NANATETSU ROCK FIREBALL COLUM Vol.208



ロック・グレイテスト・ヒッツ・アルバム(ベスト盤)異色編集盤
 2014年のファイナルに向けて、諸君アーユーレディ? 毎年師走恒例のお願いではあるが、どうかThe-Kingファッションで一分の隙もなくキメて一年の締めくくりを鮮やかに飾ってくれ〜。 本格的なロックファンの諸君のことじゃから、期待通りのお買い物に励んでくれる事は分かっておるが(笑)、ただひとつだけ気がかりなのは、師走に諸君からのオーダーが殺到してカートがパンク、ボスもパンクしてしまう事じゃあ〜。 今年の師走はわしは日本におらんのでボスのサポートをでけんから、どうかオーダーは迅速に、スマートに、そして多目に(笑)にお願い致す!
 
 さて、旅人生を再開した今年の締めとして!? 「年末に何かi-tunedでニューアルバムでもダウンロード購入しちゃおうかな〜」と発売予定リストをチェックしていたら、なんと!エディ・コクランの新しいベスト盤が12月17日に出るんじゃな。 タイトルは「EDDIE COCHRAN + SINGIN' TO MY BABY + 9 」だって。 もう、いい加減にしてほしいし、ボーナストラックって未発表もんなのかどうか疑わしいし、単なる曲目入れ替えベスト盤としか思えん・・・。 でもエルヴィスにしろ、ジーン&エディにしろ、「ダンナ、今年もアルバム1枚、いかがですかあ? 内容もベンキョウしましたですよ〜グへへへ」ってのが延々と続くのお。
 2011年発売の「Eddie Cochran〜Summertime Blues」なんて、全34曲収録と発表されていたのに、実際に買うと45曲も入っとるサプライズがあって「どうです? お買い得でしょう! またヨロピクね」って、もうカナイマセン・・・。 反対に今年のヤツは、「+9」とかいっちゃって、実は「プラス・ナイン」っつう未発表曲が1曲だけ追加されたなんつうドリフのコントみたいなオチはないだろうな!

 ベスト盤っては、70年代から「手っ取り早い売上確保」の企画として乱発されるようになり、その大半はロッカーの承認なしにレコード会社が一方的に発売に踏み切っておった。 また中には、どうしても新作が完成できず、ロッカーがレコード会社との契約条件をクリアするためにやむなく発売を承認する場合も少なくなかった。
 ところが中には、ベスト盤の編集にロッカー自身がしっかりと関わり、「単なるヒットシングル集」ではない、“新作としての価値付け”に成功したものや、ありきたりのベスト盤なのに、“仕掛け方、ちょっとした工夫”によって超ロングセラーになったものもあるんじゃ。 シングルヒット集の枠を越えて編集、発表された異色のベスト盤を振り返りながら、商魂たくましいレコード会社の“悪魔の囁き(笑)”に惑わされないような英知を養おう!
 


“ヒット・シングル集”の枠を越えた、
  ロック史に残る異色グレイテスト・ヒッツ・セレクション



王者にのみ許される力技! 「ロックンロール集」と「ラブ・ソング集」

「『ロックンロール・ミュージック』『ラブ・ソングス』/ビートルズ」

 何事も時代の先端を行くことで名高かったビートルズとその関連事業じゃが、ベスト盤の製作に新しいアイディを投じたのもビートルズ・グループじゃった。 既に1970年代前半に「赤盤」「青盤」でシングルヒット曲と代表曲とを巧みに編集したアナログ2枚組み2セットの大掛かりなベスト盤事業を終えており、次のアイディアは1970年代中期の「ロックンロール」と「ラブ・ソング」とに分けた2種類の別個のベスト盤じゃ。 当時は未発表曲を加えるという特典の発想はなく、全曲既発表曲じゃったが、時代がまだまだビートルズ再結成を望んでおる頃であり、稼げる内にやっちまおう!という魂胆がみえみえ。
 でもこういう当時としては異色の企画は大人気バンドにだけ許された特権ではあり、ビートルズはその特権を惜しげもなく使ったのじゃ。 タイトルも「ロックンロール・ミュージック」と「ラブ・ソングス」と実に明瞭! 「ロックンロール・ミュージック」の方は、ジョン・レノンが選曲を熱望していたという逸話が残っておる。

