NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.247

 今回のThe-KingのNEWロックンロールシューズの出来栄えには唸るもんがあるのお〜♪ まさに温故知新、古きを温め新しきを知る。 いやいや“知る”どころではなくて、新しきを創造するじゃ! 名づけて「温故創新シューズ」! フィフティーズのオリジナルに敬意を表しながらもあえて越えていこうとする気概と情熱にあふれたアイテムじゃ。 これが“真のオリジナリティ”ってヤツかもしれんな〜The-King、向かうところ敵なし、死角なしじゃ!

 「オリジナリティ」といえば、先日古くからのロックファンが気にかけておった「レッド・ツェッペリン“天国への階段”盗作裁判」が、結局ツェッペリン側の勝訴という判決で終わったらしいな。 スピリットというバンドの「トーラス」なる楽曲に似ているとされ、スピリットの遺産管理側が盗作裁判を起こしておったが、まあアレを盗作とされたら、ロックやポップスなんか盗作だらけじゃ!? 「トーラス」と「天国への階段」を聞き比べれてみれば誰でもそう思うに違いない! もしツェッペリン側が敗訴したら、「芸術とは何か」「オリジナリティとは何か」って、とんでもないスケールの裁判、論争に発展する可能性もあったのじゃ。

 偶然の類似ってことも往々にしてあるもんじゃし、大体少々のパクリなんてどーだってええではないか。 優れたアーティストならば、自分にはない才能、センスを持っておるヤツには敏感であり、無意識の内に影響を受けるものなのじゃ。 それがそのアーティストを前進させることになり、だからこそそのアーティストは優秀であり続けるのじゃ。 なあ〜んて、わしがシリアスになってどうする!
 今回はだな、ツェッペリンの盗作裁判勝訴記念として(笑)、ロックのパクリ、パクラレ特集をオチャラケ満載でやってみよう! あまりにも有名なパターンから、わしやわしの仲間だけが指摘していた疑惑のパターンまで、思いつくままに取り上げていくぞ。 日本語においても「学ぶ」の語源は「真似る」からきておるというし、パクリ(真似)がロックの歴史の重要な一部分を担ってきたことを思い出してみよう!


ロック・パクリ特集:パクリパクラレテ、ロックはローリングしてきた!いいもんはどんどん借用しちゃおう!!
「独創性とは、しっぽをつかまれずに盗むことである」(ウィリアム・ラルフ・イング)」
「何も真似したくないなんて言っている人間は、何も作れはしない」
 (サルバドール・ダリ)
「芸術とは盗むことだ」 
(パブロ・ピカソ)


♪パターン1 トーラス/スピリット → 天国への階段/レッド・ツェッペリン
 イントロのギター・アルペジオが上がるか下がるかだけの違いであり、「盗作」って訴えはほとんど言いがかりのレベルじゃ! 裁判を起こすことによってバンド(スピリット)の知名度を上げようという魂胆だったのかもしれなあ〜。
 「トーラス」は確かにツェッペリンのジミー・ペイジ好みのちょいとシュールでトラディショナルな雰囲気の曲であり、ツェッペリン末期の中近東フレーバーなんかも醸し出しておる。 盗作ではないにしても、「“天国〜”を書く前には、スピリットのレコードは聞いたことがなかった」ってジミーのコメントはチョットな!(笑)


♪パターン2 天国への階段/レッド・ツェッペリン
          → 幸運な兵士/ディープ・パープル

 これは遥か昔、わしのロックの先生的同級生が指摘しておったパターン。 やはりイントロのギターアルペジオ部分が問題で、「聞いてごらん。 ビックリするよ」と言われて聞いてみたら笑ってしまった! なんじゃこりゃ、って感じ。 イントロ云々以上に、楽曲全体のトーンがそのまんまではないか! 「天国への〜」発表当時の反響は凄まじくて、この手のパクリパターンは他のバンドでも幾つか聞かれたもんであり、「幸運な兵士」はその代表格!?


♪パターン3 ブラック・ドッグ&胸いっぱいの愛を/レッド・ツェッペリン
               → スティル・オブ・ザ・ナイト/ホワイトスネイク


 このパクリはチト問題かな!? 「スティル〜」のリフやヴォーカルとの掛け合いは「ブラック・ドック」、中間部のミステリアスなトーンダウン・パートは「胸いっぱいの愛を」の構成そのまんま! 1曲の中で有名2曲をパクルという超反則技じゃ。
 ジミー・ペイジはインタビューでゲラゲラ笑いながら「アイツラ(ホワイトスネイク)、アメリカでエライ人気あるそうじゃないか!」ってやり過ごしておったけどな〜。 まあ自分たちもかつて“やり過ぎ”たんで、メクジラ立てるわけにもいかんかったんじゃろう!


