NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.227


■ロックまわり道紀行〜ハンガリー

 「シルバー・ウイーク」という聞きなれない秋の大型連休が日本ではあったようじゃが、諸君はいかが過ごされたのか?ではなくて、The-Kingの「開放デー」には行ったじゃろうな! そしてロックンロール・スピリットとご予算を思いっきり解放したじゃろうな!(笑) 解放出来なかった(行けなかった)方は、しっかり通販の方でわしの分まで頼んだぞ〜。

 わしの旅路は、人生初の東欧圏に突入した! ただいまハンガリーの首都ブダペストにおりまする。 ハンガリーという国は、ミレニアム前後に大国の圧政から解放されて独立した数多くの欧州新興国とは違って、古くからヨーロッパの中央地域で存続してきた国じゃ。 しかし日本での知名度はまったくもって低い。 クラシック音楽ならドイツやオーストリア、ロックならイギリス、サッカーならイタリアやスペイン、お料理ならフランスやイタリア、ウォッカならロシアみたいな、「〇〇ならハンガリー」といった絶対的な代名詞になるもんがないからじゃろうな。 そうかといって、周辺の列強国の支配に長年屈してきた弱小国でもない。
 何故わしがハンガリーへ行ったかというと、それは憧れのクラシック音楽家にハンガリー国籍の方が多いからじゃ。 まあそこら辺を強調していくとクラシック音楽コラムになってしまって少々堅苦しい。 そこで、諸君に興味を持って頂けるような事項のみ取り扱うことによって、日本人には印象の薄いハンガリーという国を極めてざっくりとご紹介してみたい。
 というのも、フェイスブックでハンガリーの印象を簡単に紹介しただけで、「いいね!」のカウント数が突然増えたんでビックリしたんじゃよ。 それだけハンガリーが日本人に新鮮な国だったということじゃ。 このコラムに「いいね!」クリックボタンは無いが、せめて諸君から「ほほぉ〜、まあ悪かねー国のようだな!」って印象を与えさせてもらえればって願って書き綴ってみたぞ!  今回もまた「ロックンロール・コラム」とはかけ離れておるが、七鉄の「ロック回り道紀行」ってことでどうか楽しんでくれたまえ。

(右写真は、首都ブダペストの王宮の丘から見たドナウ川と国会議事堂。 旅行ガイドブックのグラビアや、クラシック音楽CDのカバー等に用いられることの多い、ブダペストを象徴する有名なポイント)



七鉄のロック回り道紀行 東欧編 Vol. 1
“ドナウの真珠”ブダペストを擁するハンガリー
(前編)



●Part 1 ハンガリーの有名人

 知らない国に興味をもって頂くには、日本人も知っておるかもしれん「有名人」を紹介するのが一番早いじゃろう!
 
男子体操界に永遠に名を刻す、ゾルタン・マジャール

 1976年モントリオール五輪における「男子体操:あん馬」の金メダリストじゃ。 世界選手権も含めて同種目においては数年間無敵を誇り、また男子体操競技で初めて10点満点を出したはずじゃ。 「マジャール移動」「マジャール・シュピンデル」と名付けられた革新的な技を生み出した、まさに「あん馬の王様」じゃ。 ご本人の名前が付けられた新技も今ではスタンダードな技になったそうじゃが、70年代後半の頃はマジャール本人しか出来ない超ウルトラ難易度じゃった。
 当時の男子体操界は全6種目において日本と旧ソビエト連邦がメダルを独占する状態じゃったが、「あん馬」だけは日ソいずれの名人もゾルタン・マジャールを破ることが出来なかったのじゃ。
 こう言っては競技者に失礼じゃが、あん馬ってのは体操競技の中ではもっとも見栄えがしない種目じゃ。 しかしあん馬台の上下左右をなが〜い手足で優雅に舞うマジャール氏の競技は美しかったと一言! 10点満点は、まさに「満点美」って採点じゃったに違いない。


超絶技巧のビッグ・スター・ピアニスト、フランツ・リスト

 19世紀に活躍したクラシック音楽史に残る名ピアニスト、名作曲家。 また絵画、文学、風景から受けた印象を管弦楽によって表現する「交響詩」という音楽形式の創設者でもある。
 教育熱心だった父親の方針により、幼年期より生活と音楽活動の拠点をドイツ(もしくは隣国オーストリア)で送り、生涯にわたって母国語を話せなかったらしい。 それでもリスト本人は「自分の音楽的ルーツはハンガリー民族音楽にある」と言い続けており、それを証明するような楽曲もいくつか発表しており、ハンガリーにおいては永遠の英雄、偶像的存在じゃ。
 ピアニストにおいては、バイオリンのニコロ・パガニーニ(イタリア)とともに、超絶的なテクニックで観衆の度肝を抜く「クラシック黄金狂時代」の代表的プレイヤーであり、またハンサムでスマートな容姿により貴婦人たちに熱狂的に支持された“元祖音楽スター”でもある。 
 
