Volume 299/300

 いよいよ300回まであと2回に迫った七鉄コーナー。 8鉄センセーもさりげな~くカムバックされたので、わしも気合を入れ直して299回をやろう!
 今回は「キーボード・プレーヤー」、またバイオリンやサックス等の様々な楽器をこなすプレーヤーや音楽指導者的な存在の方をまとめた「他の楽器プレーヤーまたは音楽教授」のベスト15を発表することにしよう。 いずれもボーカリストやギタリストに比べれば裏方さんじゃが、時によっては裏方さんの方が斬新なアイディアやプレイによってバンドの主導権を握ってしまうのがロックンロール・ミュージックの楽しいところなのじゃ。 彼らの存在がロックミュージックをよりワイドに多彩にしてきたのじゃよ。

 わしがロックにどっぷりハマっていた時代は、まだインターネットもなく映像作品も非常に少なかったから、それこそロック雑誌やアルバム・クレジットの隅々までチェックして細部の情報を掴もうとしたもんじゃ。 耳が肥えてくると「間違いなくバイオリンの音が入っとるが、弾いとるのは一体誰じゃ?」「このピアノの音、バンドの担当者の音と違うぞ」ってな疑問や興味が絶えなくなるもんであり、それを解明するためには、音楽雑誌やアルバム・クレジットのチェックしか方法が無かったのじゃ。
 それだけに一度解明できると不思議とその対象者に愛着が湧いてしまって、大して知ってもいないのにソロアルバムなんかを買ってしまう! そんな事の積み重ねで、一時期は結果として数だけはレコード・コレクターになってしまったもんじゃ。 だから、ボーカリストやギタリストに対してよりも、案外裏方さん情報にわしは詳しいのじゃよ(笑)

 わしのロック・ライフをより豊かにして頂いた「キーボード・プレーヤー」「他の楽器奏者または音楽教授」に心から感謝を込めながら諸君にご紹介したい!

(上写真、ブルース・スプリングスティーン&クラレンス・クレモンズ)


第3回 キーボード・プレイヤー&他の楽器プレーヤーまたは音楽教授ベスト15


キーボード・プレイヤー
(オルガニスト、ピアニスト)
Keyboard Player
  (Organist, Pianist)




シンセの申し子にしてロックスター
キース・エマーソン
 
Keith Emerson
他の楽器プレーヤー、
または音楽教授
Other Instrement Player
 or Music Profeccor




ブルースハープに命をかけて!

ポール・バターフィールド
(ハーモニカ) 
Paul Butterfield


 60年代後半から70年代中期まで、ナイス、エマーソン・レイク・アンド・パーマーで大活躍したキースは、キーボードプレイヤーもロックンローラーに成れる事を世に示してみせた先駆者じゃ! ジャンルは異なるが、ジェリー・リー・ルイス以来、ロック界に絶えて久しかった鍵盤のスターなのじゃ。 精悍なルックスで、山の様に積み上げられたキーボード類を叩きまくるキースの姿に世界中のロックファンがロックに新しい時代が到来したことを実感したに違いない!
 またシンセサイザーはまさにキースの為に開発されたような楽器であり、自分一人でオーケストラに匹敵する多彩な大音響の実現を追求していたキースの為の新兵器となったのじゃ。
 音楽的には正統なクラシック音楽教育を受けておるようじゃが、それはあくまでもベースに過ぎず、クラシックの名フレーズをロック調、アバンギャルド調に強引にアレンジするキースのアイディアは恐ろしく斬新じゃった。 キースの魅力はライブでこそ最大限に発揮されるので、スタジオ盤はダイナミズムの欠落が顕著じゃったものの、73年発表のスタジオ盤『恐怖の頭脳改革』では前人未踏のプログレ&ハードロックの超名盤を完成させた!

 ブルースでもロックでも、ハーモニカ(ハープ)という楽器はどうしても脚光を浴びにくいが、これを極限までプレイしまくってリード楽器として扱った男がいた。 それがポール・バターフィールドじゃ。 一説によると、ブレス(息継ぎ)無しに10分以上も吹き続けることが出来たという伝説的なプレーヤーじゃ。
 60年代中期に自らのバンドを率いて、サイケデリックにブルースのインタープレイを展開。その後ブルース・フェスの類の顔となって、それこそ命がけのハーモニカプレイを披露し続けたものじゃ。
 このお方がハーモニカでブルースを演奏すると、曲の心臓部分をズトン!と突きつけられたような迫力があり、ギターもボーカルも裏方に回らざるを得ないような凄みがあった。 「余計なアレンジなんぞは無用だ。 ブルースの核心を聞け」と言わんばかりの息をのむような迫真のプレイじゃった。
 常にあらんかぎりの力(肺活力?)を炸裂して高いテンションをキープしておったためか、一般的な人気を獲得することは出来なかったものの、その圧倒的なブルース魂は同系ミュージシャンの鏡である!




