NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.250

 気がついてみれば、この連載も250回に到達してしまった。 まずはここまでは続けさせて頂いたThe-Kingとお付き合い頂いた諸君に心から敬意と感謝をお伝えしたい。 まこと〜に、ありがとうございます。
 それにしても200回から250回までが実に早かった。 このままではあっという間に300、400回に行きそうな勢いで怖いのお。 何が怖いって、世界中のロックファンの間で、The-Kingとわしとの認知度、存在力がどんどんかけ離れていくことじゃよ。 The-Kingの超メジャー化に伴い、七鉄は超マイナー化の一途をたどって、いつの間にかクビ・・・。 七鉄コーナーなんて元々無かったに等しくなっちまう。 何だか自分が虫けらのようなちっぽけな存在になっていくようで情けないが、まあ「一寸の虫にも五分の魂」なんて言うし、The-Kingにおける自分の立ち位置を勘違いすることなく、五分の魂をわきまえながらやらせて頂くとしよう。

 250回というと、1年24回(毎月2回)として10年を越えたわけじゃ。 10年越えりゃあ、ちいとばかしワガママなことをやらせてもらっても許されるじゃろう! ということで、自問自答、自作自演の架空インタビューをやることにしたぞ。 インタビューの形式を借りて、わしのThe-King、ボス、諸君への想い、わしのロックの感じ方や最近のロックへの素直な感想、またわしの趣味や今後の七鉄の展望(なんて大げさなもんでもないが)なんかを語ってみたい。 そんな事をまもとに書いていくと恥ずかしいんでな〜。 野に咲く花を見ていても、鳥のさえずりを聞いていても、はたまた鼻毛を抜いていても!?まだ時間が余ってしょうがないって時にでも読んでくれ!


一度はやってみたかった(笑)
頑固七鉄コーナー250回記念〜自作自演インタビュー


◆◆連載10年について◆◆

●連載250回になりましたけど、一応節目の回数を迎えた今の感想を一言どうぞ。


〜10年を越えたんじゃ。 誰か祝い酒でも持ってこんかい!ってのはジョーダンでありまして、よくもまあ10年も起用して頂けたもんじゃと、ボスにつくづく感謝しておる次第じゃ。 でも先日「こち亀」が40年にわたる連載終了の発表があったんで、それに比べれば10年なんて大したことない!と気を引き締めておるぞ。

●ってことは、まだ続けるおつもりですか?

〜バカモノ!珍しく謙虚になっとるというのにチャチャを入れるでない!

●The-Kingのボスは「いつ七鉄をクビにするか」って悩んでいるはずですよ。

〜・・・じ、実はな、ここ二、三年は受信メール箱にボスからメールが入る度にドキッとするんじゃ。 そろそろ“お迎え(連載終了)”の通知なんじゃないかと。 8鉄センセーが自ら降板した時はマジで焦ったわい。 「8鉄さんじゃなくて、七鉄こそ辞めろ」って、苦情が殺到するんじゃないかと冷や冷やじゃった。 まあボスと皆様の温情によって今までクビが繋がっておるってのが事実なんじゃないかと。

●250回の中で思い出に残っている回とかはありますか?

〜あんまりないのお〜。 なにせ250回、締め切り当日ギリギリセーフの入稿ばかりなんで、振り返る余裕もないんじゃ。 一度本文前のリード部分のノリをありきたりの季節のご挨拶みたいにしたことがあったんじゃが、さっそくボスに「七鉄の“頑固キャラのイメージ”が壊れるから止めてくれ」と軌道修正をくらったことぐらいかのお。
 もうひとつは、昨年東欧を旅しとる最中、締切日前日に朝から宿のベッドの上でPCのキーボードをを叩きまくっておったら、ドミトリーの連中数人がわしに気を使って夜まで外出していてくれたことじゃ。 みんな部屋に戻ってきた時に「仕事終わったかい?」って笑顔で声かけしてくれた時はなんか嬉しかったのお。 その中に綺麗なオランダのお嬢さんもおって、「音楽の原稿書いとる」って言ったら、「私はバイオリンを弾きます。 ウイーン(オーストリア)で待ってますから」って言われちゃってな〜。 どうもクラシック評論家と間違われたようじゃ。 いつも羽織っておったエドワード・ジャケットが効いたのかも(笑)

●人を見る目がないですね、その女性(笑) どうせウイーンで大酒飲んでフラレタんでしょっ!

〜バカモノ! こっちゃええ歳こいたオッサンじゃぞ。 そこまで図々しくないわい(笑) 「Thanks! Someday Somewhere!!(アリガト、いつか、どこかで)」って返したわい!

