NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.406

超頑固七鉄コーナー

もしもロックが嫌いなら!? Volume ?


 


 頑固七鉄のコラムの連載から17年。思えば遠くに来たもんだ、じゃなくて、時にはまったく筆が進まない時もある。そんな時に唐突に投稿させていた「もしもロックが嫌いなら~If you don't like rock n' roll」。400回を越えた連載の中で多分5回ぐらいやったと思うが、この不定期コラムを久しぶりに復活してみたい。
 というのも連載中の「バーチャル・ロックロールツアー」の調査に役立っていたサンレコードのサイトがネットから抹消されておって、ツアーの下調べが只今大いに遅れておるんじゃ。
 サンレコードのサイトって、他の情報サイトと参照すると実は結構不確実で曖昧な情報が多くて精査に苦労してきたが、エルヴィスの初期の情報の叩き台として大いに活用させてもろうた。それがこのわしに何の断りもなく(笑)クローズされておったのでちと焦っておる。そこで自らを落ち着かせるべく急遽「If you don't like rock n' roll」を復活させるに至った!

 「If you don't like rock n' roll」は、ロックを聞く気がしない時にわしの心を癒してくれるロック以外の楽曲をご紹介するショートコラムじゃ。今回は気分を“昭和男”に戻したい時に大いに役立ってくれておる、ウルトラマン/ウルトラセブン・シリーズに挿入されたBGMを取り上げたい。BGMとはいえ、クラシック音楽がベースとなった楽曲自体が非常に優れており、現在you tubeでチェックすると、ギターやピアノのソロ演奏で披露されておる動画の多さに驚いてしまう!
 ご存知の方も多いじゃろうが、円谷プロダクション制作のウルトラシリーズは子供向け番組だったとは信じられないほど脚本が素晴らしく、大人になってから見直しても充分に鑑賞出来るその重厚なストーリーをより際立たせておったのが、これからご紹介するBGMの数々じゃ!ピアノやギターの独演でyou tubeにアップされておるものを優先したが、番組内に挿入されたBGMオリジナルテイクもいくつかご紹介するので、The-Kingサイトでお買い物の途中の箸休め感覚でどうかお楽しみあれ。



♪tune-1 ウルトラQ「カネゴンの繭」クラシックギター調

 お金大好きのかねだかねお君が、お金を食べないと死んじゃうカネゴンになっちゃうという設定以外、ストーリーはまったく覚えておらん。でもカネゴンが登場する時に流れるBGMの美しさは子供ながら感動した覚えがあるな。あの曲をクラシックギターでやってみました動画がコレ。
 ノリはコミカルだけどメロディーに憂いがあってとても上品な曲。作曲者の宮内国郎氏は元々ジャズ畑の方で、国立音楽大学附属高校で正規の音楽教育を受けたそう。この曲はカネゴンの為に書かれたとは思えんから監督の中川晴之助氏のアイディアでカネゴンのテーマみたいな扱われ方になったんじゃろう。
■You Tube動画■


♪tune-2  ウルトラQ「鳥を見た(冥府の鳥)」
       クラシックギター調


 ウルトラQの脚本の中でわしのフェイバリットじゃった「鳥を見た」。昼間は孤独な少年の心を癒すかわいい文鳥が、深夜になると巨大な古代怪鳥「ラルゲルース」に大変身して街をパニックに陥れるストーリー。
 この曲は文鳥の姿のラルゲルースが少年と戯れるシーンに挿入されており、オリジナル曲は金管楽器でかわいらしく演奏されておるので印象が薄いが、怪鳥ラルゲルースが大空の彼方へ消えていく姿に、少年がいつまでも手を振るラストシーンでは物悲しいギターの独演バージョンが流され、ウルトラQの代表的美ラストシーンを彩っておる。作曲者は「カネゴンの繭」と同じく宮内国郎氏。
■You Tube動画■


♪tune-3 ウルトラセブン「円盤が来た」クラシックピアノ調

 望遠鏡で星空を眺めることが唯一の楽しみである冴えない青年のテーマソングともいえるピアノ曲。天体観測や夜空のシーンのBGMとしては異例ともいうべきめくるめく明るさに彩られた曲調は何度も聞きほれてしまうぐらい美しい。大人になって「円盤が来た」を観直したが、円盤を星にカモフラージュしながら地球へ攻め入るペロリンガ星人の存在と策略なんて今更どうでもいいぐらいにこの曲に引き込まれてしまうわい!

