ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.34

 優雅にたたずむピンクフラミンゴのアイコンに心ときめいたな、諸君。 猛暑と台風が去り、日本列島はフラミンゴが舞い降りるような穏やか〜な秋の気配が漂う季節に突入じゃ。 日本では昔から「○○の秋」と言って、日本人は秋に五感と体力がピークを迎えるような表現をするのが好きじゃな。 何を隠そうこの七鉄も、大好きな酒がもっとも美味しく感じるのが秋じゃ。 夏はビール主体の飲料水的飲み方になるし、冬は宴会のためのガソリン補給的飲み方になる。 酒精をじっくり味わうのはやっぱり秋じゃな。 大酒飲みのわしとはいえ、年がら年中デリカシーのない飲み方をやっとるわけではないぞ!
 そこで、たまにはわしのアルコール殿に関するとっておきの秘話を紹介してしんぜよう。 なあ〜に、酔っ払った時の武勇伝ではないので安心なされ。 酒好きでなくても、コレを読めば一度は飲んでみたくなる、世にも不思議なウイスキーのオハナシじゃ。
 

伝説のロッカー、アーティストたちに密やかに愛され続けるアイリッシュ・ウイスキー
「オールド・ブッシュ・ミルズ」の世にも不思議な魅力


 
 もう三十年ぐらい前になるかいのお〜。 わしはイギリスの学園都市ケンブリッジ(先日テロ騒ぎがあった所)におって、パブでビールをひっかけながら音楽雑誌を眺めていたところ、「ロック史上酒豪ベスト20」みたい記事を見つけた。 有名ロッカーの酒にまつわる数々の伝説からランキングしてみたっつう、オアソビのような企画じゃったが、酒好きのわしはニタニタしながら舐めるように読んだもんじゃった。
 確か1位はレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム。 2位はドアーズのジム・モリソン。 3位はストーンズのキース。 そしてジーン・ヴィンセントが7位か8位かだったのを覚えておるぞ。
 ベスト20のロッカーの名前をしっかり覚えたわしは、彼らがどんな酒を飲んでおるのか日夜輸入雑誌の写真でチェックする日々が始まったのじゃ!(わしも凝り性というか、ヒマじゃのお〜)
 大調査の結果(笑)、ジャック・ダニエルが圧倒的に多かったが、ジャックのようなバーボン系以外で人気が高かったのが、アイリッシュ・ウイスキーの「オールド・ブッシュ・ミルズ」じゃった。

 ちょっとこのウイスキーを紹介しておこう。 「オールド・ブッシュ・ミルズ」は、アイルランドに現存する世界最古のウイスキー醸造所で作られるヨーロッパ系ウイスキーの老舗中の老舗じゃ。 その醸造法はイギリス産のスコッチウイスキーのお手本になったとも言われ、市場に出回るのもスコッチよりはるかに早かったそうじゃ。
 しかし商売上手のイギリス人業者のスコッチ営業戦略に市場を奪われてしもうた。 それからは利益はおろか、今でもヨーロッパ系ウイスキーの本家本元の称号すらも取り返すことができない悲運のウイスキーなのじゃ。 しかしロッカーには何故だか人気が高いんじゃな。 ロッカーがスコッチを飲んどるショットはほとんどなかったと記憶しとる。
 
 いろいろと調べてみると、ロッカーだけではなく、作家、詩人などにも「オールド・ブッシュ・ミルズ」のファンが結構多いのじゃ。 それからわしはコイツを死ぬほど飲みまくったことは言うまでもない! リキュールのような強くて甘い香り、すっきりとした飲み口の割りにはのどを通過するとアルコール成分がとぐろを巻いて迫ってくるような独特の味わい・・・う〜ん、これがアーティストたちを魅了するウイスキーなんじゃのお〜、と一人でゴキゲンモードに浸っておった。
 ところがいつ頃からか、3〜4杯ロックであおってピッチが上がりかけると、必ず不安と期待がミックスされたような落ち着きがなくなる自分に気が付くようになった。 これは決してアル中の症状ではないぞ! この毎度やってくるミョーな感覚は一体何なんだ? この感覚を自覚したことが、わしが「オールド・ブッシュ・ミルズ」にハマルきっかけとなったんじゃ。


 
 酒の味を説明するのは誠に難しい。 そこでわしが十五年ほど前にアイルランドに行った時、パブでお隣になったご老人の御言葉をまずお借りしてみよう。
 「オールド・ブッシュ・ミルズは、人生そのものの味がする」 
 このご老人が語った「人生」とは、 「何が起きるか分からないのが人生。 人はそれを予測することは出来ない」ということじゃ。 そして、
「ブッシュミルズは飲むたびに味わいが違う。 どんな酔いがやってくるかも分からない。 だから“人生そのもの”なんだ」

 そうなんじゃ! 体調や気分に関係なく、飲むたびに味も酔いも異なる体験が続いていたので、わしの酒を愛する感性が「オールド・ブッシュ・ミルズ」に少々恐れおののいておって、それが酔う前の落ち着きのなさになっとんったんじゃ。 「そんなバカなハナシがあるワケねえーだろう」とはゴモットモなんじゃが、事実なんだからどーしようもないんじゃよ。
 もちろんこれは品質が安定していないとか、温度や湿度に影響されやすいとか、そういう化学的に証明できる現象ではないんじゃ。 実際にわしは、このウイスキー固有の味を純粋に愛しているファンも知っておる。 でもアーティストや同じような志向性、思考回路をもった者が飲むと、この不思議な特性が現われるようじゃ。