英国プログレなんざ吹き飛ばせ!

リック・ヴァン・ダー・リンデン
 
Rick Van Der Linden

寄る辺ない悲しき天才
ブライアン・ジョーンズ
  (マルチ・プレーヤー)
Brian Jones

 オランダのプログレ・バンド、トレースのリーダー。 全盛時代の70年代においては、その鍵盤さばきのテクニックはダントツでNo.1じゃった。 プログレに関してはブリティッシュ・バンドばかり聞いておったわしも、最初にリックのプレイを聞いた時は衝撃的じゃった。
 正確無比なテクニックはもとより、クラシックを“ロック風にアレンジするのではなくてロックにしてしまう”編曲力は絶品じゃった。 さしものキース・エマーソン(上述)もリック・ウェイクマン(後述)もこの点ではまったくリックに適わなかった。 なんつうかな、素養やバックグラウンドはクラシックじゃが、キャラクターがロックンローラーとでも言うか!
 また超絶技巧テクを炸裂させながらも、結構ポップな楽曲がリック及びバンドの評価と人気を殊更高めておったことも忘れられない! バッハやビバルディが現代に蘇ってチャートに登場してきたようじゃったよ。 しかし日本ではマニアックな存在で終わったことが今でも惜しまれるわい。

 ローリング・ストーンズの創始者であるが、その音楽的資質に関しては評価が難しいお方じゃ。 しかしブルースのセンスとマルチプレイヤーとしての力量は60年代当時のシーンの中ではダントツ! ギターは元より、ハーモニカ、ピアノ、クラリネット、マリンバ、サックス、そしてシタールまでこなしてみせる技量は驚異的! ストーンズが単なるブルース・フリーク・バンドに留まらず、ポップバンドとしてヒットチャートを賑わすことが出来たのはブライアンあってのことじゃ。
 メンバーの中でもずば抜けて多彩な才能を発揮するあまり、却ってストーンズの進むべきベクトルと外れてしまって失意のどん底に陥ってしまったブライアン。 ストーンズが巨大化するに従って彼の存在は次第に忘れ去れていっているようじゃが、世相もロックシーンもひっちゃかめっちゃかであった60年代をストーンズがとにもかくにも乗り切ることが出来たのは、時代の「過剰、過激」という要素をブライアン・ジョーンズという異端の存在が全て引き受けていたからなんじゃないか、近頃つくづくそう思ってしまうわい。



孤高のドアーズ・サウンドの立役者

レイ・マンザレク 
Ray Manzarek

ロック界の星野仙一監督か?!
フランク・ザッパ
 (音楽教授)
 

Frank Zappa

 ジム・モリスンとドアーズを支え続けたプレイヤーじゃ。 ロックバンド史上初めてキーボード(オルガン)がリード楽器になったバンドがドアーズであり、強烈なキャラクターをまき散らしたジムとともにバンドの顔がレイ・マンザレクじゃった。
 音楽的には相当多彩なセンスを持ち合わせており、クラシック調、ジャズ調、オールドロックンロール調、ホンキートンク調など」なんでもござれ。 ドアーズのほとんどのアルバムにおいては作曲者クレジットはThe Doorsとされておるが、実際にはレイ個人が作曲した楽曲が相当数あるとわしは睨んでおる。 それほどこの人の音楽的背景は限りなく広大なのじゃ。
 ドアーズ、レイ・マンザレクの評価はアメリカでは一向に衰える兆しはないが、レイ本人曰く「ロック史における僕の本当の功績は、学生時代にジム・モリスンという大天才を発見したことさ!」。 レイという存在がなければ、ジムも決して音楽でその才能を芽吹かせることはなかったことも確かに明白じゃ!

