ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.47
15年ほど前、わしの書斎が膨大な音楽ソフトと書籍で雪崩のような倒壊寸前の古本屋のような状態になってしもうた。 そこで、二度と聞くことがない、読むこともないブツは売っ払ってしまおうと決意したのじゃ。 最初は丹念にチェックしておったが、どうしても途中から酒が入ってしまってチェックがいい加減になってくる。 というより気持ちがデカくなってしまって「これは全部アタマん中に叩き込んであるからいらんわいっ!」となる。 わしは初版、絶版だからっつう価値判断はしないタイプであり、あくまでも内容が分別の基準じゃった。 当時はまだamazonやヤフオクもなかったんで、馴染みの古本屋と中古レコード店の店員を呼びつけて一括で引き取ってもらったんじゃ。 んでもってやっぱり後々になってから「しもうたっ!」って後悔することになるブツが実に多くて、しかもなかなか我が書斎にお戻りいただけない書籍が幾つも出てきおった。 初版、絶版というだけで現在は結構なエラソーな値段が付いてしまったブツ、内容のレベルと現在の値段が見合っていないと思われるブツ、すっかり姿を見ないブツなどいろいろじゃ。 しかし理由はどうであれ、手に入らない、見当たらないとなるとどうしても募る思いは強くなり、評価もぐうんと高くなるってもんじゃ。 その中でわしが読み返すことができなくても、諸君には是非読んでおいてもらいたい書籍をご紹介してしんぜよう。 見つけたら知らせてくれっ!っつう厚かましいお願いではないので、どうぞご心配なく。 望む再販!七鉄を鍛え上げた幻のロック書籍たち |
■ ロック365 ■ 果たしてタイトルはこれ(↑)で正しかったかどうか記憶が確かではないんじゃが、A4版300ページぐらいの「ロック辞典」の類の書籍じゃ。 「何月何日にはロック史上で何が起こったか」ってことを365日別にぎっしりと記載されておった。 それも有名ロッカーの誕生日、死亡日とかっつうありきたりの内容の羅列ではなくて、また名曲がチャートのナンバー1になった日とかっつうエポックメイキングな事件ばかりでもなくて、某ロッカーがどこそこで酒飲んで暴れたとか、とんでもねー暴言を吐いたとか、実はこんな所に姿を現していたとか、いわゆるゴジップ・ネタも満載されとった。 写真も結構レアなショットがセレクトされておったぞ。 あまりのおもしろさに一時期はコイツを読んどったら夜が明けた、なんつう経験を何度もしたもんじゃった。 2年ほど前に古本屋で新品同様のもんを見つけたが、15,000円もふっかけやがっており、冗談じゃねーってことで、その代わりにピストルパンツをゲットしてやった! 購入した時が70年代の終わりだったから、その時期までの「ロック事件史」ってとこじゃが、わしは将来これの改訂版、そう21世紀初頭までをクリアしたヴァージョンを8鉄先生とともにビシッと編集してみたいんじゃ。 当然その中には、グレースランド公認ホースシューリングをはじめとしたTHE-KINGの新作発表の歴史も盛り込むぞ! ■ ローリングストーン・レコードガイド ■ これはアメリカの音楽情報誌「ローリングストーン」の編集部から、80年代初頭に発行された「現代用語の基礎知識」なみのブ厚いレコード・ガイド。 ブルースの時代から始まって、70年代までのロック&ポップスの代表的なアーティストのアルバムの評価がぎっしりと記載されておる。 驚くのは書籍の厚さや情報量ではなくて、その記述内容じゃ。 アーティストの知名度やアルバムの売り上げ、また一般論は一切関係なし。 あくまでの執筆者の独断と偏見で貫かれておるのじゃ。 