Volume 297/300

ハロ~諸君♪ トップのアイコンが炎から不死鳥に変わったんでゾォ~としたことじゃろうな! 「不死鳥ってジイサマよ、アンタまだまだ続ける気なのかよ」ってヤカマシーですぞ!これはだな、七鉄コーナーがもうすぐ第300回を迎えるにあたってのわしの決意表明じゃ!

 実は300回目で何を書こうかと迷っているうちに珍しく弱気?に陥り、こっそりボスに相談したんじゃ。 でもボスはつれなく「自分で考えろアホンダラ!」じゃなくて「お任せしますよ」のひと言(笑) 考えれば考えるほどアイディから遠のいて行きそうなので、思いっきり開き直って、「超頑固」ならぬ「超わがまま」でいくことにした! だからまずはアイコンは「不死鳥」、七鉄は不死身なのじゃ~♪

 「超わがまま」になって何をしでかそうとするのかって、そりゃもう自分がやっててもっとも楽しい作業! 今回から記念すべき300回までの4回にわたって、「男性シンガー」「女性シンガー」「ギタリスト」「ベーシスト」等に分けて、それぞれのベスト・プレイヤー30をご紹介することにした。 じっくり読まんでも、名前だけチェックしてくれてもええぞ。 わしが音楽嗜好的にかなり分裂症気味なのがお分かり頂ければそれで結構。
 「それって、節操が無いだけだろう」ってバカモノ! 色んな音楽を楽しんできた分だけ、色んなお友達が出来たわけで、ボスとも、そして諸君とも覆面ライターの身分ながら交流できるようになったんじゃ。 セレクトしたアーティスト全員のオススメ音源(一部映像あり)のリンクも貼っておいたので、名前を見て、寸評を読んで「ピン!」ときたら是非チェックしてみてくれ。 諸君が知らなかったアーティストとの新しい出会いが待っているぞ。 では「超頑固七鉄コーナー」300回到達記念“超わがまま連載”のスタート、第1回目は女性シンガー・ベスト30じゃ!

NANATETSU ROCK FIREBALL COLUM Vol.300 ANNIVERSARY ➀

其の壱~ 女性シンガー ・ベスト30

(写真左より~ベッシ―・スミス、ローラ・ニーロ、ニーナ・シモン)

ジャンルを超越した永遠のクイーン
ベッシ―・スミス 
Bessie Smith

 死後80年が経過したが、いまだに「ブルースの女王」として音楽史に君臨しておるお方じゃ! 残された音源があまりにも古いものばかりってこともあり、彼女の録音が流れ出した途端、遠くて見えない霞のかかった異次元から発せられる女神の啓示に聞こえてしまい、それまで感動していた女性シンガーがたちまち色褪せてしまう!
「欲張っちゃいけません」「夢なんか見てちゃいけません」「恋なんかお馬鹿さんのすることです」「今日を生き抜けば明日は何とかなります」
 歌詞だけ読めば「死ねってことか、このクソババア!」ってな七鉄の怒り節全開になっちまうが、恐ろしいまでに心臓に突き刺さって来る歌声と単純明快なメッセージは限りなく力強い! “日はまた昇るけどまた沈む、それが人生よ”と、ともすれば寄りかかってきそうな聞き手を優しく打擲する姉御、女将のごとき潔さが歌の全編で跳梁しておる!