 奇妙キテレツでアバンギャルドなアルバムはサッパリ分からんけど、このお方のバンドから無数の優秀なロックミュージシャンが誕生して飛び立っていった事実は不滅の功績じゃ。 まさに「ザッパ・ロック・スクール」の校長先生&音楽教授じゃ。
 ギタリストのスティーブ・バイ、ドラマーのテリー・ボジオに代表されるように、「ザッパ・スクール」の卒業生たちは一般的に困難な早弾き&チョーキングとか、パワー&超連打といった両立しないテクニックをマスターしており、更に音楽の核心を伝えることのできる“歌心”まで会得しておる。
 一体ザッパ先生はどんな教育をしておるんかと興味が湧いたついでにアルバムをチェックするんじゃが、わしの様な凡人には未だに理解できないもんじゃった(笑) 例えば、体育会系のスパルタ式教育を強制して生徒をヘトヘトにさせた後に滲み出て来るセンスをすくい上げるような無茶苦茶な事やってるのかも! 久しぶりにまた聞いてみたくなったが、多分やっぱりワカランと思うけど(笑)
4 イアン・スチュワート
        Ian Stewart


 ローリング・ストーンズのオリジナル・メンバーであり、ストーンズ正式デビュー後はピアノ演奏によって陰ながらバンドを支えたお方じゃ。
 60年代初頭、イギリスのアングラ音楽界で黒人ブルースが流行していた頃、ブギウギ・ピアノとブルース・ピアノが弾きこなせたのはこのお方だけだった語られておる伝説的ピアニストでもあり、ストーンズのレコーディングでもブルース・ナンバー以外では絶対に弾かなかったとされておる。 「スチュ(愛称)がいてくれたから、俺たちはブルースから外れることなくやってこれたんだ」とはミック・ジャガーの有名なコメントじゃ。 またレッド・ツェッペリンはこの方のピアノに敬意を表し、「ブギウギ・ウィズ・スチュ」なるナンバーを世に残しておる。
 この方のピアノは、どんな軽快なブギウギでもどこか物悲しく聞こえてしまう驚くべき個性的な哀愁のトーンを持っておる。 だからこそ、初期のストーンズのブルース・ナンバーは光を放ち続けておると思うのじゃ! 


5 ケンヘンズレー
    
 
Ken Hensley

 「70年代に活躍したハード&プログレ・バンド、ユーライア・ヒープのリーダーじゃ。 ヒープの人気曲「七月の朝」「連帯」「スイート・フリーダム」「幻想への回帰」等は、ほとんどおこのお方のキーボードがダイナミックに活躍しており、当時流行したクラシック的ロックの中でもっともロック寄りな楽曲群において、キーボードプレイによって決定的なインパクトをリスナーに与えることのできる達人じゃった。 プログレ・ファンの中にも「ロックにオルガンなんか要らない!」と声高に叫ぶ連中がおったが、彼らもケン・ヘンズレーのプレイだけは別格視しておった。
 オルガンでは重層的なトーンを追求しておったが、ピアノにおいてはグランドピアノよりもアップライト・ピアノのアコースティックな響きを好み、またギタリストとしても優れておって、ユーライア・ヒープの陰影に富んだ楽曲の魅力を様々な側面からアレンジしておった。


6 リック・ウェイクマン
     Rick Wakeman

 70年代から現在まで一線級で活動を継続しているプログレ・バンド・イエスの一員。 先述のキース・エマーソンとこのリック・ウェイクマンがいたからこそ、プログレは一般的認知度が大幅にアップしたといえるじゃろう。 ゴールドやシルバーのマントをまとって四方を取り囲むようにセットされたキーボード類を自由自在に操るリックのお姿はプログレ界の顔そのものじゃったなあ~。
 音楽的にはどこまでもクラシックであり、極端なハナシ「ロック界の高額なギャラ目当てにロックやってんじゃないの?」って思えるほどどこまでもクラシック音楽のトーン。 実際に数あるソロアルバムはかなりのクラシック寄りなんじゃけど、しかしイエスという枠の中でプレイするとロックになっちゃうんだから、恐ろしく音楽理論に精通しておるに違いない!
 そのオルガンプレイはバッハであり、教会のパイプオルガンそのもの。  トリッキーなプレイは少ないものの、鍵盤をひとつ叩くだけで圧倒的な存在感を発揮出来るお方じゃ。

4 トッド・ラングレン
    (マルチ・プレイヤー)
    