 ところが、「ロックンロール」と「ラブ・ソング」に分けたベスト盤というのは、エルヴィス・マニアに言わせると、タイトルが「ロックンロール」「ラブ・ソング」ではないだけで、同じ概念の元にエルヴィス・サイドで既に実行されておったそうじゃ。
 エルヴィスのベスト盤、編集盤はそれこそ星の数ほど存在するので、正確に該当するアルバムがどれなのかわしには分からん。 後に内容が精査されてパッケージが化粧直しされて「ロックンロール」と「バラード」ってのが発表になったが、これがわし的にがメジャーなエルヴィスの「ロックンロール集」と「ラブソング集」じゃ。 エルヴィスとビートルズだけの特権といえば、後にナンバーワンヒットだけを集めたまさに「キング・オブ・グレテスト・ヒッツ」的なのもあったな!


ヒット・シングルを“あえて外した!?”異例のベスト盤

「ジム・モリソンの遺産/ドアーズ」

 異色のベスト・アルバムとして、もっとも早くロック・マーケットに送り込まれたのは、実は1972年発売のコレではないか? アナログ盤2枚の中には全米No.1ヒットになった「ハートに火をつけて」「ハロー・アイラブユー」、全米3位の「タッチ・ミー」といった大ヒットシングルが収録されておらず、全曲既発表曲ながらも、シングルB面のみ収録されていた2曲を含めて完全にドアーズ・マニア向けの選曲になっておる。
 原題「Weird Scenes Inside the gold mind」は大曲ジ・エンドの中で朗読されるジム・モリスンの詩の一節であり、アルバム発表の半年前に他界したジム・モリスン追悼の意を込められて編集されたニュアンスが強い。 ロックンロール・スターではなくて、一人の詩人として認められることを切望していたジム・モリソンへの餞(はなむけ)の選曲じゃろう。

 また一風変わったサービスもあって、アナログA面とC面、B面とD面がカップリングされた「オート・チェンジ・プレイヤー仕様」になっておった。 見開きの中ジャケットに記載されたジム・モリスン&ドアーズ賛歌ともいうべき専門ライターによるライナーノーツも秀逸じゃった。 残念ながらヒットチャート下位に低迷した幻の異種ベスト盤で終わってしまったが、どういう風の吹き回しなのか、発表から42年が経過した今年になってCD化されたのじゃ! 選曲の特異性がファンに評価されての陽の目なのかもしれない。
 余談ながら、ドアーズが最初に発表したライブ盤「アブソリュートリー・ライブ」(1968年)も、やはりヒット曲が1曲も収録されておらず、大半が未発表曲で占められたという前代未聞の内容じゃった。 それでもわしのようなマニアは何ら不満はなかった。 それがドアーズというバンドの最大、最凶の個性だったのじゃ


ヴォーカルが先か?ギターが先か?

「フリー・ストーリー/フリー

 ロッカーの本国と日本での評価が正反対な典型的ベスト盤じゃろう。 全てのオリジナルアルバムからまんべんなく選曲され、シングルヒット曲もほぼ網羅。 またバンドの一時分裂期の各メンバーのソロ作品もある。 当時のベスト盤の編集レベルからすれば、実によく考え抜かれたサービス満点の内容でCPが高いのは分かる。 でも“何か”が足りずに地味な印象を否めない。そんな謎めいたベスト盤がコレじゃ。

