NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.233

■七鉄のロック回り道紀行〜東欧・総括編
 ついにわしの東欧の旅も終わった。 予想外の寒さの質によって、期間の半分は体調不良との戦いになってしもうたが、今はゆっくりと人生初の東欧旅行の思い出を整理しとる毎日じゃ。
 旅を終えての最初の実感は、The-Kingはわしが日本にいようといまいと関係なしにハイクオリティな新作を続出させた! 「そうだよ、七鉄っつあんがいない方が、ボスのアディアは却って冴え渡るんだよ」って黙らっしゃい! そうじゃなくて、行く先々で「オマエのジャケット、シャツはエレガントだ!」って褒められて嬉しかったぞ! The-Kingのセンスは東欧でもしっかり認められたってことが最大の収穫じゃ!

 それから、やっぱり東欧は「日本で報道されていない事が多かった」ってことじゃ。 毎日知らないことばかりと出会っておった気もする。 また現地人の方々がとてもフレンドリーじゃったので、各国の内情をもっともっと知りたくなった。 これはわしが「日本人だから」という世界的な信用度によるところが大きかったと思うし、今日の日本の繁栄を築いて下さった先人たちに大いに感謝せねばならん。 まあ総括すれば「いい旅じゃった」ということじゃな!

 年季の入った旅人になると、「酒」「食事」「遺跡(世界遺産)」「大自然」、はたまた「美人」とか、訪れる国への目的意識がはっきりとしておる。 今回のわしの旅は何分ほとんどの国が未踏じゃったので、行く先々の国の表層を見てきたに過ぎん。 エラソーなことは到底言えんが、とりあえずは見えてきた事、日本では知られていない事実を正確にお伝えしたいと思う。 どうかわしの旅の総括にお付き合い願いたい!


七鉄のロック回り道紀行〜東欧編 Vol.7 総括編
百聞は一見にしかず!行ってみなけりゃ分からない、
日本で報道されない東欧事情!!


■シェンゲン効果で、週末は近隣諸国からの旅行者だらけ

 ヨーロッパには「シェンゲン協定」という制定があって、26ケ国の間で渡航者は自由に圏内に入域できて、圏内で国境を越える際には検査を受けないことになっておる。 つまり圏内の別国に入国するときに、面倒くさい荷物検査等が一切ないことじゃ。 これは長期旅行者にとって誠にありがたいことであり、都市間移動をする感覚で別国に行けるのじゃ。
 現在のところ、180日間で90日シェンゲン圏内に滞在出来る。 例えば、7月に初めてシェンゲン圏内に入域すれば、その年いっぱいの間の90日間(3ヶ月)は圏内に滞在出来る計算じゃ。 途中で圏外に行っても、圏内滞在日数が90日以内であれば何度でも出入り出来るっつうわけじゃ。 因みにわしが今回訪れた国でシェンゲン外はウクライナだけじゃった。
 このシェンゲン協定と、格安航空券の出現により、ヨーロッパ人の圏内旅行者が増え続けており、どこの国の宿でも週末はヨーロッパ人ばかりでほぼ満室状態になる。 いろんな国の旅行者と知り合いになれる絶好の機会となるわけじゃ。 日本ではマイナーな国からの旅行者では、バルト三国(ラトビア、リトアニア、エストニア)やスロベニアなんかの方とわしもお話することができた。 ヨーロッパ各国の生の情報を仕入れるには誠に好都合である。 まだシェンゲン協定に加盟していない代表国としては、イギリス、ロシアじゃ。

 今回わしはノルウエー経由ハンガリー着のフライトでシェンゲン圏内に入域したが、ノルウエー・オスロ空港内の乗り継ぎ客用窓口でパスポートを見せるなどの簡単な手続きがあるだけで、ハンガリーでは入国審査は一切なし。 機内預け荷物を受け取るだけのフリーパス状態であった。
 反対にハンガリーからウクライナ、ウクライナからポーランドの移動の際は、国境(空港)にて通常の出入国審査があった。 特にウクライナから出国する際は噂通り厳重な荷物チェックを同行者たちは受けておったが、何故かわしの時はノーチェック。 日本のパスポートのお陰か!? こんな事なら激安のウクライナ・タバコをもっと買っておけば良かった! 
 右の写真は、ハンガリー・ブダペストからギリシャ・アテネに向かった時の夜間フライト。 週末だっただけに、乗客はわし以外は見事に白人だらけじゃった。