 
Todd Rundgren
 徹底したポップ・センス溢れる楽曲で名マルチ・プレイヤーぶりを発揮し続けたのがトッド・ラングレンじゃ。 マルチ・プレイヤーとしての力量は恐らくブライアン・ジョーンズやポール・マッカートニーよりも高いじゃろうな。 いや、ロック史上もっとも優れたマルチプレイヤーかもしれん。 『ハロー・イッツ・ミー』『魔法使いは真実のスター』『ミンク・ホロウの世捨て人』等、70年代のソロソロアルバムでは自分一人で八面六臂の大活躍をしとる。 
 恐らくご本人はエンターテイメント業界にはいても、ロックンローラーのつもりはないのじゃろう。だからこそ自己満足に終わらず、常にオーディエンスを楽しませる芸として己のマルチな才能を磨き上げていったのであろう。 またXTCやバッドフィンガー、グランド・ファンク・レイルロード、ザ・バンド、ホール&オーツなど数々の有名バンド・アーティストのプロデュースも行っておる!


5 エディ・ジョブソン
    (バイオリン、キーボード)
    
 
Eddie Jobson

 ティーンエージャーの頃より、ロキシー・ミュージック、キング・クリムゾン、カーブド・エア等のプログレバンドで活躍しておった天才児。 その華麗なルックスでプログレ界の貴公子なんて呼ばれておった。
 エディの代名詞になったのは透明なボディのエレクトリック・バイオリンじゃ。 さほどテクニシャンでもなかったが、バイオリンというよりもビオラとチェロとの中間部の音域を支える様な役目を担っており、特にロキシー・ミュージックや後に結成したU.K.においては幻想的なバッキングの演出に効果は抜群じゃったな。
 キーボード・プレイヤーとしてはマルチであり、電子ピアノ、電子オルガン、シンセを縦横無尽に使いこなしており、容姿が優れていたためか(?)、しょっちゅうプログレ的バンドからサポートの声がかかる超人気者であった! 


6 ロバート・フィリップ
     (メロトロン)

     Robert Fripp
 キング・クリムゾンのリーダー兼ギタリストじゃが、バンド結成当時からメロトロンの名手であり、シンセサイザーが登場するまでクリムゾン・サウンドの表舞台を飾る素晴らしいプレイを披露しておった。
 メロトロンという楽器は、シンセほどマシーン臭くなく、前時代的な人工オーケストラの様な響きを発揮しており、それが初期のクリムゾンの圧倒的なオカルトチックな演劇性にピッタリであり、完全にメロトロン・イコール・クリムゾンというイメージがこの方の名演によって確立された。 メロトロンの音色そのものよりも、クリムゾンのコンセプトサウンド・ワールドへリスナーを引きずり込むような効果を担っておったもんじゃ。
 先述のキース・エマーソンがシンセ、リック・ウエイクマンがパイプ・オルガンに拘ったのも、恐らくこの方のメロトロン威力への対抗策であったことは間違いなかろう! 
 しかし上の写真、まだ20代半ばの頃じゃ。 完全に奇才、教授の風情じゃな! 昔のヤングは大人だったんじゃよ。

7 トニー・バンクス
       Tony Banks

  キャラが立たなかったので日本では過小評価されておったが、プログレ時代(70年代)のジェネシスのサウンドを支えておった名プレーヤーじゃ。
 プレイにクセはなく、フロントのピーター・ゲイブリエルがリードする演劇的な楽曲を静かに演出する「一人オーケストラ」の様なアレンジが抜群じゃった。 ギターのスティーブ・ハケット、ベースのマイク・ラザフォードも、トニー同様に目立たぬ穏健なプレイが身上じゃったが、この3人が組むと壮麗な映画スクリーンの様なミュージック・ウォールが出来上がり、トニーは更にウォールにイルミネーション効果を発揮させるアレンジを加えていく。 まあ奇才的な裏方アレンジャーって表現がぴったり!
 ピーターとスティーブが脱退して「・・・そして3人が残った」なんつう邦題が付けられたアルバムがあったが、わしゃ~トニーがジェネシスにおる限りは全然心配しておらんかったわい!


