NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.312



 「平成」から「令和」へと元号が変わり、諸君も心構えを一新されたことじゃろう。 でも令和スタートがいきなりGW10連休ってなるわけで、わしが日本におったらさっそく「新元号の祝い酒じゃあ~」って盛り上がれるわい!って何を言わせるんじゃ!?
 考えてみれば、わしの場合は平成時代ってのは、昭和時代よりもずっと長く放浪、外地生活をしておった。 ざっと計算してみて、30年間の半分ぐらいは“日本じゃないどこかにおった”ことになる。
 日本内地と外地とでは、出会う人の種類が全然違うし、旅人同士の出会いには仕事関係での出会いとは違った味わいってもんがある。 極端に言えば、わしの場合は外地にいる方が「自分の話をする」よりも「人の話を聞く」時間が増えたわい。 人間は歳を取ると自分の話ばっかりしたがって人の話を聞かなくなる傾向にあってウザがられるもんじゃ。 そう考えると、わしは外地にいる時間が長かった事が良かったなって思えるもんじゃ。

 「何言ってんだよ。このコーナーはテメーの話ばっかしじゃねーか!」ってそりゃそうじゃけど、「七鉄頑固キャラを全面に押し出しくれ!」がこのコーナーの依頼当初からの条件じゃ!(笑) まあたまには勇み足し過ぎ、言い過ぎもあったかもしれんので、平成の最後はわしが聞いた人様の話で、心に残ったありがた~い話、衝撃的なお話を紹介してしんぜよう。 日本にいても聞けた話だったのかもしれんが、同じ話でも内地よりも外地で聞いた方がより実感力、理解力が強まる場合もあるので思い付くままに挙げてみよう。 これから激シブ中高年ロッカーとして己に磨きをかけていこうとする諸君、グローバル精神で世界へ飛び立っていこうとしているヤングロッカー諸君の一助になることを願って!


七鉄が平成の旅先で頂いた、ありがた~いひと言、衝撃のひと言集


■ 遊ぶのが楽しい所というのは、仕事をするのが大変だってことを忘れないでくれ ■

 まず最初に思い浮かんだのはコレ。 丁度20年前に初めてバンコクで新聞屋、取材屋として働き始めた直後に社長に言われた言葉じゃ。 バンコクってのは長い間膨大な数の旅行者が世界中から訪れておるほど、遊ぶのは最高に楽しい所じゃ。 でもそこで働くって事は「並大抵じゃない」ってことじゃ。
 色んな意味の解釈が出来るが、「遊び人気分がいつまでも抜けきらない」「逃げ場所が多過ぎるから仕事に真剣になりにくい」「仮にこっちが仕事に真剣であっても、相手が遊び人気分が抜けていない場合が多い」「夜のオネーサンが多過ぎて日本人はチヤホヤされ易いから、自分がモテル男、大層な人間だと勘違いしやすい」「遊ぶ事に関しては不自由しないだけに、その内に自分の都合に合わせて、自分の国民性とタイの国民性を使い分けてしまう者が多い」とまあざっとこんな感じじゃろう。

 タイ人気質ってものも、遊び相手としてはいいが、仕事人として判断した場合、「締め切り、約束、倹約に関する意識が極めて薄い」「自分の許容範囲を越える努力をしない」「物事をテキパキと決めて処理していけない」傾向が強いので日本人としてはイライラすることしきり! まあ最近は多少状況は変わってきているが、この度13年ぶりにバンコクで仕事をしてみて、根本は変わっとらんな~って思う(笑)


■ 現地の女と揉め事を起こしたら日本人男性の恥だ。 何が起こっても、最初の約束を守れ ■

 この場合の女とは、主に夜のオネーサンの事。 わしはこのアドバイスをタイに来た直後に初老の先輩旅行者から授かり、今でも夜遊びにおけるささやかな座右の銘にしておる! 国民性も習慣も言葉も違うオネーサンのサービスってのは必ずしも日本人の期待通りにはいかない。 しかし先進国・日本の男としての本当のプライドがあるならば、自分の欲求が満たされないからといってガタガタ文句を付けるな! 満足出来ない、納得出来なくても最初の約束通りの金額を払えってことじゃよ。
 もっと深く掘り下げれば、「自分がモテテいるわけじゃない。 日本円がモテテいるに過ぎない」ってことを忘れるなってことでもあるかもしれない。
 タイ人女性っていうのは表向きは日本ビイキのようじゃが、実は日本人以上に欧米嗜好が強いのじゃ。 だから一度トラブルが起きたら「こっちは日本人だ」っつう日本ブランド力はあまり役に立たないもんじゃ! トラブルの際に周囲にタイ人がいても、誰も日本人には味方しない。 解決策はただひとつ、最初の約束通りの金を叩きつけてやるしかないのじゃ。 まあわしにこのアドバイスをくれた方は、しょっちゅうオネーサンと揉め事を起こしておったけどな!(爆)。


