NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.224


 カンボジアの滞在ビザ有効期限が迫り、雨季の中で次なる進路を考えあぐねておったある晩、首都プノンペンにおいてロックの神様からステキなプレゼントを頂いた。 偶然目にした「Indosina's Longest Runnning Rock-n-Roll Bar」の看板に釣られて「まあ試しに〜」と軽い気分で入場してみたら、そこは東南アジアでは最高級のロック・バーであった!
 程よい広さのバーの中に有名なロック・アイコンをディスプレイして、BGMにロックを流すといった「ある程度の資金とやる気があれば誰でもできる」ロック・バーとはスケールが違う! ディスプレイ・アイテムのレベルが違う!! 店内に漂うロックスピリットの熱さが違う!!! 失礼ながら「こんなグレイトなロックバーが東南アジアにあったのか!」と驚愕してしもうた。

 更に驚いたのが、現場を切り盛りするマネージャー殿が日本人の若者だったのじゃ! こりゃもう、取材を申し込むしかないと即決して、さっそくマネージャー殿に詳しいお話を伺って参ったので、是非とも諸君にご紹介しておこう。
 The-King製イタリアン・カラーシャツとエドワード・ジャケットをめかしこんでの取材は、その最中はビールを我慢して臨んだぞ!(笑) 少しでもマネージャー殿のお話、お店の雰囲気を正確に諸君に伝える為の精一杯、誠意一杯(笑)のわしの配慮じゃ! 酒抜きとはいえ、今回のわしの旅の日々で忘れられないハッピー・ナイトとなった! (もちろん、取材後は飲んだがな!)筋金入りのロック・ファンならばここを訪れるだけでもプノンペンまでやって来る価値があるゾ! 


日本人マネージャー村上周平氏の仕切る
カンボジア・プノンペンのロック・バー「シャーキー・バー」
ウッドストック・スピリットを伝承する、本格派アメリカン・ロック・バー


■シャーキー・バー概要■

 来年で開店20周年を迎えるという「シャーキー・バー」。 プノンペン最大の繁華街サップ川リバー・サイド・エリアの中心地から徒歩数分の圏内に位置しておる。
 当地最大のマーケットであるセントラル・マーケットや最大のデパート「ソリヤ」、またわしがほぼ毎晩深夜まで飲んだくれておるビアガーデン・エリア「ゴールデン・ソリヤ」までもすべて徒歩10分以内の好立地じゃ。 ただし「シャーキー・バー」周囲は、繁華街の喧騒が一端遮断される静かな場所であり、他所で飲んだ後に気分転換をして飲み直す場合にも気分をクールダウンさせてくれる環境じゃ(笑)
 ほとんどの来場者は白人さん。 プノンペンは、古くから余暇をカントリーサイドやビーチリゾートではなく都会で過ごしたい白人さんたちに人気の場所であり、その中でロック好きの白人さんたちに贔屓にされてきた本格的ロック・バーじゃ。

 ドリンクのメニューは、ビールのみならず、ウイスキーやカクテルの種類もプノンペンのバーの中では豊富であり、料理はウエスタン、メキシカン、タイ料理各種が楽しめる。 詳細は後ほど述べるが、目的や気分に応じて自由に店内を移動しながら飲み直しが出来る開放感に溢れておるのが魅力じゃ。
 毎週週末にはライブ・イベントがあり、ロックだけではなく、レゲエ、ヘヴィメタル、パンク、フォーク等様々な音楽を演奏するバンドを分け隔てなく出演させておるらしい。

多目的エンジョイ・スペースでロックン・ロール・ナイト!


 店内はおよそ50坪の広さがあり、100人は軽く収容できるじゃろう。 典型的なアメリカ南部のロック・バーを想起させる重厚な木造のスクエア・カウンターが中央を占拠し、真上にはアメリカの「レベル・フラッグ」が掲げられておる。 カウンターの左右にはビリヤード・テーブルが配置され、更に演奏のステージ・スペースもある。 またベランダも開放されており、一列に約20人が座れる細長い洒落た野外スペースじゃ。

 勝手に想像すると、人的交流を求める輩は4台あるビリヤード・スペースへ。 ドリンクを飲みながらプライベート的にBGMやライブ演奏を楽しむにはカウンター席へ。 込み入った話をしたりオキニの女性とより親密になりたい場合には、ビリヤードやステージの横にあるスタンディング・チェア&テーブルへ。 そして一旦気分転換をするならベランダがヨロシカロウ!
 