●いい歳こいて、キザですね(笑)

〜ヤカマシーわい! ダンディと言え、ダンディと!!

(上写真/昨年5月末、灼熱地獄のアンコールワットの石畳に映ったわしの影)


◆◆七鉄キャラと実像について◆◆

●七鉄キャラって「超頑固なロック・バカで大酒飲み」ですけど、実際の七鉄さんはどうなんですか?

〜そのまんまじゃ! まあ多少は誇張しとる部分はあるが、基本的には素のままじゃよ。 だから10年続けられたと思う。 わしみたいな単細胞な人間は、作り込まれたキャラを演じ続けるのは至難の業じゃ。
 10年前にボスに「七鉄」をやってくれと言われた時は、正直なところ「ミョーなキャラ設定じゃな」とは思ったけど、回を重ねるごとにじわじわとわしは七鉄そのものになっていったと思う。 ボスはわしの本質を見抜いておったんじゃろう!

●同じキャラ、ノリを10年も続けられると、読む方によっては飽き飽きしてくるもんですけど、今後もこのままですか?

〜「旅がらす」とか「ロック仙人」とか「私立探偵」とか、設定してみたいキャラはあるが、わしは演技が下手なんであくまでも現実の自分の姿の延長じゃないとな。 今後の人生で大きな変化があったら是非とも現実に則してやってみたい。 まあボスが末永く起用し続けてくれるなら、じゃけどな。

●七鉄さんはいわゆるThe-Kingの覆面ライターですね。 開放デーにもロカビリー・イベントにも一切顔を出さないみたいだし、その行動には何か意味があるんですか?

〜「どうせ飲み会で暴れるから絶対に顔を出すな!」とボスから言われておるんでな。 ってのは冗談じゃけど、「勝手にブレイクタイムコーナー」やボスが撮影したイベント写真なんか見ると、わしのヘアスタイルやファッションセンスは、The-Kingファンに負けちゃっとるからじゃ。 勝てない相手には喧嘩は売らない主義なんじゃ(笑) 諸君、レベルが高すぎるぞ!

●老いてなお、旺盛な対抗意識ですね(笑)

〜やかましーわい(笑) それがわしの元気の秘訣じゃ。 いつの日か、The-Kingファンの方々に「ほほぉ〜、この方が七鉄さんか」と仰ぎ見られるようなセンスを身につけたいと願っとる。 女性ファンからも「なんてステキなオジサマなのかしら!」ってうっとりされたいのお〜。 お肌の曲がり角どころか、人生の曲がり角もとっくに過ぎておるが、それがわしの人生最後の夢じゃ!

●でも現状は、ポマードよりビゲン・ヘアカラー、ホースシュー・リングより磁気リング、ギターピックペンダントよりも磁気ネックレス、スキニーベルトより腰痛防止サポーターの方が必要ですよね?

〜う・・・スルド過ぎる指摘・・・「老兵は死なず。 ただ去りゆくのみ」の時が近づいてきたかのおって、オマエ! わし自ら連載降板を申し出るように誘導尋問しとるな。 そこまでやられると、まだまだ続けてやろうじゃねーか!って逆に反逆のスピリットが湧いてくるな。ロックの原点は反逆じゃ!!

(上写真/わしのフェイバリット・ウイスキーである「オールドブッシュミルズ」)
(右写真/オキニの若手ロッカー、その1:ヴィンテージ・トラブル)


◆◆最近のロックについて◆◆

●最近のロックを聞いてますか?それとも断固拒否していますか?

〜オールド・ロック・ファンにとってキツイ質問じゃ。 自分の青春時代に熱狂したロックの枠から抜け出すのは難しいからのお。 わしも21世紀以降のロックを拒絶しておったが、旅先で知り合った元DJで30代後半のロックファンの熱心なススメと協力により、現代ロックのソースをかなり入手出来たのでトライはしておる。
 今のところネックは、最新の楽器の音じゃ。 映画のCG技術がアニメ的に観えてしまうのと同様に、最新の楽器の音色は密度が薄くて座りが悪く、玩具の楽器の様に聞こえてしまう。 でも時代が進化すれば楽器も進化するわけで、最新の楽器の音色そのものが受け入れられるか、否か。 わしは今、その瀬戸際におる。 結果は神のみぞ知るかのお。


●若手ロッカーの取り扱う曲のテーマはいかがですか?

