ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.45


 やはりここんトコ、師走と年始の飲み過ぎ食べ過ぎ、ロックし過ぎのツケがまわってきたようじゃ。 いつもハイテンションでありたいわしも、毎年この時期だけは体調も気分もイマイチ。 いわば心身のかる〜い冬眠状態ってとこじゃ。  しかしわしにはそれを自ら克服する術(すべ)ってもんがあるのじゃ。
 お気に入りのロックにも一時的な食傷気味になったこの時こそ、カヴァーヴァージョンに走るのじゃよ。 つまりエルヴィス、コクラン、ヴィンセントらの名曲を、別のシンガーが歌っとるモンを聞きまくるのじゃ。 それもフィフティーズ・ロックの香りを感じさせない、別のロック・ジャンルのヴァージョンじゃ。 そうやって往年のロッカーや名曲の魅力を再確認して、徐々にハイテンションの復活を待つのじゃよ。
 名曲のカヴァーはそれこそ星の数ほどあるので、その1000分の1も紹介する前にわしの寿命が尽きてしまうので、今回は現在のわしの軽い冬眠状態を打破してくれそうなカバーヴァージョンをご紹介してしんぜよう。



栄光の伝承か?それとも遺産乱用か?
一度はチェックしておきたい、50’s ロックの名(迷?)カヴァー



 まずは先月末にTHE-KINGより発表になり、早速好評をしておる「エディシャツ」のお目見えを祝して、エディ・コクランのカヴァーからいくぞ。

その1 傑作ブルース・フィリーリング・カヴァー編
            「カモン・エブリバディ」 byハンブル・パイ


 ハンブル・パイとは、70年代中期まで活躍したイギリスのブルースロック・バンド。 ヴォーカルのスティーブ・マリオットは、60年代の人気バンドであったスモール・フェイセス在籍時より、名シンガーの誉れが高かったもんじゃ。
 このスティーブが、コクラン独特のノリの代わりに、自らのブルースフィーリングを適度に発揮して、ミディアムテンポのなかなか味わい深い「カモン・エブリバディ」をやっておる。 「ありゃあ? 原曲はモータウンかソウルだったんじゃないの??」と思わせるほど、ブラックサウンドの香りがプンプンしとる。 それだけヴォーカルが素晴らしいってことじゃ。 スティーブ君、ごうかくう〜! それとじゃな、日本のCMで流れとるこの曲のカヴァーのカッコ悪さっつったらない!!


その2 なんじゃこのカヴァーわあ?!編
          「サマータイム・ブルース」 byブルーチアー


 この曲のカヴァーはザ・フーが超有名じゃが、今回は別モンといこう。 ブルーチアーは60年代末期に登場したアメリカの原始的ハードロックバンドで、いまだにへヴィ・メタルの元祖として各資料で紹介されておる。
 「サマータイム・ブルース」のカヴァーでは、この曲の心地よい疾走感を拡大解釈して無理矢理歪んだアレンジでぶっ放してやった!って感じじゃ。 エディのヴァージョンの情緒的な雰囲気を完全にぶっ壊しており、こりゃヒデェ〜となるか、オモシロイッ!ってなるかは、聞いてからのお楽しみってとこじゃ。 わしに言わせると、このやり方はへヴィメタルじゃなくてパンクじゃな。 まあ少なくとも2〜3回は爆笑出来るヴァージョンであることは間違いなし!


 お次は、フィフティーズ・サウンドとは水と油って思われておるハードロック界の珍しいカヴァーじゃ。 実際のところハードロッカーの中には結構フィフティーズ愛好者が多いのじゃが、ハードロックファンにウケないからなのか、まずカヴァーはやらんものじゃった。 数少ない例外をピックアップしたので、まあ気楽に読んでくれい。

その3 ハードロッカーたちのカヴァー編
         「ブルー・スウェード・シューズ」  by ユーライア・ヒープ&エアロスミス
         「ミルクカウ・ブルース」 by エアロスミス