一曲で爛熟して“イキまくる”孤高のソウル・レディ
ローラ・ニーロ
  Laura Nyro

 滅多に逢いたくない女だけれど、逢った夜には目一杯燃え上がりたい! ローラの歌は、そんな感じじゃ。 レコードを聴いておるだけで、彼女の息遣いが聞こえ、髪の匂いを感じ、心臓の鼓動が聞こえてくる。 やがて不幸のどん底におる女性に命がけの愛を強要される様な(実際そんな事は無かったけど)、そんな恐怖が襲ってくる凄まじくソウルフルな歌いっぷりじゃ。
 音楽が商品にされる段階、アマチュアがプロになる段階、子供が大人になる段階、音楽をやる者が前進したり進化したりする段階でオミットされる表現を逆にさらけ出すことで、ローラ・ニーロはシンガーとして空前絶後の個性を発揮しておると言えるじゃろう。 ナチュラル過ぎて異端者扱いされていただけに、経済的には恵まれない音楽家人生だったようじゃが、変なハナシ、「ローラの僅かな収入の一部は、俺が支えているんだ」みたいな身勝手な私情まで沸き立たせる稀有なシンガーじゃ。
 晩年はさすがに“猛り狂う”スタイルは封印しておったが、朴訥としたスタイルの中での激情のチラリズムも迫力満点じゃったな~。2012年に意外にも「ロックの殿堂入り」を果たした時は、既に彼女の魂はかの地へと旅立っておったが、長年ローラの私設応援団長のつもりじゃったわしは密かに涙を流したもんじゃ。

ブラック・クール・ビューティー
ニーナ・シモン Nina Simon

 ベッシ―・スミス亡き後、ジャズ&ブルース・シーンでビリー・ホリディと並び称されたクイーン・シンガーじゃ。 どんなタイプの曲でも基本的にクールな一本調子で歌い上げてしまう異端者的な天才じゃ! 一度彼女が普通に歌い始めれば、どんな頑固偏屈ジジイも我がまま身勝手ババアも、スケコマシ野郎もアーパーギャルも、全ておとなしくさせてしまう絶対的なトーンがあり、それを終生変えることなく全曲で貫いた恐るべきお方じゃ! 
 ニーナとロックとの接点と言えば、アニマルズが彼女の「悲しき願い」をカバーしたことが有名じゃが、エリック・バードンの絶叫スタイルを当初彼女は「歌に激情は必要ない!」とばかりに絶対に認めなかったらしい。 驚くべき、頑固七鉄もびっくり(笑)の頑固レディで大拍手じゃが、後にエリックがアポロ・シアターまで彼女の応援に駆け付けた時は「私の出来ないスタイルを持った人」とエリックを歓迎したそうじゃ。「英雄は英雄を知る」、本物の実力者は他人のスゴイ才能を見抜いているって事じゃろう。
 彼女の場合の「一本調子」とは、本当の感動は歌手と聴衆との間に存在することを知り抜いた究極の70~80%唱法じゃ。 極限には達しないレベルまで展開させるテクニックはもちろん多彩であり、だからこそ聴衆はけっして与えられない20~30%を探し求めることで彼女の歌と繋がるのじゃ!

(写真左より~リン・ケアリー、スーザン・テデスキ、リッキー・リー・ジョーンズ、ケイト・ブッシュ)

4 リン・ケアリー(ママ・ライオン) Lynn Carey (Mama Lion

 このお方は一般的にはほとんど無名じゃ。 1972年にママ・ライオンなるブルース・ロック・バンドを率いて登場したが、ジャニス・ジョプリンを吹っ飛ばしてしまうようなボーカルが逆に災いしたのか、アルバム2枚だけで消えてしもうた。 唯一話題になったのは、金髪の美貌とポルノ女優ばりのダイナマイト・ボディであり、72年12月ファッション誌「ペントハウス」の表紙を飾っておる。
 まあ「歌はスゲーわ、ヴィジュアルはスゲーわ」で、男性ロッカーも形無しってことで業界から却って煙たがられたのかもしれん!? 当時のロックシーンは、まだまだ女性が活躍できるスペースは限られておったんで、そんなチンケな業界の習慣をブチ破るようなリン・ケアリーに誰もが恐れおののいたのじゃ!
 彼女の登場から既に46年、いまだにこんなスゲー唱法でブルース・ロックを歌う女性シンガーは皆無じゃろう。 これは完全に男性ロッカーの仕事じゃよ! 試しに複数の楽曲の歌詞を自分なりに意訳してみたんじゃが、まあ大意は「さあ私を食ってみないさいよ! しょぼいアンタに出来るかしら? さあ、いらっしゃい、無茶苦茶にしてあげるワ」ってな感じで、ちょっとヤバ過ぎ! 諸君はこのリン・ケアリー嬢をどう受け止めるか!