 〜テーマってのは時代によって変わるもんじゃから、「これが現代のロックのテーマか」とおとなしく受け止めておるぞ(笑) でも最近は外に向かって発信し過ぎじゃな。 昔のロックは歌うテーマをまずもう一度自分自身に言い聞かせて信念を強固にするようなプレイじゃったけど、今は賛同者をより多く求めるようなプレイじゃ。
 表現者ってのは基本的には孤独であり、激しく表現することによってしか孤独から逃れることが出来ないもんだと思う。 他者の賛同ってのはあくまでも結果、ってのがわしの持論。 だから端から賛同を求める姿勢にはとても違和感があるんじゃ。


●ファッションの方はいかがですか?

〜ファッション以前に、イケメンや美人が増えたな〜(笑) 昔は一歩間違えれば殺人鬼みたいなツラしたロッカーが結構いたからのお〜。 現代のロッカーたちは勉強熱心なようで、様々なトラディショナルなファッション・スタイルの追求に余念がないようじゃ。 でも本人はまだトラディショナルじゃないんだから、全体像としてコスプレ寸前って場合も少なくない。 だからもうちょっとモダニズムをミックスして独自の路線を開発してほしいと願っておる。 The-Kingファッションのチャレンジ精神をもっともっと見習ってほしい!
(上写真/オキニの若手ロッカー、その2:クーラ・シェーカー)


◆◆七鉄の趣味について◆◆

●野球シーズンもそろそろ佳境に入る頃ですが、七鉄コラムには唐突に野球ネタが登場しますね。

〜わしはロックよりも先に野球に夢中になり、ガキの頃はマジでプロ野球選手になろうと思っておったんじゃ。 投手兼四番バッターでな! 凄い発想じゃろう。 今をときめく大谷選手よりも遥か昔に二刀流を目指しておったのじゃ。 それだけではないぞ。 その頃から救援投手の評価数値(セーブポイント)設定とか、両リーグ交流戦開催とか、内野にも芝を敷いて球場を美しく観せるとか、球団名に本拠地名を付けるとか、プロ野球の新しくて魅力的な要素を考えて学校の壁新聞や同人誌に書いておったのじゃ!

●それじゃあ、プロ野球選手になれなくても、野球ライターになれば良かったじゃないですか。 ロックのつまんない記事なんか書いてないで(笑)

〜つまんないは余計じゃバカモノ!(笑) でも二足のわらじは履けないというか、不器用な性格なんでロックにどっぷりハマってからは野球への情熱は自然と封印せざるをえなかったんじゃよ。 でもここ数年、出版される野球関係の書籍の内容が素晴らしいんで、遠い昔に置いてきた「野球ライター」の夢がぶり返しまくって困っておるぞ!

●ロックにハマったって、楽器はやらなかったんですか?

〜ギターは何度も挑戦したがダメじゃったな。 掌が小さくて指も短いから進歩が恐ろしく遅い(笑) 小学校6年までピアノを習っておった、というか、親に無理やりにやらされておったが、指が短くて譜面通りに鍵盤を押さえられない。 だから先生が書き換えた譜面を時々使わされたもんじゃ。
 実は指の短さは後に野球の投球にも影響して、まともな変化球が投げられない(笑) だから死ぬほど努力しない限りは音楽でも野球でもプレーヤーにはなれんかったじゃろう。 まあ言いわけじゃけど(笑)

●しかも酒好き、旅好きだから、何かひとつ腰を据えて取り組む努力をしなかったってことですね?

〜よーするに道楽者なんじゃ(笑) 人並みの人生設計もしたことないし、だからこの歳で世界放浪なんかやっちゃったりするんじゃ。

●世界のどっかをほっつき歩いていて、何がおもしろいんですか?

〜知らない国、地域にいる時だけは、心の底から「わしは自由だ」って感じることが出来る! 現実的には資金に限りはあるし、外国語は下手くそな英語とタイ語しか話せないから、訪れる先々の国の庶民の生活の中に浸り切ることはできんけど、その小さなストレスは次なる未知の国、地域に移動することで解消出来る。 ホント、旅しとる間は幸せなんじゃ。 また旅先で出会う見知らぬ旅人から得られる未知の情報の効果もあり、自分が“常に前を見ていられる”感覚がええんじゃ!
 もしわしが、ゴルゴ13の様に20数カ国語を話せる語学の達人じゃったら、旅は死ぬまで続けたくなるじゃろう!ということで、今密かにスペイン語の勉強を目論んでおる。 世界共通語は英語じゃが、世界中でもっとも通用度が高いのはスペイン語なんじゃ。 スペイン語の派生言語も多いのじゃ! 近い将来、諸君に「アミーゴ!」なんて挨拶する時がやってくるかもしれんぞ!って四半世紀前、スペイン語習得に挫折した経験があるがな〜。

●いい加減にお酒かタバコは止めたらどうですか?

