って訳じゃな。 諸君もTHE-KINGのアイテムを欲しい!と思った時に迷わずゲットしておくのだぞ!
 これは真面目くさった人生哲学やオカタイ倫理感、決まり切った愛国心なんざ一切関係のない、無責任、無軌道なスタイルのようじゃが、これこそがノエル・カワード流の「時代への反抗」だったのであ〜る。 「華麗なる反抗」とはこのことじゃ。


■ Section-5 ワンポイント・アイテムとブレザー登場 

 ナッソーやフラップシューズのような時代を象徴し、永遠の魅力を宿しているような男性ファッションは、残念ながらこの時代にはまだ登場しておらん。 前述したノエル・カワードの活躍によって、金持ちにしか許されなかったファッションやライフスタイルがようやく一般の若者の次元にまで降りてきた、まだそんな段階じゃった。
 ただし注目すべき変化は、金属ボタンやワッペンといった人目をひくワンポイントの小道具と、どこかリラックスした軽装感を演出できるブレザー・ファッションがヨーロッパから輸入されて火がついたことじゃ。 これは後の50年代ファッションに繋がっていく見逃せない流れじゃ。 まあいきなりナッソーに昇華するはずもなく、まずは小粋なブレザーやスタジアム・ジャンパーってのが人気を博するようになったのじゃ。 ちなみに、アメリカン英語でブレザーは「注意をひく人やもの」という意味もあるそうじゃが、わしに言わせてみればどうもお上品っつうイメージしかないのお。問題はイケテるかイケテないかであ〜る。

 
 以上、前編はこれでオシマイじゃ。 次回の後編では、もうちょっと楽しいこばなしでもカマしながら、50年代との関連性なんかも紹介するぞ!





七鉄の酔眼雑記   

 わしにとっては天敵といえる法律である「禁酒法」の時代をご紹介した今回のコラム、楽しんでもらえたかのお。 まあ「禁酒法」とはいっても密輸入酒や密造酒のお陰で(?)そんなに苦労することなく酒が飲めたらしいが、酒を飲むこと自体が法律を犯しているわけじゃ。 こっそりと隠れて飲む酒が果たしてうまいのかどうか・・・。 酒ってのは楽しく飲まんとな!を信条としておるわしには、大いに疑問が残るところじゃ。
 それに密造酒ってのは品質が悪いブツが多く、そのお陰で命を縮めた人もぎょうさんおった。 わしの大好きなこの時代の作家、リング・ラードナーは密造酒の呑み過ぎて死んだといわれておる。 逆に「禁酒法のお陰で、飲んだくれの毎日から抜け出すことができて寿命も伸びました。 禁酒法さん、ありがとー」なんて話は聞いたこともないぞバカヤローって、80年も前の法律にケンカを売っていたら、それこそ個人的に「禁酒法」を適用されてしまうような、ショーモナイ飲んだくれジジイじゃな。 

 この「禁酒法」ってヤツ、その執行を強烈に後押ししたのは、アメリカのご婦人たちによる飲酒に対する激しい抗議活動だったそうじゃ。 「亭主やセガレが毎日毎晩飲んだくれていては、国がダメになる」ってそれはすごいボルテージだったそうじゃぞ。
 いやあ〜女性ってのは怖いのお〜。 命の水を葬り、法律まで変えちゃうんだからのお〜。 諸君も楽しく酒を飲むのはいいが、くれぐれも女性に迷惑をかけんようにな!ってわしが言っても説得力のかけらもないが、わしも残り少ない(?)人生、人様に迷惑をかけぬきれいな飲み方を心掛けようって、そんな誓いはいつまで続くことやら・・・。
 自由に酒が飲める幸せを噛みしめながら、今宵もありがた〜く頂戴するとしよう。


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