NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.353

 今年3月21日から22日に変わる9分前、外国人への厳しい入国規制が敷かれる直前にタイ・バンコクに滑り込みんだ途端、2日後にロックダウンと夜間外出禁止。さらに酒類販売禁止に格安ゲストハウスの閉鎖&締め出しというドタバタ劇から早や半年。心もとない貯金の額ながら、周囲の方々のお陰で何とかかんとか生き延びることが出来た2020年の七鉄。ホント、生涯忘れられない一年にとなったわい。

 2019年いっぱいでバンコクでのお勤めを辞めて、「とにかくゆっくりと眠りたい、休みたい」一心で年初からベトナム・ホーチミン、ミャンマー・ヤンゴン、カンボジア・プノンペンを滞在可能期間を目一杯使いながら移動していたから心身は完全に抜け殻状態。そこにコロナ禍によって世界中の情勢が急転直下!突然慌てふためいたというわけじゃ。

 思えば、3月21日ホーチミンからバンコクへのフライト当日、空港でバンコク行格安フライトの全運航停止を知り、タイの入国規制が敷かれるのが翌日だったから移動先の決断が急がれたものじゃ。通常価格の約8倍もする超ボッタクリ航空券を買ってこの日のうちに予定通りバンコクへ行くか、このままベトナムに留まるか、格安航空券を買い直してミャンマーかカンボジアへ逃れるか、その選択に大いに悩んだわい。日本帰国という選択肢もあったが、バンコク行きチケット代の更に倍額の航空券代のために諦めざるをえなかった。何処の国に行こうが、その後はしばらく出国出来そうもない予感がしたので、わしはクソ高いチケット代を涙を呑んで支払ってバンコク行きを決意したんじゃ。

 結果として、新しい仕事が生まれて生き延びることが出来たということは、3月21日のホーチミン空港でタイ行きを選択して正解だったということじゃ。東南アジアの中でタイは世界中からの旅行者の数がダントツで多くて様々な魅力がある国じゃが、今回の特殊な状況下においてわしを生き延びさせてくれたタイという国に心から感謝をしながら、通常の情勢では気が付くことがなかった「タイの良さ」というものを皆様にご紹介してみたい。


タイに心より感謝を込めて~コロナ禍で再認識した、タイとタイ人の素晴らしさ

■見も知らない外国人への気遣い■

 わしが長らく屋台料理を食べておるが、住んでいる地域の屋台のおじちゃん、おばちゃんはとても記憶力がいい。随分前に一、二度しか利用したことのない屋台でも、久しぶりに行くとわしの顔を覚えていてくれて「どこで浮気していたの?」って笑いながらサービスしてくれる。一人でもお客を確保したい一心だったのじゃろうが、歓迎される側として嬉しい対応じゃわい。
 つい先日まで歩行が億劫なほど腰を痛めておったが、バスの中で腰をかばう様に手すりにつかまっていると、後方から肩を叩かれて若者に座席の譲渡を勧められた事もあった。自分勝手と思われがちなタイ人も実は周囲の状況をよく見ていて、見も知らぬ外国人に対してもスムーズに気遣いが出来るのじゃ。

 またBTS(高架鉄道)の座席に座って疲労感から眠り込んでしまった時、見知らぬタイ人から起こされたこともあった。彼は「電車の中で眠ってしまったら危ないよ」的な言葉をかけてくれたんじゃ。彼の言う通りであり、日本と違ってタイで乗り物の中で眠ってしまうことは盗難に遭う確率が高いのじゃ。
 これらの気遣いを“タイ人ならでは”と言ったら、日本人に対して失礼かもしれん。しかし、多くの日本人が遠い昔に置き忘れて来てしまった赤の他人でさえもおもんばかる姿勢が、現代のタイ人には当たり前な素養であることは確かじゃ。


■買い占め騒動が起きない■
 コロナ報道がピークの頃、クラスター予防の為に多くの種類の製造工場が稼働停止の報道が相次いだ。当然スーパーマーケットなどでは製造中止の品物の買い占め騒動が起こっても不思議ではないが、そのような事態はほとんど起こらなかった。だから製造中止に該当する商品に「お一人様〇個限定」といった表示がされることもない。
 買い占め騒動など起きずに平常営業状態のタイのスーパーを見ながら、年端も行かぬ小さな子供にお米の5キロ入り大袋を持たせてレジに並ばせるバカ親がいた日本の平成米騒動を思い出して、ちょっと恥ずかしくなったものじゃ。

 タイは国全体が貧しかった時代が日本よりも長かったが、だからこそ国民全体に助け合いの精神が当たり前の意識として浸透している証拠であろう。非常事態になると「我先に」となりがちな日本人は大いに見習ってもらいたいものじゃ。


■表面的には悲壮感とは無縁■

 タイは東南アジアでもっとも暴動が起きにくい国とされている。それはとりもなおさず「食べ物が安くて豊富だから腹が減ることがない」ことが原因とされるが、だからこそ普段から我々外国人よりもはるかに楽観的に見える。ロックダウン最中のスーパーマーケット等ですれ違うタイ人たちからも、あまり悲壮感は感じなかったものだ。それがどれだけ助かったか!
 わしら外国人の方は、恐らく「そんなに不安なら自分の国に帰れば?」って言われそうな暗い顔をしておったと思う。タイ人の根っからの楽天さに普段からどれだけ救われてきたかを、あらためて思い知らされたものじゃ。「とりあえず腹を満たしておけば安心」ってのは、現代人として決して褒められた思考ではないとも思えるが、やっぱり「腹が減っては戦は出来ない」じゃよ。