 随分と後になって“何か”は判明した。 ギタリストのポール・コゾフのプレイが躍動する曲が極めて少ないのじゃ。 フリーの本国イギリスにおいて、バンドの主役はあくまでもボーカルのポール・ロジャーズの方であり、ロジャースのヴォーカルをじっくりと聞くナンバーを主体とした選曲がなされておるのじゃ。
 また発表された1974年は、ロジャースがフリーの次に結成したバンド、バッド・カンパニーが日の出の勢いでシーンを圧巻しておった時期であり、そのロジャース人気に便乗した選曲ともいえるじゃろう。 代表的ヒットシングル「ウィッシング・ウエル」が外されていたのも、恐らくコゾフのギターが目立ち過ぎて、アルバムの流れやコンセプトを損なうという判断だったのじゃろう。
 あえてコゾフの個性を封印してロジャース色を強めた方針は見事に当たり、オリジナルアルバム「ファイヤー・アンド・ウォーター」と並ぶ彼らの大ヒットアルバムとなった。 しかしコゾフを敬愛するファンが多い日本では、なんとも片脚飛行的な印象を残したベスト盤となったのじゃ。


超!本格的な初のライブ・ベスト盤

「キッズ・アー・オールライト/ザ・フー」
 この作品は、バンドのアイドル・ドラマーだった故キース・ムーンの「追悼盤」として、または同名タイトルのドキュメント番組のサントラ盤」として紹介される場合がほとんどだが、発表された1978年当時のわしの印象は、ロック史上初の「ライブテイクによるベスト盤」なのじゃ。
 大概のライブ盤はベストアルバム的な選曲ではあるが、選曲とライブテイクの出来栄え、更にキース・ムーンのドラミングのクオリティまで総合的に精査された収録内容であり、その満足度は当然ながら凡庸のベストアルバムの比ではない!

 当時のブリティッシュ・ロックバンドのライブの特徴であった、長大なインプロビゼーションやパート毎の少々退屈なソロ、ブルース・ジャムなんか一切ない、ぜい肉を絞るだけ絞ったライブプレイの鋼(はがね)の様な強靭な迫力が圧倒的じゃ。
 後年、ソースの土台になったドキュメント番組の映像がDVD化されてからは映像の方ばかり話題になっておるが、いくら映像があっても、音しか聞けなかった頃の感動にはほど遠い。 「ほかの連中も、しょうもないベストアルバムを出すくらいなら、FI&FOだらけのツギハギでもいいから、こんなライブ・ベスト盤をもっと出せ!って願ったものじゃ。


現代版アンソロジーの“はしり”


「輝ける10年/ニール・ヤング」

 超攻撃的かつリリカルなシンガーソングライターとして登場したニール・ヤング。そのデビュー10周年を記念して製作されたベスト盤じゃ。 ソロ活動に入る前に在籍していたバッファロー・スプリングフィールドやCSN&Yの曲や、当アルバム発表時に一時企画として結成していた旧友スティファン・スティルスとのデュオの作品、そしてソロ活動と並行活動させていたバンド、クレイジーホースの作品もセレクト。 バンド活動期とソロ活動期の両方からセレクトされたベスト盤というのは当時は大変に珍しく、まさに原題「Decade」(10年間)の通りで看板に偽りなしじゃ!
 このようにソロ活動を含めた様々なプロジェクトのナンバーを配列しておきながら、凸凹感のない見事な整合性を保ったベスト盤もまた珍しい。 後にパンクに走ったり、コンピューターサウンドに浮気したりと、支離滅裂な展開をおっぱじめたニール・ヤングだが、そんな自らの一貫性のない近未来を予測しておったのか、“はっちゃける”前に己のそれまでの足跡をリボンをかけてパッケージするように、美しく整頓させておきたかったのかもしれんな。


ベスト盤では異例中の異例の、超ロングセラー!