東南アジア並みの滞在費〜ウクライナは現在一ヶ月の滞在費が数万円

 東欧ほぼ全域において、滞在費は東南アジア並みじゃ。 大体日本の2.5分の1ぐらいじゃろうな。 中でもウクライナという国は日本では極めてマイナーなのでまったく話題に上らんし、ヨーロッパ内の旅行者の間でも人気薄じゃが、現在大変に対日本円の金銭レートがええんじゃよ。 これは昨年末ロシア・ルーブルが大暴落した余波であり、ネットで少しばかり公開されておる2〜3年前に書かれた日本人旅行者のブログをチェックすると、現在のお得感は相当なものじゃ。 この情報をネットでゲットしたわしは、急遽ウクライナ行きを決意したんじゃが、都合23日間のウクライナ滞在中の費用はたったの約5万円。 一ヶ月換算で6万円じゃ。
 
 旅行中はきちんと出納帳を付けておったので間違いない! 酒もタバコもやらん方はもっと安く上がるぞ! 別にこ汚い宿に泊まっておったわけでもなく、普通に旅行者飯も食っておったからひもじい思いはしておらんわい。 他国の宿で他の旅行者と情報交換をする際にこの話を聞かせてやると皆んなビックリ! さっそくプランの中にウクライナを組み込んだ者は何人もおった。


■ギリシャ:国家経済破綻? 観光客で賑わう首都アテネ

  世界的なニュースになったギリシャの経済破綻。 東京都が賄える財政で一国が支えられるというのに、それすら出来ないギリシャは世も末。 ATMはあっても中にキャッシュは無く、首都アテネでは浮浪者や売春婦が溢れかえり、ドラッグの注射器が散乱しておる、なんてネットで書かれておったものじゃ。
 ところが実際に行ってみればそんな噂は真っ赤な嘘。 アテネ中心部は観光客で賑わっており、観光産業もそこそこ潤っておるご様子。 どこのATMもきちんと作動しており、わしも何ら問題なく何度もキャッシング出来たもんじゃ。
 たまたま泊った宿がちょっとしたドヤ街みたいな風紀の乱れた地域にあって、浮浪者や酔っぱらいが道端に倒れ込んではいた。 しかしそれは現地通に言わせれば、ギリシャから帰れなくなった他国の難民たちなんだそうじゃ。 国の財政が破綻したとはいえ、傍から見れば市民生活に激しい変化は見られない感じじゃ。 ギリシャ人も温和な方が多く、わしはタバコ屋と酒屋のオヤジと仲良くなったが(どこの国でもそうじゃが)、彼らの口から生活苦を訴える言葉や国の行く末を憂う声を聞くことはなかったぞ。

 因みにわしが訪れた時期は丁度クリスマスシーズン。 ギリシャはクリスマスを年明け5日ぐらいまで賑やかに楽しむお国柄じゃが、その割には意外と街中のイルミネーションなんかは地味ではあった。 ちょっと自粛ムードではあったのかもしれんな。

■チェコ:パブのビールが市価と同額
 
 「チェコはビールが安くて美味しい」とは旅人の間で評判だったので、行く前から楽しみにしておった。 しかしその情報にはもっともっと有難い価値があった。
 パブでビールを飲んでも市価とたいして変わらない金額だったんで恐れ入ったわい! 常に財布の紐を締めておくことを余儀なくされる長期旅行者にとって、これほど有難いことはない! 宿の小さなリビングやキッチンでおとなしく飲むんじゃなくて、街に繰り出して飲めるからじゃよ。 こんな国は今回訪れた中ではチェコだけじゃ!
 どこの国で出会う白人旅行者たち(の酒好き)も、みんなチェコを絶賛しておった! 「おいおい、それでいい気になって飲みまくっておったら、高いビールをそこそこ飲むのと同じじゃぞ」って言ってやった後に気がついた。 それはわしの事じゃな!
 こういうお得な情報はあっという間に旅行者世界に広まるもんであり、その効果なのか、わしが泊ったチェコ・プラハの安宿は毎日白人旅行者たちで満員であり、みんな夜遅くまで出歩いて(飲み歩いて)おったわい! 


■喫煙率が高い!?
 