 音楽を聞きながら、目的に応じて自由気ままにバースペースを楽しむことが出来て、店内のどのスペースにおっても開放感のあるワイドな雰囲気を満喫することが出来るのはサイコーじゃ。
 余談ながら、トイレが清潔に保たれておるのもGOOD ! 東南アジアの飲食店においては、トイレの清潔度は大変に重要なポイントなんじゃよ。

 実は「シャーキー・バー」は、10年ほど前までは「ゴーゴーバー」スペースまであったらしい。 「ゴーゴーバー」とは、ロックンロールの強烈なリズムにあわせた女性ダンサーのセクシーなポール・ダンスを鑑賞するバーの事であり、わしも決して嫌いではない! 特に白人男性が大好きなイケイケ系のバーじゃが、昨今のカンボジアは風営法が厳しくなり、「ゴーゴーバー」スペースは廃止になったそうじゃ。
 一部の日本の情報誌やネット情報では、「シャーキー・バー」を風俗バー的に紹介しておる勘違い記事もあり、これはまったくもって誤報もいいところ! そーいうフザケタ情報を流す不謹慎な輩は、実際には「シャーキー・バー」を訪れた事がないに違いない。 この際、わしから「喝!」を100連発しておくぞ!


マネージャーは日本人・村上周平氏!

 初めて「シャーキー・バー」を訪ねた時、ディスプレイ・アイテムのひとつ、オールマン・ブラザーズ・バンドのポスターをじっくりと拝見しておると、一人の感じの良いアジア系の若者が声をかけてきた。 素晴らしくネイティブなイングリッシュを自在に操っており、わしの下手くそイングリッシュが恥ずかしいぐらい。 丁寧に店内ディスプレイを説明して下さったので、「いやあ〜日本から来て良かった」とつい日本語で口走ったところ、「え? 僕も日本人ですよ!」と返答されたのでビックリ! 彼はわしの事をどこの国の人間と思っていたんじゃろう?(笑)

 マネージャー殿は村上周平氏。 若干23歳で「シャーキー・バー」の重職に就かれてからまだ僅か数ヶ月とのこと。 前任者が50歳代のイギリス人だったらしいので、村上氏を採用したオーナーは、彼の若さと可能性に「シャーキー・バーの」未来を託したのであろう。
 海外のオキニの店のマネージャーが日本人というのは、旅人にとってこれほど心強い存在はないな! それがロック・バーのマネージャーとなれば、ファンにはこの上なく頼りになるのじゃ。
 ちなみに村上氏はその素晴らしい英会話力が買われて、プノンペンのFM局のDJもされておるとのこと。 またギター、ベース、ドラムもこなすマルチ・プレイヤーでもあり、時折店内で催されるジャム・セッションにも飛び入りするほどのロック好きなんだそうじゃ。

 ステキな笑顔、ソフトな語り口、流暢なイングリッシュもさることながら、わしがもっとも感心したのは、店に訪れるお客さんに次々と声をかけて、自ら積極的にコミュニケーションをとる姿勢じゃ。 わしが声掛けされたのも、村上氏の接客ポリシーの一例だったわけじゃ。 中には着席する前にわざわざ村上氏に挨拶に来るお客さんもおる。 マネージャー職就任からまだ日が浅いものの、彼のお客様全てを大切する姿勢が「シャーキー・バー」の大きな魅力でもあるに違いない!
 ちなみに村上氏が選曲した取材当日の店内BGMは、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、エアロスミスらのオールド・ロックに、時折新しめのロックを加えるという絶妙のさじ加減。 ご自身のロックの趣味に関しては多くを語りたがらなかったが、その若さに似合わぬ、なかなかどうしてスルドイロックフィーリングの持ち主とわしは見た!


