NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.260

 The-King必殺の新作スーツを目の当たりにして、いつになくファッションモードが沸き立っておる七鉄じゃ! もう一回早く発表されておれば、現在開催中の「デヴィッド・ボウイ大回顧展」に着ていけただけに誠に残念ではあるが、前回のThe-KingのHP(のどこかで)でチラリと宣言した気がする『「デヴィッド・ボウイ大回顧展」の紹介』を珍しく予告通りに執り行うことにするぞ!
 最初は「さすがは本場の展覧会がそっくりそのまま上陸しただけのことはある!」と単純にコーフンしておったけど、それ以上に「デヴィッド・ボウイ大回顧展」はこれまでの博物館や展覧会の常識を覆す、展覧会そのものがアートである事に気が付いてしまった! そして通常の展覧会の常識を超越した主催者側の創意工夫が炸裂したセット、展示内容のすさまじい充実ぶりに書いておる内に収拾がつかなくなってしもうたわい?!
 でもやっぱり諸君にも足を運んでもらいたいんで、ちょっとオチャラケタ架空インタビュー形式で七鉄節を随所にかましながらやってみたい(笑) 本当はデビッド・ボウイとの架空対談ってのも考えたが、ボウイが亡くなって一周忌に合わせたかのように上陸した一種のアニバーサリー的イベントになったんで、ボウイの価値を下げないためにもそいつはNGとした(笑) ありきたりのインタビュアーを用意してわしが答える形式に留めており、まあ、正面切って「デヴィッド・ボウイ大回顧展」を書き切れない己の筆力不足のジレンマから派生した代替え案、苦肉の策じゃけど、却ってその方が諸君に気楽に読んでもらえるじゃろう!
 残念ながら会場内は完全写真撮影禁止なので、展示内容を明確にお伝えできる写真がないことが心苦しい。 代わりにネットに上がっておる画像を借用したので、その点はどうかご了承頂きたい。


七鉄、「デヴィッド・ボウイ大回顧展」に行く!〜架空インタビュー形式でお送りする、驚愕の展覧会のコメント


●まず展覧会の説明の前に、七鉄さんにとってのデヴィッド・ボウイの存在ってもんをくどくならない程度に(笑)説明して下さい。

 〜残されたアルバムを引き合いに出せば、大好きか、全然分からないか、に分かれるな!

●全然分からないとは?

 〜歌詞はワケワカランし、サウンドも「なんじゃ、コレ?」ってアルバムが結構ある。 そういうアルバムは、製作の背景とかを本人のインタビューや評論家のレビューを頼りに追及しようとしても、やり始めるとドツボにハマル(笑) まあ、わしの基本的な頭の悪さ、先鋭的アートセンスの無さが原因なんじゃけどな。

●ボウイと言えば、常にファッションが話題になっていましたが、そのセンスはいかがでしたか?

 〜170センチそこそこしか身長がないのに、いろんなタイプのスーツ類を着こなしてみせるセンスは凄かった。 というか、ボウイのスーツ姿を見ておると、スーツってのが小柄なイギリス人をカッコよく見せるために開発され続けてきたファッションなんじゃな〜と思うわい。 そういえば数年前にイギリスで発売された「メンズファッション100年史」という書籍の表紙はボウイじゃったよ。 
 でもそれはあくまでも一面であって、ボウイのファッションってのはペルソナ(もっとも重要で象徴的なユーザーモデル)戦略であり、着こなしがクールとかって以前に作品を理解する上での重要なファクターだったんじゃ。 そのファッションへのスタンスが素晴らしく斬新じゃった。 単なるヴィジュアルイメージ作りだけでなくて、作品やライフワークと実に有機的に繋がっておったんじゃよ。 

●ロックンローラーとしてのボウイは優れていましたか?

