NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.326

 ついにやってしまった「プログレ名曲セレクション」! そこのキミ、すぐに退出しないでもう少し付き合ってくれんかあ~~~。

 黒人ブルースとプログレの名曲セレクションはやらない、なんて言わなきゃよかった! いやそんなこと言ってねーか!「ロックソングベスト50、100」には入れないって言っただけか! んなこたぁどっちでもええけど、酔っぱらった勢いで試しにセレクションをやっちまったんだから、もうやっちまうしかないって、何を言ってんだか分かんなくなってきた。 まあ「よくわかんない」ってのがプログレの特徴じゃ!?

友達:おい、歌はいつ出てくるんだよ。
わし:イントロからまず勝負に出てんだよ
友達:いきなり勝負?どうやってサビに繫げんだよ
わし:聴き所が沢山あるんだよ。だからプログレッシブ(進歩的)なロックなんだ。
友達:しかしこのドラム、おかしなオカズいれるな
わし:うるせーな。だからプログレッシブだって言ってんだろうが!
友達:楽章の並べ方が無茶苦茶じゃねーか
わし:だからプログレッシブだって言ってんだろうが!分かんねーヤツだなテメーも!

 高校生の頃、レコード鑑賞仲間とこんな会話をしていたのが懐かしいが、正直に言うとわし自身が「よくわかっていなかった」んじゃよ。 それでも必死に聞きまくって理解しよう、というよりも何が何でも慣れようっつう意気込みじゃった! 高校生の感性と忍耐力ってスゲー!って変な感心なんざしてないで、いくぞプログレ・ベスト50じゃくて30! 50じゃ端から相手にされそうもないんで、30に留め置きました! その代わりに曲ごとの講釈を前回よりは少々多めにさせて頂きやした!!

セレクトの規定は
①1アーティスト1曲のみ
②イギリスのアーティストのみ
③(出来るだけ)10分を超える大曲は選ばない
④精神性や演奏技術よりも、ポップな曲調の曲を優先して選ぶ
⑤「プログレ」なる言葉が真に生きていた1970年代までの楽曲
であります。
③と④は、もちろんThe-Kingファンの諸君のご理解を少しでも頂くための規定であります!



プログレ50周年記念!美しくて、ドラマチックで楽しい!?プログレ30曲!


 今年はプログレ50周年の年に当たるそうじゃが、まず諸君にプログレを聞いて頂く前に、1966~1968年ころのセミ・プログレともいうべき当時のビッグバンドのユニークな楽曲を紹介しておこう。

Yardbirds / White Summer
 ヤードバーズ在籍時のジミーページの独演であるインド音楽的ギターインスト。 ジミーは後にツェッペリンのファーストでこの曲の改編テイク「Black Mountainside」も発表しとる。 当時のロック界ではインド音楽をいかにこなすかが進歩的か否かの重要な物差しじゃったんで、ジミーは地味なくせに(笑)進歩的であろうとしてこの曲を完成させたのじゃ。
The Kinks / See My Friend
 「ラーガロック(インド音楽的ロック)の発祥説」の際には必ず登場する1曲。 レイ・ディビスがインド旅行の際に書き下ろしたとされるが、インド的というよりも音楽による新しいリラクゼーションを追究していたレイ・ディビスという奇才の閃きがそのまま曲になった感じ!
Beatles / A Day In The Life
 プログレを「他のジャンルの音楽的要素を大胆に導入する」と定義すれば、さしずめその最初の完成者はビートルであり、この曲が代表例。 異種楽曲じゃったジョン・レノン・パートとポール・マッカートニー・パートを違和感なくコネクトさせてしまう方法論も画期的。 プログレが猛威をふるう約2年前、ビートルズは既にこの域に到達しておったんじゃから、やっぱりスゴイ!ジョンもポールもプログレのブームには驚かなかったっつうのも頷けるわい。
Rolling Stones / Ruby Tuesday
 「これがセミプログレ?」って笑う方もおるじゃろうなあ。 リコーダー、チェロを大胆にフューチャーし、浮世離れした妖精のような生き方をしていた(らしい)伝説のグルーピーの世界観を表現した音楽空間は、ロックとして聴いてもポップスとして聴いてもとても進歩的じゃ!