 そこで七鉄は考えた。 これはお酒の神様のチョイとイカシタ遊び心、ジョークに違いない!と。 アーティストにとって、人生の様々な出来事は作品を生み出す糧となる。 だからハプニングやアクシデントは創作活動においてはウエルカムなのじゃ。 そこで酒の神様は味のお約束のない、飲むこと自体がハプニング、アクシデントである酒をお作りになられたのじゃ。
 さらにハプニングやアクシデントから導かれる「酔い」も未知の感覚であり、ミステリアスでスリリングな精神世界が見えてくる! ひとつのウイスキーで、様々な思いに駆られ、想像力をかき立てられる。 アーティストたちにとってはもってこい!のウイスキーとなるわけじゃ。 「オールド・ブッシュ・ミルズ」のもたらす「酔いの効果」の先に、アーティストたちはどんな夢をみておったんじゃろうか・・・。 わしの場合は、飲みすぎてもうて、酔った後のことはさっぱり覚えておらんがのお〜!

 西洋の古い言い伝えにこういうのがある。 「人生というのは、酔い、幻想、夢の世界である。 死者は生という夢から目覚めた者である」。 っつうことは「オールド・ブッシュミルズ」とは、人生という幻想や夢を彩ったり脱色したり、加速させたり減速させたりするウイスキーじゃな。 
人生が夢にしろ現実にしろ、 「オールド・ブッシュミルズ」を飲みながら楽しんでおれば、幸福な死、目覚めが訪れる
と信じて諸君も一度はトライしてみてはいかがのお〜。 


 考えてみれば、ナイスなファッションも「オールド・ブッシュ・ミルズ」に共通したマジックがあるような気もするのお。 オキニの一着を数多く着こなす度に、自分がたくさんの変身ができる人間になったような気がするもんじゃ。 それも自分では予想もしなかったキャラなんかに変身している場合が多い。 THE-KINGのナッソーやフタツキなんかはまさしくそうじゃ。 未知の自分との出会いじゃな。 グレイト! だから酒もファッションも止められん!ということじゃ。 語り継がれ、受け継がれていく優れたブツってのは、こういうことを言うのかもしれんなあ〜。




七鉄の酔眼雑記   

 「食欲の秋」「味覚の秋」ということで酒のオハナシをかました今回じゃが、「スポーツの秋」の方は世界レベルではとても盛り上がれんのお。 MLBではマツザカ君はメッタ打ちの連続、ゴジラ・マツイは好調続かず。 サッカーのオシム・ジャパンは上昇気流に乗れない。 世界陸上も日本勢は惨敗。 最初は威勢がよかったマスコミもおとなしくなっていき、中には「予想通りの結果」とかホザイテいるヤローもいる。 盛り上げるだけ盛り上げておいて、ダメなら無視かコキオロシ。 日本のマスコミの無責任ぶりにまたまたあきれ返る毎日じゃ。
 世界陸上でアジア新記録を出しながらメダルに届かなかった男子100×4リレーのアンカー、朝原選手の短いコメントが今の日本スポーツ界のレベルを的確に語っておった。 「アジア新でもメダルが取れない。 正直、参りましたって気分です」 そうなんじゃ。 日本だけが進化しているのではなく、世界はそれ以上に進化しておるのじゃ。 

 考えてもみたまえ、諸君。 日本のアスリート勢が世界で勝負するようになってから、野球やサッカーでたったの10年。 陸上なんかはここ2〜3年じゃ。 そんな程度の年月しか経っていないのに、長〜い歴史を誇る世界を凌駕できるほどヨ・ノ・ナ・カ・ワ・ア・マ・ク・ナ・イ。 闘うリングに上がったことと、そこで勝利することとは別次元のハナシじゃ。
 「冷静に報道していたら国民は盛り上がらない。 少々過剰な報道でもカマして国民を煽って、そのパワーを選手に送るのだ!」っつうマスコミ側のキマリ文句があるが、アホかっつうの! そういうパワーは真に力をもった選手にプラスアルファをもたらしこそすれ、乏しいパワーを水増しすることなどは出来んのじゃ。

 どんな世界でも、先陣部隊はドロをかぶらにゃならんのが常じゃ。 現在世界で勝負しているアスリート諸氏は、いわば「先駆者の悲哀」を受けておるのじゃ。 日本のマスコミはそんな「先駆者」たちの勇気と苦労をまず尊重してねぎらわなければならん。 そして後続のためになるコメントを引き出し、次なる飛躍論を一緒に検討するような姿勢を見せてほしいものじゃ。
 ダメなら無視かコキオロシで終わり、第二、第三のイチローや中村俊輔を期待するしか能が無いなんて、ジャーナリズムとしてはレベルが低過ぎる。先進国家のマスコミのやることじゃないぞ。 イチローや中村俊輔は規格外の例外なんじゃ。 ニッポンのアスリートたちが世界で結果を出すためには、幼稚なスポーツ・ジャーナリズムの改新も大きな課題だと思うのじゃが・・・。


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