NANATETSU ROCK FIREBALL COLUM Vol.293



 ハロー諸君。 一年半も日本に帰国しておらんわしじゃが、先日日本の洋楽ニュースをチェックしておったら、「スパイナル・タップ」という映画が本国アメリカでの公開から35年あまりも経ってから、日本の映画館で公開されておる情報を目にしたぞ。
 「スパイナル・タップ」は、架空のヘヴィ・メタル・バンドの復活ツアーの模様を描いた完全フェイク(偽物)・モニュメンタリー(架空の人物や団体、虚構の事件や出来事に基づいて作られるドキュメンタリー風表現手法)映画じゃ。 実在した有名ロックバンドのお笑いネタを全編に散りばめたコメディ映画でもある。 わしはレンタルDVDで鑑賞したことがあるが、何で今頃日本で劇場公開されとるんじゃろうか?
 「スパイナル・タップ」の魅力は、コメディ映画とはいえ、歳を取っても衰えることのないオヤジの「ロックン・ロール・スピリット」が描き出されておる。 ロックなんて時代遅れと笑われようが、オヤジがヘビメタなんてカッコ悪いと蔑まれようが、「オレ様は永遠のロックンローラーなのだ!」っつうオヤジ・ロッカーの意地と誇りが漲っておるのじゃ。

 更に驚くことに、「スクール・オブ・ロック」という映画のTVドラマ版の日本語吹き替版もEテレにて放送されているという。 こちらもまた、ロックスターの夢を捨てきれないオヤジ・ロッカーが主人公であり、小学校の教師に成りすまして生徒たちにロックの魅力を伝授するという作品じゃ。
 
 この「スパイナル・タップ」と「スクール・オブ・ロック」の日本襲撃!を記念して、両作品を含めたわしのお気に入りである「不屈のロックンロール・スピリット映画」ベスト5をご紹介する。
 内4作品は一般的には「コメディ映画」とされておるのがわしとしてはイマイチ気に入らないが、コメディ・スタイルにでもしないと一般人に「ロックンロール・スピリット」は伝わらないのだろうと割り切っておる(笑)骨の髄までThe-Kingフリークでありロックンローラーである諸君なら、単なるコメディ映画として捉えることなく、作品の真髄を分かってくれると信じておるぞ!


七鉄のロック映像コレクション便り(2018年度版)~Volme 1
お坊ちゃまからオヤジまで。不屈のロックンロール・スピリットもいろいろあるぞ!


笑うべきか、泣くべきか?!

■ スパイナル・タップ ■

【製作】1984年アメリカ
【概要】60~70年代の架空のバンド、スパイナル・タップが1980年代のL.Aメタル・ブームに乗って復活を遂げるフェイク・ロック・モニュメンタリー。
 実在した有名ロック・バンドに本当に起こった数々のエピソードがふんだんに盛り込まれた展開は、いろんなバンドの歴史に詳しい筋金入りのロックファンならば抱腹絶倒もののコメディ映画というフレコミ。 多くのロック・ミュージシャンが「なんで俺たちのことをこんなに知ってるんだ!」と驚きの声を上げているほど登場するエピソードはリアル。 笑う、笑わないは別として、ロック好きなら一度は大いに堪能して頂きたい。

【解説】
 正直なところ、わしはまったく笑うことが出来なかった。 エピソードがあまりにもリアル過ぎであることは言うまでもないが、エピソードとはつまるところトラブルであり、それを波状攻撃で見せられて胸が苦しゅうなってきたのじゃ。
 一例を挙げよう。 メンバーのガールフレンドがバンド運営に過剰に口出しすることでバンドの人間関係が崩れていくエピソードは、ヨーコ・オノがビートルズでやったことのパロディ。 楽屋からステージまでの行路が複雑過ぎて、メンバーが迷子になって開演時間が遅れるのはガンズン・ローゼスのパロディ。 ステージセットの小道具が、オーダーミスによるサイズ違いでセッティングされるシーンはオジー・オズボーン・バンドのパロディ。 荘厳なステージ・セットの一部が壊れて、メンバーがステージに出られなくなるシーンはドッケンのパロディとか。 マネージャーのミスでサイン会に一人も客が来ないシーンもあり、どれもこれも当の本人してみれば「大問題」であり、自虐ネタにもならない誠にイタイ体験なのじゃ。
 そして何故か日本だけで売れて武道館コンサートが盛り上がるシーンは、初期のクイーンやチープトリックのパロディであり、なんだか切なくなってくることこの上ない。 まあ多少はニヤツクことは出来ても、とても爆笑には至らなかったってのが本音。