 訪れる先々で特に有難かったのは、現地人たちの喫煙率が高いので気兼ねなくタバコが吸えることじゃ。 女性も平気で歩きタバコをやっておる。 ポイ捨てが多いのはちょっと頂けなかったがな。 ただしウクライナ以外はタバコ代が日本以上に高く、平均年収が日本より低い彼等が高価なタバコをスパスパやっておるのが不思議じゃったな。 またタバコ好きが多いだけに、喫煙所で吸っておるとしょっちゅう現地人からたかられたもんじゃ。

 普通のタバコが高いだけに、それよりは安価な手巻きタバコを吸っておる人も多い。 わしも東欧では手巻きタバコを吸っておったが、まだ慣れておらんので専用のローラーを使って巻いておった。 でも彼等は立ったまま器用に葉っぱと紙をクルクルと巻いていく。 あれは羨ましかったのお〜(笑) 
 わしが見とれておったんじゃろうな、一度ギリシャの道端で巻いておったおじさんが話しかけてきてコツみたいなのを教えてくれた! 乾燥した葉っぱはあんまりほぐさず固めに巻き、湿った葉っぱはよくほぐしておいてから軽くさらりと巻くといいそうじゃ。 また口を付ける部分にはやや多めに葉っぱ詰め込むと吸いやすいとか、な(笑) 今や日本では到底考えられない、タバコによる人間交流じゃ! 帰国してもしばらくは手巻きタバコを楽しむことになるじゃろ


■意外と米、袋麺がイケル!
 

 東欧諸国の主食はどこもパンとパスタ。 スーパーに行っても米が置いてあるコーナーは、あっても猫の額程度。 でもハンガリーやウクライナの米は長期旅行者なら充分に満足出来るレベルじゃ。 ハンガリー米の形状はジャポニカ米に近く、ウクライナ米は完全にインディカ米(リゾットやパエリヤなんかに使われるパサパサの細長い品種)。 どちらも炊く前に水に30〜40分浸しておけば、米だけでも食べられる美味しさじゃ。 お値段も恐ろしく安い!

 それから、この両国は袋麺が美味しい。 恐らく麺の繋ぎにじゃがいもを使っておるんじゃろうか、少々伸びてももちもち感が失われず頂けるのじゃ! 粉末のスープもコンソメに味を加えてある感じでよろしい。 ただし多めの汁に浸して麺を食べる習慣が薄いのか、粉末スープの量が少ないのがラーメン好きの日本人にしては玉にキズってとこじゃな。
 たまにカップヌードルを見かけたが、すべて日本の日清の製品で高い! 試しに何度か買ってみたが、変に現地人の味覚に合わせて加工していなくて、普通に美味しかったわい。
 


■洗顔フォームが無い!

 これはハンガリー、チェコ、スロバキア、ウクライナ、ポーランド、ギリシャ、訪れた国全部が同様じゃったが、お風呂商品の中に「洗顔専用の液体石鹸」が売って無いのじゃ。 これは実に意外じゃった。 身体用のシャワークリームの殆どに「フェイス&ボディ用」の表示があるんで、もう諦めるしかなかったわい。 今更お顔のお肌の調子にこだわる年齢でもねえし(笑)、カサカサしたってニベアでも塗っておけってもんじゃ。 まあ高級なお店に行けばあるんじゃろうけどな。
 ポーランドの大きなスーパーで試しにお風呂商品を片っ端からチェックしていたら、「君は日本人か? 何を探しているのだ?」と話しけてきた現地人がおった。 彼は一ヶ月ほど前、会社の研修で日本を訪れたという。 そして日本の男性用化粧品やお風呂用品の種類の多さにびっくりしたと語っておった。 どうやら東欧の一般男性は、間違いなく洗顔フォームなんざ使用しておらんようじゃ。

 まあロカビリアンが東欧を訪ねたら、適切なポマードやワセリンを探すのにも苦労するじゃろうなあ〜。 東欧の男性でリーゼントはおらんが美しいオールバックは何人かお見かけした。 彼等は超ハードスプレーでガッチガチじゃ。 わしも試しにウルトラ・スーパーハードのヤツを買って試してみたが、ものすんげ〜威力じゃった。 特にハンガリー製の「48時間ホールド」ってのが超強力じゃったな。 参考までに(笑)


■ストリート・アート天国(地獄?)