 ユーライア・ヒープというバンドは、プログレ的アプローチもお得意なユニークなハードロック・バンド。 73〜74年の絶頂期のステージではロックン・ロール・メドレーをよく披露しており、ライブ盤にもしっかり収録しておる。 「ロール・オーヴァー・ベートーヴェン」から入って、なんと「ブルー・スウェード・シューズ」をブチ込んでおる。
 メドレー全体がイギリス人らしい折り目正しい演奏であり、「まあまあそんなにマジメにやらんと・・・」とついチャチャのひとつもいれたくなる! でもアメリカ人はエルヴィスやカールのお父さんに成り切ったように演奏したがり、半分くらいは「オマエのは演技じゃあーっ」とイチャモンつけたくなるから、こういうプレイは逆に新鮮じゃな。 ロックン・ロール・スターたちに敬意を表して!って感じじゃ。 ちなみにメドレーはその後「ミーン・ウーマン・ブルース」ときて「ハウンド・ドッグ」も登場! さらに「アット・ザ・ホップ」「ホール・ロッタ・シェイキン」と続くのじゃ。

 エアロスミスの方は、「熱く語れ」っつうナンバーにおいて、「ブルー・スウェード・シューズ」の中の永遠の名フレーズ「〜♪ワンフォザマニ―、トゥフォーザショウ♪〜」を借用。 この名フレーズは、古今東西において演奏を煽りたてる為に実によく使われておるが、エアロスミスのセンスは白眉!と言っておこう。
 シンプルでスピーディーなギターリフがぐんぐんチェーンアップしていく際に、この名フレーズがバツグンのタイミングで登場する。 THE−KING製「ブルー・スウェード・シューズ」を贈呈したくなるような、なかなかエ〜センスじゃ。
 更にエアロスミスは「ミルクカウ・ブルース」(ミルクを買いに行く訳じゃないぞ)もやっており、これがブルース? エルヴィスの持ち歌?って驚くような別モンのハードロック・ヴァージョンにリメイク。 これもわしには◎じゃ!


 さてここら辺で、最近のわしのコーナー好例の「紅一点もの」といくぞ。 何事にも艶(つや)ってもんがないといかんからのお〜。

その4 七鉄の完全エコひいき編
         「ザットル・ビー・ザ・デイ」 byリンダ・ロンシュタッド


 この曲はビートルズ・ヴァージョン(ボーカルはジョン)もええが、あまりにもバディ先生への敬愛の念が強すぎるんで、ここはわしの愛して止まぬ歌姫リンダ嬢のヴァージョンの方をご紹介してしまおう!
 バディ先生が生真面目にのほほ〜ん♪と唄っておられるあの雰囲気にオリジナリティをもってカヴァーするのは至難のワザと思えるが、リンダ嬢は抜群の歌唱力とセンスでこの名曲を自分の歌のように歌っておる。 ご自慢のセクシー・ハウリング唄法もチラリとカマシテ、まさにお・み・ご・とっ!の一言。
 このカヴァーが収録されたアルバム『風にさらわれた恋』で、リンダ嬢は1976年度グラミー賞最優秀女性ポップス部門を獲得しおった。 その栄えある授賞式にわしは招待された(夢を見た)ことがある! ホントに招待されておったら、絶対に礼服ナッソーで駆け付けたことじゃろう!



 最後は諸君もよくご存じのロック界の大巨匠たちのカヴァーで〆としよう。 古き良き時代のロックのカヴァーアルバムをやるってのは、ある意味でビッグロッカーだけに許された特権じゃ。 しかしヘタすりゃ“傲慢不遜な個人趣味だ”などと外野からこき下ろされてしまうから、ビッグロッカーはオリジナル・アルバム以上に気合を入れて取り組んでおる。 さあてその実体は、こうじゃ!

その5 巨匠たちのカヴァーアルバム編
         「ビー・バップ・ア・ルーラ」他 byジョン・レノン
         「ブルー・ジーン・バップ」他 byポール・マッカートニー
         「トゥモロウ・ナイト」他 byボブ・ディラン