さすがにエルヴィスには終始好意的だが、ビートルズの時代からはビッグネームに対しても、エベレスト山まで持ち上げたかと思うと、マリアナ海溝まで突き落とすって感じの大絶賛とコキ降しの嵐で、もう言いたい放題、書きたい放題じゃった。 しかし文章力が素晴らしいだけに、それなりの説得力で読者を圧倒するまことに恐れ入る一冊じゃ。 それまでは日本の評論家のツメの甘い紹介記事しか読んでなかったわしは、まさにビックリ仰天したもんじゃったのお。 やっぱり本場の評論家はスケールが違うなあと。 そしてレコードの新しい「聴き方」というもんを随分と学ばせてもろうた訳じゃ。 ここ1〜2年はさっぱり存在を確認出来ない幻の書じゃ。 ■ ミステリー・トレイン―ロック音楽にみるアメリカ像 ■ ロック関連の書籍では「どうして再販にならないのか?」って声が絶えない名著と言える一冊じゃ。 文章は少々イシアタマ教授的でオカタイものの、アメリカン・ロックがどこで生れ、どのように成長して、いかにしてエルヴィスまでたどり着いたかっつうことを、歴史的事実を根幹として懇切丁寧に論じておる。 ロックの源流はあくまでも黒人音楽であるという持論に固執し過ぎておる部分は賛否が分かれるじゃろうが、ロックの歴史をここまで深く掘り下げて論じた書(翻訳書)は他にはないじゃろう。 わしはこの書籍を読み終えた時、その内容の素晴らしさに唸り、「今後ロックを流行音楽扱いするヤツは許さねえ!」と誓ったもんじゃった。 いちロックファンをロック追及者へと劇的に昇華させるだけの強烈なパワーがある本じゃ。 ちなみにわしは、「ロック・ファッションにおけるアメリカ像」ってのを書いてみたいもんじゃ。 まあ内容の大半はフィフティーズ・ファッションになりそうじゃが、当然ロックの本場アメリカやイギリスにも顧客をもっとるTHE-KINGのファッションも大々的にフューチャーじゃ。 モデル写真の1枚ぐらいにはわしも登場するぞ! 止めておいた方がいいかのお・・・。 現在では保存状態の良いものは10,000円近いムカつく価格が付いておるようじゃが、まあもうちょっと様子を見てみるかのお〜。 ■ 聖なる野蛮人 ■ わしが探しておる書籍の中で、おそらくもっとも発見が難しいと思われるのがこれじゃ。 確か60年代の初頭にアメリカで出版されて、若者の間で密かに読み継がれておったカルト的な名著じゃ。 ブルース、ドラッグ、詩、黒人文化といった、50年代以降のアメリカのヤング・カルチャーを先導していくことになるファクターに光を当て、それらにいち早く目をつけた先進的な若者たちの実態を追ったセミ・ドキュメントじゃ。 当然ロッカーの間でも古くから人気が高かった書籍であり、初めて会うロッカー同士が、待ち合わせ場所で相手を探し出すための目印としてこいつを胸元に抱えることが流行ったってほどじゃ。 日本では60年代の終わり頃に一度翻訳出版されて、すぐに絶版となり、以後現在まで再販はされていないようじゃ。 わしは絶版後にその存在を知っただけになかなかお目にかかれず、70年代も後半になってようやく某大学の図書館で偶然に見つけて大感激! もう時効じゃから書いてしまうが、実はその後にこっそりギッて(くすねて)きたんじゃ! しかしその帰り道にサイフを落とすっつうバチがあたったがな。 悪いことはデキマセンなあ〜。 amazonで一度だけ見つけたことがあるが、あまりにも高値ゆえに躊躇しておったら、翌日にはもう売れてしまっておった。 どれもこれもかつてのわしの愛読書ばかりであり、どうして手放してしもうたのか、今となってはまことに摩訶不思議じゃ。 もし諸君の中で持っていらっしゃる方は、出来ることなら手放さないことをおススメするぞ。 しかし冷静に記憶をたどってみると、原因は書斎の整理というよりも、「古きを送り出して新しきを迎えよう」ってな大きな気分転換、新しい価値観との出会いを求めていたからなんじゃと思う。 