NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.479


もしもロックが嫌いなら~If you don't like Rock ' n' Roll 2026年版
七鉄のお宿BGM候補曲10選 + 1




洋楽ロックを聞き飽きた時に聞いてみてほしい、不定期連載のオススメ音楽セクレクション「もしもロックが嫌いなら」。
あまりにも不定期過ぎて、前回はいつやったか忘れてしまったが、来年完結予定である「バーチャル・ロックンロール・ツアー」の連載をぶっ飛ばし過ぎているので、久しぶりにコイツでひと息入れてみたい。

今回は大枠として日本語の歌に絞ってセレクトしてみた。というのも、既にご存知の方もいるかと思うが、わしはバンコクで日本人専用宿をやっており、その館内BGMとして「日本語の歌オンリー」の編集にトライしておる。未だに完成しとらんものの、久しぶりに日本語の歌を主体としてチェックしまくっており、忘れかけていた名曲との出会いも続いておるので、その中からご紹介してみたい!


♪tune 1~さわがしい楽園/りりィ

 決定的な理由こそ無いものの、わしが日本の女性シンガーソングライターでフェイバリットを挙げるとすれば、現在は多分この方。青江三奈や八代亜紀のような湿りっけ、葛城ユキのようなやさぐれ感もなく、程よく枯れたハスキーボイスがタマランかった。例え大したことを言ってなくても男を従わせてしまう黄昏感とでも言うべきか。

 夜の世界に生きる人たちに支持されて爆発的にヒットした「私は泣いています」もええが、わしは断然このナンバー。79年にTVドラマ化された「人間の証明」のクロージングテーマに使用されとった曲。戦後急速に経済大国へと成長した日本の中で、繁栄の裏側で各々が引きづっていた“戦後”を凝縮した物語に、この曲のけだるい楽観主義はピッタリであり、りりィが歌ってこそ光り輝く曲になっておる。


♪tune 2~まぼろしの人/茶木みやこ

 この曲もTVドラマのクロージングテーマ。79年放映の横溝正史シリーズに使用されておった。この番組を観ておらんかったら、茶木みやこというシンガーや曲に着目する機会は無かったかもしれん。
 一連の横溝シリーズのストーリーとこの楽曲は何ら関係なく、当時のTVデレクターさんかなんかがイメージソングとして使用したんじゃろう。金と欲、怨嗟と汚辱にまみれた人間関係が主体の横溝シリーズの事件の根幹とは裏腹に、名探偵・金田一耕助の“楽天的で気ままに時代の風に吹かれ続ける”生き方を代弁しているようなイメージを助長していた隠れた名曲じゃ。(まあ金田一耕助役の古谷一行の魅力もあるじゃろうな)
 無色透明で無機質で、終始ささやくように歌い続ける茶木みやこの歌唱力を活かせる曲ってなかなか無いと思えるので、騒がしい楽園/りりィとともに、この方のためにある一曲じゃ。


♪tune 3~逃避行/麻生よう子

この曲は麻生よう子さんというアイドル歌謡曲歌手の1974年のデビュー曲。所謂「駆け落ちソング」でありながら、男心を信じ切れない女の不安が歌われておる。当時18歳で、アイドル歌手っぽくなくて素人ビジュアルの彼女のイメージキャラにはフィットしていなかった曲という印象が強いが、それが却って重くて複雑な意味合いの曲をさらりと歌謡曲ファンに届けることになったのかもしれん。当時はガキんちょだったわしの心に残ったんじゃから、そーいう事なんじゃろう!
 この方同様に、とりあえずアイドルとして売り出されたものの、歌わされる曲は“演歌半分”って女性歌手は、他には西崎みどりさんとか日野美歌さんとか牧村三枝子さんとかがおった。純粋アイドルよりもこうした情念歌謡歌姫の方が大人になって断然イイ女になったような気がする(笑)


♪tune 4~耳をすましてごらん/本田路津子

 この方はアイドルというよりも、清純派フォークシンガーとして売り出されて、透き通った美声による歌唱力は抜群じゃった。って、それでフォークばかり歌っていたら“歌の上手なお姉さん”に過ぎなかったが、半分演歌のこの曲の大ヒットで知名度爆上がりじゃったな。