8 マシュー・フィッシャー 
      
Matthew Fisher


 プロコル・ハルムの永遠の名曲「青い影」の、あの超!印象的なオルガン・ソロを弾いたお方じゃ。 プロコル・ハルムにはもう一人優秀なキーボード・プレイヤー、ゲイリー・ブルッカー(ピアノ)がおるが、「『青い影』のオルガン」という絶対的強みの分だけこのお方の方を推しておこう。 ジョン・レノンに「『青い影』以外に、この世に聞く価値のある音楽はない」とまで言わしめたのは、このお方のプレイあってこそじゃ。
 クラシックというよりも教会音楽に傾倒していたようなオルガンさばきは、陰鬱で怠惰な叙情美が漂う世紀末的なトーン・・・マシューはこのオリジナル・トーンをバンドプレイの中で貫き、 それがバンドの「青い影」の印象を払拭しようとするバンドの支障になったことは事実じゃ。
 シンセによる過剰演出が主流になり過ぎたロック・シーンの中でマシューの頑固さは異例じゃったが、もし音楽の中に「癒しの要素」が求められる時代がもっと早く来ていたならば、マシューはもっとも注目を浴びるオルガンプレイヤ―になっていたかもしれない!


9 イアン・マクレガン
    
 
Ian Mclagan

 このお方のプレイがあったからこそわしはフェイセスを聞いていたようなものじゃ! ロッド・スチュワートもロン・ウッドも七~八分の真剣度で結構テキトーにやっておったものの(それがええんじゃけど)、それはイアンのご機嫌なノリのサポート・プレイがあったからこそ成立しておった。 それがフェイセスというバンドだったのじゃ。
 フェイセスにはフィットしてもストーンズには?って最初は疑問符をつけてしまったが、このお方は不思議とスタープレイヤーたちをノセル魔力を持っておるんじゃな! スターがノレばお客さんもノル!ってことなんだかどーだかワカンネーけど、こうした説明しにくい魅力もトップ・プレイヤーたちの必須条件なんじゃろう! イアンがストーンズのサポートに入った当初、フェイセス・フリークは「ストーンズ存続の為にフェイセスは潰された」なんて言っておったもんじゃが、フェイセスのノリは70年代特有の匂いの中でのみ輝くノスタルジックな文化であり、その構成分子が不滅のストーンズに受け継がれたと認識するべきじゃろう!



10 デヴィッド・サンシャス 
       David Sancious

 ブルース・スプリングスティーン率いるE・ストリート・バンド初期のメンバーであり、スプリングスティーンの最初の3枚のアルバムでプレイしている黒人ピアニストじゃ。 
 ブルースを有名たらしめたのは、火を噴くマシンガンの如きスピード感と、真冬の部屋で優しく揺れる暖炉の炎の如き夢ら気感が共存した言葉数の恐ろしく多い歌詞の噴出速度のコントロール具合であり、放っておけば勝手に暗闇の彼方に雲散霧消してしまいそうな危うさをギリギリの次元で踏みとどまらせていたのがデヴィッドのプレイじゃった。 おそらくデヴィッドのサポートがなければ、初期のスプリングスティーンの楽曲はレコーディング作品として成立しなかったであろう!
 ロックンロールのノリでもブルースのノリでもない、スプリングスティーンの体内に埋め込まれたエモーション炸裂&制御装置の様ないわば理想的なサポート・メンバー。 その後シンセサイザーの達人にもなり、意外やブリティッシュハードロックの重鎮たちのアルバムに参加もしており、彼の力量が本当のプロたちに見込まれていた事実に喜びを感じたものじゃ!


7 メル・コリンズ (サックス)
      Mel Collins

 70~80年代のブリティッシュ・ブルース・ロック、ハードロックにはなくてはならなかったプレ―ヤ―じゃ。 このお方が一発ぶっぱなしただけでサウンドの座りに、まるで乗用車が戦車に、ヨットが戦艦になったような劇的な昇華をもたらしておった。
 様々なバンドにセッション参加をしておるが、ご本人の実体は未だに判明しておらん。 唯一ドラマーのコージ・パウエルのコメントを読んだことがあるが、 「俺のソロ・アルバムで吹いてくれよって頼んだら、フラっと現れてバッチリキメてくれて、またフラっといなくなった。 近くのバーで一杯やってたらしいけど、メルってそんな男さ!」とのこと。
 このお方の音色は、フレーズがスタートする直前、一瞬だけ濁音が入る。 これが何とも男臭くてタマランのじゃ。 そして重量感たっぷり、アフタービートとの相性もぴったりの独特のリズム感! ジャズと違ってロックにはロック的サックスってのは聞いたことがないが、強いて言えばこのお方のプレイじゃろう!


