NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.328 |
前回に引き続き、ロック名(迷)カバーソング30編をやるので、お付き合いのほどヨロシューな! これを機に随分とカバーソングをyou tubeで探してみたんじゃけど、やっぱり最近の若いロッカーは“けなげ”というか“お坊ちゃんというか”(笑)、いや聞き込み不足&発想が貧弱というか、カバーがおとなし過ぎるぞ!って喝を入れたくなった(笑) 逆に言うと昔のロッカーは図々しいというか先輩に対するリスペクトが薄いというかって、どっちをケナシてんのか分かんなくなってきたが、ピックアップしたくなったのは昔のロッカーばっかり(笑) やっぱりカバーの方法論ちゅうものも、20世紀内である程度出し尽くされた感があるのお。 つい先日ジャズファンのお方と飲んだんじゃけど、ジャズの場合は最近は革新的なアレンジによるカバーの名テイクが続出しているんだそうじゃ。 う~ん、久しぶりに「ロックがジャズに敗け・・・」いやいやそんな高校生みたいな事を考えてもしょうがないんで、今のところロックのカバーにおいては昔のロッカーさんの名演、迷演で聞き留めておきやしょう! エルヴィスみたいな圧倒的な歌唱力をもつロッカーが出てくればカバーもオリジナルも、んなことカンケーネーけど、そういうヤツもおらんからしゃーないわな! では30選後半のラインナップをお楽しみ下され! (上写真~クリーム) (右写真~ホセ・フェリシアーノ) |
“ふんどし借りる”なら、ここまでやっちまえ!? 度肝を抜かれたロック名(迷)カバーソング30選(後編) |
♪tune16~Crossroad / Cream ご存知伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンの名曲の大傑作カバーであり、「ロック界にエリック・クラプトンあり!」としらしめたテイクじゃ。 「あんなスゴイ曲のカバー、コピーなんてとても出来ないから、一度曲を解体してからスローで何度も繰り返していきながら再構築してみたんだ」とはクラプトンご本人の弁。 う~ん、確かにスローで繰り返しやっていて突然稲妻の如き閃きがやってきてハードロック化してしまったようなとんでもないアレンジじゃ。 既にギターの神様と称されておったクラプトンにブルースの神様が降りて来たって表現がぴったりの奇跡的な方法論! ちなみにクリームのこの演奏を、後にレイナード・スキナードがライブで再カバーしとるが、クリームより泥臭い演奏でこれも結構いけるわい! ♪tune17~Stop Breaking Down/Rolling Stones これもロバート・ジョンソンの傑作カバー。 上述した「クロスロード」よりは緻密な音楽理論的解体&再構築はなされておらんけど、1938年に死んでしまったロバートが涙を流して喜びそうな壮大なスケールによってリメイクされておる。 ロバートがこの曲に託した目に見えないブルースマン的スピリットを感じ取ったミック・ジャガー&キース・リチャーズが、ロバートへの彼らなりのリスペクトと新しい装いをもって蘇らせた素晴らしいカバーじゃ。 ストーンズのブルース先導者であり、ブルースピュアリストじゃったブライアン・ジョーンズがもし生きておったら、さすがの彼も脱帽してしまうような出来栄えじゃ。 ♪tune18~When the Levee Breaks/Led Zeppelin ド迫力のヘヴィロックであるこの曲、オリジナルがブルースだと知った時はビックリ! どこがブルースじゃ! 180度別曲になっちまっておるわい。 オリジナルはアメリカのふる~い女性ブルースシンガー、メンフィス・ミニーとかいう人で、まあフツ~のスローなクラシック・ブルース。 このオリジナル曲の中からヘヴィ・ロックに変換出来るリフの迫力を見抜いた(聞き抜いた!?)