 〜ボウイは音楽家としても、シンガーとしても本質的にはロックンローラーではないと思う。 色んな音楽ジャンルの要素を導入することのできるロックミュージックの魅力を最大限に活かすことに成功したミュージック・キュレーターだったんじゃ。

●アメリカン・フィフティーズやロカビリーのファンでも感じることの出来るボウイの魅力は何処にありますかね。

 〜ボウイにとっての最初のヒーローがエルヴィスや50sロッカーだったことは有名じゃ。 大回顧展の最初の展示品はエルヴィスの写真なんじゃ。 その写真は他の展示物同様にボウイの所有物じゃ。 それだけでもボウイのエルヴィスへの信仰心が伝わってくる。
 じゃがエルヴィスや50sロックの影響をモロに感じさせるボウイの作品はほとんどない。 「そんなら、オレにはボウイなんて関係ねーな」ってなるなら仕方ないが、ジョン・レノンやジム・モリソン(ドアーズ)とともに、エルヴィスを神と崇める代表的超異端児シンガーの一人としてボウイを認識しておいてほしいわい。 彼らは、エルヴィスと50sロックを、音楽というよりも「古い因習を木っ端みじんに破壊した偉大なる文化的凶器」として己の中に深く内包していたアーティストなのじゃ。


●では、「デヴィッド・ボウイ大回顧展」の具体的な案内を始めて下さい。

 〜わしはあんな展覧会、初めて観た! いや、少々概念として近いスタイルとしては、過去に1回、ポーランド・ワルシャワの「ショパン博物館」があるかな。 とにかくだ。有名人の作品やゆかりの品を仰々しく展示しながら入場者に「凄さ」「希少度」をアピールする上から目線の展覧会ではないんじゃ。 展示品をより深く理解してもらい、楽しんでもらう工夫や仕掛けが多角的にセットされておるんじゃよ。
 エルヴィスの写真に対しても、何故エルヴィス?って来場者の疑問に答える説明書きがきちんと用意されており、さらにロニー・ドネガンの写真とその存在意義の説明まである。 まあこんなのは序の口、プロローグじゃ!

●既に2回も観に行ったと聞いてますが、よく飽きなかったですね(笑)

 〜大きなお世話じゃバカモノ(笑) 実は1回目は観賞途中で腰痛が再発して途中であえなく退散。 それでも二時間半も居たんじゃ。 2回目は来場者が多過ぎて、これまた全部じっくりと観賞出来なかった。 さっき観た物が気になって引き返して観直したり、会場内を行ったり来たりしてたんで、毎回なかなか先に進めなかったなあ〜。 3回目もあるぞ!

●いつも会場監視員に注意されていたんじゃないですか?(笑)

 〜注意はされなかったが、写真撮影が禁止だからひたすらメモをとってたし、多分要注意人物として見張られていたに違いないな(笑)

●セレブリティでハイセンスな来場者が多いと聞いてますが、さぞかし肩身が狭かったんじゃないですか?(笑)

 〜やかましーわい(笑)でもわしはボウイに対してはアルバムとか映像作品とか日本公演とかそれなりの金額を払ってきたから、にわかボウイ・ファンに比べれば遥かに“ボウイ・セレブ”じゃよ。 って、茶化すのもええが、もうちょっと展覧会そのものの話をさせんかバカモノ!


●じゃ、展覧会の全体像を分かりやすくお願いします。

 〜イメージとしては幕張メッセなんかの大きな会場で開催される「見本市」じゃな。 ボウイの楽曲、歌詞の世界、ファッション、出演映画や演劇、日本との関わり等、いくつかの明確なテーマを設定した区画が、ブースみたにセットされておる感じじゃ。 それぞれのテーマ・ブースを存分に楽しむために、視覚聴覚の両方に訴えかけてくる施行が凝らされており、日本語音声ガイドもあって見事に計算された来場者サービス満点の展覧会じゃ。
 つい見落としてしまいがちな小さな展示品も、試しに解説を読んでみると実は楽曲や映像を理解するための重要なキーが含まれておることを教えられるんで、一品も見逃すことが出来なくなってしまうんじゃ。 例えばスタイロフォンというアナログシンセのミニチュアなんかもあって、「なにこれ?」って注目すると使われた楽曲のパートの説明がある。 こんな事をやっとるから観賞時間が長くなり過ぎて腰痛が再発してしまうんじゃ(笑)

●もっとも印象的なブースは?

 〜わしにとって何はともあれボウイ最大の謎は歌詞。 描かれておる世界観を理解することは無理としても、前後の脈絡がまったく分からないモンが多過ぎる。 これは後になって「カットアップ」という前衛的な特殊書法によるもんであることだけは分かったんじゃけど、具体的にどうやるかってのをボウイが映像で説明してくれるんじゃ。 一種の特殊コンピュータ・プログラミングによるデジタル書法だったのじゃ。
 それから「スペース・オディティ」とか「スターマン」といった名曲が出来上がるまでの過程を詳らかにする展示品と映像のコラージュも素晴らしかったわい。

●メデタク歌詞の意味が分かるようになりましたか?