5 スーザン・テデスキ(テデスキ・トラックス・バンド)
          Susan Tedeschi (Tedeschi Trucks Band)
 スーザン嬢と旦那さんのデレクの夫婦で舵を取るテデスキ・トラックス・バンドに食指が動くのには少々時間がかかったが、わしはロバート・ジョンソンのトリビュート・アルバムの中で彼女が2曲歌っておるのを聞いてぶっ飛んだ! 数多くのロバート・ジョンソンのカバーを聞いたが、ストーンズやクリームの演奏を主体したとしたカバーを除き、歌もののカバーにおいては、黒人ブルースと白人ロックとのクロスロードで歌い上げられたような理想的なカバーじゃった。
 スーザンの魅力の原点はその独特の中性的なハスキー・ボイスにあり、ヘタな色気も過剰な力感もなく、ブルースというフォーマットを自然になぞっていくだけで彼女だけのセンシュアル・フィーリング(セクシーでもカワイイでもない官能性)が生まれるのじゃ。 必死にオリジナル・ブルース・スタイルを会得しようとしていた多くの白人シンガーたちは、恐らくスーザン嬢の歌を聞いて茫然自失だったに違いない!


6 リッキー・リー・ジョーンズ  Rickiee Lee Jones
 少々ぶりっ子っぽいハイトーン・ボーカルじゃが、バーボンの似合う小さなライブ・ハウスで彼女なりに解釈されたブルースやポップスをじっくり聞きたくなるようなアダルト・チルドレン・シンガー! ジーンズとベレー帽が似合う、わしから見ていわゆる“いい女”なんじゃけど、どこか元アイドルの様な純情さも併せ持っており、それがまた歌に見事に反映されておるからタ・マ・リ・マ・セ・ン。
 決してスタジアムを揺るがすようなシンガーではないし、歴史的名シンガーでもないが、いつまでも心の中に小さな灯を燃やし続けてくれるような歌を唄ってくれる永遠の不思議ちゃんシンガーじゃな。
 偶然見つけた身近で小さな楽園を、まるで妖精の様にひょいひょい飛び回っている様な彼女の歌の世界観は、とても付いてはいけないが、その楽園をいつまでも守ってあげたくなるのじゃよ。 その為にファンは彼女の作品に身銭を切っておるようなものじゃ! 過剰なガンバリズムを発揮しなくても、人生の自然な流れと周囲の協力を大切にし続けて行けば、こんなステキな女性に出会えるかもしれない。 リッキー嬢は物質社会からちょっとだけ離れた場所から笑顔で手招きしてくれるのじゃ。

7
 ケイト・ブッシュ  Kate Bush
 1977年アルバム『天使と小悪魔』、シングル「嵐が丘」でデビューした時の衝撃は強烈じゃった。 ルックス、ボーカルスタイル、楽曲、パフォーマンス、全てが前例のない個性がほとばしっておったものじゃ。 まだ映像が簡単に観られる時代ではなかったが、レコードを聞き、雑誌の写真を見て、インタビューを読んで懸命にケイト嬢の実体に思いを馳せたものじゃ。 それだけ想像力を掻き立てる歌と楽曲だったのじゃ。
 『天使と小悪魔』には、ヨーロピアン・ポップス、ロック(ちょっとプログレ的)、トラッド、現代音楽が見事に融合しており、他者が端から追随を諦めてしまうような圧倒的な創作力が漲っており、以降のアルバムが楽しみでしょうがなかったが、3作目あたりから前衛色が強くなっていき、残念ながらアタマワリ―わしは付いていけなくなった(笑) 天才少女も時が経てばただの人、ではなくて、気の触れたオネエサンの様になってしもうてな(笑) 近年は『天使と~』に散りばめられた音楽的要素をアダルトに改編している作品を発表していて、ちょっと安心!