 どこの国、どこの街に行っても目に付くのがストリート・アートの多さ。 日本人とはセンスが違うので物珍しさから最初は結構写真を撮っておったが、周囲の住民の生活や景観を無視して所構わず描きまくられておる様子に途中からうんざり。 最終地ギリシャにおいては、聖なる要塞アクロポリスの周辺にまでストリートアートが及んでおったのでいい加減呆れてしまった。 アートそのものはわしは嫌いではないが、ちょっとやり過ぎ。 もっと厳しく取り締まる方法ってないんかのお?
 描いておる本人は新しいアート感覚なんじゃろうが、アートとは元々観る者の目を楽しませるのが本道であり、明らかに迷惑な作品というのは既にアートから逸脱しとる。 単なる落書きに過ぎんぞ!

 あれ、いつも思うのじゃが、法律違反の行為だから作品に署名するわけにはいかんし、無記名に徹しておるというのは、描いた本人にとっては練習用ってことなんじゃろうか? 練習用とはいえ、街全体や人様に迷惑をかけておったらアートの神様は決して微笑まないと思うがな。 アートの神様も宿るギリシャ・アテネの落書きを見ながら、そう思う七鉄であった。


■路面電車の運転手は女性が主流!

 どこの国の大都市でも路面電車が大活躍しておるが、女性運転手が多い! 特にウクライナ、ハンガリーが顕著じゃ。 通行人と乗客の安全に神経を配りながら真剣な表情で運転しておるのでわしは写真撮影を控えたが、日本ではなかなか見られない光景だけに観賞価値は高かった! 
 女性といっても中年であり、「おっかさんが操縦レバーを握りながら家族の生活を支えておるんじゃのお〜」と思うと見応え充分じゃ。 彼女たちは運転手用の制服などは着ておらず私服姿であり、お化粧もキメておる。
 常日頃から、颯爽と路面電車を運転するおっかさんを見続けておる息子や娘たちは、さぞかし「うちのママは格好いい!」って思っておるじゃろうな〜。 ヨーロッパの女性は芯が強いと言われ、母親の発言力が子供たちの結婚にも大きく影響するらしいが、女性運転手たちの勇姿を見るとなるほどと頷けるもんじゃ。 一度ウクライナの宿で一緒になった現地の学生旅行者に聞いてみたら、「ママが運転手だったら、なんだか怖いよ!」って言っておったな(笑) 

 随分前にシンガポールに行った時、ファーストフード店の店員さんが中年女性ばかりで違和感を覚えたことがある。 あれは国が国民のワークシェアリングのために特別に制定した規則だと聞いたことがあるが、東欧でも「路面電車は女性運転手で」とかの習慣が強いのかもしれんな。


■東欧人は手先が器用

 イタリアのキャメオやベネチア・グラス、フランスの食器リモージュなんか代表されるように、西側ヨーロッパには精巧で美しい工芸品がいくつもあるが、東欧となると同様の印象がない。 ロシア譲りのでかくて威厳のある戦車や銅像は得意じゃろうけどな、って感じ(笑)ところがまったくこれは誤解。 東欧人もまた日本人顔負けの恐ろしく精密で計算され尽くした美しく“小さな大作”にたくさん出会うことが出来る。
 何かの本で読んだ記憶があるが、東欧諸国の多くは長らくロシアからの圧政に屈していたため、庶民は自分たちの国そのものに夢が見られない分だけ家の中でコツコツとやる作業が得意であると。 だからなのかどうかは知らんけど、誰にも邪魔されずに自分の美意識に基づいて作り上げられた個性溢れる作品が多く見られたもんじゃ。

 大通りにはさすがに観光客相手のありきたりの店が並んでおる場合が多いが、一本中に入った路地の店のウインドウの中は様相がガラリと変わって大変におもしろい! 大概の店員は売れても売れなくてもいいような顔してペーパーバッグを読んでおる場合が多いが、説明を求めると大変に熱心に語ってくれるのじゃ。 まあ「ウチだけのスタイルよ」という言葉は聞き飽きたがな(笑)
 おもしろかったのは、店員(製作者)用のデスクとかレジ台に置いてある書籍。 彼等は実によく勉強をしていて、中には東洋のアート関連の本なんかもあった。 個性とは、天性プラス勉強によって磨かれていくもんなんじゃなと、と再認識したわい。 反対に大通りの店の店員さんは売ることに熱心であり、価格とか知名度ばっかりの説明。 客のおらん時はスマ やっとる方が多いようで(笑) 