 作曲家としてのリストの一般的な人気は、前世代のモーツァルトやベートーベン、同世代のショパンやシューマンに比べるといまひとつ。 それは大衆音楽的な言い方をすれば「ポップで分かりやすい」わけではないからか!? ロック・ミュージック的に言えば「プログレっぽい、不思議なメロディーと構成」だからか!? ピアニストとしてあまりにも凄まじいテクニックの持ち主だっただけに、作曲された曲は難易度の高いテクニックが基本となっておる場合も少なくなく、昔も今も単純にスコアを弾きこなせる者が限られておることも原因じゃろう。


ピューリッツァーにキャパにルービック!

 報道・文学・作曲の分野で卓越した業績をあげた人に与えられるアメリカで最も権威あるピューリッツァー賞は、ハンガリー系ユダヤ人のジャーナリスト、ジョゼフ・ピューリッツァーの遺志によるものじゃ。
 ジャーナリストといえば、戦場カメラマンのロバート・キャパもハンガリー人。 ブダベストで生まれたキャパは、スベイン内戦、日中戦争、第二次世界大戦、中東戦争を取材したのち、インドシナ戦争で地雷を踏んで最期を遂げた偉大なる報道写真家じゃ。
 またボールペンを実用化したビーロー・ラースロー、安全マッチを開発したイリニ・ヤーノシュ、ソーダ水の大量生産法を発明したイェドリク・アーニョシュ、電話交換台を発明したティワダル・プシュカーシュ、そしてルービックキューブを発明したエルノー・ルービックもハンガリー人じゃ。


●Part 2 日本とハンガリー関わりバナシ 
   〜サッカー日本代表の歴史的快挙に“前後した”ハンガリー


 なんとか大使様が来日されて両国の友好を〜なんてハナシよりも、手っ取り早くスポーツで両国が対戦したエピソードの方がええじゃろう(笑)  それもサッカー話なんで、是非読んでくれ!

 1968年メキシコ五輪において、サッカー日本代表は今も語り継がれる銅メダル獲得、それも3位決定戦において地元メキシコ代表を2-0で破るという快挙を成し遂げた事は、諸君の中でも知っておる方はいらっしゃるじゃろう。  なにせ、サッカー日本代表の歴史上最大の偉業じゃもんな。
 んでハンガリーとの関わりなのじゃが、この3位決定戦の前の準決勝において、実は日本はハンガリーと対戦しておるんじゃよ。  結果は日本が0-5と大敗。  本来実力が拮抗しておるチーム同士が対戦するはずの準決勝でのこの大差のスコアは、五輪サッカーの2次リーグ史上ワーストスコア!
 もっとも当時のハンガリー代表は黄金時代であり、このメキシコ五輪と前回の東京五輪(64年)で連覇。 62年と66年のW杯でもいずれもベスト8に進出しておる。 日本代表は銅メダル獲得という栄誉の前に、ハンガリーからサッカーのワールド・レベルという高い壁を見せつけられたってわけじゃ。

 時は進み、1996年アメリカ五輪。 日本代表が1次リーグ初戦でブラジルを1-0で破って“世紀の番狂わせ”と世界中が騒然となった時じゃ。 同大会において、日本はこの大金星のみで2次リーグに進むことが出来なかったように記憶されておる。 しかし正確には1次リーグの第3戦において、日本はロスタイム終了間際の1分間に2点をとって大逆転勝利を収めておる。 その相手がハンガリーだったのじゃ! 当時のハンガリーの監督は「日本は二度も奇跡を起こしやがった!」とコメントしたものじゃ。
 日本代表史上燦然と輝くこの二つの勝利の前後のいずれかにはハンガリー戦が組まれておったというわけじゃが、これも日本とハンガリーとの何かの縁なのかもしれんな(笑)