(写真左より~マリアンヌ・フェイスフル、リンダ・ロンシュタッド、エミリュー・ハリス

8 マリアンヌ・ファイスフル Marianne Faithfull
 60年代中期デビュー当時の“お姫様シンガー”時代はあんまり興味無し。 ただしその時分から時折醸し出していた「天使の様な娼婦」っぽい雰囲気にはなあ~となく注目していたが、数年のブランクを経て1979年に発表された『ブロークン・イングリッシュ』は核兵器並みの破壊力を喰らった! お姫様がジャンキーになってシーンにお帰りあそばされたからじゃ! ドラッグと酒とタバコで別人のごとく変わり果てたハスキーボイスで歌う恨み節は、ビビリもののオリジナル・ブルースじゃった。 音楽史上、もっとも両極端な変貌を遂げたお方じゃろう!
 『ブロークン・イングリッシュ』以降は、退廃ってヤツを目一杯身にまとったスタイルが圧倒的であり、美貌が衰えようが肢体が肥大しようが自分自身を曝け出す恐るべきオバサンに! アイリッシュ・トラッドや古い演劇曲やオペラを歌う時のララバイ・フィーリングが素晴らしく、どんな過去があろうともしぶとく生き続けていくことの尊さを教えてくれる。

9 リンダ・ロンシュタット Linda Ronstadt
 女性シンガーに正統的なアメリカン・トラディショナル・ソングを歌わせたら、この方の右に出る者はおらん! 左に出る者(例外的には)はおるが(笑)、全てのトラディショナル・ソング・カテゴリをひとつに括れば誰もリンダ嬢には適わん。 ジョニー・キャッシュ御大も絶賛しておったしな! アメリカの片田舎にぎょうさんおるようなカントリーガール的雰囲気が抜けきれなかったビジュアルもええな。 1970年代後半、日本にもカリフォルニア・ソング・ブームが訪れたが、その最大の功労者がイーグルスと彼女じゃったわい。
 しかしリンダ嬢は、あまりブルースを唄わんかった。 それが偉大な先輩たちへのリスペクトなのかもしれんが、「リンダなら歌える!」と信じておったわしは、一時期ブルース・テイクを求めてブートレッグを探し回ったもんじゃ。 アメリカ南部の深い沼に生える藻の様な、ヌメッと付いてサラッと落ちるような独特の色気が声のちょっと裏側にあり、その味を覚えてしまったらもうリンダの虜じゃ。 軽快なヒット曲が多いものの、この方のボーカルの真髄を体験するならばスロー、ミディアムなナンバーがいいぞ。

10 エミリュー・ハリス Emmylou Harris
 上述のリンダの“左に出る”のがこのお方じゃ。 おじいちゃん、おばあちゃん向けのカントリー・ミュージックを一般大衆化させた偉大なシンガーじゃろう。 意外なしなさやかも持ち合わせており、ビートルズ・ナンバーも独自のフィーリングでビートルズ・バージョン以上にスケールの大きな情感を出して歌い切っておる!
 少々強引な言い方になるが、エミリュー嬢がカントリー(フォーク)を歌うと楽曲の根底にあるブルース・フィーリングみたいなテイストが見え隠れするところがわしとしては堪らんのじゃ。 成功した者、幸せな者にも表には出さない影があり、エミリュー嬢に触れられるとついホロリと辛い過去を喋ってしまう、そんな母性的な魅力が彼女の歌と楽曲を支える重要なファクターであると思うぞ。
 余談じゃが、どんなファッションをしても似合うのも惹かれる理由じゃ(笑) お嬢様ファッションからカウボーイ・ファッションまで見事に着こなすセンスは脱帽じゃ。


