NANATETSU ROCK FIREBALL COLUM Vol.284



50年前/1968年のロック
 ハロ〜諸君。今回は久しぶりにロック・ネタに戻ってみたい!
 過去の連載を振り返ってみたら、第270回からずぅ〜と「ロック回り道紀行」の旅ネタばかりじゃったから14回ぶり、約半年ぶりのロック回帰じゃ。 毎年年初恒例の“ロック温故知古”的な「云十年前のロック・シリーズ」でいくぞ!

 まずは50年前、1968年のロックじゃ。 前年の1967年に、ドアーズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ベルベット・アンダーグラウンド、プロコル・ハルム等ロック界史上最強の新人ロッカーの布陣が勢ぞろいしたばかりであり、この年は全体的にちょっと地味目ではあったが、それでもロック史上に輝く名作が続々と発表されておるぞ!
 まあこの年の年末にエルヴィスの「カムバック・スペシャル」があり、「他の事は全部忘れてしまった!」「カムバック・スペシャル以外知らん! 知る必要なし!!」って方も多いと思われるので(笑)、「へえ、この年にこんなアルバムが出てたんだ」的にあらためて振り返って頂けると、まあ嬉しい?!
 う〜ん、お若いロックファンにおいては、ハードロック、プログレ、ラーガロック、アシッドロック、トラッド・ロック、フォーク・ロックと、とにかく多様化を極めてようとしていた当時のロックシーンの動き、多様化の原初的な部分を分かって頂けるかもしれん。
 ブライアン・セッツァー・オーケストラのコンサートで、皆さま少々お疲れじゃろうから、かる〜くロックの歴史でも振り返ってみっか!的リラックス・モードで御覧頂きたい。


2018年ロック回想録@ 50年前/1968年のロック
サイケデリック真っ盛りの中で発表された、
    流行と良縁、無縁だった問題作の数々!



1 やはり、リーダーは
ジョン・レノンじゃないと!
2 エレクトリック・
 ダーク・スイート・ワールド 
ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)
  /ビートルズ
  ■エレクトリック・レディ・ランド
 /ジミ・ヘンドリック・エクスペリアンス■
 まっさらなジャケット、バラエティに富みまくった楽曲群、ジョン・レノンの当時の指向性が炸裂、ジョンに引っ張られてポール・マッカートニーもロック!
 ある意味で前作『サージェント・ペパー』と正反対なスタイルなので、わしは大好き! ロックンロールの奥義を極めたビートルズの最高傑作であると、今でもそう思うとる!
 CD化になって各楽曲別個のチョイスによる個人的編集が可能になった後、収録された全30曲をジョンの曲中心、ポールの曲中心、ロックンロールナンバー主体、長尺ナンバー主体等など様々な曲の配列を試みたもんじゃが、いかなる編集で聞いても最高(笑) ブートレッグや20世紀末期に発表された『アンソロジー・シリーズ』によって当アルバム収録曲の別テイク、デモテイク、未発表曲等を多く聞くことも出来たが、こちらをオリジナル・アルバム通りに配列させて聞いてもまた最高! 自分でも病気なんじゃないか?ってぐらい好きなアルバムじゃ。 

 その原因は、ジョン・レノンのリーダーシップが蘇っているフィーリングを強く感じさせるからじゃろう。 やはりビートルズは、目に見えてジョンが先頭切って走っている時がもっともカッコいい。 ジョンの感性先行型による美しさと危うさがビートルズの基本であり、それは芸術家集団化した活動後期でも同じじゃ! そしてジョンが突っ走って、刺激を受けたポールの才能もどんどん覚醒していくのがビートルズのベスト・スタイルじゃ!
 60年代中期、『ラバーソウル』『リヴォルバー』はジョンとポールの2頭並立、『サージェント・ペパー』はポール先行、なあ〜んとなく“いびつ”なビートルズじゃったが、本作でわしの大好きなビートルズ・スタイルがカムバックしたのじゃ。 