■ 年を取ったら取った分だけ謙虚になれ。 身なりにより気を配れ。 ■

 この言葉は、ウクライナの世界遺産都市リビウで出会ったとてもクールでエネルギッシュなおじいちゃんバックパッカーのお言葉。 ラフな格好ながらとてもこざっぱりしていて、中高年パッカーにありがちなヨレヨレの仙人的雰囲気もない。 年下のわしに対してもいつも「さん」付けで呼ぶし、エラソーな旅自慢もしない方じゃったな。

 現地産のウォッカで多少饒舌になったその方は、久しぶりの日本語会話が嬉しかったのか、老人のあり方に対する思いの丈を語って下さった。
「どんなハンサムでも美人でも、年をとったら見てくれはしょぼくて汚らしくなってくるから、それを放っておくと誰からも相手にされなくなるもんです。 身なりに気を配るのは老人の最低限のマナーじゃないですか。 私はナルシストじゃないですけど、鏡で自分自身をチェックするようにしています。 老いていく現実を見せつけられるわけですから、本当はあんまり見たくないですけどね」
「東南アジアやヨーロッパが老人に優しいって冗談じゃないですよね。 お金を持ってない、ヨボヨボの外国の老人なんて誰も相手にしてくれないですよ」
「若い時分は家族の為、会社の為に自分を殺して生きてきたんだから、歳を取ったら好き勝手やってもいいんだ、なんて老人が多いけどとんでもないですよ。 もっともっと謙虚になって世間のエチケットを率先して守っていく努力しないと、待っているのは孤独死だけです」
「年寄りってのは寂しいんですよ、皆んな。 他人を求めているんです。 それなのにどうして他人を大事にしないで我がままばかり言うんですかね。 外国人の老いぼれのわがままなんて、誰も聞いてくれないですよ」

 いやあ~老いが目の前に迫っておる(?)わしの心に染み渡るように色々と老人のわきまえ方を説いて下さったもんじゃ。 う~ん、頑固七鉄キャラをこの先貫き通していくことが不安になってきたわい(笑)


■ 自分が得をしたってことは、誰かが損をしているってことだ ■

 最近は旅の元資金が少なくても、パソコンを使ってFXや株で儲けながら旅を続けておる方が結構おる。 わしはそっち系はまったくの門外漢なので詳しいことは分からんけど、このお言葉は旅先でのFXによる利益追求を、損得ゼロの時点でスパッと止めた方からじゃ。
 「旅の目的は人それぞれだけど、やっぱり旅とは自分の日常からかけ離れた真理や現実に触れること。 誰かが損することを願いながら旅をしていると、その旅の醍醐味を味わえない」って、そんな事を強調されておった。
 まあ全ての仕事はある意味で戦争であり、成功者の陰には失敗者がいるわけだから、FXだけを殊更悪行と言うつもりはないが、旅は基本的には「平和」な時間であり、「平和」の中に「戦争」を入れてはならないってことをその方はおっしゃりたかったのじゃ。 当たり前の事じゃけど、FXなんてまったく知らんわしにとっては結構新鮮なご意見な様に聞こえたもんじゃ。
 
 わしの知り合いにFXで激しいアップダウンを繰り返しながら長旅を続けておる者がおり、この話を聞かせたことがある。 彼は「スパッと止められたってことは、大して儲けたことのない者が出来ることだ。 俺は億単位の年収を求めてやっているんだから、その人は全然格下だ」みたいな態度じゃった。
 わしは正直なところ、「旅で楽しい体験をしながら億単位の年収を得るなんて、そんな都合のいい事が世の中にあるはずがない」って思ったわい。 その時初めて、FXっていうのは仕事ではなくてギャンブルなんだと実感した。 旅とギャンブルなら並立できないことはないし。 まあわしは死ぬまで関係ない世界じゃけどな。


■ 日本人は他責が多過ぎる、自己防衛力が無さ過ぎる! ■

 カンボジアでスマートフォンのひったくり被害に遭い、意気消沈したまま即刻帰国した若いパッカーさんに対する老年カメラマンさんのお言葉。 これはひったくりに遭った事自体ではなく、たかだかスマホ一台無くなっただけで帰国を選んだことに対する苦言のいわば拡大解釈(拡大表現)でもあるがな。
 今の若者君にとって愛用のスマホが無くなるってことは、自分の片腕をもがれるような苦痛なんじゃろうとわしは同情したが、わしより遥かに海千山千のカメラマンは言うことが違うな。
 「そんなにスマホが大事なら、出発前に予備にもう一台用意するとか、無くなった時をシュミレーションしておかないと」って確かに。 その若者君は、4日前にもアンコールワット遺跡ガイドに脅し同然でボッタクられたらしく、我々の前でカンボジア人への恨みつらみを爆発させておった。