人生は長い。 でも短い・・・。 過去を忘れて強烈な新しい風に吹かれてみたくなる時だってあるんじゃよ。 アメリカのある偉大な詩人はこう語ったことがある。 「ある時突然に10年近く書き溜めてきたノートや愛読書を全部捨ててしまった。 そうしないと自分は真に自由になれないと思ったんだ」。 まあわしの場合は半分は酒の勢いでやったことだったのでここまでエラソーには言えんが、この詩人の気持ちはよお〜くわかる。 ロックファンの化石になる日も近い(?)わしにも、そんな頃があったということで、今回は珍しくシンミリまとめるとしよう。 ちなみに諸君、喜々として購入したTHE-KINGのアイテムは絶対に手放してはならんぞ! あと数年もすれば、とんでもないプレミアが付いて、買い戻すことが出来なくなる可能性は大じゃ!! (ひとりごと) 右の写真はネットで探してきた書斎のイメージ画像じゃ。 明るい部屋の方は、カウンターあり、酒あり、オーディオあり、で実にオシャレでええもんじゃ。 こんな書斎兼リビングが欲しいもんじゃ、と長年願っておるものの、どんなに整理してみても気がつけばそのお隣の写真のようになってしまう・・・トホホ。 実はわしの姉貴殿も相当の読書家であり、蔵書はかなりのものなんじゃが、書斎はやはりこんなもんじゃ。 血は争えませんなあ〜。(苦笑) |
七鉄の酔眼雑記 〜母の思い出 あれは今から云十年前、わしが大学生になって初めての夏休みじゃった。 欲しいレコードが死ぬほどあったわしは、せっせと夜勤バイトに精を出して金を貯め、夜勤明けの早朝からはバイト仲間と酒を飲んでは昼過ぎに帰宅するっちゅう日々を繰り返しておった。 そんなある日の夕方、今は亡き母上がまだ寝起きのわしに唐突に言い放った。 「アルバイトも音楽も忘れて、一人旅でもやってきなさい!」 アッケにとられているわしに、母上は自分のへそくりを差出しながらもう一言。 「お友達とワイワイやってばかりじゃあ根性のない男になるよ。 孤独に耐えられる男になんなさい!」 而してわしは突然に旅の空へと放り出されてしもうたんじゃ。 最寄の駅まで行ってはみたものの、どこに行きゃあええんか検討もつかん。 駅構内のデカイ路線地図を見ながら、「・・・どうせなら、ここに出てないトコまで行ってみるか・・・」ってことで一路関西へ。 旅の仕方もまだよう知らん七鉄18歳の夏。 甲子園球場や西宮球場でプロ野球観戦をする他はさしたる観光スポットにも行かず、真昼間から旅館で一人酒をやりながらテレビを観たり、梅田や三宮の繁華街をブラブラしながら10日ほどして帰宅すると、また母上に怒られた。 「もう帰ってきたの? まったくこの弱虫がっ! どこでもいいからもう一回行ってきなさいっ!!」って家に入れてくれんのじゃよ。 美人の誉れ高かった母上も、あの時だけはホントーに鬼婆に見えた。 しかしここでわしの負けん気に火が付いた! 「どこが弱虫なんじゃよ鬼ババア! 行きゃあええんじゃろう行きゃあああああっ!!」ってなって一気に北海道に飛んだんじゃ。 夜勤バイト続きで懐具合がよかったこともあり、その夏休み中は家には戻らんかったな。 車で北海道24時間横断とか、網走刑務所前で車中一泊とか、深夜の摩周湖畔で絶叫アカペラとか、ススキノで大シャウトとか、まあムチャクチャやったのお〜。 この北海道一人旅が、わしの中に眠っていた「旅大好き」っつう潜在意識を呼び覚ましたのじゃった! 今回の原稿を仕上げたら、今年初の海外への旅に行ってくるぞ。 あの強制一人旅から数えて、一体何回目の旅になるんかもう分らんが、出発前になると必ず、青二才だったわしを家から追い出し、追い返した時の気丈な母上を思い出す・・・合掌。 (母上19回目の命日にて) ※(左上写真)母上の好きだった春の花ミモザ |