     ロックアルバムの魅力のひとつを、精神的な印象世界で例えるならば、それは暗闇の中で彷徨う緊張感と心地よさの同居であり、またその暗闇の中で遠くに僅かな灯を見つけて、そこへ辿り着くまでの心象変化を味わうことじゃ。 この観点における傑作がドアーズのファースト(1967年発表)と本作ではなかろうか。
 長らく「傑作」「問題作」と騒がれ続けておるが、別にジミが驚愕のテクニックをぶっぱなしまくっておるわけでもなく、聞いたこともないミョーチクリンなドラッグ・ミュージックが蔓延しておるわけでもない。
 本作に描かれておるのは、ジミがギターによって初めて観ることができた(迷い込むことができた)人間の潜在能力という限界の見えない精神世界との交遊であり、その危うさと香しさに聞く者は抗いがたい誘いを受けるのじゃ。

 ジミのギターテクニックに関する様々な談話を、わしはそれこそうんざりするほど読んできたが、最近になって「結局ブルースというカテゴリーから抜け出してはいない」などといった論調が目立つ。
 アホかっ!って言いたくなる。 そんな事をしたり顔で言っとる連中ってのは、ギターとしかお話ができないオタク君に過ぎす、ジミが何故あそこまで激しくギターを弾きまくったかってな根本的なスピリチュアルなスタンスをとってジミのアルバムを聞くことが出来ない連中じゃ。
 現在の年齢が何歳であれ、自分の人生がいまだに暗闇の中にあると感じておる方は、是非本作を聞いてみて「暗闇の中、遥か遠くに点滅しておるジミのシグナル」を辿ってみてほしい! そこは新しい生の突破口かもしれない。



3 アルバム苦手な
ストーンズ初の大傑作!
  4 果たして再び太陽は昇ったのか、
 ドアーは開かれたのか?
■ベガーズ・バンケット/ローリング・ストーンズ■    ■太陽を待ちながら/ドアーズ■
 60年代のストーンズ最高傑作のアルバムとの評価を受け続けておるが、ちょっと待った!(笑) その前にだな、ストーンズが高水準のオリジナル楽曲を中心に作り上げたアルバムってのは、本作が初めて!ってことを再認識しておいてほしい。
 大ヒット・シングルは何枚か発表し、ライブ活動も盛況ではあったが、アルバム製作においては、それまでのストーンズにはビートルズに匹敵するようなまともなオリジナル楽曲集が無かったのじゃ。 なんてことをミックやキースに指摘したら、それこそ半殺しにされるじゃろうが(笑)、これは事実じゃ。

 とまあ、最初にストーンズに対してケチを付けてみたが、本作のクオリティはロック史上初の「オリジナル・ブルース・ロック・アルバム」じゃ。 黒人ブルースのコピー、アレンジから一歩踏み出し、ロック界の中で通用するオリジナルのブルースを堂々と世に発表したのは、恐らく本作が初めてじゃろう!
 唱法もギタートーンもリズム感も白人プレイ(当たり前じゃけど)じゃが、ほどよく“黒っぽく”て、それまでの白人ロッカーには無いアウトロー・フィーリングを醸し出すことに成功した素晴らしいホワイト・ブルース・ロックじゃ!
 ロック・ミュージック、かつては不良たちの絶対的シンボルのようにいわれたもんじゃけど、その原因は良い子ちゃんポップスの正反対である危うい暴力性とセクシャリテをまとった歪んだエレクトリックサウンドであり、その原型が本作であると思う。
 当のストーンズも、60年代の半アイドル時代に完全に別れを告げて、本作を皮切りにして本物のワイルド・ロックンローラーへと大変身することになる!
     デビューから僅か1年余り、アルバム2枚によって早くもポテンシャルの頂点まで駆け上ってしまったドアーズ、苦悩のサードアルバム。
 ポップ音楽史上空前絶後の実存主義的楽曲によって当時もっとも衝撃的な存在となったドアーズも、ミュージックビジネス界の慣習に呑み込まれ、充分な製作期間が設けられることなく、芸術的完成度よりも商業性を優先して見切り発車で発表された感が強い。
 しかしながらオープニング曲「ハロー・アイ・ラブ・ユー」が全米No.1ヒットとなり、また美しくポップな全体のアレンジがヨーロッパでも人気を呼び、ドアーズの人気が世界的規模に広がる皮肉な結果を呼び込むアルバムとなった。 名プロデューサー、ポール・A・ロスチャイルの手腕によって、辛うじて凡作の評価を逃れ、バンドに巨額の富をもたらした作品じゃ。