〜このところ意識的に毎晩の酒量は減らしておるぞ。 でもたまに少々高級な焼酎とかスコッチを飲むとひと晩でボトル半分ぐらい飲んでしまうんじゃあ〜。 まあ七鉄のキャラは“大酒飲み”なんで飲まないわけにはいかんじゃろう!(笑) 先日ニール・ヤングの自叙伝を読んでおったら、60歳になって酒もハッパも止めたと。 エライ!とは思うが、わしは酒とタバコは当分止められそうもない。
 タバコは手巻きタバコに完全に変えてから、久しぶりに美味い!と思いながら吸っておる。 極薄の紙で巻いた、燃焼促進剤とかの混ぜもんの無い手巻きタバコはたまらんな。 シガレット・ケースの中に加湿器を入れて適度な湿気を与えておるから、味も香りも実に新鮮じゃ。

(右上写真:昨年5月、カンボジア・プノンペンのトンレサップ川を背にしたわし)
(左写真:毎日こまめに巻き巻きして吸っておる、スイスの手巻きタバコ・パピヨン)


◆◆The-Kingブランドとボスについて◆◆

●ボスとは四半世紀を越えるお付き合いだそうですね。

〜今でも不思議なのは、四半世紀前は同じ職場だったとはいえ、音楽やファッションの趣味が違うのに、どうしてボスと仲良くなったのか?ってこと。 「お互いに酒好きだったから」で片付けてしまうのはチト虚しいな(笑)
 思い当たるフシといえば、毎日夜遅くまで職場に残っておったのがボスとわしの二人だけだったんで、お互いに強い同胞者意識が出来たってことかもしれん。 まあボスは仕事熱心じゃが、わしは仕事が遅い(笑) 夜遅くまで職場に残っておった理由は天と地ほど違っておったけどな!

●七鉄さんからみたThe-Kingブランドの真髄とは何ですか?

〜The-Kingのアイテムの魅力は人それぞれじゃけど、長年ボスと付き合ってきたわしにとっては、作品造りのスピリットが四半世紀前の若きボスの瑞々しさがまったく失われていないことじゃ。 だから新作を羽織る度に、四半世紀前の自分に戻った気分になるんじゃな! ボスの創造性ってのは、時代が変わろうともまったくブレがない。だから信用出来るってのがThe-Kingの真髄じゃ。
 この前、ジェフ・ベックの「18歳のままでいることが楽しくてしょうがない」というインタビューを読んだが、ボスもわしと初めて知り合った時のまんまじゃ。 これは奇跡じゃ。 わしには到底真似できんわい。 その奇跡を永遠にするためのささやかなサポートをしとるのが頑固七鉄と思ってほしい。

●The-Kingは熱狂的なロカビリーや50s愛好者たちに支えられていますが、七鉄コラムはロカや50sネタに特化していませんけど。

〜わしは50s以前の黒人ブルースも大好きだし、60年代、70年代のロックにもハマったクチじゃ。 50sに限定すれば、ボスや柳谷画伯らThe-Kingには凄いスペシャリストがおる。 彼らに対抗したコラムを書いたって勝目はない(笑) さっきも言ったが、勝てない相手に喧嘩は売らない(笑) ロカや50sの時代を中心に見据えながら、その時代の予兆や波及効果を念頭において書いた方が、ささやかながら七鉄コラムの存在意義があるんじゃないか、と。 読者諸君にはぜ〜んぜん興味のないテーマを書いてしまうことも多々あるが、どうかお許し願いたい。 ロカや50sの偉大なる影響みたいなもんを感じ取って頂けたら幸いじゃ。

●最後に、The-Kingファンに向けてメッセージをお願いします。

〜もし諸君が「永遠のロッカー」「永遠の若者」を目指すなら、The-Kingのアイテムを求める以上に、まずボスとお近づきになってもらいたい。 それはボスが「永遠のロッカー」だからじゃ。ボスと世間話やロック談義をして、更にボスと酒を飲み、時には七鉄の悪口をかまして(笑)こそ、The-Kingアイテムの純度200%のロックスピリットってヤツを心底感じることが出来るってもんじゃ。 そんなカスタマーが一人でも多くなることがわしの望みじゃ! 開放デーはもちろんのこと、事前にアポをとって押上のThe-Kingオフィスにどんどん訪れて、ボスとの触れ合う機会をもってほしいぞ!
 「製作者の顔が見える」ー製作者とお客のそんな関係はとっくに終わってしまった時代かもしれん。 でもな、それはどんな製品においても今こそ復活させるべき正しい関係であると、わしは思うておる。

●今日はありがとうございました。 早く隠居してくださいね(笑)


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