 〜いや、ますます分からなくなってきた(笑) ったく、ボウイの作品はどこまでもわしのタリナサを自覚させるわい!

●ファッション・ブースにもっとも来場者が群がるらしいですね。

 〜それは予め分かっていたことじゃが、印象的だったのは展示スペースに設けられた大小の段差や照明を巧みに利用して実際に着用された様々な衣装をより魅力的に見せる展示法じゃ。 衣装を着せられたマネキンが生きておるようなダイナミズムが感じられるんで、ちょっと恐ろしかったわい。 確か三ヵ所にファッション・ブースがあったが、それぞれに趣深いスペースになっておる。
 どう見ても、これは博物館とか展覧会のプロデューサー、キュレーターのセンスだけではない。 いわばコンサート・デザイナーの仕業も存分に発揮されており、ボウイの生涯を映画ではなくてライブ的ミュージアムという新しい展示会方法で表現した空間じゃ。

●映画観賞の為のブースもあるとか。

 〜映画というより、ボウイが出演した映像作品をダイジェストで紹介するコーナーだったと思う。 会場内でここしか座れるブースがなく、しかもわしはボウイの映像作品の大概はチェックしておるつもりなんで、このブースを休憩場として利用していた(笑) 観たことのない映像作品もあったような気もするけどな。

●気もする、とか、思うって、ちゃんと観てないんですか?

 〜映画ブースは最終コーナー手前にあってな。 ヘトヘトになってここに辿り着くんでどうしても流し観になってしまったんじゃよ。

●北野武、坂本龍一、山本寛斎とかが出演するスクリーンはいかがでしたか。 これは日本での展覧会独自に用意されたスペシャル追加企画らしいですね。

 〜“たけし”の撮り下ろしインタビューは、「戦場のメリークリスマス」で共演した時のコメントが中心で、これは“たけしフリーク”なら一度は耳にした事があるような内容ばかりじゃった様な気もする(笑) 昔、にっぽん放送の「オールナイトにっぽん」のDJだった時の“たけし”の口から語られたエピソードの方がおもしろかったな〜。 緊張した楽屋の雰囲気を和らげるために“たけし”が言葉の通じないボウイを笑わそうとして「やあやあ」とか言いながらボウイをくすぐりまわしたってクダリとか!
 でもこの追加企画に出演した“たけし”の弁は、なんだかボウイからの来場者への感謝の念の代弁の様に聞こえたわい。 “たけし”は今や世界的に有名な映画監督になったんで、現在の“たけし”に関するボウイのコメントが恐らく残っておるはずなんで、もしボウイが存命中だったらこの追加企画に合わせて披露してもらいたかったもんじゃ。

●3回目はどんな視点で観賞するつもりですか?

 まずは、これまで疲労で観賞が疎かになっていた最終コーナー付近から観ていき、映像作品ブースもじっくり観賞したい(笑) それにボウイが影響を受けた様々なアーティストたちが紹介されておる展示パートを重点的にチェックし直したい。 謎多きボウイへの理解度を深めるには、やはりそこを起点とするしかないからじゃ。もう今から楽しみじゃ!

●では3回目を楽しんできて下さい。 お酒を飲み過ぎないように(笑)

 〜会場内は飲食、喫煙は一切禁止じゃバカモノ(笑) 1階の物販スペースの横にあるカフェにも灰皿はないから、タバコを吸いたい方は退出した後に会場建物前の道路を挟んで右斜め前にあるコンビニまでどうぞ。 入り口前に灰皿がありますわい(笑)
 いやいや、そんな事よりもデヴィッド・ボウイに全く興味がない方が行ったらオモシロイかどうかは分からんが、今まで博物館や展覧会と音楽家ってのはあまり相性が良くなかっただけに、この「大回顧展」の構成には関しては驚くと思うぞ! 4月9日まで開催されておるので、足を運んで損はない。 映像と音楽が駆使されたまったく新しい「音楽家と博物館のあり方」を楽しめることだけはわしが保証する!

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