 1972年NHKの朝の連続テレビ小説「藍より青く」のテーマソングに採用された曲がコレ。戦争未亡人の戦後の奮闘を描いたこのTV番組をお袋が時々涙を流しながら観ていただけに、今日までわしの胸に強烈に刺さったままの一曲になっておる。


♪tune 5~真夜中のドア/松原みき

 なんでも数年前より、1980年代の日本のパワーポップスともいうべきナンバーが、「シティ・ポップ」と呼び名を変えてアジア各地で流行り出していたそうな。その代表曲がこの曲らしく、最近でもTiktok等でアップされる80年代の懐古趣味的映像のBGMで頻繁に使われておる。
 20世紀中は邦楽にはまったく触手が伸びなかったわしもこの曲は好きじゃった。♪~セットミーフリ~真夜中のドアをたたきい~♪と突然ミニディアムテンポに転調されてヴォーカルが跳ね上がるパートの印象が抜群じゃった。
 「英米に遅れること10年にして、ようやく日本にもパワーポップの時代が到来するかもしれんなあ~」と早合点したが、当時はそこそこのヒットに留まったようじゃ。
 何故40年も経過してからリバイバルになったのかはワカランけど、当時の時代性が反映されたアレンジが、40年後にはノスタルジーをも呼び覚ます魔力があったということなんじゃろう。


♪tune 6~フライディ・チャイナタウン/ 泰葉

 この曲もリバイバルしたシティ・ポップの代表曲(と思うぞ)。先述した「真夜中のドア/松原みき」とともに、発表当時から印象に強く残っており、泰葉(やすは)嬢の素晴らし過ぎる歌唱力にシビレルたびに「なんで大ヒットしないんだろう」と少々憤っていた次第じゃ。
 泰葉嬢って、漫才師・林家三平の娘さんと聞いてびっくり仰天したものの、歌唱力のセンスは英米の一流ロックシンガーそのもの。邦楽しか聞いたことのない日本人には馴染みにくかったかもしれない早過ぎる天才シンガーじゃったな。

 久しぶりに聞いてみたところ、当時の日本のスタジオミュージシャンの演奏力の高さにも感心させられたわい。ちなみにタイトルの「フライデー」とは、金曜日ではなくてFLY DAYだったっ
てつい最近まで知らなかった(笑)


♪tune 7~ジプシー/石川優子

 学生時代に知人のリクエストでジェフベックのベスト選曲テープをこしらえてあげたところ、何故か石川優子さんというシンガーソングライターのベスト選曲テープを御礼にもらった(笑)そのテープには20曲ぐらい録音されておったけどあまり記憶に残る曲はなかったが、この曲は今でも時々聞いてみることになっておる。
 タイトルの“ジプシー”とxは、文字通り住所不定、国籍不明の旅芸人集団。“夜明けには約束も色あせた星屑”という歌詞に象徴されとるように、ジプシー女性の切ないワンナイト・ラブがテーマである哀歌じゃが、シナトラの「夜のストレンジャー」的にゆきずりの切ないロマンを耽美的に、そして軽快に歌い上げた石川優子さんには感服したわい。
 テープをもらった直後、チャゲとのデュエット曲「二人のアイランド」が大ヒットしておったものの、この方のセンスの本質は「ジプシーの方にある!」なんて思い上がっておった七鉄青年でありました!(左写真は、この曲が収録されたアルバム「フェリアの恋人」)


♪tune 8~映画「それから」メインテーマ

 ここで、インスト(歌無し楽曲)で一旦ちょいブレイクしよう。
 実はこの七鉄はかつて文学青年であった。夏目漱石、志賀直哉、芥川龍之介、与謝野晶子ら大正時代の文豪たちの作品に青春時代を支配されておったのじゃ、というのは真っ赤な嘘!小学生時代の夏休みには母親から文学全集を押し付けられ、睡魔と戦っていた記憶は今もトラウマじゃ(笑)
 ただし、文豪たちの名作が映画化された作品は大好きであり、脚本よりも優れた時代考証による情緒的な映画セットに魅了されっぱなし。文化の端境期が奏でる「生誕と滅亡のワルツ」が似合うステンドグラスのある情景の一部になりたい」とかアホな憧れを頂き続けてきたもんじゃが、大正ロマンが背景を彩る代表的な映画のひとつが漱石原作の「それから」。(1985年公開)。
 道ならぬ恋に殉じて絶望的な未来へ歩み始めるまでの男と女の葛藤が作品の本筋であり、抗い難い感情を抑えに抑え続ける2人の悲し過ぎる心情の抑揚が見事に表現された名曲。(と思う)まあ、わしの宿のBGMにはまったく似合わないがな(笑)