ロバート・プラントの慧眼振りには恐れ入る。(ジミー・ペイジではないらしい) 作者クレジットはツェッペリンの4人プラスメンフィス・メニーさんになっとるのも図々しいを越えて爽やかに呆れてしまう(笑)でもメニーさんが聞いたらどんな気がするじゃろうな(笑) ♪tune19~Got My Mind Set on You/George Harrison オリジナルはジェイムス・レイなる黒人シンガーが1962年に録音したテイク。 まあマイナーなソウル・シンガーっつう位置づけをされておるが、ジョージ・ハリスンは「いい曲なのに、なんてヒドイアレンジなんだと思ったから大幅に改編してみたんだ」と語っておった。 ジョージがソウルのカバー?ってピンとこないが、これはご本人談の通りに名アレンジに仕上がっており、メデタク全米ナンバーワンヒットになったのお。 黒人ミュージシャン特有の領域も、アレンジ次第で白人世界でも通用することを証明してみせた、ジョージの名カバーじゃ。 ♪tune20~Orange Blossom Special/Seatrain ご存知ジョニーキャッシュ御大の名演で有名な一曲。コイツをシートレインなる70年代前半に活躍したアメリカのカントリーロックバンドが大胆なカバー!まるでプログレバンドみたいに楽器同士が激しくぶつかり合うアレンジであり、プロデューサーはなんとビートルズ・サウンドを磨き上げていたジョージ・マーティンじゃ! 激しい展開ながらも建築学的な構成美はまさにマーティンさんのお仕事じゃわい。どカントリーが苦手なロックファンでも、これならイケマッセ! ♪tune21~That'll Be The Day/Linda Ronstadt バディ・ホリー先生の名曲のカバーってわしはどうも思いつかないが、このテイクは秀悦じゃわい。 オリジナルは牧歌的なノリにバディー先生のお声が優しく溶け込んでおり、ビートルズもほぼ原曲通りにカバーしておるけど、希代の名女性シンガーじゃったリンダ・ロンシュタッドがパンチの効いて色っぽいアクセントをカマシて現代風にアレンジしておる。 まさに、50年代の名曲が新しい装いでスムーズに蘇ったって感じで素晴らしい。 結局バディ先生の曲って、圧倒的な歌唱力がないとカバーし切れないってとこじゃろうな。 ♪tune22~Smoke Gets In Your Eyes/Bryan Ferry 一説によると、世界中でもっともカバー数が多いのはこの曲とか!(邦題「煙が目にしみる」)わしが聞いてきた限り、オリジナルのプラターズの熱唱を忠実になぞっておるカバーがほとんど。 余計なアレンジが許されないほど、オリジナルのイメージが人々の心をとらえてはなさないって事なんじゃろうけど、さすがはカバー名人のブライアン・フェリー。 フェリー節独特の、歌詞の切れ目をこねくりまわす変態チックなテクニックを随所にかましながら自分の歌にしようと頑張っておられるわい。 まあ好きか嫌いか大きく分かれるじゃろうが、偉大なるクラシックの隙間を狙ってオリジナリティを滑り込ませようとする図々しさを聞いてみてくれたまえ。 ♪tune23~Chinese Café ~Unchained Melody/Joni Michell これは純然たるカバーではなく、オリジナル曲とカバー曲とを融合させた異色の作品! 「アンチェインドメロディー」は「煙が目にしみる」同様に個性的なカバーが見当たらないほど原曲のイメージが強烈じゃ。 エルヴィスは異例として、誰もプラターズの様には歌い切れないのじゃ。 だからってなわけでもなかろうが、70年代のロック界のミューズと呼ばれたジョニ・ミッチェルは同じような歌詞コンセプトで作ったオリジナル曲「チャイニーズ・カフェ」のアクセントとして原曲を溶け込ませてまとめあげておる。 