●Part 3 七鉄のオススメ観光ポイント

■国会議事堂〜セニーチェ鎖橋〜王宮の丘

 当ページ上から2枚目の写真は、ブダペストの代表的観光ポイントじゃが、そーいう場所の詳細はガイドブックさんにお任せ。 わしは“夜バージョン”の方をご紹介しよう(笑)
 ブダペストの中心にはドナウ川が流れており、東京の隅田川のように有名な橋がいくつか架けられておる。 そのうちのひとつ「自由橋」へ陽もとっぷりくれてから行き、ドナウ川の対岸を臨むと、闇夜に「王宮の丘」と「セニーチェ鎖橋」が美しく浮かび上がる。 (左上写真) その光景を見たら、誰もが「鎖橋」を渡って「王宮の丘」を登りたいという欲求を抑えることは難しいじゃろう!
 “欲求”に忠実に従ってドナウ川沿いを鎖橋に向かって歩くと、左手に黄金に輝く巨大な国会議事堂が現れて圧倒されてしまう! (右写真) この眩しいばかりの光景も実は議事堂の裏側であり、反対側の正面入口の方へ回ってみるとより荘厳な議事堂の全貌に言葉を失うぐらい感動するじゃろう! 左下、右の写真は映画のセット用建物ではないぞ。 ブダペストの正真正銘の国会議事堂じゃ!

 次に、黄金に輝く国会議事堂を越えて「鎖橋」へ。 全長370メートルの鎖橋を渡ると、今度は王宮の丘が迫ってくるのじゃ。 
 ライティングと装飾が施されたこの橋は、単なる交通用架橋ではなくて、立派な観光ポイント。 橋の中央のスペースでは恋人たちがくつろいでいたりする。 
 橋を渡り切ると王宮の丘へと続く「クラーク・アーダーム広場」へ。 昼間はそこからケーブルカーで丘を登るようじゃが、夜間は徒歩! これもまた情緒があってよい。 闇夜に輝く「鎖橋」と「クラーク・アーダーム広場」を見下ろすことのできる光景もまた美しい! 約70メートルの丘を登りきった頂上には何があるのか? それはまた次回にでも!

 

■リスト広場、リスト音楽院、リスト博物館、オペラ劇場


 偶然にもわしが逗留しておるホステル(安宿)は、「フランツ・リスト音楽院」の目と鼻の先の距離! これも神様のお導きってやつじゃろうな〜(笑) 音楽院の横は緑道の両側に洒落たカフェが続く「リスト広場」。 更に歩いて数分でリストの生家が改造された「リスト博物館」が! 周囲にはリストもモニュメントもいくつも見ることが出来るという、リスト・ファンにはたまらん環境じゃ。 
 「リスト音楽院」は、ピアニストのみならず広くクラシック音楽を勉強する音楽生たちの教育機関のスクールであり、日本人らしき学生もちらほら。 いつも建物内からレッスン中の学生たちの奏でる音楽が聞こえてくる。 それを耳にしながら「リスト広場」のカフェでくつろぐのがサイコーじゃわい! また院内ではフリーコンサートも頻繁に開催されておる。

 「リスト博物館」は一部が「音楽院」の分校としても使用されており、展示室自体は3部屋と少ないが、リストファンには腰が抜けるほどの感激の展示品ばかり!
 リストが生活したリビングが再現されており、実際に使われたピアノ、デスク、ベッド、創作活動に使われたペンや楽譜、その他数々の生活小道具、また有名な肖像画の現物が惜しげもなく数多く展示されておる。 写真撮影は、約600円の追加料金を払えればOK。
 またわしが訪れた時は丁度展示室の隣のレッスン室で声楽レッスンが行われており、ちゃっかり上質の声楽をタダ聞きさせて頂いた!
 
 「リスト博物館」から徒歩10分くらいに「オペラ劇場」があり、超一流のオペラ歌手たちが日夜出演しておる。出演者によって鑑賞料は異なるが、わしが初めて訪れた時は劇場横の野外スペースで「特別ミニコンサート」と題された無料野外歌劇をやっておった! これは地元市民や観光客への劇場からの粋なサービス! さすがはクラシック音楽の本場じゃと感心してしまう太っ腹ぶりじゃ。 クラシック音楽が庶民の生活の中に根付いておるブダペストならではのスタイルじゃ。


●Part 4 〜ハンガリーのタバコ事情(ほんの一部)