「グレイテスト・ヒッツ」&「グレイテスト・ヒッツ第2集」/ボブ・ディラン

 1967年、1971年にそれぞれ発表されたディランのグレイテスト・ヒッツ・シリーズ。 シングルヒット曲が中心になったとりたてて特徴のないベストアルバムの様じゃが、どういうわけか2枚とも21世紀になるまで売れ続けて、2001年にはアメリカで累積500万枚のセールスに到達した。 この数字は、エルヴィスとビートルズ、イーグルス以外のロックのベスト盤としては異例なんだそうで、もちろんディランのアルバム・キャリアの中でも飛び抜けておる。 “三匹目のドジョウ”を狙って、1994年には「第3集」が発売されたが、これは凡庸なセールスに終わっておる。

 何故、この2枚だけがそんなに売れ続けたのか? 英字サイトまで色々と調べてみたが、やっぱり明白な理由は分からん。 考えられるのは、ディランほどの人気シンガーが、長期間にわたって別編集のベストアルバムを発売しなかったことじゃろう。
 またCD3枚に未発表曲をふんだんに収録したボックス・セット「バイオグラフィー」(1985年発表)も、“発掘物”としては異例のビッグヒットアルバムになったことを考え併せると、アメリカのファンは常にディランの集大成的アルバムを望んでいたということか? いずれにせよ、目先の利益に捕らわれて、クリスマスとか○○何十周年記念とかで乱発することなく、ひとつの作品として大事に位置づけをしておけば、普通のベスト盤とはいえロングセラーになるってことなんじゃろう。


「グレイテスト・ヒッツ I/クイーン」

 アナログ時代の1981年に発売された時は滅茶苦茶に売れまくり、現在までの累積売上数はイギリスだけで約600万枚にものぼり、これはイギリスレコード史上の最高売上記録なんだそうじゃ。
 前記のディラン同様、ヒット曲中心の普通のベスト盤なんじゃが、これがなんでそこまで売れるのか? 恐らく、圧倒的な“お買い得感”なのじゃろう。 アナログ盤の収録可能時間は両面合計で45分前後だったが、このレコードは曲間をほとんどとらず、レコードの音溝も極限まで狭くすることで、58分29秒という収録時間に到達させることで、通常の2〜5分の曲を17曲も収録するサービスを実現させたのじゃ。 そのために収録曲を絶え間なくメロディーのように聴かせ続ける配列がなされておるようで、元々煌びやかなアレンジで名高いクイーンの楽曲郡がより豪華絢爛たる「クイーン・オーケストラ・アルバム」みたいなクオリティに昇華しておるんじゃ。

 もっとも音溝を狭めると収録音量レベルを下げなければいかんという技術的なウイークポイントもあったそうじゃが、そんな事が問題点として云々されることはついになかったな。 さらに日本盤においては、日本で人気の高い2曲がイギリス盤と差し替えられており、お値段も2000円という安価に設定されておった事もあってわしも買った! メロディー形式の収録テクニックはことのほか有効であり、単独では聞く気になれない曲も違和感なく聞き流せる効果を実感したものじゃ。


最新、最長、そしてもっともユニークなベスト盤

「ナッシング・ハズ・チェンジド〜オールタイム・グレイテスト・ヒッツ/デヴィッド・ボウイ」
 先月発売されたデヴィッド・ボウイの活動50周年記念盤。 CD3枚組で収録可能時間をフルに活用した235分18秒の全59曲という壮大なラインナップ! 現存するロックのベスト盤としては最大のスケールじゃろうな。 ただし未発表曲/テイクが中心となった現在流行のロッカーの歴史絵巻みたいな「アンソロジー」とは異なり、新曲1曲を除いて全て旧曲なので、昔ながらのベスト盤としてカテゴライズされるべきじゃろう。
 さてその59曲の内容じゃが、まず驚いたのは新しい曲から古い曲へと時代を逆行する曲の配列じゃ。 聞き進めるとどんどん若かりし日のボウイに遭遇していき、最後の最後でモンキーズのメンバーと同じデイビー・ジョーンズという本名で、かわいらしくも怒りの持って行き場のないような歌い方をしとるティーンエイジャーのボウイが現れるという構成なのじゃ!
 しかも20世紀の楽曲のほとんどはシングル盤バージョンであり、これはLP全盛時代にボウイの楽曲を愛してきた大半のファンへのせめてもの新しい楽しみ方の提供である、と善意に受け止めておこう。 また21世紀の楽曲もほとんど新しいリミックスが施されており、記憶に新しい楽曲でも、オリジナルテイクとは違った趣きで聞けるサービスじゃろうな。