 モロボシダンとメトロン星人がちゃぶ台を挟んで談話するシーンが有名な「狙われた街」でも、ヒロインのアンヌ隊員の美しさを際立たせるように挿入されておる!■You Tube動画■

♪tune-4  ウルトラセブン
 「フルートとピアノの協奏曲」クラシックピアノ調


 tune-3と同様に美しい小品。ウルトラ警備隊の隊員たちの休息場面や人類の平和的日常を優しく彩る効果音楽として使用されておった印象が強い。また暴力や兵器力ではなく、高度な知能戦略によって地球に攻め込む宇宙人が登場する回でよく使用されていた印象も強い。
 「我々は地球人がお互いを信頼し合い、ルールを守って生活していることに注目した。地球を支配するのに暴力はいらない。人間同士の信頼感を破壊すればいいのだ」(「狙われた街」メトロン星人の台詞)

こうした宇宙人の台詞って子供の頃はその重大な意味合いを理解出来なかったが、こうしたBGMの素晴らしさによって台詞自体はしっかり記憶されておったもんじゃ。この曲のインパクトにより、「狙われた街」のラストナレーションもずっと覚えておった。
「~でもご安心下さい、このお話は遠い遠い未来の物語なのです。え、何故ですって?我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから」

■You Tube動画■


 ♪tune-5 ウルトラセブン/ウルトラ警備隊の歌(クラシックギター調)

 ウルトラ警備隊出動シーンに流れるBGMのひとつ。番組内で使用されたテイクは「ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー」と連呼される上品な男性コーラスが被さって独特の躍動感を曲に与えておる。コーラスが無くても優れた曲調であることをギターの独演で明らかにされておる!
 ウルトラマンの科学特捜隊とセブンのウルトラ警備隊の印象の違いは、警備隊の方は軍隊色がより強くなり、撮影セットの制作力がアップしたこともあってより兵力全体がグレードアップしておることじゃろう。出動シーンや空中戦のBGMもより洗練されてきており、このBGMはその代表格じゃろうか!
■You Tube動画■



♪tune-6 ウルトラセブン「哀惜のテーマ」
(オリジナル・テイク)

 宇宙人も怪獣もまったく出てこない回「盗まれたウルトラアイ」の主役、謎めいた少女に変身したマゼラン星人・マヤの雰囲気にぴったりの哀愁のメロディー。仲間に裏切られ、破壊予定の地球に置き去りされて自ら命を絶ったマヤ。モロボシダンの「どうして別の星で生きようと思わなかったんだ・・・」というラストシーンの哀惜のナレーションにもこれ以上ない効果を添えておったBGMじゃった。
 「盗まれたウルトラアイ」はセブンシリーズの後半であり、当時かなり番組の予算がひっ迫しており、脚本を担当した市川森一氏は「宇宙人も怪獣も出てこない脚本を書け!」と厳命されておったそうな。「それでいて、このクオリティー!」と今ではわしら往年のファンたちにとって大人気の回になっておる。その高い人気の一端は間違いなくマヤを演じた女優さんとこの曲が担っておる。アレンジされた独演はまだYOU TUBEにアップされてはおらんが、原曲で充分に美しい!
■You Tube動画■

 
♪tune-7 怪奇大作戦「京都買います」/ソルの「魔笛」の主題による変奏曲(オリジナルテイク)

 原曲はモーツァルトの「魔笛の主題による変奏曲」。「怪奇大作戦」はウルトラマン/ウルトラセブンと帰ってきたウルトラマンとの間に制作/放映された、同じく円谷プロダクションによる科学捜査研究所SRIの難事件解決奮闘ドラマ。全26話中脚本の評価と人気がもっとも高い作品が「京都買います」じゃ。仏像の美しさに魅了され、その保存に人生を捧げることを決意した学芸員女性が、最後には仏像そのものになってしまうオハナシ。

 この曲は女性がSRIのメンバーとの交流で“ほんのひとときだけ“一般人として生活の楽しさを実感するシーンのBGMに使われる。ストーリーの舞台となった古都・京都もしくは仏像とモーツァルトの楽曲とはイメージ的にまったく合わないんじゃが、脚本の妙味で見事にフィットしておるのが凄い!名曲には国境も文化の壁も関係ないことを実感!流れる水のごとき音階を昇降する流麗なメロディ、京都の風情たっぷりのお茶屋さん、「わたくし、今だけは人間とのお付き合いも悪くないと思いますわ」という女性の台詞の3点セットのシーンは、円谷特撮作品史上白眉といえる永遠のきらめきを放っておる!
■You Tube動画■