お遊びセッションではなくて、スタジオ録音曲でこんな事をやってみせたのはジョニが初めてじゃろうな! ♪tune24~The Loco-Motion/Grand Funk, Emerson Lake & Powell ここで、意外というか、お笑い一歩手前のカバーを2曲ほど。 まずアメリカ人の女性シンガーのリトル・エヴァが1962年に大ヒットさせた「ロコモ―ション」。 ♪~カモンベビートゥザロコモ~ション~♪」って歌える典型的なポップクラシック。 それを60年代末期から大活躍していたハードロックバンドのグランド・ファンクがカバー! 全然イメージがフィットしないだけに発表当時は悪評プンプン。 グランドファンク好きじゃったわしも無視しておったが(笑)、なんとグランド・ファンク最大のヒットシングルになってしもうた!もともとギターへたっぴで有名じゃった!?マーク・ファーナーがさらに原曲を茶化すようによりへたっぴテクでギターソロ(笑)これがウケたようで、アメリカンチャートの懐の深さを思い知ったわい。 なお1980年代になってから、プログレバンドの末裔であるエマーソン・レイク&パウエルもカバーしておった。 何でも弾きこなせるキーボード・プレイヤーのキース・エマーソンの遊び心満載の演奏じゃったが、まったく話題にならんかった。 けどこういう楽しいプログレもあっても良かったなと今更ながらに思ったのはわしだけじゃろうか(笑) ♪tune25~Be My Baby/Graham Bonnet ハードロック界の横山やすし、グラサン野郎の声バカデカシンガーであるグラハム・ボネット。 ハードロック界の精鋭を集めて録音されたソロアルバムで、何とロネッツの名曲をやっちゃっておる! まあ誰が何をやろうと勝手なんじゃけど、もう聞く前に楽曲クレジットを見ただけで笑ってしもうた! 声を張り上げまくって原曲を滅茶苦茶にしていると期待したんじゃけど、意外と可愛く歌っておる(笑)あのグラハム君、ひょっとしてロネッツのファンだったんじゃろうなあ~。 ひっくり返りそうな高声域での「オウオウオウ」だけはやっぱり健在でアリママシタ。 ♪tune26~China Girl/David Bowie オリジナルはイギー・ポップ。 元祖パンク野郎にしては異色のポップな曲じゃし、発表当時は話題に登ることはなかった。そこでイギーの親友であるデヴィッド・ボウイがカバー。 一説によると生活が決して豊かなではなかったイギーに、印税をプレゼントする意図でボウイがカバーを吹き込んだとか。 当時のボウイはアルバム『レッツ・ダンス』が世界中で大ヒットしており、何をやっても儲けることの出来る“時の人”だっただけに、このカバーも大ヒット。 大のイギー・フリークじゃった某ロック評論家さんまでが「ボウイ、イギーを助けてくれてありがとう」なんてコメントを発しておった。 カバー名人のボウイにしては普通の出来だと思うが、そんな裏話が潜んでおった友情のカバーじゃ。 ♪tune27~Light My Fire/Jose Feliciano 超絶的なオリジナリティを誇ったドアーズのカバーなんてあったかなと記憶を必死に絞り出してみたら、ありました1曲有名なヤツが。 ドアーズの代名詞ともいえる超有名曲「ハートに火をつけて」のカバーが! プエルトリコ出身の盲目のシンガー、ホセ・フェリシアーノのボサノバ調スローカバーじゃ。 ドアーズの情熱的なオリジナルは1967年、ホセのカバーはその翌年にそれぞれ大ヒットしており、オリジナルとカバーが短期間で両方ヒットした例はアメリカのヒットチャート史上でも稀じゃろう。 ちょっと最初はとっつきづらかったカバーじゃけど、実はこの曲、ドアーズのギタリストであるロビー・クリーガーが書いたフォーク調バージョンにドラマーのジョン・デンズモアがボサノバビートの導入を提案して磨き上げられていったのじゃ。 その辺のプロセスは映画「ドアーズ」でも詳らかにされておるが、そんな隠された事実を知っていたかのような、見抜いていたかのようなホセの名アレンジじゃ。 