 選曲に関してはファンの声は十人十色じゃろうが、聞き手を飽きさせないテクニックとして、3〜4年のサイクルで様々なキャラクターを演じてきたボウイの歴史の変貌を明白に浮かび上がらせる工夫がなされておるという声が多い。
 正直なところわしにはまだよお分からんが、それならば、欠落しておる過去のキャラとしては“カバーの達人”としてのボウイの姿じゃ。 タイトル「Nothing has changed(何も変わりはしない)」ってのは、かつてカバーしたジョン・レノンの「アクロス・ジ・ユニバース」の中の一節〜Nothing gonnna change my world(俺の世界を変えられるものなどない)〜をシンプルに言い換えたボウイの逆説的箴言(戒めの言葉)と思えるだけに、今後「グレイテスト・ヒッツ2」があるならば、その辺を詳らかにして頂ければ嬉しいわい。

  
ロック史上最強!のベスト・アルバム

「エコーズ〜啓示/ピンク・フロイド」


 “最強”とは、収録曲それぞれのチャートランクとかアルバムの売上枚数ではなくてだな、その驚異的な編集テクニックじゃ。 わしは他には、こんなモノスンゲエ〜ベスト盤を聞いたことがない!
 発表は2001年。 デビュー35周年を記念して製作されたCD2枚組のベスト盤じゃが、35年間の代表曲が年代関係なしにバラバラに配列されてあるにもかかわらず、編集テクニックの限りを尽くして、各楽曲の時代性、音楽性、テーマ性の差異をまったく感じさせることなく一気に聞かせてしまうのじゃ! そしてその空前の圧倒的な完成度の前に「あの曲が入ってない」「この曲は外すべきだ」といった個人的な拘りなんぞは全て水泡と化してしまう。

 大体ピンク・フロイドを初めとしたプログレッシブ・ロック・バンドほど、ベスト盤の編集は難しい。 ただでさえ長大な曲は多いし、アレンジや歌詞は多彩を極めておる。 何よりも各楽曲が収録アルバムのコンセプトの一部であるので、他のアルバムへの置き換えは基本的に不自然になるのじゃ。
 そういう難攻不落の問題点をものの見事にクリアして、新しいコンセプト・アルバムとして完成に至った奇跡のベスト盤がこれなのじゃ。 CDの各面に、旧曲の巧みな組み合わせによって新しくて完璧な組曲が出来上がっておるのじゃ。 上手い表現が出来ないが、旧型の車、電化製品、コンピュータの部品を駆使して最新の飛行機を完成させたとでもいうべきか! ただただ驚嘆、最敬礼もののベスト盤じゃ。


 異色のベスト盤の代表例をご紹介してきたが、通常のベスト盤にも“それなり”の歴史と種類があったな。 「シングル・ヒット曲集」から派生して、「プラス未発表曲、未発表テイク」「まるごとシングル曲集」「有名な誰それ選曲集」「デジタル・リマスター集」とか。 最後の「デジタル・リマスター」ってのが実に厄介であり、デジタル技術というのは進化し続けるだけに、何年か毎に新しいリマスタリングって触れ込みで登場し続けるのじゃ。 正直なところ、「一般のリスナーはよほどの高性能な再生装置で聞かないと“違いは分からん”」ってのがわしの持論なんじゃけどな。
 しかし現在旧作のニュー・マスタリング盤を製作し続けているレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジは、「最新のマスタリング技術によって、当時スタジオ一発録りだった曲の本当の姿が鮮明になった!」とか言っとるし、一体どこまで付き合えばええんじゃい、キリがないぞ、おいっ!
 ってことで、今後発売されるベスト盤のご購入はあくまでも自己責任でお願いします。 無責任な終わり方でスンマセ〜ン(笑) まあThe-Kingでのお買い物を最優先して、その余ったお金の額で判断しましょうね〜♪




七鉄の酔眼雑記 〜正木店長オススメだったエルヴィスのベスト盤! 