Affinity / All Along The Watchtower
 ボブ・ディランの名曲をプログレバンドがカバー! この方々はジャズ系(時にブルース系)プログレバンドで、とてつもないテクニシャンはいない代わり、バンドアンサンブルが優れたプログレバンドとしてマニアの間で人気が高いのじゃ。 ジャケットの美しさもプログレ史上白眉!
Beggars Opera / MacArthur Park
 鍵盤楽器のトーンの美しさでは、このバンドが一番と気に入っておった。 クラシックで言えば、印象派音楽っつうか交響詩に近く、そこまでのレベルではないが分かりやすいリリカルさ加減を楽しんでもんじゃ。
Camel / Stationary Traveller
 情緒的プログレバンドの筆頭!って日本でも結構人気のあったキャメル。 映画音楽になりそうでならないギリギリのエモーショナルなアレンジは、わしはあんまり・・・じゃったけど、素直な心で聞き直してみたら人気のほどがよく分かった! でもキャメルが好きだった方ってのは、本格的なプログレには入って行かなかった印象が強いわい。
Curved / It Happened Today
 バイオリンロックの代表格として何度かこのコーナーでも紹介してきたカーブドエア。 わしのギター通の知人は、スタジオテイクを聞いて「こんなに綺麗にSG(ギター)を弾けるなんてスゲーなあ」って感心していたのを覚えておるが、最大の聴き所はガラリと転調しながら攻めてくる後半部のバイオリンじゃ。
Darryl Way's Wolf / McDonaldo's Lament
 上記のカーブドエアのバイオリニストがダリル・ウェイであり、カーブドエアを脱退してから結成したのがこのウルフ。 約7分間、延々と美しいバイオリンがむせび泣く名曲。 邦題は「悲しみのマクドナルド」。 マクドナルドとは、キング・クリムゾンのファーストのメンバーであり、マルチプレーヤーじゃったイアン・マクドナルド。

Electric Light Orchestra / Last Train to London
 ELOがプログレかよ!って笑っちゃう方も多いじゃろうが、プログレの楽器構成、編曲構成のまんまでポップスをやってみせたのがELOじゃ。 全盛期は70年代後半じゃったが、彼らのあけっぴろげで楽しいプログレ手法は、プログレ界のツワモノが集まって80年代に結成された大ポッププログレバンド・エイジアの出現を誘発したと言えるかもしれない。
Focus / Sylvia
 オランダのプログレバンド、フォーカスの名曲。 ギタリストのヤン・アッカーマンのテクとセンスはブリティッシュ勢を遥かに凌駕している!なんて最大級の評価を与えられておった。 まあわしはそんなことは分からんけど、3分間ポップスのノリでこの上品さ、この美しいトーンは確かにスゴイ! ちょっとだけ控えめなスキャットが入るだけでほぼ歌無しギターインストじゃけど、歌なんてイラネー!
Genesis / Am I Very Wrong?
 70年代のジェネシス(ピーター・ゲイブリエル在籍時)のジェネシスは美しい楽曲が多かったが、どれも10分越えで長尺曲ばかり(苦笑)って困ったんじゃけど、ファースト(『創世記』)には後の名曲の原型ともいうべき煌びやかな小曲がいっぱい! そん中から、もっともドラマチックで歌劇的な一曲を。
Gracious / Introductio
 メンバーたちがロン毛じゃなくて、バッハみたいなモフモフ羊さんヘアーで現れたグレイシャス! 彼らの名曲、美曲も長尺曲ばかりなので、ファーストアルバムのプロローグ的な1曲を。 この曲だけでは彼らのサイケデリック・プログレな世界観は分からんけど、この後に「天国に行くか地獄に行くか」っつうテーマがスタートするんで、こいつを美しいと聞くか恐ろしいと聞くか!
Illusion / Isadora
 ペレストロイカ以降のロシアで、やたらと人気があるらしい1曲。 う~ん、なんかよぉ分からんけど、予定調和的ではない抑制気味な進行の中でクライマックスの期待感を高めていくような曲調がロシア的なのか!? ヤードバースのボーカル、キース・レルフの妹ジェーンの“クセのある美声”が不思議な品格をもたらしておる。 