 一方では、消化不良の楽曲が多い内容にもかかわらず大ヒットとなった現実は、当時「ロック界最高のアイコン」として若者の教祖的存在になったジム・モリスンがロックに興味を失う事態を招くことになる。 また膨大なテイクのトラックを録って、ベストテイクを繋ぎ合わせて楽曲を完成させようとするポールのやり方に対し、ジムは「この奴隷使いめが!」と泥酔状態をもって反抗し始めたとされている。
 天才芸術家肌のジムと完璧主義者の職人ポールとの緊張関係が以降のドアーズ・サウンドの実体となるだけに、本作はいわば“第二のファースト・アルバム”と位置づけ、 大傑作だった前2作とは切り離して認識しておいた方が良いだろう!


5 ルーツミュージックのルーツ 6 ブリリアントなジャニス!
ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク/ザ・バンド■    チープ・スリル/ビッグ・ブラザー・アンド・
  ホールディング・カンパニー■
 サイケデリックだ、ラーガ(インド)だ、ニューロックだと騒がれていた当時のシーンの風潮を真向から否定したスタイルで登場したのがザ・バンド。
 今で言う“ルーツ・ミュージック”で埋め尽くされた本作を引っ提げてさりげなくデビューしたが、騒ぎ出したのは当時のミュージック・マスメディア側の良識派であり、ファンの人気が後から付いてくるといった奇妙な盛り上がりを見せていったものじゃった。
 ザ・バンドは、元々“遅れてきたロカビリアン”として揶揄されたロニー・ホーキンスや、エレクトリックに走って非難を浴びた頃のボブ・ディランのバック・バンドを長く務めており、マスコミとの関係は良好ではなかったが、バンドとして独立した直後に評価が大逆転したのじゃ!

 “ミュージック・ピンク”とは、創作活動に没頭していた山奥の山小屋(スタジオ)であり、収録曲はアウトドア生活を送りながら紡ぎ出していた事が明白なレイドバックしたカントリー、ブルース、ブルー・アイド・ソウル的なナンバーばかり。 サイケデリックな大変革期を迎えて過剰の一途を辿るシーンの流れからの逆走は、いわば「キミたちは流行が好きなのか? 音楽が好きなのか?」といったファンへの根本的な問い掛けでもあったはずじゃ!
 それにしても当時メンバーはまだ20歳半ばから後半ながら、恐ろしいまでに老成した演奏を聴かせる。 当時の若者の生の速度が早かったと判断してみても、驚くばかりのシンプルで円熟した演奏ばかり。
 既に10年近くバックバンドとしてドサ周りに近いライブ・サーキットを続けてきたバンドだけが出せる、息を潜め、角をためたダイナミズムってもんが漲っておる!
     “ジャニス・ジョプリンとバックバンドによるセカンド・アルバム。 ジャニスにとってのは最初のビッグ・ヒットを記録したアルバムじゃ。
 「サマータイム」「ボール・アンド・チェーン」「ピース・オブ・マイ・ハート」といった有名曲が収録されていて人気の作品でもある。
 ジャニスの絶大な評価と人気とは裏腹に、バックバンドの方は「下手くそ」「センスだけ」といった評価がいまだに続いておるが、ジャニスとの相性は抜群だとわしは感じておる。 ジャニスの歌に、テクニックが上手いバンドなんて必要ないのじゃ! ライブ映像を見るとよく分かるが、バンドはジャニスの盛り上げ方をよく心得ており、このバンドがあってこそ、ジャニスの素晴らしい唱法が生み出されるといっても過言ではない。
 わしは80年代中期のアメリカ放浪中に、このバンドのコンサートを観た!(まだ活動しておったのじゃ)最初はジャニスが居ないので物足りなかったが、途中からジャニスが“不在というスタイルで参加”しているような奇妙なテンションに突入していったので驚いたもんじゃ。 ジャニスとバンドの関係は、ジャニスが死してもなお健在なんじゃな〜と実感したもんじゃ。

 有名曲が収録されておるとはいえ、ジャニスの全体的なトーンはかなり抑制気味じゃ。 それはスターになる直前、まだ一人のブルースシンガーとしてしおらしく歌っておるからじゃ。 そんなジャニスを、未熟なテクニック(?)ながら、色彩感豊かな演奏でバックバンドが応えておる。 美し過ぎるコラボレーションじゃ。



