NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.262

 只今約一年半ぶりのカンボジア王国の旅の最中じゃ。 都合四度目の周遊なんでかなり現地慣れてしてきており、wifi事情に四苦八苦する以外は割とすんなり、のんびり旅を続けておる。
 ところで諸君は、カンボジアという国に対してどのような印象をお持ちじゃろうか? 多分、「国の名前しか聞いたことがない」「大古代遺跡アンコールワットしか知らない」という程度だと思う。 ちょっとススンデ「あっ、猫ひろしが五輪に出場するために国籍取得をした国だろう」なんじゃないかのお。
 実はわしの旅仲間の間でもカンボジアが好き!という連中は皆無なのじゃ。 はっきり言って全然人気がない。 「今度またカンボジアに〜」なんて言うと、大概は「何を好き好んで〜」って顔をされるか、ほとんどノーコメントじゃ(笑) 実際にカンボジア内を旅しておっても、日本人の若者に会う機会は非常に少ない。 都市部で半ば隠居しておる日本人高齢者も周辺諸国に比べればその数は僅かじゃ。

 でもカンボジアって国は、わしは大好きとはいえないが、近くまで行ったら必ず入国しておきたい国なのじゃ。 まあ旅人になっても生粋の天邪鬼な性格がカンボジアに足を向けさせておるのかもしれんが、わしなりに周辺諸国とはまた違った魅力を感じておるのじゃ。 今回は久しぶりに「ロックねた」を忘れて、わしなりの「カンボジアの魅力」をお届けすることに致しやす。

アセアン“最不人気国”カンボジアの旅事情を語ろう!


■ カンボジア不人気5大要素 ■

まず最初に旅仲間の声を集めて「カンボジア不人気」の原因を5つご紹介しよう。 これはわしの意見ではなく、数多くの旅仲間が語る総論じゃ。

@ローカル飯が不味くて安くない

 放浪、貧乏旅行最大のイベントは何はともあれ食事じゃ。 有名レストランに行ける身分ではないので、足しげく通うのは地元民と同じローカル食堂。 これがカンボジアの場合は味もお値段も非常によろしくない。 貧乏旅行なんだから「そんなもん、我慢しろ!」と言われて然るべきじゃが、隣国のタイ、ベトナムの食事事情が良いだけに、カンボジアの場合はかなりイライラしてくる。
 わしもカンボジアのローカル飯に対する第一印象は、「タイ料理、ベトナム料理、中華料理の出来損ないみたい」であり、何を食っても味は「食べられる」程度。 お値段も一食100〜150円程度でそこそこ美味い飯が食えるタイやベトナムに比べれば、カンボジアは200円ほど払っても大した物は食えない。
 それに家畜の飼料事情が良くないのか、鶏肉も豚肉も何だかプリプリ感がなくてバサバサしており、奮発して200〜300g食べても満腹になっただけで満足感はあまり得られない。

A宿泊費が高い
 まあド底辺の安宿は一泊5〜6ドル程度だから周辺諸国とあまり変わらないが、これがエアコン付き、ホットシャワー付きとなると、とたんに15〜20ドルになる。 しかしシャワーの水圧も高くはなく、エアコンの効き具合も悪い。 何だか現地人が満足するレベルに故意的に抑えられておるようで決して快適ではないのじゃ。
 それでwifi事情も良くないとなれば到底15〜20ドル払う価値はなく、ド底辺の安宿で悶々と生活する方を選ばざるを得ないというのが貧乏旅行者の実態じゃ。
 

B女の子がかわいくない?!

 これは個人の好みの問題じゃろうが、概して皆様そのようにおっしゃっておる(笑) 美人の宝庫との誉れ高いタイ、美肌/スレンダー・レディが目白押しのベトナム、情熱的エキゾチック・レディが多い(らしい)フィリピンに比べればまあ分からんこともない・・・かな?! 食事事情同様に、貧乏旅行者がとやかく言う資格なんぞない問題じゃけど、まあ目の保養も時には必要なんで、文句ぐらいは言わせてやってくれ!