11~20 (順不同)

・シルビー・バルタン Sylvie Vartan
・ジュリエット・グレコ Juliette Gréco
・アン・ウィルソン(ハート) Ann Wilson(Heart)
・キキィ・ディー Kiki Dee
・ジャニス・ジョプリン Janis Joplin

・ビリー・ホリディ Billie Holiday
・デボラ・ハリー(ブロンディ) Deborah Harry(Blondie)
・クリッシー・ハインド(プリテンダース)
  Chrissie Hynde(Pretenders)

・マーゴ・ティミンズ(カウボーイ・ジャンキーズ) Margo Timmins(Cowboy Junkies)
・サンディ・デニー(フェアポート・コンヴェンション) Sandy Denny(Fairport Convention)

(右上写真~クリッシー・ハインド)
(下写真左側上から~シルビー・バルタン、マーゴ・ティミンズ、アン・ウィルソン)
(下写真右側上から~ジュリエット・グレコ、デボラ・ハリー)

 まずは1位から10位まで読んで頂き感謝するぞ。 11位以降はサラリと各人のポイントを紹介していこう。

 え~わしはまだ少年時代に年の離れたアネキ殿のお導きにより、結構女性フレンチポップを聞く機会があって今でも好きなんじゃ(笑) 元祖フレンチ・アイドルの
シルビー・バルタンは、別にカワイイとは思わないが下手くそながら案外きっちり歌おうとする姿勢がヨロシイ。 また彼女を世界的なポップスターに仕立てようと目論んだプロジェクトが提供する楽曲やアレンジが、イギリスやアメリカにはないセンスだったので聞きごたえがあった!
 フランスのオールド・ポップスであるシャンソンでは、大御所のエディット・ピアフよりも、わしはパリのサン・ジェルマン・デ・プレでボヘミアン的アーテイストたちのアイドルともてはやされた
ジュリエット・グレコ派じゃ。 黒髪、黒ファッションもグッド。この人の歌を聞くと確かに創作意欲が湧いてくる!(気がする)

 女性のパワー・ボーカル派は先述のリン・ケアリー嬢が消えてから絶えて久しかったが、70年代中期になると、イギリスから
キキ―・ディー、アメリカからハートのアン・ウイルソンが登場して聞きまくった。
 リン・ケアリーに比べると少々力量不足じゃが、両者とも健康的なお色気を振りまきながら見事な喉を披露してくれて有難かった。 なお、アン・ウイルソンはキキ―・ディの代表的ヒット曲「歌は恋人」をアルバム『マガジン』の中で披露しておる。

 音楽史に残る偉大なる
ビリー・ホリディとジャニス・ジョプリンが10位までに入らなかったのは自分でも意外じゃが、多分ビリー・ホリディはわしの聞き込み不足、ジャニスは2位ローラ・ニーロと4位リン・ケアリーと甲乙つけ難いほどに好きじゃが、順位の差はルックスの好みの差じゃろうか(笑)

 70年代後半のロックシーンから大活躍を始めた
デボラ・ハリーとクリッシー・ハインドは今でもよく聞く抜群のポップ・ロック・チューンを披露してくれた。
 デボラの初期のボーカルのテンションがバックバンドとズレている変なアンサンブル具合はヤミツキ! 元々パンクシンガーだっただけに、エンターテイメント自体を達観したような老成観がセクシーじゃったな~。 一方クリッシーは古き良きブリティッシュ・ポップ・ロックの良き理解者であり、その時代の雰囲気を70~80年代に継続してリメイクしてみせたセンスは素晴らしい。 しかも世界でもっともテレキャスターが似合う女性じゃった!

 
マーゴ・ティミンズは知る人ぞ知るカウボーイ・ジャンキーズの顔であり、ブルースやカントリーをロウテンションで切々と歌う達人。 たまに聞くと酒が進んでしょうがない!
 