8 クラレンス・クレモンズ
     (サックス)
 
     Clarence Clemons
 ブルース・スプリングスティーンのE・ストリート・バンドのメンバーであり、ロック界においてサックス・プレーヤーの地位向上に絶大な功績を残したお方じゃ。 個人的にはスプリングスティーンの楽曲は、ご本人がビッグになるにつれて益々つまらなくなっていったが、このお方のプレイだけは常に初期のスプリングスティーン・サウンドのダイナミズム、エモーションを失うことはなかった。
 80年代以降のスプリングスティーンは時折思い出したようにロック的アルバムを発表したが、「待ってました」とばかりE・ストリート・バンドは活き活きとしたプレイを復活させており、それはクラレンスがいたからこそ出来た芸当じゃった。 (もっともスプリングスティーン自体は不調じゃったが)
 リンゴ・スターのオールスター・バンドにもクラレンスは参加しており、周囲のメンバーのロウテンションを必死に盛り上げようとするクラレンスの孤軍奮闘ぶりが忘れられない。 スプリングスティーンやオールスターバンド等、往年のロックスターたちにとっては、サウンドにおける「ボス」がこのお方なのかもしれんな!
 

9 ガース・ハドソン(音楽教授)
    
 
Garth Hudson

  ザ・バンドではキーボード類、吹奏楽器類をこなすマルチプレイヤーじゃが、この度はガース・ハドソンを「音楽教授」としてカテゴライズしておこう。
 このお方はザ・バンド初期の頃は本当に音楽教授として「特別のギャラ」が支払われていたそう! それだけ各楽器に精通しており、また当時教会音楽を演奏していたガースをバンドに雇い入れる為には「音楽を教えてもらう」という名目が必要だったんだそうじゃ!
 ザ・バンドのメンバーは、リーダーのロビー(ギター)以外はマルチ・プレイヤーであり、楽曲によってボーカル、キーボード、ドラムまでが担当がコロコロ変わるのが通例。 上手かろうが下手であろうが、その楽曲の雰囲気に合った音色を奏でられる楽器を弾けるメンバーが担当しており、その指揮、最終結論は主にガースに委ねられておったそうな!
 映画「ラストワルツ」を見れば顕著じゃが、ハッキリ言ってルックスは冴えないもモサっとしたオジサンなのに存在感は強烈!まさにバンド・マエストロじゃ。



10 アル・クーパー
      (マルチプレーヤー)

          Al Cooper
 卓越したブルース・センスで、ロック界にブルース・オルガンという概念を定着させたお方じゃ。またニューヨークをモチーフにしたコンセプト・アルバムの名盤『ニューヨーク、お前は女さ』『アイ・スタンド・アローン』を完成させたアイディアマンでもある。 プロデューサーとしても数多くの名盤を世に送り出しておることでも有名じゃ。
 ただしサウンドをいじくりまわし過ぎるキライがあって、ブラスバンドのブラッド・スゥエット&ティアーズやレイナード・スキナードとのプロデューサーとしての付き合いは長くはなく、ロックに単純明快さが求められていった70年代後半になるとその名があまり聞かれなくなったことが残念じゃ。
 レコードとリスナーとの中間世界を創造できるセンスが大変によろしく、映像作品の少ない70年代において、レコードから視覚イメージを突起させることが出来るお方であり、全体的なセンスはロックというよりも映画音楽的にサウンドをコーディネイトしていく名人じゃったと言える。

ーボード・プレーヤー11~15位(順不同)
(左写真、左列上から)
・マシュー・ベラミー Matthew Bellamy
・アラン・プライス Alan Price
・ニッキー・ホプキンス Nick Hopkins
(右列上から)
・マックス・ミドルトン Max Middleton
・ビリー・パウエル Billy Powell


 
マシュー・ベラミーはミューズのヴォ―カリスト、ギタリスト&ピアニスト。 歌とギターでロックをやっておれば、ピアノもロック調になって然るべきなんじゃけど、ピアノはガッツリとクラシック調! リストやラフマニノフ・タイプの耽美主義的なピアノ・プレイは現在のロック界においては希少価値であり、只今もっともグランドピアノ・サウンドが似合うピアニストじゃ。
 
アラン・プライスはアニマルズのオルガニストじゃ。 流れるようなフレーズは少ないが、和音を強調したアレンジはアニマルズにとっての心臓! アランの存在があってこそ、ボーカルのエリック・バードンは未曾有の喉を大衆に届けることが出来たのじゃ。