Cアンコールワット以外、観るべきポイントが無い

 シェムリアップというカンボジア西部の地域には大世界遺産アンコールワットがあるが、それ以外では首都プノンペンにも観光ポイントは少なく、ビーチリゾートも少々さびれた所が多い。 まあアンコールワットだけが飛びぬけて観光価値が高いので、他のポイントの陰が薄くなっちゃっておる気もするが、今のところさしたる有名な特産物やその産地も無いから、基本的には長期滞在には不向きな国なのかもしれんな。 実は果物の王様ドリアンやコショウはカンボジアの特産物なんじゃけど、商売上訳あってその称号はドリアンはタイ、コショウはベトナムに譲っておるのが実情じゃ。


D国境地帯は賄賂や不正行為が横行

 この段階になると、もはや「文句言うついでに〜」のレベルじゃけど、タイとの国境の町、ポイぺト、コッコンは異国情緒もへったくれもない。 あるのはカジノと外国人特別料金の“クソ高い物価”だけ。 さらにより国境目前のイミグレーション付近では、立派な制服を着た国境警備隊や警察官が何だかんだと陸路で国境超えをしようとする外国人に屁理屈を押し付けてきて賄賂を請求してくる。
 出国書類やるから2ドルとか、審査の順番を早くしてやるから5ドルとか、さっきタバコ(ビール缶)ポイ捨てしたから10ドルとか。 出入国審査窓口の数はどんなに旅行者がたくさんいても決して増えず、審査官の仕事っぷりもダラダラ。 順番待ちの旅行者をイライラさせて賄賂請求に応じやすくするための算段なんじゃねーのかって疑りたくもなるもんじゃ。 だから出入国の際にカンボジアに対して悪い印象を決定的に与えられてしまうのじゃ。
 おまけに、国境の免税店においてはひと昔前までは酒やタバコの偽物が結構あった。 わしも10年ほど前、あまりの安さに飛びついたジャックダニエルが、中身は死ぬほど不味い得体の知れない酒じゃった。 タバコなんざ、カートンのパッケージは立派な洋モクでも、開封してみたらカンボジアの安タバコなんて事はザラだったらしい。 酒もタバコも開封するのは国境を越えた後だから、これはもう泣き寝入りするしかなかったのじゃ。


■■■ 不人気5大要素に対する、七鉄流妥協案&本音 ■■■

@不味い、高いのローカル飯対策

 確かに美味しくない!というか、わしには味付けが濃過ぎるのじゃ。 でも文句言ってても、外国人相手に味の改善なんざしてくれないので、自分で工夫するしかない。
 まず店先で食べずにテイクアウトする。 宿に戻っておかずだけ軽く湯通しをするのじゃ。 その後日本から持参した昆布出汁とかほん出汁をサラリと振りかけて食べれば問題無し! だから長旅には小型ケトル(湯沸かしポット)と手軽なスティック状の出汁は必需なのじゃ。
 値段に関しては、相当の上客にならんとマケテくれないのでもう諦めとる。 その分、カンボジアは周辺諸国よりもビールが格安なんで、ビール代をプラスして計算すれば周辺諸国の食費とほぼ変わらなくなるように心がけておる。 セコイぞ、七鉄!と思われるかもしれないが、一日でも長く旅をしたいのであれば、こうした細かい経費計算が絶対必要なのじゃ。 この点に関してズボラな輩は長旅には向かないと言えるじゃろう。


A高い(と思われる)宿泊代の実態

 わしの経験上、「高い」というのは錯覚というか、リサーチ不足じゃ。 よくよく振り返ってみると「高い」と言っておる輩は、日本人旅行者が集まりやすい地域に宿をとりたがっておる気がした。 日本人ってのは「しょうがないな〜」とか言いながら相手の言い値で払ってしまう傾向が強いから、日本人旅行者を対象とした地域は何でも高いのじゃ。
 そこで別の地域をリサーチしたところ、結構コスパの良い宿が見つかった。 海外に行ってしょっちゅう日本人とツルモウとは思っておらんので、この点はあっさり解決した。 まあ結果としてガラのよろしくない白人旅行者がたむろする地域ばっかりになったがな(笑)
 筋骨隆々の荒くれ白人どもに酒飲んで絡まれたって、大概そういう所はロックがBGMで流れておるから話題を強引にロックにもっていき、自慢の知識を披露すれば大概奴らはおとなしくなる!(大笑)
 そりゃそうじゃ、生半可な欧米のロックファンなんか太刀打ち出来ない知識をわしはもっとるからのお〜♪どっからでもかかってこい!ってなもんじゃよ。 ロックの何を話しておるかって? お前はそんなに英語が話せるのかって? バカモノ! 店でかかっておるロックの発表年(年代)を適当に言い当てて、この頃は他に〇〇というバンドの□□という曲があったのお〜。 ヴォーカルやギターは誰それで、彼らは翌年には△△ってアルバム出したなあ〜とか矢継ぎ早に言っとるだけじゃ(笑) その程度の英語ならわしだってまくしたてられるぞ! 要は連中に会話の主導権を握られないための度胸じゃよ、度胸!