 スパイナル・タップがヘヴィ・メタル・バンドに設定されていることもあるじゃろうが、ロックという音楽、ロックを演奏する者は、周囲のちょっとした手違いや勘違いがあると、たちまちシリアスなステージはギャグと化してロッカーたちは笑い者になってしまうことが明白なのじゃ。 カッコイイことはカッコワルイことと表裏一体であるのじゃよ。 この映画で爆笑できるのは、ロックに対して中途半端な思い入れと知識のある連中じゃろうか。 まあそういうレベルの方が圧倒的に多いから、この映画はパロディとして成立するんじゃろうが。
 唯一の救いは、仲違いして脱退していたメンバーの一人が、ラストの日本公演においてバンド・ステージに復帰するシーン。 大概のロックバンドは学生バンドが母体になっておる。 ロックが大好きな学生たちの友情が起点なのじゃ。 そしてバンドが成功するということは、友情とお別れしなければならないことでもある。
 しかしスパイナル・タップの場合は、復活劇において友情が大きな役割を果たすのじゃ。 思いもよらなかった日本公演での大熱狂に、メンバーたちはドタバタだった過程の全てを忘れてノリノリに。 それは青春時代にロックに全てを賭けていた頃のノリそのものだったのじゃ!

 「スパイナル・タップ」に笑えなかった方は、いまだにロック少年のまんまなのかもしれない。 繰り返して観ることで笑えるようになったら、それが「ロック少年」から「ロックオヤジ」に成長?出来た事になるのかもしれない!


美しきオヤジ・バンドとは? 

■スティル・クレイジー■

【製作】1998年イギリス
【概要】架空のバンド、ストレンジ・フルーツが、20年ぶりに再結成をしてビッグ・ロック・イベントに出演するまでのコメディ・ロック映画。 状況設定は前述の「スパイナル・タップ」に似ているが、「スパイナル・タップ」が周囲の無理解と勘違いによって次々とトラブルに巻き込まれていく事に対して、「スティル・クレイジー」は黄金時代のコラボレーショが再現できないメンバーたちの苛立ち、オリジナル・メンバーと2代目ボーカリストとの軋轢などの再結成したバンドの苦悩の数々がストーリーの核となっており、実質はかなりシリアスなストーリー。
 またバンド結成時代からの女性マネージャーが頻繁に登場して、女性の観点によるバンド像の細やかな描写も興味深い。 コメディ的な要素を探れば、70年代のグラムロッカーが御年を召しても全盛時代そのままの恰好をする滑稽さ、かつての名曲の演奏に身体がついていけない太ったドラマーのふがいなさ等、いわば青春時代を捨てきれないオヤジ・ロッカーの見た目のみっともなさの数々であろう。

【解説】
 ストーリーの核は、「美しかった若かりし日の復活を目指して」「俺たち、このまま年老いて滅びていくのはまっぴらごめんだ!」ってトコ。 だが「復活」とは言っても、中年はそれぞれの事情を抱えておる。 ある者はやっとこさ職に落ち着いていたり平穏無事な家庭を得ておる一方、ある者は生活苦や借金まみれ。 少年時代は「ロックバンドをやって有名になりたい!」という情熱だけで集まっていたのに、今では各人の再結成への思惑が大きく異なっておる。 それでも再会の感激に乗じてオヤジ・バンドは立ち上がる。
 まずはどさ周りツアーをスタートさせるものの、現実は厳しい。 かつては夢と希望に胸を膨らませて語り合ったツアーバス生活も、先々の不安、健康状態への安否、演奏への苛立ちばかりでテンションは下がりっぱなし。 メンバーの一人はツアー中に誕生日を迎えるものの、届けられたケーキに記された「50歳」という文字に逆上する始末。 若くして死んでしまったオリジナル・ギタリストとの素晴らしい演奏が忘れられず、急造バンドに八つ当たりするメンバーもいる。