♪パターン4〜
ブリング・イット・オン・ホーム/ソニー・ボーイ・ウィリアムソン、
キリング・フロア/ハウリン・ウルフ、
ユー・ニード・ラブ/ウイリー・ディクソン
 → ブリング・イット・オン・ホーム、レモン・ソング、胸いっぱいの愛を/レッド・ツェッペリン


 ツェッペリンの名盤セカンドに収録された上記3曲の中の歌詞は、いずれもブルースの名曲から一部借用されておる。 黒人ブルースのリメイクのクオリティがバンドのクオリティに直結する時代だったんで、こんなことは珍しくなかったもんじゃ。
 でもアルバムが売れまくったせいで問題は大事になりかかった記憶がある。 わしに言わせると、歌詞よりも楽曲構成の方がヤバクないかあ〜(笑) 確かこの裁判ではツェッペリン側は全面敗訴して印税を作曲者に払い、アルバムにも原曲の作曲者が追記されるようになったはずじゃ。


♪パターン5 ザ・ベルズ・オブ・リムニー/バーズ 
  → 恋をするなら/ビートルズ


 天下のビートルズにも盗作疑惑があった。 まずジョージ・ハリスン作の「恋をするなら」は、オープニングの主旋律から、ドラムが入るタイミングまでバーズの「ザ・ベルズ〜」にそっくり。 これはバーズの作曲者ロジャー・マッギンも指摘しておった。
 ただし、この件に関してはジョージからロジャーへちょっとした“お断り”のメッセージが送られてきたそうで、またロジャーならびにバーズは大のビートルズ・ファンだったために大げさな問題にならんかったらしい。


♪パターン6  ユー・キャント・キャッチ・ミー/チャック・ベリー
                  → カム・トゥギャザー/ビートルズ


 この曲は実質ジョン・レノンの作曲じゃが、まあチャック・ベリー御大の影響丸出しじゃのお〜(笑) でも曲のトーン、メッセージ性は御大とは別次元にあるので、「盗作と言われてもなあ〜」ってのがわしの正直な感想。
 結局、「ユー・キャント〜」の版権者モリス・レヴィー氏が「裁判をしない代わりに、自分が版権を持っているこの曲を含めた数曲をカバーせよ」という要求を出してジョンが承諾して手打ちとなった。 モリスは、裁判で勝ち取る賠償金よりも、ジョンがカバーする事による印税の方が多いと考えたんじゃろうか。 後にジョンはアルバ厶『ロックンロール』で「ユー・キャント〜」をカバー。 チャック・ベリー御大のオリジナルより全然カッコ良くてジョンは溜飲を下げた形になった。


♪パターン7 ヒーズ・ソー・ファイン/シフォンズ  → マイ・スイート・ロード/ジョージ・ハリスン

 これはもはや言い訳できないレベルのパクリであり、さしものジョージ・ハリスンも裁判であっさりと白旗を上げた。 原曲のリメイクとまで思えるほどクリソツであり、ジョージは1600万ドルという巨額の賠償金を支払ったものじゃ。
 なぜこんなあからさまなパクリになってしまったのか、ジョージは死ぬまでこの件に関して多くを語っていないが、21世紀になってジョージはシフォンズの楽曲の版権を買取った後、「マイ・スイート・ロード」を新録しておる。「ヒーズ〜」とどうしても別曲にしたかったジョージの苦悩が感じられるアレンジがちと痛々しい・・・。
 

■ちょっとブレイクタイム■

 ここでひと休みして、洋楽をあからさまにパクッタ日本の楽曲を3曲だけ紹介しておこう。 「原曲はどうせ分かりゃせんだろう!」ってことなのかどうか、まあここまでやるか!って感じであり、これらをヨシとするか否かは諸君の判断にお任せしよう。

♪パターン8〜ウェルカム・トゥ・マイ・ワールド/エルヴィス・プレスリー
  → 雨上がりのダウンタウン/アグネス・ラムちゃん(笑)


 これは10年ほど前、The-Kingのボスから教えてもらい、二人で押上のオフィスでゲラゲラ笑いながらyou tubeを観たもんじゃ! 「♪〜 ウェルカム・トゥ・マイ・ワールド〜 ♪」って歌いだしは、そのまま「♪〜雨あがりい〜ダウンタウン〜」に置き換えられておりというか、ほとんど替え歌ではないか!
 you tubeの映像をみると、指揮者(?)の加山雄三さんは何をニタニタしとるんじゃ? 「お願いだから、誰も気がつきませんように〜」ってな苦笑いか! それともアグネス・ラムちゃんに色目使っとんのか!? まあええわい。 アグネス・ラムちゃんの音痴でたどだどしい日本語と愛くるしい笑顔がカワユイから許す!