厳選されたディスプレイ・アイテム

 ビンテージもののロック・ポスター、ロックTシャツ(中には当店オリジナルのTシャツも!)、50〜60年代風のアメリカンカルチャーを代表する看板やシンボル・マーク等、店内の壁面、柱にはアメリカの大人の遊びアイテムがひしめき合っておる。これはすべてアメリカ人オーナーである“ビッグ”・マイケル氏のコレクションとか。
 広い店内だけに相当数のアイテムがディスプレイされておるものの、これみよがしにコテコテに飾りまくるのではなくて、洒落た壁画や壁紙のデザインも程よく活かしながらアイテムが配置されておるから暑苦しくない! 
 ここは「ロックンロール・ミュージアムではなくて、ロック・ファンたちの社交場である!」とマイケル氏の職業意識、美意識の高さが感じられるので、「マイケル氏は、実はもっとスゴイ物を持っているんじゃないか?」って勝手に期待してしまうのじゃ(笑)

 まあ初めて訪れたロック・ファンならば、ドリンク・オーダーよりも何よりも、まず店内ディスプレイ・アイテムをひとつ残らずチェックしたい衝動を抑えることはできんじゃろうな!
 わしなんざ着席する前に店内を一周してしまい、冷えた生ビール飲みたさに来店した事をすっかり忘れておったわい!


オーナーは、ウッドストック体現者であり、正真正銘のアメリカン・ロッカー

 残念ながらオーナーのマイケル氏は一時帰国中であり、今回お会いすることは叶わなかったが、ムラカミ氏の話によると、マイケル氏はあの伝説のロック・フェスティバル「ウッドストック」の体現者なんだとか。 それもバックステージの至近距離から鑑賞していたらしい。 ジミ・ヘンドリックスの演奏を撮影した写真の1枚にマイケル氏が写っておるという幸運の持ち主でもあるとか。 今回はご本人不在の為に肝心の写真を入手出来なかったので、代わりに左の写真をイメージとして使用しておくぞ!
 

 「ウッドストック」体現者のマイケル氏の経営理念は、恐らく「ウッドストック・スピリット」を未来に継承していくことのようじゃ。 日本において「ウッドストック」は、「愛と平和と音楽の三日間」とサブタイトルが付けられておったが、マイケル氏は「愛と平和と音楽の三日間」を「シャーキー・バー」にて実践しておるのじゃ。
 年に一度三日間通しで「ウッドストック」ならぬ「ペンストック」(“ペン”とはプノンペンの“ペン”)と命名したイベントを当店で催しており、プノンペン在住の白人さんたちで結成されておるバンドが数多く出演しておるんだそうじゃ。 専用のTシャツまで製作するという力の入れようじゃ。 やがてこうした情熱が実って、ロックの本場のミュージシャが「ペンストック」に出演してくる日も遠くはあるまい!

 「シャーキー・バー」のホームページを閲覧してみると、昨年年末の第5回「ペンストック」の告知ページには「ウッドストック・フェスティバル」の全貌、スローガン、スピリット、そして未来へと継承するべき意気込み等がニューヨーク・タイムスのライターの手によって連綿と綴られており、お店のPRよりも「ウッドストック・スピリット」がフューチャーされとることに驚いてしまう。 これはまさにウッドストックを生で体験した者でしか持ち得ないエネルギーを象徴する文章であり、マイケル氏の「シャーキー・バー」経営理念そのものなのであろう! 拙いわしの英語読解力でも充分に「シャーキー・バー」とマイケル氏の情熱が伝わってくるので、どうかご覧あれ


Additional Report! 〜オーナーからサプライズが!

 今回のレポートをThe-Kingのボスに送る寸前、マネージャーの村上氏を通してオーナー・マイケル氏から連絡が入った! ただいまウッドストック現地にいらっしゃるそうで、ありがたいことにご自身と現地の模様の写真を送信して下さったのじゃ。 
 ウッドストックでは「Woodstock Peace Parade」が催されており、パレードの様子や、1969年のフェスティバル開催以降当地を離れない筋金入りのヒッピーさんも撮影されておるとのことじゃ。

 入場一発で「シャーキー・バー」に魅了されてしまったわしの「ロック愛」がマイケル氏に伝わったのかもしれん!(笑) いやいや、The-Kingの50sロックへの情熱とマイケル氏のウッドストック・スピリットを、ロックの神様が結びつけたんじゃな〜。 やはりホンモノ同士ってのは、時間や場所を隔てても魂の邂逅を果たすものなのじゃ! いつの日か、極上のナッソーをプレゼントに携えて「シャーキー・バー」にあらためて御礼参りをせないかんな!
 諸君の中では、カンボジア・プノンペンと言われてもピンとこない方も少なくないと思われるが、いつか東南アジアを訪れる機会があったら、必ず足を運んでみてくれたまえ。 ロック・ファンなら必ず、入場直後にシビレルに違いない! 