♪tune 9~ひとり/デイブ平尾

 わしが洋楽オンリーで、邦楽にほとんど興味を示さなかった原因は未だに不明。割と早い時期から、黒人ブルースやブルージーな白人ロックンロールに潜む自分自身の中に降りていく孤独感に惹かれていたからかもしれん。
 日本の演歌や歌謡曲は、歌詞が分かり過ぎる弊害で(?)、ここにはいない他者、ここにいて欲しい他者に向けられたメッセージばかりが気になって性に合わなかったんじゃないか、とも思うこともある。

 邦楽において初めて孤独の中に降りていく自分自身を歌った(様に聞こえたのは)この曲なんじゃないか、と記憶しておる。TVドラマ「傷だらけの天使」の最終回のラストシーンに挿入されたという劇的効果もあったじゃろうが、孤独や不条理を無理矢理にでも飲み込んで生きていく男の凄みが感じられてカッコエエ曲じゃなあ~と!
 デイブ平尾さんはGS時代はゴールデンカップスのリーダーとして活動しており、歌謡曲歌手的なイメージが強かっただけに、ひたすらブルージーなこの曲の熱唱は意外性のインパクトも凄かった!あらためて聞くと、ブルースというよりも、ブルース・ロックじゃな~♪

 なおyou tubeに作曲者の井上堯之さんがアコースティック・ライブでこの曲をやっとる映像がアップされており、デイブ平尾さんバージョンとは対極のアンプラグド・ブルースでこれまたシビレますわい!


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♪tune 10~どこかで失くしたやさしさを/鈴木ヒロミツ

 74年から77年までTV放映されておった刑事ドラマ「夜明けの刑事」のクロージングソングのひとつ。刑事役で出演しておった鈴木ヒロミツが歌う演歌ともブルースとも違うシブイ哀歌じゃ。わしは学生時代はずっと自宅でのTV鑑賞は厳しく禁止されておったのに、何故か「夜明けの刑事」とこの曲は強烈に印象に残っておる。
 鈴木ヒロミツは元モップスという音楽的にぶっ飛んだディープさをもったGSバンドのボーカルであり、その力量は折り紙付きじゃったが、久しぶりに聞いても独特の上手さがあるな!なんじゃろう、この魅力は。何があっても、嬉しくても悲しくても黙ってその場を立ち去る男のダンディズム・・・じゃろうか!

 作詞/作曲を担当したのは、ロック史上に残る名ヴォーカリストのポール・ロジャーズの奥様マチ・ロジャース。マチさんのお姉さんが「夜明けの刑事」のプロデューサーの一人であり、その縁からマチさんが書いた曲が番組で使用されることになったんじゃろう。ポール・ロジャースが作詞作曲して歌った「Yoake no keiji」もクロージング・ソングに使用されておった。こうした試み、がお茶の間の楽しめたいい時代があったようじゃ。


♪tune 11~つめたい空から500マイル/ジャックス

 日本のアングラロックの始祖ジャックスといえば、リーダーの早川義夫さんじゃが、この曲はギタリストだった水橋春夫さんの作詞作曲とボーカル。ジャックスのベスト盤では必ずファイナルにセットされるオルガンとボーカル(&詩の朗読)のみの静かな讃美歌みたいな曲じゃ。
 なんつうか、世の中と何ら繋がりをもつことなく、それでいて仙人でもなくて日常と非日常の中間あたりで気持ち良く生きている者だけがもつ世界観、死生観が曲になっとるようじゃ。それはひょっとしたら我々の内面、外面にもあって、今は見えてないだけの微妙な距離感を湛えている風景がこの曲のテーマでもあるんじゃなかろうか?それは“ひっくり返っていない蜃気楼”のような・・・ってもう止めておこう。要はこの曲の美しさを表現出来ないだけなんじゃ。ジャックス・・・つくづくスゴイバンドじゃった。アメリカのドアーズ同様、フォロワーが出てこない永遠の孤高のバンドじゃ。



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