 そう言えば、わしの知人でナイトクラブ経営者がおるんじゃが、ロックダウン解除後に女性スタッフが帰省先から続々とバンコクに戻ってきた時、見事に全員がコロコロと太っておったそうじゃ(笑)そのクラブは普段はルールが厳しくて、見るからに太った女性には罰金を課すらしいが、さすがにこの時は免除したらしい。「仕事がないから田舎に戻って食べてばっかりだったんでしょう。でも皆んなが元気で笑顔で戻ってきてくれただけでも有難いものですよ」彼もまた、コロナ禍によってタイ人やタイの習慣に対する認識を改めた外国人の一人じゃ(笑)


■ タイに居てくれてありがとうセール ■

 ロックダウン直後、在タイ外国人たちの多くが不安に駆られて祖国へ緊急帰国した。わしの周囲でも、居ても立ってもいられずに暴騰化するチケット代など関係無しに帰国する者が相次いだものじゃ。国際線の出発数が激減する一方となることは明白じゃったから無理からぬ話じゃ。
 だからなのか、ロックダウン解除直後、外食店や夜の街への外国人客の戻りは予想を遥かに下回る数だったらしい。そんな状況下において、外国人相手の某タイ料理店が英語、中国語、日本語で「タイに居てくれてありがとうセール」と題したディスカウントサービスをアピールしていたのは何とも微笑ましかった。というか嬉しかったわい。
 わしのようなパターンによるタイ残留組は別として、諸事情で帰国したくても出来ない外国人もたくさんおる。そんな方々の心情をおもんぱかったキャッチコピーではないか!日本、タイに限らず、お店のキャッチコピーと言えば自分たちのアピールオンリーであり、お客さんへの感謝をダイレクトに適格に伝えるコピーはそうは無いものじゃ。これならタイ料理が好きではない外国人も、「食べてみるかな」って気にさせるかもしれない“わし的”に名コピーだったと思う。

 コロナ禍という未曽有の危機状況において、「差別、区別、壁を取っ払って人類皆んなで協力して乗り切るしかない」と言うのは簡単じゃが、立場や状況の違う者に協力をあおぐのであれば、まずは礼儀としてお相手に対して感謝の意を伝えることから始めるのが筋っちゅうもんじゃ。そんな真理をタイで目の当たりにしたことで、この国に留まっていてよかったと心から実感出来たわい。観光立国タイの懐の大きい優しさを感じたわい。



■ お釣りをきちんと返すタクシー運転手 ■

 タイのタクシーは、少額のお釣りはチップとして運転手に差し上げるのが暗黙のルール。外国人ならば20バーツ(約70円)ぐらいまでのお釣りなら、「マイペンライ(いいよ、いいよ、とっておいての意)」と言って受け取らないのがスマート。だから運転手も少額のお釣りを返すフリしかしない者も多い。
 じゃがわしは幸運なのか、コロナ禍以降はやたらとお釣りをきちんと返そうとする運転手に出くわす機会が多い。先日はこの“お釣りチップ”を絶対に受け取ろうとしない若い運転手がいた。外出する者の絶対数が減り、彼らの仕事も大変であることは間違いない。減ったお客の中から1バーツでも多く徴収したくなるのが普通なのに・・・。

 渋滞時にタクシー代わりに利用するバイクタクシーの運転手もまた然り。バイクタクシーは乗車時に目的地を伝えて値段交渉するのが常じゃが、わしは面倒だから降車時に「いくらだい?」って聞くことが多い。以前はフッカケラレタ覚えが多いが、最近は皆無じゃ。
 まさかタクシー、バイクタクシー業界全体に、「お客の数が減っている今こそ、お釣りは正確に返し、ボッタクリを無くして業界の信用を上げなさい」なんてお布令が出ているとは考えにくい。もしドライバーたちが自発的に良心的運転をしているのであれば、心より讃えてあげたいし、大いにアピールしてあげたいものじゃ。


■ 番外編~禁酒令下でも売ってくれる店がある!? ■

 そこれは幸運と現地コネクションの有無によるもの(笑)まあわしは、「アイツ、絶対アル中だぜ」という悪評が立つことを恐れずに知人に片っ端から聞きまくった末に情報をゲット出来た。まあ痛みというか、恥と引き換えに得た酒だったのでそのお味は格別じゃった!何事も、良い情報を得るにはタダではダメってことじゃ(笑)
 というよりも、酒に関しては絶対的に信頼していた某店主から「今回だけはダメなんだ。勘弁してくれよ」って言われた時はさすがに狼狽えたが、まあお酒の神様に感謝。感謝じゃと同時に「何事も諦めたらオシマイ」ってことじゃ~♪

 自分の生活と新しい仕事は決して順調ではないが、タイという国、タイ人の素晴らしさを感じながら暮らすことが出来ているのは有難いと思う。コロナ騒動が終息し、旅行者が再び自由にタイに来られるようになっても、これらの素晴らしさが続いていることを祈るのみ!諸君の中で将来タイを訪れることがあった時、この度わしが紹介した“知られざる”タイ人の良さを思い出してくれたら嬉しいわい!

諸君、本年もお付き合い頂きましてありがとうございました。
どうか良いお年を!


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