Keith Emerson and The Nice / Hang on to a Dream 
 後に大人気プログレトリオEL&Pを結成するキース・エマーソンがそれ以前に在籍していたバンドがナイス。 EL&Pではよりロック色が強くなり、キースのプレイもアグレッシブになっていったがナイス時代はまだ丁寧な鍵盤さばき! 高い教養が滲み出るような美しいピアノを披露した代表曲がコレじゃ。
Lucifer's Friend - Spanish Galleon 
 70年代中期に存在したドイツのハード&プログレバンドがルシファーズ・フレンズ。 ちょっとロマンチックでスケールが爆発しないところが魅力のB級バンドじゃったが、この大曲は抜群に良く書けた曲で、ギターもキーボードもドラムも大暴れする「美ハードロック組曲」! 更に名シンガー、ジョン・ロートン(後にユーライアヒープに移籍)が素晴らしい歌声を披露。 ジャーマンロック史に残る名曲じゃ。
Mandalaband / The Eye Of Wendor ( Prophecies )  
 このバンドは特別な思い入れはないし、バンド名の“曼荼羅”っつうのに抵抗感があったが、この曲だけは若き七鉄が酔っぱらってぶっ飛んだ時に初めて友人から聞かされただけに強烈な印象が。 輪廻転生、因果応報、前世体験、友人に言わせると結構難しい精神的背景があるんだそうじゃが、知らねーよ、んなこと! 酒の酔いと音楽のリズムとメロディが一体になった異様な快感が酔いが覚めても思い出すことが出来る忘れ難き1曲。 マンダラバンドは一言で表現すれば美インプロビゼーション!
McDonald and Giles / Flight Of The Ibis
 初期のクリムゾンに参加していたマルチプレイヤーのイアン・マクドナルドとドラマーのマイケル・ジャイルスがクリムゾン脱退後に発表したアルバムから。 プログレというよりトラッドロックの香りが高く、クリムゾン在籍時に鍛え上げられたインプロビゼーションの緊張感から解き放たれた者が醸し出すアダルト・ロックじゃ。
Moody Blues / Night Of White Satin
 わしにとってはプログレというよりも、サウンドトラック・ロックなムーディーブルース。 後に数多く出現する情緒的プログレバンドのはしりの様な存在であり、初期の大ヒット曲がこれじゃ。 まあクリムゾンもピンク・フロイドも付いて行けないロックファンがプログレの“端っこ”を聞く為には適したバンドじゃったな。

Renaissance / Prologue  
 昔、お友達に「プログレ名曲集テープ」をこさえてあげる時に必ずオープニングにセットした曲じゃ。 アニー・ハズラムの美声はハミング?とスキャットのみじゃが、それでもぐんぐん進行していく美しいピアノメロディーに乗ってリスナーを異次元に誘導する!
Supertramp/Crime of the Century 
 スーパートランプっつうと、70年代中期からは一気にポップ化したイメージが強い。 確か「ブレックファースト・イン・USA」なんて露骨なヒット狙いのシングルもあったが、活動初期はストリングスもメロトロンもシンセも極力使わずにスケール感を演出していたプレイが記憶に残っておる。 ポッププログレの代表格。
Trace / Bourrée
 天才キーボード・プレイヤー、リック・ヴァン・リンデン率いるオランダのプログレバンド。 名盤「鳥人王国」のオープニングナンバーであり、一発で吹っ飛んだショックは今も記憶に新しい。 超一流のロックサウンドであり、クラシックっつうありえない世界をこの1曲だけで見事に成立させておる。
Traffic/The Low Spark of High-Heeled Boys
 60年代中期にデビューして天才少年ソウルシンガーと騒がれたスティーブ・ウインウッドが60年代末期から断続的に活動させたバンドがトラフィック。 ジャズのインプロビゼーションをロックでやるってスタイルじゃし、スティーブも自慢のハイトーンボーカルを抑制して素直に歌っておるんでリラックスして聞ける珍しいプログレサウンドになっておる!
U.K./ In The Dead Of Night
 70年代中期にプログレが衰退し始めた頃、「大英帝国進歩的ロック界の威信をかけて」結成された(と報じられた)のがU.K.。 元クリムゾン、元ソフトマシーン、元イエスなんかの大物たち4人で結成され、アルバムの邦題はズバリ『憂国の四士』! オープニングがコレじゃけど邦題が「闇の住人」って・・・これじゃあセンセーションに水を差すじゃねーか!まあ今聞くと、逆風の中で何とかっつう熱意が漲った演奏じゃ。
Uriah Heep / The Spell
 ハードロックとプログレの中間点を実にうまく遊泳しておったのがユーライア・ヒープ。 また当時流行したオカルト思考、聖歌隊的コーラス、シンセサイザー等のつまみ食いもうまくて、いわばクイーンの原型的バンドじゃ。 この曲は傑作『悪魔と魔法使い』のコンセプト作品のハイライトともういべきパートに該当する美曲。