♪パターン9〜サムディ・ニュー・カム/CCR 
 → この夜にさようならを/甲斐バンド

 これもやり過ぎ! 何のヒネリも感じられない単なる替え歌レベルじゃなあ〜つうか、わしは最初は、CCRの曲日本語でカバーしとるんかと思ったわい。
 甲斐バンドさんってのは、他にもオーティス・レディングやストーンズの替え歌を堂々と披露しており、その図々しさには恐れ入った(笑) 彼らは女性にやたらと人気があったので、その分だけ男性の洋楽ファンからの非難が強かったもんじゃ。 まあパクル曲のセレクトに関しては、わしは悪くないと思ったけどな〜(笑)

♪パターン10〜ドリーム・タイム/ダリル・ホール   → 負けないで/ZARD

 「ドリームタイム」のイントロをモロパクッタ「負けないで」のやり方は、“パクリ曲史上”サイコーというかサイテーというか、盗作ギリギリのレベルじゃろう。 「負けないで」の主旋律とイントロとのそれぞれのメロが全然脈絡がないように聞こえるだけに余計に強引さが目立つけど、それだけ「ドリーム・タイム」のイントロをはめ込んだセンスがスゴイとでも言うべきなのか!? イントロだけではないぞ。 「負けないで」のフックライン自体が「ドリームタイム」そのものじゃよ。 
 でも今も根強いZARDの坂井泉水嬢のファンにそんな事を言ったって、彼らにとって坂井嬢は永遠のマドンナなんで「パクったからって、それがどうしたってんだよ」と相手にされないけどな。


♪パターン11 パイプライン/ヴェンチャーズ  → 黒く塗れ/ローリング・ストーンズ

 「黒く塗れ」のイントロの中近東風ギタートーンとシタールが奏でるアクセントのお陰(?)で目立たんが、主旋律のノリは「パイプライン」じゃねーか!(笑) もしパクリだとしても別にがっかりはせんよ。 ミックやキースはなんとヴェンチャーズまで聞いて作曲のお勉強をしていたんじゃな〜と感心するわい! ストーンズはツェッペリン同様に、デビュー直後はパクることによってオリジナリティを獲得していったんじゃから、バンド黎明期の興味深い事実として笑顔でやり過ごそうではないか! 


♪パターン12 ゲット・イット・オン/T.レックス 
 → イッツ・オンリー・ロックンロール/ローリング・ストーンズ 

 
イッツ・オンリー〜」は今もステージで大人気なストーンズの代表曲じゃが、コレ、昔っからわしには「ゲット・イット・オン」にしか聞こえん! それにわし個人は「ゲット〜」の方が断然好きなんで、ストーンズ・名パクリ曲!と断言しておこう。
 ちなみに「イッツ〜」は、まだフェイセスに籍のあったロニー・ウッドが元々書いた曲らしく、ミック・ジャガーがロニーを訪ねた際に半ば強引にぶん取ったらしい(笑) 最終的に「ゲット〜」のノリにしたのはロニーなのか、ミック・ジャガーなのか! そんな事を考えながら名曲を聴くのも楽しいというものじゃ!


♪パターン13 タイム/リタ・クーリッジ  → 愛しのレイラ/デレク・アンド・ザ・ドミノス

 「ぇえっ!」って驚いた方も多いじゃろうが、エリック・クラプトンの永遠の名曲「愛しのレイラ」も半分は盗作寸前!?のパクリなんじゃよ。 これはアメリカン・ロックのマニアの間では昔っから密かに有名じゃったハナシじゃ。
 パクラレタ半分ってのは「愛しのレイラ」の後半部、ピアノの美しい独奏が続くパート。 リタ・クーリッジの書いた「タイム」(歌ったのはリタの姉プリシラ)そのまんま! リタと共作したブッカーTの兄やんはひどく怒ったらしいが、リタはまだバックコーラスの域を出ていない身分であり、クラプトンのファースト・ソロにも出番をもらう立場だっただけに裁判沙汰にはしなかったそう。
 ちなみにアルバム『愛しのレイラ』の方に、後日もうひとつの問題も発生しとる。 女性が描かれたジャケットはフランスの画家エミール・フランセンの作品「ブーケを持つ少女」であり、フランセンの子息からクラプトンはその絵画を贈呈された後にジャケットに使用。 
 その後20世紀末期に同アルバムのコレクターズ・ボックスセットが発売になった時、「ブーケを持つ少女」の絵画は立体的に改ざんされたとして、フランセン遺族から訴えられたのじゃ。 賠償金は確か200万円ぐらい。 クラプトンにしては屁でもない金額じゃろうが、有名人は辛いですなあ〜。