「シャーキー・バー/SHARKEY BAR」

●住所: 126 Street 130, Phnom Penh, Cambodia
●電話番号: 85523211825
●ホームページ:http://sharkycambodia.com/
●フェイスブック:https://www.facebook.com/Sharkycambodia/photos_stream 

●営業時間:18:00〜25:00(年中無休)
●各種カード使用可
●毎週週末ライブ・イベントあり(詳しくは上記HP参照)。



七鉄の酔眼雑記 〜プノンペン・ビール/ビア・ガーデン事情(の一端)

 現在、カンボジアはスコールのやってくる季節じゃ。 それも最近では夕飯時を狙い撃ちするようにやってくる日が多く、外食のタイミングを逸してしまうので、キッチンのない安宿でも食える食材を午後3時くらいまでに買いに行く事になるのじゃ。 カップ麺、サンドイッチ用の食材、主食代わりになるスナック類、ドリンクウォーターなんかを3〜4日毎に大手スーパーに買いにいくのじゃが、先日初めてビール売り場に行ってビックリした。 スーパーのビールは街角の雑貨屋さんで買うよりも少々高値なんで今までは立ち寄らなかったが、カンボジアはビールの銘柄が豊富であることに気が付かされた!
 「アンコール」「アンカー」「カンボジア」「クラウン」「ブラックキャット」「ギャンズバーグ」「プノンペン」「ABC」。 更にこの中にブラック・ビールを発売しておる銘柄もある。 また酒税が安いので、お隣の国タイのビールまで国産ビールとほぼ同額でたくさん揃っておるのじゃ。 その壮観な品揃えは日本のスーパーと遜色ない! 何だか陳列棚を見ておるだけで楽しくなってくるもんじゃ。 雨続きで旅の足止めをくらっておるだけに、この際全ての銘柄の飲み比べでもしてみるか!

 一方、雨の降らない夜は当然ビアガーデンに行っての外飲み&外食。 わしが足繁く通う某ビアガーデン「ゴールデン・ソリヤ」はオープンエアで心地よく、しかも音響設備(音響効果)が素晴らしくて、白人オーナーの選曲らしきロックのBGMがサイコーなのじゃ。 ここで聞く、エルヴィス、オーティス・レディング、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、ピンク・フロイド、ジプシー・キングスのサウンドにシビレテおった時、ある事に気がついた。
 若い頃に比べて、何故音楽のCD鑑賞時間が大幅に減ってしまったのか。 それはわしの感性の柔和化(決して衰退化ではないぞ!)を度外視した場合、要するにわしはとっくの昔に家庭用コンポやポータブルプレイヤーの音響レベルに飽き飽きしていた(のではないか)という事じゃ。 音量がデカくて音抜けも良く、しかも低音がほどよく響くビアガーデンの音響がわしには必要だったのじゃ。 本編でご紹介した「シャーキー・バー」も、ライブハウスを兼ねておるので音響設備はなかなかのものじゃから、聴き慣れた楽曲でも忘れかけた若き日の感動が蘇ってくる。 何だか、自分の音楽を求める感性が若かりし日よりも実はステップアップしておった?ような気がするわい。

 日本でもいい音でCDを聴かせてくれるお店はあるが、どうも重低音がキツ過ぎてわしの耳に合わん場合が少なくない。 プノンペンの「ゴールデン・ソリヤ」や「シャーキーズ・バー」では、音楽の中で自分が漂いながら自分の居場所を見つける鑑賞が出来るのじゃ。 正直なところ、素晴らしく音質が進化したポータブルプレイヤーで音楽を聞いておっても、大体1時間ぐらいで苦痛になっておっただけに、音楽の質と同等に音響クオリティもこれからの音楽人生に欠かせない要素であることを遅ればせながら認識したわい。 これは旅マジック、外地マジック、いわゆる異国情緒の成せる業なのかもしれないが、カンボジア・プノンペンの「ロック処」には大いに感謝しとる次第じゃ。 ちなみ「ゴールデン・ソリヤ」のスピーカーはYAMAHA製じゃった。 またひとつ、外地で日本製品の素晴らしさを確認させて頂いた。



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