B「かわいくない」と言われるクメール(カンボジア)・レディへの本音

 現地女性に対して「ああじゃなきゃだめだ」「こうあるべきだ」なんてほざいておるのは、現地女性に日本男児の魅力を分からせて、あわよくばネンゴロになろうという幻想の持ち主じゃ。 この歳になってまで行く先々の現地の女性とヨロシクやるつもりは、わしにはまったくないから「かわいくない」「美しくない」という意見には到底賛同できない!
 クメール・レディには、タイやヴェトナムのレディには無い魅力がある。 まだまだ垢ぬけていない分、素朴で愛らしい笑顔があり、健康的に輝く褐色の肌はとても新鮮じゃ。 「かわいいね」「よく働くね」と褒めてあげれば素直に喜び、返答に困るようなからかいをすると途端にムッとする。 フィルターをかけないそのダイレクトな反応は古今東西ちょっとおめにかかれないストレートな魅力にあふれておる。

 また外国人旅行者が数多く出入りするホテルやカフェで働く女性は、他の数多の職場よりも給料が良いので、彼女たちのかよわい双肩に家族の生活がかかっておる。 だから仕事ぶりは真面目であり、ピュアなホスピタリティーに溢れておる場合が多いのじゃ。 もちろんその正反対のレディ、つまり超不愛想な方も少なくはない。 でも両タイプともいわば素のまま。 一生懸命な姿に邪念があまり感じられないから、その素の姿が眩しいわい。
 大体、現地女性論を口角泡を飛ばして力説しとる日本人旅行者ほどみっともないもんはない。 さっさと帰国して、グラドルちゃんとかなんとかフォーティーいくつちゃんでも見とれ!ってなもんじゃよ。 国の数だけ女性の魅力は多様なのじゃ、って力説しとるのはこのわしか!(苦笑)

Cアンコールワット以外の楽しみ方

 正直なところ、アンコールワット以外に観光ポイントがないという点に関してはわしも全面賛成?! プノンペンには映画「キリングフィールド」の草案舞台になった同名のかつての人民大虐殺地帯があるが、これは観光地とは言い難いじゃろう。 本当にアンコールワット以外は有名な観光ポイントはカンボジアには無いな。 だがそれは、集団旅行、パックツアーの視点においてじゃ。
 観光、旅行という行為を、誰もが行く有名ポイントを見て記念撮影をしてお国料理を食べることから離れて、一人になれる空間とか集団の中の孤独とかを味わいたいのであれば、結構カンボジアはその願いを叶えてくれる場所はあるものじゃ。
 海水浴客の少ないひなびたビーチ、「お代わりはまだか」とせかすウエイトレスのいないカフェやバー、人込みでごった返しておるストリートの端っこで約50円の珈琲一杯でいつまでもほっといてくれるほったて小屋同然のお茶屋、道路沿いに延々と点在する露店の飲み物屋、缶ビール2缶ほどご馳走すればいつまでも世間話に興じてくれる女将のいる粗末な娼館など、ありきたりの観光気分を捨てて期間限定の外国人定住者のスタイルをとれば、カンボジアほど気楽になれて、しかも日本にはない光景や事実を見聞出来る国はアセアン諸国でもそうはない気がする。 もっともそれはわしとカンボジア人気質が妙に合うからなのかもしれないが。