 ビートルズの両巨匠が、ともに「ロックン・ロール・カバーアルバム」のオープニングに上記のヴィンセント・ナンバーをやっとるというのは単なる偶然ではあるまい! 彼らにとってヴィンセントとは、永遠に尊敬する大アニキだったのじゃろう。 「まずはヴィンセントだ! とにかくヴィンセントからいこうぜー!!」ってことじゃったに違いない。 実際にお二方ともにヴィンセントを歌うのが嬉しくて嬉しくてしょうがない!ってのがストレートに伝わってくる。
 特にジョン・レノンなんか、その勢いでアルバム1枚はしゃぎまくりの超ハイテンション・ボーカル! ジョンの本質は“愛と平和の伝道師”ではなく、“ロックン・ローラー”であることがよ〜く分かるってもんじゃ。
 ポール・マッカートニーの方もすっかりいい気分になって、エルヴィスを3曲、カールのお父さん、ファッツ・ドミノ、チャック・ベリーらのカヴァーと縦横無尽のパワーさく裂! 数ある作品の中でポールのヴォーカルのスゴサをもっとも堪能できるデキじゃ。 
 いやいや、しかし彼らをここまで夢中にさせたヴィンセント・・・わしも今夜あたり久々にやるかっ!

 ジョンとポールが若き日のロックンロール野郎に戻って無邪気に仕上げたのに対して、ボブ・ディランはアルバム全編をほとんどアコギ一本でしっとりとやっとった。 トレードマークでもあるしわがれ声も抑えて、あくまでもしっとりと・・・。 方法はビートルたちと逆じゃが、「やりたいようにやる!」ってことでは同じじゃな。
 「トゥモロウ・ナイト」ではロニー・ジョンソンではなく、明らかにエルヴィスの方を意識しとるようじゃ。 いや、自分自身、そうエルヴィスに夢中だった自分の少年時代を回想しながら歌っとるようでもある。 
 アルバム全般で言えば、エルヴィスに次ぐアメリカンミュージックシーンの至宝ディランの、ポピュラー音楽全般に対する造詣の深さが滲み出た博物館行き的シブ〜い作品じゃ。

 肝心なことを忘れておった。 カヴァーといやあエルヴィスはカヴァーの名人、達人じゃった。 オリジナルが誰かなんて気にもさせないほど自分の歌にしておった。 そこまでのレベルに達しておるモンが今回ご紹介した中にあるかどうか? それは諸君が決めることじゃ。 機会があったら是非ともチェックしてくれ〜い♪




七鉄の酔眼雑記   

 何十年か振りに昔懐かしいコーヒーサイフォンを購入して、優雅にコーヒータイムを楽しんでおるわしじゃ。 何事にもスピード、お手軽さが求められる現代においてだな、 せめて自宅のコーヒータイムぐらいはゆったりとたおやかに、そして丁寧に味わいたいのじゃ。 「ああそうかい。アンタの人生も先が短いし、残された時間は噛みしめるべきだね!」ってツッコミ入れてくれるな!
 フラスコに入れたお水をアルコールランプで熱し、やがてお湯がローターへ噴き上がってコーヒーちゃんが誕生! ランプを消して温度を下げれば、芳しいコーヒーちゃんがフラスコへ降りてくる・・・。
 いいねえ〜、この時間は実に幸せじゃ。 何だかコーヒー豆の出しガラまで愛おしくなり、お部屋の脱臭剤として再利用しておるんじゃ。 諸君も毎日の習慣の中で、ひとつだけでもレトロしてみんか?その間だけは時間がゆっくりと流れてくつろぐことができるぞ。

 しかし驚いたのは、取扱説明書の内容が何十年か前と変わっとらんことであり、正直ギョッとしてしもうた。 ランプ用のアルコールのボトルラベルのデザインも同じで、これには笑ってしもうた。 あんまり売れてないってことなんじゃろうか・・・。
 実はな、この「取説」には重大な記載ミスがあるのじゃ。 「・・・フラスコの水が全部ローターに噴き上がったら・・・」ってとこであり、サイフォンの構造上、また使用上の安全のため、水が全部噴き上がることは決してないのじゃ。 水が全部無くなるとフラスコが割れてしまう危険性があるからじゃ。 
 その昔某喫茶店の主人に質問してみて初めて知ったこの表記ミス、これって食品賞味期限偽装事件ほどではないものの、ヤバイんと違うか? 「取説」通りに水が無くなるのをしつこく待っとったら、フラスコが過剰に熱せられて危ないぞ、おいっ! コーヒーだって煮出し過ぎで不味くなるではないか、バカモノ! 世の中がレトロを推進するのはいいが、ミスや問題点までそのままリバイバルされたんじゃ敵わんなあ〜。

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