7 50周年を機に再評価を!     8 異例のオーセンティックな
 トラッド・ロック
■イン・ア・ガダ・ダ・ビダ/アイアン・バタフライ■  ■ペンタングル・ファースト/ペンタングル■
 60年代末期のラーガロック、アシッド・ロックの流行を象徴するアルバム。 アメリカ大手レコード会社「アトランティック・レコード」の創立以来最高の売り上げを記録した1枚ともいわれておる。
 アナログB面全て費やしたタイトル曲の長尺性、全編に漂う妖しいインド・サウンドとドラッグ臭の香り、楽器のソロパートのフューチャー、サウンド引導役がオルガン等、当時のロックをロックたらしめる要素が凝縮された内容は圧巻じゃ。

 しかし時代の流れとともに、「60年代末期のロックのバカバカしさを象徴する1枚」などと揶揄され、フォロワーが現れなかったためか、バンド自体をセミプロ・バンド的に扱う記事を何度も目にしてきた印象が強い。 このアルバムを皮切りに随分とラーガ・ロックを聞いてきたわしにしてみれば、後発のラーガ・ロック・アルバムよりも遥かに高いレベルでロックとインド音楽の融合を試みる方法論が詰まっており、「バカバカしい」なんてとんでもない説じゃ!
 過去を懐かしみ、再評価する風潮はアメメリカでは定期的に起こるのに、アイアン・バタフライの悪評に関してはまったく摩訶不思議。 要するにアイアン・バタフライは、このアルバム以外(タイトル曲以外)がまったくの不発に終わり、いわゆる代表的なロック界の一発屋で終わってしまったことがこのアルバムの不当な評価につながってしまっておると思う。 60年代末期のラーガロック・アルバムの最高峰としてイチオシとしておきたい。
     日本やアメリカではさほど話題にならなかったが、当時のブリティッシュ・ロック界のブームには「トラッド・ロック」ってのもあり、これはイギリスの古い民謡(トラッド)の演奏や精神世界をモチーフにしたロック。
 特にペンタングルは、バート・ヤンシュ、ジョン・レイボーンなる二人のギターの名手がおり、またリズム・セクションがジャズ畑の出身という特異性がサウンドに遺憾なく発揮され、結果として独特のポップ性をもってロックシーンの中でも活躍しておった稀有なバンドじゃった。 トラッド系で他に有名じゃったのは、名シンガーのサンディ・デニーのおったフェアポート・コンベンションかのお。

 4人の優秀なバックメンバーもさることながら、女性ボーカル・ジャッキー・マクシーの清楚で憂いのある歌声も魅力であり、ペンタングルの大衆人気を決定づけた要因でもあった。
 残念ながらライブを体験する機会は無かったが、このデビューアルバムではジャッキーの歌声を基軸にしながら、バックメンバーたちが適度に独自のテクニックをかましながら実にスムーズにナチュラルに英国トラッドの深遠な世界へと誘ってくれる。
 まあリズムセクションだけ聞いておると完全にジャズなんじゃけど、全体のトーンとしてはイギリスの優秀な田舎楽団の室内楽って風情であり、酒よりも紅茶がススム感じかのお〜。 民謡の世界なだけに歌詞はよお分からんかったが(笑)、当時の新進バンドに漂う過剰なアート志向や特異性が希薄な分、非常にイギリス的オーセンティックな味わいに惹きつけられたわい!


9 上手過ぎたのが
   イケナカッタのか?
    10  素晴らしいかどうかは
      別として?!
■トゥルース/ジェフ・ベック・グループ■  ■クリームの素晴らしき世界/クリーム■
 かつては、「レッド・ツェッペリンの原型」と言われた第一期ジェフベックグループのファースト。 それまで無名だったロッド・スチュワート、ロン・ウッド(ベース)を輩出したバンドとしても名高い!
 まあツェッペリンがこのJBGを参考にしたってのは分かり過ぎるほどじゃけど(笑)、ツェッペリンほどの衝撃を当時のシーンに与えられなかったことも事実。 う〜ん、ロッドもジェフもブルースが“上手過ぎ”なんじゃよ。 だから衝撃性の前に古臭さがきちゃうんじゃよな〜。