♪パターン14〜オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト/キンクス
  → ハロー・アイラブ・ユー/ドアーズ

 ドアーズ・フリークのわしも、これには参った! 「ハロー〜」は全米No.1ヒットになって有名になり過ぎたんで「ヤバイ、わが愛するドアーズが訴えられる!」と狼狽えたわい。 でもキンクスのレイ・デイヴィスは素晴らしいコメントを発表してくれた。

「ドアーズが私の曲を盗作? あのジム・モリソンがかい? いやいや、パクラレタとしてもだ、あんなファンタスティックなロッカーにパクラレルなんて光栄だよ」

このコメントでわしは一発でキンクスの大ファンになってしまった(笑) 以上オシマイ!


♪パターン15〜ゴースト・ライダース・イン・ザ・スカイ/ヴァーン・モンロー
   → ライダーズ・オン・ザ・ストーム/ドアーズ

 
ゴースト〜」は1949年に発表されたアメリカのカウボーイ・トラディショナル・ソング。 後にエルヴィスやジョニー・キャッシュも歌い上げておる伝説の名曲じゃ。
 ドアーズはこの曲の持つトーンを、いわばグレーからブラックに転換しながらトラディショナルをロックに変換してみせた。 スタジオ内で「ゴースト〜」を遊び半分でセッションしていると、ジム・モリスンが生死の淵を彷徨うロッカーの人生を振り返るような歌詞をサラリと書き上げたことによって、「ゴースト〜」が「ライダース〜」に変わっていったという信じがたいエピソードが残っておる。 「ゴースト〜」が存在しなかったら生まれなかった「ライダース〜」じゃが、「ライダース〜」の主人公(もちろんジム自身)は「ゴースト〜」に描かれたカウボーイたちが踏み込めなかった聖なる境地へ到達しておる。


♪パターン16〜支配者の女/エアロスミス  → ロコモーティブ/ガンズン・ローゼス
 
ガンズンがエアロの影響をモロに受けておるのは明白だし、ガンズン自身もそれを公言しておったから、こういうパターンが生まれても不思議はない。
 「ロコモーティブ」は「支配者の女」の後半のギターリフを強引に拡大して二部構成の楽曲の前半を作り上げておる。 エアロのステーブン・タイラーは「素晴らしい発展のさせ方だ」と褒めたらしいけど、悪童アクセル・ローズ(ガンズン)は「必死に曲書いてりゃ、そんな事もあるさ」と意に介さなかったとか!?


 いや〜キリがない! まだまだあるが、これぐらいにしておこう。 90年代よりサンプリングなんて仕掛けが許されるようになってからは、やりたい放題って感じじゃ。 ローリング・ストーンズも若かりし日はやりまくりじゃったけど、晩年はやられまくり! 特にザ・ヴァーブという連中が「ビター・スウィート・シンフォニー」っつう曲で、ストーンズの「ラストタイム」のサンプリングを使い過ぎてるじゃねーか!ってついに堪忍袋の緒が切れて裁判で勝訴。 ストーンズらしくねー行動じゃけど、勝訴の後のキース・リチャーズのコメントがフルっておった。

「賠償金は預かっておくぜ。 アイツ等が俺たちよりいい曲を書けるようになったら、金はくれてやるさ!」

 かっこええ〜わしも一度はこんなセリフ吐いて見たいもんじゃのお〜。 ではでは皆さん、コピーはどんどんやろーぜ! ただし良識をもってな(笑)横取りは自分だけの世界にしておいて、じっくり料理しながらオリジナリティの確立のためにガンガン利用するべし!

「未熟な詩人はまねるが、熟練した詩人は盗む。無能な詩人は盗んだものを壊すが、有能な詩人はより優れたもの、少なくとも違うものへと変える」(T.S.エリオット)

「僕がじっくり鑑賞するのは、盗めるところがある作品だけだね」(デヴィッド・ボウイ)




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