D国境地帯の賄賂横行への対策

 賄賂をぶんどられるのは陸路で移動するからであり、これが嫌ならば空路で国境を越えれば良い!(笑)  最近は格安航空券の安値もハンパなく、タイ←→カンボジアなどのフライトチケットは時には5000円以下なんて破格の安値になる! もちろん陸路での国境越えのバス代の方が安いが、イミグレーションでの煩わしい手間暇、賄賂請求による嫌悪感なんかを考えれば、スパッと短時間で空路移動した方がよろしいかと思う。
 それでも何故貧乏旅行者たちは陸路移動を選ぼうとするのか? それは「自力で国境を越えているんだ!」という実感を味わいたいからじゃろう。
 その気持ちは当然わしも分かるが、旅の実感とは、良い事も悪い事もすべてひっくるめて湧き上がってくるものじゃなかったか? 実感が欲しけりゃ、少々のアンラッキーは致し方ないってもんじゃ。
 旅のルート上、どうしても陸路による国境越えになる場合も多々あるが、まあ賄賂は海外旅行者の特別税金みたいなものと割り切って考えるしかなさそうじゃ。 貧乏旅行者でも、カンボジア人民からすればスゴイお金持ちなのじゃ。 立派な制服を着た国境警備隊や警察官だって、月給はせいぜい2万円程度じゃ。 彼らにとって海外旅行なんて夢のまた夢じゃ。 嫉妬心から少々意地悪をされても諦めるしかないとわしは思うとる。 例え運よく賄賂請求から逃れられたって、その代わりに歓楽街でしっかりオネエサマにチップをむしりとられるんだからさあ〜♪


 わしが初めてカンボジア・首都プノンペンを訪れたのは1999年5月。 シンガポールの某新聞社から当地の外国人相手の商業施設の取材依頼による訪問じゃった。 カンボジアという国はフランスの植民地から独立を果たした1953年以来、内戦と諸外国からの干渉と圧政が続き、実に40年以上も国土が戦場と化した国じゃ。 1999年当時はようやく訪れた平和の時ではあったが、首都とはいえ街の至る所には戦争の傷跡が残り、庶民の生活は極貧。 アセアン最貧国そのものじゃった。
 舗装道路は目抜き通りのモニボン通りだけであり、そこから一区画外れると道路は凸凹でグチャグチャ。 モニボン通りにはシンガポール資本による不釣り合いな高級中華料理がずらりと軒を並べておったが、それ以外はほぼ掘っ立て小屋の店舗と家屋。
 カンボジア入国当夜、現地のエージェントに「今夜はカンボジア入国祝いです」と言われていきなり連れていかれたカラオケ・スナックも、裸電球に色を塗っただけの電灯が怪しく揺れる半分お化け屋敷(笑) 「ここで、仕事の打ち合わせをするのか?」とカウンター席に座って唖然としていたら、「まず誰か女の子を二人ぐらい指名して下さい」って言われて指さされた店の奥を見ると、疲れ切っていながらも目に憎悪の光を激しく宿す娼婦がズラリ・・・。 その横の大き目のソファーでは在住者らしき日本人3〜4人が指名した娼婦の下着を無理やり脱がそうとドッタンバッタンやっておった。 強烈な思い出じゃ。

 あれから16年経った2015年から今年まで3回もカンボジアに足を運んだわけじゃが、相変わらずどの街も埃っぽいものの、確実に復興への道を歩んでおる。 鉄筋の建物も増え、高層ビルも少々。 かなりの広域にわたって道路は舗装され、娼婦もめっきり減った。 1999年の思い出があまりにも心に突き刺さったままなので、現在のカンボジアにはとても安堵感を抱いてしまうのじゃ。 タイやヴェトナムに比べれば文明化のスピードは遅いが、その遅さもまたなんだか愛おしいわい。 
 
 カンボジアに関する日本のガイドブックを見ると、取材にとても苦労しておるように思える(笑) 一般読者にカンボジアの魅力を伝えるのは難しいのじゃろう。 まだまだ日本人旅行者の少ないカンボジアは、自分なりに歴史を調べてから、自分だけの楽しみを味わうために行く国かもしれん。 ひととき徹底的に日本を忘れ、21世紀型最新文明も忘れて、さて自分に何が出来るか、自分は何をしたいのか。 それを探すためには悪くない国じゃ。

 必死なようでどこかのんびりしておる庶民の働きっぷりをぼぉ〜と眺めておる時間がわしはとても好きじゃ。
 ボリたいんだかサービスしたいんだか非常に中途半端な姿勢がかわいい数々の物売りさんやバイクタクシーのにいちゃんたち、決して美味しくはないけど懸命に中華鍋を振る姿がご立派に見える屋台のおばちゃん、「お代わり、お代わり」とせかすことなく、少し離れた所から笑みをたたえながらお客をみているウエイトレス。 お楽しみがバッチリ用意されておるタイやヴェトナムよりも、時間がよりゆっくり流れていくようなカンボジアにわしは居心地の良さを感じておる。

 「ところでオメエさんは、カンボジアを訪れて何をしたくなったのかい?」って聞かれてしまいそうじゃが、その答えは「死ぬまで旅を続けたい」じゃあ〜。 おあとがよろしいようで!


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