 まあこういった日本人旅行者は老若男女問わず多いもんじゃ。 要するに日本国内はユーザーの立場が高過ぎて、受けられるサービスは至れり尽くせり。 いつでもどこでも守られて生活してきておるから、自分の身(持ち物)は自分で守る意識が芽生えるハズも無い。 その脇の甘さゆえの洗礼を旅先で受けてしまうんじゃ。
 しかしこればっかりは、わしも実際に痛い目に何度か遭ってから身に付いた感覚じゃが、それでも他人の被害を目の当たりにするまでは忘れかけていることもまた確か。 わしもなかなか日本人ゆえの甘さから脱却出来ていないのが実状じゃ。


■ 日本が世界第2位の経済大国の時代はとっくに終わった ■

 我々「昭和世代の日本人」ってのは無意識に「日本はアメリカに次ぐ世界で2番目の経済大国」って信じておる。 平成世代の方になると「第1位」って思っているかもしれない。 ひょっとしてこれは旅先にアメリカや西欧を選んでいたら、今でもそう信じてしまうかもしれない。 ところが発展途上国に行くと、もはや日本人が以前ほど特別扱いされない現状を体験、見聞することになるので、日本人であるという薄っぺらなプライドが崩れていくに違いないじゃろう。
 わしのカンボジア取材を案内して下さった方は、いかに中国勢力がカンボジア国内で凄まじく、カンボジアは中国の半植民地と化している実情を解説してくれ、「もはや日本は中国、韓国勢力に押されっぱなしで、かつての日本ブランド力は後退の一途です」とズバリ言われたもんじゃ。 ミャンマー、ベトナム取材の時もガイドさんのお話も同様じゃった。

 その要因は、海外進出における日本と中国/韓国との方針の違いじゃ。 極論を言えば、日本は現地人と仲良くなりながらお互いに利益を平等にするやり方。 中国の場合は人的労働力も本国から連れてきて、韓国は現地人に徹底的に韓国式を叩き込み、結果両国は進出先にリトル・チャイナ、リトル・コリアをいくつも作り上げながら、その国に莫大な利益をもたらすやり方じゃ。
 当然途上国としての利益は中国韓国式の方が遥かに多いわけで、今のところ中韓式が圧倒的に歓迎されておるのじゃ。 もちろんその歪みも大きいものの、やはり途上国にとってのは目の前の利益を優先しておるってわけじゃ。


■ 世界を旅していると、日本人の先輩方に感謝せざるを得ない ■

 ハンガリーの首都ブダペストの宿で、世界を80ヶ国以上旅をしているという同世代の方と同じ宿になった。 彼はわしに劣らず大のロックファン(キンクス・フリーク!)だったのですぐに仲良くなってよく飲みに行ったが、旅の経験談を交わしているおる最中に彼がフト漏らした言葉がコレじゃ。
 お互いに国境を越えた経験は数知れず、日本のパスポートの威力、信用性をまざまざと知らされたことが多かったって事じゃ。 日本人というだけで、国境を越える出入国窓口の長々とした列に並ぶ必要が無く優先行路を与えられたり、荷物チェックがなかったりしたことが結構あるのじゃ。 これは長年日本人が海外の経済復興に貢献し、また悪事に手を染める機会が少なかったからこそ受けられる恩恵なんじゃ。 色んな人種の旅人たちからは「何でアイツラ日本人だけ優遇されるんだよ」って目で見られるが、そんな時は優越感に浸りながらも「日本人であることに感謝しなきゃ。 先輩方よありがとう」って気分になるもんじゃ。 旅が長くなるとそんな感謝の気持ちが薄れることもあるが、他人から言われると我に返ったように国境越えのラクチンさを思い出しては先輩方にあらためて感謝する次第じゃ。

 実はつい最近、現在タイで働いておる台湾人からも似た様な羨ましがられ方をした。 我々外国人労働者にはビジネスビザ/労働許可証が無くては働けないことになっておるが、それが無事発行されても90日毎に就労レポートのタイ国労働局への提出を義務付けられておる。
 しかしわしの場合は決められたフォームにサインしてメッセンジャーに渡すだけ。 その台湾人の場合は、幾つかの異なるフォームの中から毎回違うものを選んで作成してから自ら労働局に出頭/提出しなければならず、「日本人は面倒な手間や手続きがなくていいなあ~」って言っておったわい!