♪tune-8 怪奇大作戦「呪いの壺」
  /ジュセッペ・トレッリ ト短調 「クリスマス」合奏協奏曲(オリジナルテイク)

 上記「京都買います」の高い評価の影に隠れておるが、同じ京都を舞台にした「呪いの壺」も傑作じゃ。旧日本軍が発明したとされる、太陽光線を浴びると人間の神経線を破壊するリュート物質を贋作の壺に塗り続ける主人公が贋作と知らずに購入した金持ち連中を殺害し続けることで、贋作で金儲けをする悪徳古物商を懲らしめるオハナシじゃが、クライマックスシーンである寺院が焼け落ちる壮大なシーンのBGMに使用された曲がコレ!17世紀バロック音楽時代の大作曲家、ジュセッペ・トレッリの代表曲じゃ。

 24分の1のスケールで作られていたという当時の特撮作品のミニチュアとは異なり、焼け落ちる寺院は6分の1のスケールで作られていただけに、その焼失シーンの迫力は特撮作品史上最高と言われておる。燃え上る炎を煽り立てる様なこの曲の異様な負のダイナミズムは圧倒的!日本の古典芸術界の腐敗を象徴するシーンにバロック音楽を挿入して成功させたアイディアと実行力に敬服!円谷作品の制作に携わったアーティストたちは時代を超越したセンスの持ち主ばかりじゃ。
■You Tube動画■


♪tune-9 帰ってきたウルトラマン/夕陽に立つウルトラマン(クラシックピアノ調)

 歴代のウルトラマンの中で、もっとも弱っちい~のが2代目ウルトラマン(今ではウルトラマン・ジャックというらしい)。毎回怪獣退治に苦戦していて、時には宇宙人に囚われてしまったりしておったからな。そんなピンチを、ウルトラ兄弟や愛する人間たちのサポートによって切り抜けて劇的な勝利を収めるのが「帰ってきた~」の人気パターンじゃったような。

 そんな弱っちい~ウルトラマンの逆境からの立ち直りシーンに効果的に使用されておったのがこのBGM。テレビの前の子供たちに「ウルトラマン頑張れ~」って声援を送らせるような高揚感バツグンな曲調じゃ。スペシウム光線やウルトラブレスレッドから繰り出される兵器で怪獣を吹っ飛ばすクライマックスシーンに“ドはまり”でもあった!
■You Tube動画■


♪tune-10 帰ってきたウルトラマン/MATのテーマ“ワンダバダ”(オリジナルテイク)

 ウルトラマンに変身する郷秀樹が所属する地球防衛隊MATの戦闘シーンのBGM。男性コーラスで延々と続く「ワンダバダ~」がスリル満点の戦闘シーンの情景をより盛り上げる!♪tune-5 ウルトラ警備隊の歌に比べると俄然マイナー調でクールなかっこよさとは無縁じゃが、その分「MATは大丈夫だろうか」と子供たちの幼い胸を破裂させるような悲壮感溢れる単純なメロディがたまらんかった。絶望的な状況でウルトラマンが怪獣との戦いに挑むシーンにも使用されておった記憶もある。戦争映画に使用されても遜色ない「戦場のBGM」としてなかなかの逸品じゃと思うわい!
■You Tube動画■


おまけ!tune-11 帰ってきたウルトラマン主題曲
(オリジナルテイク+ベース演奏)

 ラストはギターでもピアノでもなく、ベースの独演を「帰ってきたウルトラマン」の主題曲にミックスしたやつをお楽しみください。この曲は大人になって聞くと確かにベースプレイがまるでポール・マッカートニーが弾いておる様なくぐもった美しさが炸裂する存在感バツグンのベースラインが唸りまくっておる。

 何人かのプレーヤーが同じ試みの動画をアップしており、わしのお気に入りを2本紹介しておこう。エレクトリック・ベースの奏者が目立ち過ぎるプレイはロックにおいてはわしはあんまり好きじゃないが、このプレイは例外(笑)ベースの大活躍だけでウルトラマンのテーマソングがロックになっておって楽しいわい!
■You Tube動画■

■You Tube動画■



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