 オヤジバンドに用意された会場も、場末の遊技場や、猫の額ほどのステージばかりであり、ヴォーカリストのマイクスタンド・アクションで後方のドラムセットが崩れるは、天井の電気コードがショートするは、横のギタリストがなぎ倒されるは、もうひっちゃかめっちゃか。 再結成ツアーは、緩やかに無意味で虚しい「再解散」へと転がっていくのじゃ。
 そんな悪戦苦闘のオヤジバンドに、失踪の末に死んだと思われていたメンバーが救世主として現れる。 女性マネージャーの計らいじゃ。 彼は老いるということに恐怖を抱いていない。 あるがままの自分を受け入れておる男であり、彼の自然体の姿を目の当たりにすることで空中分解寸前のオヤジ・バンドから過剰な力みが消えて行く。 事態が好転したオヤジ・バンドは、遂にビッグ・イベントへの出演にこぎつけることに!

 有名ロックバンドの復活コンサートは後を絶たないが、再結成に至るまでの舞台裏は微笑ましいエピソードしかマスコミは紹介しないものじゃ。 それが復活を祝うための礼儀なのかもしれない。 しかし恐らくどのバンドにも、再結成に至るまでに激しい紆余曲折があったに違ない。 今後は端から「オヤジたちの懐メロ大会」と否定するのは止めることにした!


成績なんてどうでもいい、ロックすることが大切だ!

■スクール・オブ・ロック■


【製作】2003年アメリカ
【概要】主人公は、デブで金欠な冴えないアマチュア・ロック・ギタリスト。 それでもロックへの情熱は人一倍。 ひょんなことから、彼は名門私立小学校の臨時教師の職に“もぐりこむ”ことに成功。 クラスの担任に“成りすました”彼は、ある日一部の生徒たちに音楽の才能があることを発見する。 それから生徒たちに毎日ロックンロール教育だけをほどこすことに!
 突然の奇妙キテレツな教育に戸惑う生徒たちだが、主人公の陽気なキャラクターと、ロック・ミュージックの魅力に引き込まれていき、ロック・コンテストに向けてクラス全員が一丸となる、というコメディ映画。

【解説】
 「こんな先生に教えてもらったら、全学期オールAだ!」ってわしは叫んでしまった!(笑) 確か1時間目がロックの歴史のお勉強。 黒板には、ロックの歴代のブームやそれを担ったバンド名が書いてある! 2時間目はロック映像観賞会。 ロックスターたちの激しいステージアクションに生徒たちはくぎ付け! 3時間目以降は楽器の練習。 更に宿題と称して、帰宅の際にロックの名盤のCDが生徒に配られる。 見込んでいる生徒には「この曲を特に聞くように」と具体的な指示も出る! 主人公の授業中の口癖は、「ロックは反抗だ」「ロックはノリ」。 激しくギターを弾きながら生徒たちをロックの世界へと誘う、絶対におらんけど何処かにいて欲しい先生じゃ!

 しかしこの先生、生徒たちに無理矢理に情熱を押し付けてばかりなロック馬鹿ではない。 常にクラス全体の協調性を疎かにしないのじゃ。 自信の持てない生徒や引っ込み思案の生徒には、彼らの胸の内をよく聞いてあげて、実在するロックスターたちのコンプレックスを引き合いに出しながら丁寧に誘導する。 バンドに参加出来ない生徒たちには、マネージャー、衣装デザイナー、バンドロゴ・デザイナー、照明担当、スクリーン操作等の役割を与えて、誰一人としてないがしろにしない心配りも見せる。 こんな先生に巡り合ったら、それまでロックに興味がなかった生徒だって、否が応でもロックに引き込まれていくに違いない。

 然して“子供バンド”のスクール・オブ・ロックは、ロック・コンテストで大歓声を受けることに! それでも優勝は、皮肉にも主人公がクビになったバンドへ。 しかし「優勝はスクール・オブ・ロックだ!」と観客から激しいシュプレヒコールとアンコール・リクエストの嵐。 優勝を逃して落胆する主人公に、今度は生徒たちから叱咤が飛ぶのじゃ。 「成績なんてどうでもいい、ロックすることが大切だと言ったじゃないか!」
 我に返った主人公は、生徒たち全員を引き連れて、再び光り輝くステージへ。 熱狂する観客の中には、知らない内に逞しくなった生徒たちに感動している親御さんや校長先生の姿が! 「おいおい、親や教師が納得するロックなんてあるのかよ!」とイキリタツ輩もいるかもしれんが、誰に反抗していようが、誰に反対されていようが、その場にいる全員が激しく燃え上がることが出来るのがロック・ステージなのじゃ。 主人公の永遠のロックン・ロール・ドリームの第一章、ここに完結せり!