 
サンディ・デニーは、ストローブス~フェアポート・コンヴェンション時代に、わしにブリティッシュ(アイリッシュ)・トラッドの素晴らしさを教えてくれた恩人(笑) 深遠で力強くて澄み切ったボーカルは、20位以降で登場する同系のシンガーたちの中でももっとも精神のオクターブを登っていくようなテクニックがスゴイ!

21~30 (順不同)

・ドロレス・オリオーダン(クランベリーズ)  Dolores O'Riordan( Cranberries)
・ジョニ・ミッチェル Joni Micheall
・ジェーン・レルフ(イリュージョン) Jane Relf (Illusion)
・ソーニャ・クリスティーナ(カーブド・エアー)
(右写真)
  Sonja Kristina(Curved Air)
・アニー・ハズラム(ルネッサンス) Annie Haslam (Renaissance)


・ジャッキー・マクシー(ペンタングル)
  Jacqui McShee (Pentangle)
・リンジー・ディ・ポール Lynsey De Paul
・ドナ・サマー Donna Summer
・マドンナ Madonna
・シャルロット・ゲインズブール Charlotte Gainsbourg

 遅ればせながら、まず本年1月に亡くなったクランベリーズのドロレス・オリオーダンに哀悼の意を表したい。 彼女は90年代を代表するブリティッシュ・ロック界の女性シンガーであり、男勝りのパワーボイスと女性らしいメランコリック・ボイスを兼備しておった。 また彼女の手掛ける楽曲は大人のパンクであり、楽曲構成において60年代の復権的な手法を駆使したオアシスやブラーの向こうを張って、スピリットそのものでロックの魅力を蘇生したロッカーじゃった。

 ジョニ・ミッチェルは、60年代後半からずば抜けて個性的なフォークを奏でるシンガーソングライターであり、作品発表ごとに新しい音楽的アプローチを成功させる恐るべき才媛じゃった。 バックを務める男性陣も、さぞご苦労なされたことじゃろう。 緩い湿気の様に、一陣の風の様に、淀む雨雲の様に、遠くで光る稲妻の様に、もういかようにも歌う対象をアレンジしてみせる曲芸師のような多芸ぶりはまさにミューズ! 正直なところ、70年代後半からはわしの感性が追い付いていけなくなった!

 さてここで、70年代中期にわしが夢中になったブリティッシュ・トラッド、プログレ界の歌姫のご紹介に移ろう。 
ジェーン・レルフは、ヤードバーズのヴォーカリストだったキース・レルフの実妹であり、ヤードバーズ解散後に事故死したキースの意志を継いで叙情的なプログレバンドのイリュージョンを結成。 さしたる美声でもないのに何故かバックボーカルに回ると俄然楽曲のスケールをアップさせる不思議な声帯の持ち主じゃった。
 
ソーニャ・クリスティーナは、ヴァイオンリンをフューチャーしたカーブド・エアのシンガーであり、時たま驚くべき美声とビブラート力を発揮して楽曲を支配しておった。 ライブでは一転してハードロックボーカルに転換してみせるやり手ネエチャンでもあり、素顔はおてんば娘らしい!
 時期的にカーブド・エアと入れ替わる様にプログレ・シーンで活躍し始めたルネッサンスの超美声シンガーが
アニー・ハズラム。 ルネッサンス自体が耽美的プログレを徹底して追及しておっただけに、まさにアニーは水を得た魚のように躍動しておった。 あまりの美声ゆえに、歌心がないとまで皮肉られたほど未曾有の美声じゃった。 
 上述のサンディ―・デニーの後を追う様にトラッド・ロック界に登場したのが
ジャッキー・マクシー。 彼女が在籍したペンタングルは、当時からブリティッシュ・トラッド界でカリスマ的な人気を博していた二人のギタリスト、ジョン・レンボーンとバート・ヤンシュをフューチャーしておったが、バンドが知れ渡るにつれて神秘的な森の精を思わせるジャッキーのボーカルに話題が集中したもんじゃ! ジャッキーとサンディ・デニーこそ、ブリティッシュ・トラッドをメジャーな存在に引き上げる為貢献した代表的シンガーじゃ。