 ジェフもロッドも当時のロック水準の遥かに上を行くスゴイプレイをしておるが、ロニーもスゴイ! 切れ味鋭くシャープなベースをビシビシキメまくっており、当時の“ミスター・ベース”野郎じゃったクリームのジャック・ブルースを凌ぐハードなギャロッピン・ベースって感じ! この辺の事は誰も話題にしておらんので、わしが声を大にしてお伝えしておこう! ロニーは後にギタリストとして高名を博することになるが、ベーシストとしても一流じゃよ。
 ロッドとロニーの二人に脚光を浴びせさせただけでもジェフの功績は讃えられるべきじゃが、いかんせんジェフにはリーダーとしての資質が無さ過ぎたってことがアルバムの随所に聞こえてくる、ちょっと散漫な収録内容ではある。
 ちなみに、アナログ盤におけるB面1曲目「ベックズ・ボレロ」は、ジミー・ペイジがジェフにプレゼントした一曲と言われ、JBGとは別個で録音されており、ドラムはキーズ・ムーン(ザ・フー)、ベースはジョン・ポール・ジョーンズ(後にツェッペリン)が参加。 クラシック・ボレロ・スタイルのインストであり、確か2006年ジェフのロック殿堂入り記念ステージで、ジミーが飛び入りして披露された一曲じゃ。

   
     アナログ盤は、スタジオ盤、ライブ盤がカップリングされた2枚組。 スタジオ盤1曲目「ホワイト・ルーム」、ライブ盤1曲目「クロスロード」、この2曲だけでセットアルバム全体のクオリティと人気が保たれておる! 両ナンバーは、ミディアムテンポとアップテンポとスピードは対照的じゃが、3人の演奏者ががっぷり四つに組んだめくるめく濃厚な演奏であり、白人ブルースロックのカッコよさを十二分に堪能できる永遠のハードロックの名曲じゃ。
 ジェフ・ベック・グループは後のツェッペリン等、後発のハードロックバンドに如実に影響を与えたが、クリームは3人のメンバーが勝手にそれぞれの高みを目指して突っ走ってしまったので、フォロワーを生むに至らなかったものの、上述の2曲においては、奇跡的ハイレベルな3人のコラボーレションを聞くことが出来る。

 「他の楽曲はどうなんだい?」と聞かれると困ってしまうが(笑)、エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーという3人の超テクニシャン・プレイヤーたちの個別の演奏を聞く為には、バラエティに富んだラインナップだけに好都合。
 しかし専任ボーカリスト不在がクリームの唯一のウイークポイントであり、収録楽曲数が増えるとその点がより露わになってしまう。 非難の集中攻撃を承知で言えば(笑)、演奏は超絶じゃが、ボーカルの弱さ故に曲によっては二流バンドっぽく聞こえてしまうのも確か。 プロデューサーは、後にアメリカン・ヘヴィロック・バンドの始祖と言われるマウンテンを結成したフェリックス・パッパラルディであり、様々なアレンジを施してはいるが、二流っぽさを拭い去るには至っておらず?! だから余計に「ホワイト・ルーム」「クロスロード」の完成度のスゴサが際立っておるのじゃ!
 


Spacecify
今回の10選から漏れてしもうたアルバムは、

『アット・フォルサム・プリズン/ジョニー・キャッシュ』
『ラブ・イズ/エリック・バードン&アニマルズ』
『イーライと13番目の懺悔/ローラ・ニーロ』(右写真)
『クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル・ファースト』
『スーパー・セッション/M・ブルームフィールド、アル・クーパー、スティファン・スティルス』
『ドック・オブ・ザ・ベイ/オーティス・レディング(コンピレーション)』
『ラストタイム・アラウンド/バッファロー・スプリング・フィールド』
『ニール・ヤング・ファースト』

といったところじゃな。
 相変わらず、時期が変わればランキングも変わって来るいい加減なセレクションじゃけど(笑)、この8枚も併せて記憶にとどめておいて頂けたらありがたい。
 新人ロッカーとしては、マーク・ボラン(ティラノサウルス・レックス)、ディープ・パープル、ムーブ、フリートウッド・マックらがこの年にデビューしておる。 やっぱり前年と比べれば衝撃度は薄れるが、後のロックシーンを彩る優秀なロッカーが続々と出現しておる最中であることには変わりのない年じゃ。

では次回のこのシリーズは45年前、「1973年のロック」といきたい。 シーユーアゲインじゃ。




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