 その他では
「ドライバーの交通マナーが良い」
「野良猫は多いが野良犬がいない」
「広大な公園や美しい霊園が多い」
「酒をメインとした外食チェーン店がない」
「メジャーなロックはヘヴィ・メタルがメイン」

とか色々ある。 まさに日本人にとっては完全なる外国であり、現地の人々にとっても日本に対するイメージは極めて大雑把。 お金持ちでおとなしくて礼儀正しくて小さい(笑) 「ははぁ〜、要するに七鉄っつぁんとは正反対じゃねーか!」ってやかましーわい! そんなわしでも楽しい思いをたくさんさせてもろうたんで、ええではないか。 日本人に対するイメージを悪くせんよう、わしなりに精一杯気を使って旅をしたつもりじゃ。
 残念ながらヘヴィ・メタル系とプログレ系以外のロック嗜好の大きな現象を見つけることができなかったが、これは東欧諸国にとってはまだ時期尚早なのかもしれんな。それを見つけたいのであれば西欧諸国に行けばいいだけのハナシであり、東欧には東欧のパーソナリティがあるので無理して探し当てるようなアクションは今回は控えておった。 これにて「ロック回り道紀行〜東欧編」は終わらせて頂きやす!


七鉄の酔眼雑記 〜
 亡き母上も“やって来た”エーゲ海クルーズ
 
 東欧の旅も終わり、今は三度東欧でかかってしまった風邪でゲホゲホやっとる毎日じゃ。 わしのプランの中では東欧最後のメイン・イベントとして考えておったのが、ギリシャ・アテネのエーゲ海クルーズ。 実は30年ぶりのクルージングなのじゃ。 30年前は若きバックパッカーとしてではなく、母上を連れたドラ息子唯一の孝行旅行じゃった(笑) その3年後に母上は他界してしもうたので、遊覧船「ペガサス」に乗船して碧過ぎるエーゲ海を見ていたら感慨もひとしおじゃった。
 「あの頃はわしも若かったし、母上も〜」などとありきたりの思い出の念にかられていたその時、ふと懐かしい匂いが潮風に乗って漂ってきた気がした。 驚いたわな! だってそれは亡き母上のお化粧の匂いだったからじゃ。 「あ〜今回も母上はわしと一緒にエーゲ海クルーズをしとるんじゃなあ〜」と思うと、もうそれから涙が止まらなくなってしもうてな。 他の乗船客に見られないように慌ててトイレに駆け込んでしもうた! 

 そのクルーズはエーゲ海の代表的な島々を幾つか周遊するんじゃけど、当然30年前とは島の景色、様子は異なっておる。 今上陸しとる島が30年前にも上陸した島と同じなのかはどうも分からん。 ところがあるひとつの島において、「ここは30年前に上陸したことがあるような気がするのお」と過去の記憶と現状とを頭の中で重ね合わせていたその時、再びあのお化粧の匂いが漂ってきたのじゃ。 「ここは一緒に来たじゃない!」と母上が言っておるような気がしてのお。 今度は涙は出なかったが、数少ないながらつくづく親孝行をしておいてよかった、と自画自賛してしもうた!(笑)

 クルーズが終わってホテルに戻ってきた時、なんか旅の緊張の糸がプツンと音を立てて切れた気がしたわい。 「あ〜これで今回の長旅が終わったな」と。 現実的にはもう少しだけ旅は続くが、もう付け足しみたいなもんじゃ。 その晩は久しぶりにビール以外の酒、ギリシャのリキュール「ウゾ」で旅の終わりを記念して一人乾杯をしたわい(笑)
 久しぶりのアルコールの強い酔いは、わしに今回の旅の反省を促し、さらに新たなる放浪への意欲を駆り立ててくれよった。 「思い出の地」を最終地にするのではなくて「出発地」にすれば良かったということじゃ。 思い出で締めくくるのはどうにも年寄りじみておっていかん(って実際おっさんだけど)。 最初にやっておけば、「目的地」が見えないだけにもっともっと未踏の地へ前進する意欲が燃え盛ったに違いないということじゃ! 今後あらためて放浪をするのであれば、この時の思いを参考にルートを決めたいと思った次第じゃ!



GO TO TOP