(右上写真上段左から~ドロレス・オリオーダン、ジョニ・ミッチェル)
(右上写真下段
左から
ドナ・サマー、リンジー・ディ・ポール、シャルロット・ゲンズブール)


 ここで趣向を変えて?、わしのお気に入りのセクシーシンガー3人にご登場頂くとしよう。 まず元祖ウィスパー・ボイスで人気を博した
リンジー・ディ・ポール。 ウィスパーボイスとは、女性の「ちょっとロリでエッチでタリナイ様だけどファンタジックな歌声」ってトコかのお(笑) 囁くように歌われて男心をくすぐってやまない唱法じゃが、リンジー嬢は今でもその代表格。 ただしリンジー嬢は作曲能力も優れており、童話と現実の世界を照合させなが両方をファンタジックも行き来するポップで不思議な楽曲を披露しておった。 後年はその容姿があまりにもセクシー過ぎたために、アダルト・セクシー・ポップス路線に変更してしまって残念じゃった。
 お次は
ドナ・サマー! こりゃもうウィスパーどころの騒ぎじゃない(?)ド迫力のセクシー、いやセックス・ソングが真骨頂じゃったな。 70年代後半、ドナ・サマーのお陰で黒人女性の魅力にクラクラした野郎は多かったはずじゃ! しかしもろセックス・ソングなのに一部で放送禁止になっただけでレコードは普通に発売されておったから不思議じゃった。 日本の歌手に例えると奥村チヨや辺見マリ(例えが古過ぎか)の様な、身体の奥底に宿っていても普段は表面化しない女性の性欲をズバッと出しては引く様なゾクゾクする裏声がサイコー(笑)
 
マドンナはセクシーというよりも母性愛を全面に出す時の、温かくていつまでもその中にいたいような抱擁力いっぱいの歌い方が魅力じゃな。 マドンナ嬢の歌唱力に関してはあまり話題に上らないが、決してアッハン、ウッフンではない“女性という男性ではない生物”としての色気が持ち味じゃ。 健全な意味で女を感じるシンガーじゃ。
 
シャルロット・ゲンズブールは、フランス・ポップス界の鬼才セルジュ・ゲンズブールの実娘。 女優としての活動が主でありレコードは僅かしか発表しとらんが、すべてウィスパーボイス! ただし、セクシーというよりもひそひそ話的であり、言っとる事、歌っておる事を知りたくなる欲求を抑えられないような魔力を発揮しているからスゴイ! ジミ・ヘンドリックスの「ヘイ・ジョー」のカバーにはぶったまげたもんじゃけど、お見事じゃった。


 たった30人のセレクトって、やっぱり難しいもんじゃな。 何だか、早くも「男性版セレクション」を次回以降にやるのが憂鬱になってきたわい!? 果たして30人に絞れるかどうか・・・。 次回あたり早くも「絞れないからヤーメタ!」って事はアリエル・・・わけねー! 「300回記念」とか言っちゃってエラソーに企画しただけに、責任をもって300回までシリーズを続けるので、どうかお付き合い頂きたい!
 まあ毎回諸君からの「アレが入ってねーじゃねーか!」「コレを入れてねえなんて、七鉄のヤロー許せん!」ってわしを罵倒する声が聞こえてくるに違いない(笑) まっ、セレクトの対象が女性となりゃあアホらしいまでの男性の思い込みが入るから、せいぜいわしに向かって罵詈雑言を吐きまくってスッキリしてくれたまえ。 では次回、また逢おう!
(右写真~ビリー・ホリディ)


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