■ 今や世界共通語は英語じゃない。スペイン語だ ■

 これも前述した80ヶ国を旅してきた方の言葉じゃが、英語よりもスペイン語が話せた方がはるかに世界各国で歓迎されるらしい。 スペイン語についてはわしは分からんけど、英語は意外と通じない国が多い。 「英語が世界共通語だなんて、真っ赤な嘘だ!」って何度思ったことか。 その点スペイン語は、スペイン語から派生した言語が多いから、実に様々な国々で重宝するんだそうじゃ。
 考えてみれば南米はほとんどスペイン語じゃし、ブラジルの公用語ポルトガル語もスペイン語の方言みたいなもの。 イタリア語を初めとしたその他ヨーロッパ諸国の言語もスペイン語が源流になっておる場合が多いんだそうじゃ。 まあビジネスの世界に限っては英語が主流なんじゃろうが、旅や生活においては世界では圧倒的にスペイン語が優勢ということじゃ。 これに気が付かなかったのは迂闊じゃった!

 彼はさらに付け加えてわしを焚きつけた(笑) 「スペイン語って、かなりのレベルまでカタカナ表記の発音でOKですよ。だから丸暗記でイケマス!」「スペイン語圏内って、日本人はどこでもアミーゴ、アミーゴって歓迎されるから覚えるのが楽しいですよ!」とな。これを聞いてから一時期その気になったが、あれから二年あまり。いまだにスペイン語勉強に着手しておらんけどな(笑)
 反対に、かつてカタカナ表記発音で丸暗記したわしのタイ語じゃけど、ちょっと気の利かない(推察能力の低い)タイ人や、外国人慣れしていないタイ人にはあまり通じないことが分かった(苦笑)


■ グローバル社会では、トリリンガル(トライリンガル)が主流です! ■

 ウクライナの首都キエフの宿での一コマ。 ドミトリーで一緒になったイギリス人とお互いの経歴を話し合っている時、わしがかつてタイで働いていて多少タイ語が話せることを伝えると、「オマエすげえなあ~。 日本語、英語、タイ語の三ヶ国語が話せるのか!」ときなすった。 英語、タイ語なんて所詮“なんちゃってレベル”なんだからすごくもなんともねえけど、それからどこの国を旅していてもタイ語が話せる事が相手(特に欧米人)に伝わると、その相手の態度が変わる事態に遭遇することが多くなったもんじゃ。
 これはタイ語の権威が高いってことではなくて、母国語、英語、プラス一言語が話せるトリリンガルってなると最近の世界の旅人からは一目置かれるってことなのじゃ。 今や世界を旅することなんてのは、貯金数十万円を作れる能力のある者であれば誰でも出来ることであり、スマホにダウンロード出来る翻訳アプリも進化してきたから、世界旅行の労苦がどんどん軽減されていっとる時代じゃ。 だからこそ、逆にスマホ無しで何が出来るのか、それが外国の言葉となるとその旅人の付加価値が俄然上がるってことなんじゃろう。 以前はバイリンガル(二ヶ国語可能)がもてはやされたもんじゃが、インターネットで世界が繋がっている現代ではトリリンガルが求められる人材であるようで、もちろんビジネスの世界では三ヶ国語の読み書きまできちんとできる者が優遇される時代になったんだそうじゃ。

 もっとも先述した通り、わしのタイ語は生活タイ語の域を出ていない単語力と発音のレベルなんで、英語ペラの会社の総務のオバチャンはわしのタイ語での発信を無視していつも英語で受け答えをしてくる(苦笑) わしのタイ語なんて所詮はそんなレベルじゃけど、まあ旅人の世界においてはそれも特技として認められるってわけじゃ!
 かつては世界放浪に出る勇気、行動力が讃えられた旅人社会も、今や個人個人のスキルが仲間としてより好意的に迎えられる条件になった。 良いことなのかどうか?という疑問もあるが、色んな国の人間と交流しながら少しでも楽しい旅をするためにはそれが現実なのじゃ。


 平成時代に入ってからわしはしばらく世界放浪を封印しており、1998年に久しぶりに放浪再開、2014年から飽きもせずまたやってしもうたが、その都度世界情勢、人々の意識や価値観、ビジネスの主体が自分の想像以上に変化していることに驚かされたものじゃ。 日本人社会の中での価値観や美意識は既に世界では通用しない事実を知って愕然としたもんじゃ。
 また何年かして放浪を始めたらって、もう年齢的にきついので無理かもしれんので、外地で働いているこの機会にグローバル時代の正しい流れを把握しておきたいと、そう願っておるわけであります。 というか、カッコイイじじい~になりたいもんじゃ。 The-Kingブランドがあるからファッションにおいては心配ない。 あとは如何に自分自身を律しながら男を磨くか!?



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