わしが学生時代の頃、渋谷の(今で言う)カフェバーで演奏していた生ギターの弾き語り屋さんに冗談半分で「ハートに火をつけて」をリクエストしたら、このホセ・バージョンで見事に歌い上げられて恐れ入った記憶がある! ♪tune28~Heroes/Motörhead デビッド・ボウイの名曲のカバー。 モーターヘッドっつったら、極悪とか狂暴とかいう形容詞が当たり前のハードコアパンク&ハードロックのバンド。 ボウイの美しい曲のカバーっつうんで驚いた方も多かったが、わしは「なあ~るほど」と感心した。 確かにメロディは美しいが、元々ボウイ自身は決して美しく歌っておらんし、アレンジも結構ヤバメ。 この曲に潜む狂気を表層に出すか出さないか、その境界線ギリギリでの唱法とアレンジをわしは聞いておったんで、モーターヘッドでも良し!と評価したわい(笑) まあ映像を観ると観客の誰一人としてこの曲の真意を知らんように盛り上がっておるのが笑えるけどな! つうか、「たった一日だけなら私たちはヒーローに成れる」という悲愴なスピリットがハードコアパンクのノリに合致したんじゃろうか。 ♪tune29~Whiter Shade Of Pale /HSAS ロック史上もっとも美しい一曲として永遠に輝き続けるこの曲(邦題「青い影」)のカバーも数多く存在するが、一番ぶったまげたのは、有名アメリカンハードロック野郎ども4人で結成されたサミーヘイガー(後にバンヘイレン参加)、ニール・ショーン(ジャーニー)、マイケル・シュリーブ(元サンタナ)のバンド(HSAS)のヤツ。 聴衆の全てをうっとりとひきづりこんでしまうオルガンの調べによるイントロをカットしてしまい、いきなりサミーヘイガーの歌唱力で聞かせようとする無謀なアレンジに恐れ入ったわい。 歌詞の宗教的な意味なんざも「俺たちゃワカラン」と無視しまくりであり、更にサミーの及ばぬパートはニールのギターテクで埋め尽くすという実に単純明快な方法論、アメリカンロッカーらしいやり方じゃ。 ♪tune30~Sweet Jane/Cowboy Junkies 最後はしめやかに終わりに致しやすか。 オリジナルは元祖アメリカン・パンク・バンドだった伝説のベルベット・アンダーグラウンド。 簡単にコピー出来そうで出来ないパンクスピリットの原型を具現化したみたいな神秘的な曲じゃけど、カウボーイ・ジャンキーズという80年代から静かに活躍を続けるフォークバンドがしっとりとカバー。 女性シンガーのマーゴ嬢が、オリジナルで聞けるルー・リード変質的熱情ボーカルを限りなく深く沈み込むような低音でひたすらささやくように歌う。サイレント・パンクの傑作と言ってしまいたほどの見事な歌いっぷりじゃわい。 ロックにのめり込み始めてからしばらくは、わしはLPレコードが苦手じゃった。 それはLP1枚40分から60分間が長過ぎたってわけではなくて、LPに収録された曲の全てを気に入る場合が極めて稀だったからじゃ。 「ツマンネーオリジナル曲を収録するぐらいならもっと積極的にカバーをやりゃあいいんじゃよ」って思うておったことが何だか懐かしくなった「ロック名(迷)カバーソング30選」でありやした。 年老いたロッカーたちが、少年時代に夢中になった曲をしっとりとカバーするのも悪かないけど、やっぱりイキのいい若手ロッカーが斬新なカバーをする方を俄然期待しておる! カバーをいかにこなすかも、ロッカーに求められる重要な才能なのじゃ。 どんどんチャレンジしていってほしい。 そして忘れられていたオールドロッカーの埃の被った名曲を再び日の当たる場所へ引っ張り出してくれ! ロックンロールが永遠に続く為には、若手ロッカーの積極的なカバー・アクションは極めて重要なミッションなのであ~る! |
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