 ではでは最後に、今も日本で「プログレ四天王」といわれる絶対的存在である4バンドを紹介。 あと4曲だから、我慢して聞いてね(笑)

Pink Floyd / The Great Gig In The Sky
 邦題は「虚空のスキャット」。 クレア・トリーなる女性シンガーの凄まじいスキャットが有名であり、日本でも一大スキャットブームが巻き起こって、由紀さおりさんが「夜明けのスキャット」なんつう曲をヒットさせた、なんてことはどーでもいいか。 クレア嬢のスキャットがあまりにもスゴイので最初は黒人女性シンガーかって思ったわい。 レコーディングの際のピンク・フロイド側からの指示は「人生の誕生から死までをスキャットで表現してくれ」じゃったらしい。
King Crimson I Talk To The Wind
 プログレ界のキング、キング・クリムゾンの名曲や美曲はどれもこれも長いんでセレクトに苦慮したが、結局名盤『クリムゾン・キングの宮殿』の大曲と大曲との狭間に咲いたささやかな美曲のコイツで。 冒頭で紹介したストーンズの「ルビーチューズディ」が縦笛(リコーダー)の名曲なら、こちらはフルート(横笛)の名曲! ~僕は風に語り掛けた。僕はあそことここにいたんだよ。風は何も言わずに僕の言葉を運んでいった~なんつう気が変になりそうな歌詞も絶品!
Yes / Turn Of The Century
 イエスの名曲もどれも長過ぎてねえ・・・思い切って彼らの全盛期をスルーして、70年代後半に発表された地味な名盤『究極』からの美曲を。 クラシックギターあがりのスティーブ・ハウのアコギが存分に楽しめる。 プログレ全盛期の終焉を静かに飾る名曲と勝手に位置付けております。 「世紀の曲がり角」という邦題もまた良かった。 まさにプログレの衰退を象徴しておったわい。
Emerson Lake & Palmer / Jerusalem
 プログレだけでシングルヒットチャート作ったら、今も昔もコレがNo.1。 3分間ポップスの枠の中で、構成、アレンジ、楽器のテク等プログレの特徴が奇跡的にブチ込まれておる。


「おーい、全部同じ曲に聞こえるぞ」
「この曲も長いなー、いつ終わるんだよ」
「こんなの聞いて、酒うまいのか?」
「女にモテなくなりそうな音楽だな」
「オマエ、性格どんどん悪くなるぞ」

わしの周囲にはプログレがダメなヤツの方が圧倒的に多くて、よくまあこんな悪口、非難、嘲笑を受けたもんじゃけど、彼らがプログレに罵声を浴びせれば浴びせるほど「わしゃープログレッシブなんじゃ!」ってどんどん優越感に浸っていったもんじゃ!(笑) でも彼らが言っておったことも、あながち間違ってはいなかった気もする(爆)

それでは皆様、プログレ30曲にお付き合い頂きお疲れ様でございました。 ゆっくりとお休み下さいませ。 ごきげんよ~。



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