この胸の高まり、大人に分かってたまるか!

■デトロイト・ロック・シティ■

【製作】1999年アメリカ
【概要】舞台は1978年アメリカ。 ハードロック・バンドのキッスに夢中な田舎の高校生4 人が、デトロイトで開かれるキッスのコンサートに辿り着くまでに繰り広げるお笑いシーン満載のコメディ映画。 
 ある日、少年たちの母親の中で、もっともキッスを恨み嫌う母親が4人分のチケットを燃やしてしまう。 諦めきれない少年たちは、幸運にもラジオのロック番組の抽選でキッスのチケットに当選(?)して一路デトロイトへ向かう。 しかしデトロイトに到着してからチケットが無効だったことが発覚。 コンサート開始まで、4人に残された時間は僅か2時間。 決してメゲナイ4人は、チケット代捻出(コンサート会場潜入)に全てを賭ける! 男性ストリップ・コンテスト出演、カツアゲ、スーパーマーケット強盗、コンサート会場裏口捜査。 果たして4人は、無事にキッスのコンサートを観ることが出来るのか!

【解説】
 諸君は、少年時代に大切にしていたロックのレコード、ポスター、本なんかを親に捨てられたことはあるかい? わしは何度かあるぞ! だからといって親を恨んではいないが、あの時流した悲しみの涙の熱さは今でもはっきり覚えておる。 だからこそ、わしは4人の少年に肩入れしてしもうて、最後の最後まで彼らを応援しながら観ておった(笑)
 たかがロックンロール、たかがキッス。 されど少年たちにとっては、この世に生を受けて以来最大のイベント、最愛の対象なのじゃ。 何がなんでもコンサート行って、憧れのキッスを観る! その熱い気持ちが十分に理解できる人ならば、ハードロック、キッスという設定に偏見をもつことなく観てみてほしい! これが青春であり、これが純粋なロックンロール・スピリットなのじゃ!
 別にキッスじゃなくても、エロアスミスでもクイーンでもいいんじゃが、やっぱビジュアルがもっともワルそうな(笑)キッスをストーリーのアイコンに設定したのはこの映画の最高のアクセントじゃろうな。

 それにしても、青春時代のエネルギーってのはすごいものじゃ。 わき目も振らずに目的を完遂しようとする! まあカツアゲとか強盗とかは褒められた行動ではないけれど、こう言っちゃなんじゃがロックンロール的! それに4人つるんで行動するのではなく、各人が懸命に考えて一人で事を起こす勇気は大いに讃えたい。
 結局誰一人としてチケット代を稼ぐことはできなかったものの、自分自身の意志と行動による必死のアクションに、神様が粋なプレゼントを用意する。 偶然に関わり合った女性たちから、熱~いキッスを贈られたり、童貞を捨てることが出来たり、とてもロックン・ロールな体験が待っていたのじゃ! コンサート開始前の約束時間に集合場所へ戻ってくる彼らのシルエット映像は、既に逞しい青年じゃ。 そんな彼らの姿に、最後のどんでん返しが待っておることを予感させられる!

 一説によると、キッスのジーン・シモンズが脚本に加担しておるらしく、ラストシーンではキッスのライブ映像が挿入されておる。 わしはキッスって今までアルバム1枚まともに聞いたことがないが、このラストシーンで初めて「キッスっていいじゃないか!」って感じてしまった(笑) それだけ4人の高校生そのものになって、この映画を楽しんでいたのじゃ!


Remember The King、キングを忘れるなよ!