 なんせまだ滞在日数が浅いので全容を把握出来ておらん上に、ハンガリー入国5日目から風邪をひいてしもうたんで、語るべき体験にはほど遠いのが現状じゃ。 とりあえず現在までたしなんでおるものをご紹介しておこうか。
 まずタバコ。 ヨーロッパ全体でタバコは高く、ハンガリーも例外ではないが、他国に比べればまだ安い方じゃ。 国産タバコで900〜1,000フォリント(約400円)。 ただしハンガリー全体の物価指数で見ればかなり高い。 わしは入国当初から「Hungaria」というご当地タバコ(920フォリント)を吸っておったが、旅行者にとっては贅沢品。 そこで思い切って同銘柄のシャグ(手巻き用タバコ)にチェンジした。 専用のローラーを使っていちいち巻くのは面倒じゃが、これなら約4分の1の価格になる勘定じゃ。
 この「Hungaria」というシャグのパッケージがおもしろい。 裏側に色の薄いリンゴの写真があしらわれておる。 ハンガリーのタバコはフルーツフレーバーのタバコがいくつかあるので、最初は「リンゴフレーバーなのか?」と。
 ところがタバコ屋のオーネサンによると、「この写真のリンゴは色が薄い古いリンゴでしょ? つまり吸い過ぎは老化を早めますよという警告表示なのよ」と説明してくれた。 フルーツ・フレーバー・タバコのある国らしい(?)、ささやかなブラックジョークってところじゃ。
 ちなみにハンガリー人の喫煙率は高く、歩きタバコなんかは普通じゃ。 彼等の吸っておる銘柄をチェックしておると、マルボロ系が多い。 ひと箱600〜700円はするタバコを男も女も気軽にスパスパやっておる。 喫煙は庶民にとって希少な贅沢習慣なんじゃろうな。


 「お〜い七鉄、酒のハナシがねーぞ!」って、ハイッおっしゃる通り(笑) いやあ〜実はな、入国5日目からひどい風邪をひいてしまってビール以外ほとんど飲んでおらんのでまだ書けませんわい。
 そのビールも、銘柄が大変に多くてよおわからん・・・タバコ同様フルーツフレーバーのビールもたくさんあるし。 値段は500ml缶で250〜350フォリント(約120〜170円)。 既に6〜7種類はトライしたが、お味の質は見事に値段に沿っておったわい(笑) 一方、ハンガリーはワインの美味しさでも有名らしいんで、今までワイン音痴じゃったわしも是非トライしたいと思うとります! この続きは次回に!!




酔眼雑記 
〜ハンガリー入国前余談

 今回のハンガリー入りは、タイ・バンコクからのノルウェー航空のフライト。 バンコクから約12時間かけてノルウェーの首都オスロを経由。 オスロから同社の別便に乗り換えて約2時間かけてハンガリー・ブダペストに到着という航路じゃった。
 オスロでは乗り継ぎの為に約2時間待機したが、経由なんで空港の外には出ることはできず、空港内で漫然と次のフライトを待つのみ。 喫煙所もなくて落ち着かずに退屈じゃったが、唯一目を引いたのが、空港に停泊しておるノルウェー航空の飛行機数機の尾翼。 そこには、スカンジナビア半島の国(ノルウエー、フィンランド、スウェーデン)の歴史的人物のイラストが描かれておった。
 わしが肉眼で確認出来たのは「グリム童話」の作家アンデルセン、大女優グレタ・ガルボ、それから名前を知らない政治家?のイラスト。 他にもスポーツ選手とか芸能人とかのイラストがあるに違いない。 “空飛ぶキング”と呼ばれた、フィンランドのジャンプスキーの英雄マッチ・ニッカネンとか、スウェーデンの世界的ポップ・スター、アバとかのイラストもあるのじゃろう。
 こういう洒落っ気はとてもアメリカ的であり、庶民と飛行機との繋がりをより温かくするもんで大賛成じゃよ。 肖像権の問題とかも絡んでくるんじゃろうが、アメリカやイギリスでも是非ともやってほしい。 自分が乗る飛行機にエルヴィスとかジェームス・ディーンとかマリリン・モンローが描かれていたら、それだけで満足度が上がる!なんて思うのは年寄りの感覚かのお?(笑)
 
 ヨクワカンネーゾー的じゃったのが、オスロ空港内乗り継ぎ客用の機内持ち込み手荷物検査。 免税店で購入した封印された酒類以外は、飲料ものはペットボトルの水もNGなのじゃ。 乗り継ぎ前の飛行機内で飲んでいた水が、なんで乗り継ぎ便内に持ち込んじゃダメなのか、まったく理解不能。 
 笑っちゃったのが、とばっちりを食った乗客の行動。 中には1.5リットル・ボトルに半分以上残っておる水を仕方なしに検査員の前で飲み干そうとする者も結構いるんじゃな! ドリンク・ファイターそのものじゃよ。 どこの国の空港でも、入国審査とか荷物検査っては担当係員によって態度が全然異なるもんじゃが、あの場の検査員は乗客への嫌がらせをやっていたんじゃないかって思える光景じゃったな〜。
 このオスロ空港において、わしは各担当員から珍しく理不尽な行動をされることもなく、ほとんど“ブラインド・チェック”でスルー。 EU国圏内では今後半年間は入国審査は一切ないのできっといいEU旅行になるであろう!



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