 わしのエルヴィス“CDリスナーデビュー”は案外遅くて、1990年。 世の中は4〜5年前にレコードからCDの時代に移行されておったが、わしはまだまだレコード・プレイヤーをガンガンに使用しており、エルヴィスもアナログで聞いておった。 意固地になってアナログにこだわっておったわけではなくて、エルヴィスをCDで聞き直すきっかけがなかっただけじゃった。

 あの当時、若き日のThe-Kingのボスが店長さんをやっておった「原宿ラブテン」他、多方面にロックビジネスを展開していた会社に入社したてだったわしは、とりあえず自らの入社記念として「ラブテン」を初め、「ゲットバック」(ビートルズ専門店)、「ギミーシェルター」(ストーンズ専門店)、「ヤードバーズ」(ブリティッシュ・ロック専門店)で1種類づつCDを買うことに決め、そこでボスに薦められたエルヴィスのCDを初めて買ったのじゃ。 それが発売直後の2枚組ベスト盤「トップ・テン・ヒッツ」じゃった。
 タイトル通り、エルヴィスのシングル曲でヒットチャートの10位以内にランクされた曲を集めたものじゃ。 チャートのランクなんてあんまり気にしないし、大好きな「ホームタウンのストレンジャー」「レコンシダー・ベイビー」「雨のケンタッキー」が収録されていないのに、なんで買ったんじゃろう? 多分ボスのセールス・トークにノセラレタんじゃろうな!発売直後で話題性があり、全38曲も収録され、おまけに社員割引も効くから、「ダンナはん、お買い得ですよ〜」とか(笑)
 真実のセールストークの内容はもう忘れちゃったが、お会計が終わったら同じ社員同士なのにボスがカウンター越しに「ありがとうございます」って丁寧に頭を下げた事は、鮮明に覚えておる。 あの日からエルヴィスをCDで聞く新しいリスニングの日々が始まったのじゃ。 この「トップ・テン・ヒッツ」のお陰で、頭の中でとっ散らかっていたエルヴィスの雑多な知識が自然と整理されていった記憶があり、レア音源はなくとも自分にはとてもありがたい作品となった。

 ちなみに「ゲットバック」で「ビートルズ・パストマスターズ1&2」の2枚。 「ギミーシェルター」で「シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ) 」(3枚組)、「ヤードバーズ」では「エリック・クラプトン・アンソロジー」(3枚組)を一気に買ったわい。 全てベスト盤、編集盤ばかりじゃ。 入社を機に、「会社の取り扱いアーティスト」に関して知らない事があってはならん!って覚悟を決めて、旧知識を整理し、新知識の吸収欲求を高めるために、ごぞってボリュームのあるベスト盤、編集盤を身銭を切って買ったんだと思うな。
 今だったら大手レンタルショップに駆け込んだり、アルバ厶まるごと無料ダウンロード出来るサイトを探したりするんじゃろうから、そこまで身銭を切るリスクはないし便利じゃのお〜とは思うが、身銭を切って自分のモノにしただけに、そこから派生した知識は不滅じゃ。 現代のベスト盤編集レベルからいったら何の変哲もない「エルヴィス・トップ・テン・ヒッツ」や「ビートルズ・パストマスターズ1&2」らは、今もわしにとっては特別の思い出が詰まっておる愛おしいベスト盤じゃ!



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