■ グレイスランド ■


【製作】1998年アメリカ
【概要】新妻を事故で失なった傷心の若者と、自らをエルヴィス・プレスリーと名乗る初老のヒッチハイカーとの心の触れ合いを描いたロードムービー。
 妻が亡くなったメンフィスへ向かう途中に若者が出会った“エルヴィス”は、エルヴィス・プレスリーとは似ても似つかぬただのオジサン。 しかしオジサンは「エルヴィス・プレスリーは死んでいない。 俺は20年もの長い旅を終えて、ファミリーの待つメンフィスへ戻る途中なのだ」と言い切る。 胡散臭さプンプンの“エルヴィス”だが、道中に出会う人々は皆んな親しみをこめて彼を“エルヴィス”と呼ぶ。 「一体彼は何者なのだ?」と混乱する若者は、やがて“エルヴィス”の持ち込んでくるハプニング、アクシデントに巻き込まれながら、次第に“エルヴィス”と心を通い合わせることになる。 「いつまでも悲しみの中に閉じこもるのは止めろ」「自分を許す事だ。 愛する女も神も許せ。 新しい出会いは辛い思いをしなくてすむと信じろ」。 “エルヴィス”の言葉は、ゆったりと、そして優しく若者を辛い過去の体験から解放していく。

【解説】
 この映画は大人のお伽噺じゃろう。 “エルヴィス”はちっともエルヴィス・プレスリーに似ておらず、最初は観ていてギャグにもなっていないただのアホなおじさんじゃ。 一方妻を失った若者はリアルな存在。 この両主役の凸凹さ加減に加え、ダイナーの女主人、スピード違反で両者を拘束する警官、モーテルに乱入してきたあばずれ娘たち等、次々と登場する行きずりの者たちはこぞって“エルヴィス”の味方になるストーリーは少々難解!? 
 “エルヴィス”に巻き添えを食らった若者が、「エルヴィス辞典」を買って“エルヴィス”に色々と質問することで真偽を見極めようとするシーンもあり、コメディなんだか、ヒューマン・ドラマなんだかよくわからないストーリーに頭が混乱してくるものの、次第に「このおじさん、本当はエルヴィス・プレスリーかも?」と馬鹿げた思いが脳裏をかすめるから実に不思議な映画じゃ!(笑)

 メンフィスが近づいてきた某地域では、マリリン・モンローの成り切り嬢も登場。 こちらは“エルヴィス”と違って、よくあるモンローのそっくりさん。 彼女の当たり前さ加減が、モノマネではない“エルヴィス”の存在を益々ミステリアスにしていく。 (ちょい役で、ハンフリー・ボガードのそっくりさんも登場する。)
 しかし旅の道中にハプニング、アクシデントに遭遇する度に、“エルヴィス”は含蓄ある言葉で若者を魅了していくのじゃ。 その言葉は、エルヴィス・プレスリーの人生訓、後世に伝えるべき名言、名歌詞の数々であり、 エルヴィス・プレスリーこそ、アメリカの心を歌い続けた永遠のキングであるという「“エルヴィス”からの啓示」と受け止めるべきじゃろう。

 ラストシーンは、グレイスランドでの「エルヴィス復活祭」。 蝋燭をかざした大勢のファンがグレイスランドに列を成す情景を見ながら、「俺はこんなにたくさんのファンに愛されていたんだな。 なんて幸せな男なんだろう」と“エルヴィス”は呟く。 ここまでくるともう笑えない。 恐らく“エルヴィス”は、天国のエルヴィス・プレスリーの魂の化身であると信じて疑っていないのじゃろう。 “エルヴィス”の言葉は、エルヴィス・プレスリーの言葉そのものなのじゃ。
 ベーブ・ルース、フランク・シナトラ、ハンフリー・ボガード、ジェームス・ディーン等、アメリカン・ヒーローを題材した映画は少なくないが、「グレイスランド」は大人のファンタジアというスタイルでアメリカン・ヒーロー・エルヴィス・プレスリーの真髄に迫ろうとした傑作じゃ。

 ちなみに“エルヴィス”おじさんのファッションは、ピンクとグレーのナッソー2着にツートーンのイタリアン・カラー・シャツ。 シューズはコンビ・コイン・ローファー。 指にはホースシューリングが輝いておる! この映画の衣装担当はThe-Kingだったのじゃ、ってのは冗談(笑) 
 またラストシーン間近において、国道沿いのカジノのステージで、ブルーのジャンプスーツを着たエルヴィスおじさんは「サスピシャス・マインド」を熱唱。 空手の型を導入したエルヴィスそっくりのアクションは見ものじゃ!



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