 ジェフ・ベック・グループ、ローリング・ストーンズ、ジョージ・ハリスンら数多くのビッグ・ミュージシャンのキーボード・パートを担当していたのが
ニッキー・ホプキンス。 線の細いプレイながらも、ブルースとクラシックとを自在に往復し続けるセンスは決して聞き逃すことのできないトーンがある。
 ブリティッシュ・ブルース・フュージョン(なんてジャンルがあるかどうか知らんが)をやらせたら右に出る者はいないのが
マックス・ミドルトン。 ピアノでもオルガンでもイギリス人らしい織り目正しい寂蒔感がサイコーじゃ。 ちなみに第二期ジェフ・ベック・グループにおいては、クレジットこそ無いものの実質的な作曲者はマックスだったらしい。
 
ビリー・パウエルはアメリカのサザン・ロック・バンドだったレイナード・スキナードのメンバー。 トリプル・ギターの欠落部分を、美しい情緒を讃えた控え目なピアノプレイで補っておったな。 レイナード・サウンドの中で異質のトーンを放っており、そのアンバランスさ加減は「レイナードの良心」と言えるほどの求心力をもっておった。


の楽器プレイヤー、または楽教師 
11~15位(順不同)

(右写真左列上から)
・坂本龍一(ピアニスト、プロデューサー) 
Ryuuichi Sakamoto
・マジック・ディック(ハーモニカ) Magic Dick
・ジョン・メイオール(音楽教授) John Mayalll
(右写真右列上から)
・ダリル・ウェイ(バイオリン) Darryl Way
・アレクシス・コーナー(音楽教授) Alexis Korner


 
坂本龍一の表記を見て驚いた輩も多いじゃろうが、わしはこの人の大ファン。 ヨーロッパの世紀末的耽美主義のピアノを弾くことのできる希少な存 在であり、そのトーンは曲調を一発でキメテしまう圧倒的な個性がある!プロデューサーとしての手腕も素晴らしく、いかなるタイプのミュージシャンの演奏でも格調高く磨き上げる達人じゃわい。
 
マジック・ディックはJ・ガイルズ・バンドのハーモニカ・プレイヤー。 先述したポール・バターフィールドの様なストイシズムはないものの、聴衆にロックン・ロールを楽しませるためのハーモニカならこの人に任せておけばいい!

 
ジョン・メイオールアレクシス・コーナーは、60年代のブリティッシュ・ロッカーにブルース・スピリッツを叩き込んだ大先生じゃ。 いずれも自らのバンドで数多くの才能ある若者にブルース奏法の手ほどきをしておった。
 ジョンはブルース・ジャム的教育をほどこし、エリック・クラプトンやミック・テイラーらが彼の元から羽ばたいていった。
 一方アレクシスはもっとロック寄りのブルース教育が真骨頂。 ジャック・ブルースやフリーのメンバーたちを育て上げた。 ちなみにフリーのバンド名は、グラハムの楽曲である「フリー・アット・ラスト」から引き継がれておる。
 
ダリル・ウェイは70年代のプログレシーンで活躍したバイオリニスト。 ロック史上初のバイオリニストがリーダーであるバンド、ウルフを立ち上げた経緯があり、ウルフのアルバムで披露された哀愁のバイオリンがむせび泣く「悲しみのマクドナルド」は超名曲じゃ。 


 自分で企画、セレクトしておきながらもつくづく思うが、ロック界には色んなお方がおりますな~。 キーボード・プレーヤーに関しては、ジャンルの特質上どうしてもプログレ系の方が多くなったものの、「他の楽器プレーヤー」においてはまさに多士済済じゃ。 だからロックって止められないんじゃよな~なんて一人腕組しながら納得してしまったわい。
  ロックという文化ほど、短期間で完成、発展していった文化は無いと思うし、これからも様々な音楽性やセンスをもったユニークな連中の手によってロックと他のジャンルの音楽や芸術とが融合していってほしいわい。

 なお最後に、キーボード・プレーヤーのセレクトにおいて、「ジェリー・リー・ルイスがいねーぞ、コノヤロー!」って声が早くも聞こえてきておるが(笑)、わしはジェリー・リーが嫌いなわけではなくて、あのお方はボーカリスとして位置づけしておるんでどうかご容赦を。 では次回300回で会おう!

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