NANATETSU ROCK FIREBALL COLUM Vol.206


 只今わしはタイ・バンコクにおるんで、“南国的な”コラムでも書いてみようと思うが、まあ〜この地とロックとは基本的に水と油。 「やっぱりロック的インスピレーションは湧かんなあ〜」と、ホテルの窓からぼんやりとシティ・ビューをしとったら、雲行きが急変して、あっという間に凄まじいスコールになった!
 スコールってのは5〜10月の雨季にやってくるもんじゃが、今年は雨季が少々長引いており、今でもほぼ毎日スコールはやってきよる。 まさに滝の様な雨が暴れまくり、数メートル先が見えんような状態になるんじゃ。
 わしはこのスコールが大好きでな。 目の前の景色が急変するスピード感とスリルにゾクゾクするし、何よりも車の排気ガスと雑多な臭気が混在したバンコクの汚れた空気と街があっという間に浄化されるからじゃよ。 まさに街が生まれ変わる為の自然の儀式のようじゃし、“激雨”の前に成すすべのない我々自身も生まれ変わったような気分、ってのは言い過ぎじゃが、うだる様な猛暑で溜まったストレスの発散にはなるんじゃよ!

 唸りを上げるスコール・サウンドに包まれながら「え〜もんじゃのお〜」とうっとりしておったら閃いたぞ!
「そうじゃ。 ロックには雨にまつわる名曲、佳曲が実に多い!」
「“レインソング(雨の歌)を演奏出来ないと一流バンドにはなれない”って古くからの業界内の言い伝えもある!」(そんなの、あったかのお?)
実際にクールなロッカー、クールなバンドには結構イカシタ「雨の歌」があるもんじゃ。 思いつくままに“レイン・ソング”挙げていったら、「あるぞ、あるぞ、名曲があるぞ!」で、あっという間に数十曲(テイク)を越えて、最終的に100曲近くにもなってしもうた!
 さすがにこれではチト多過ぎるんで、若干マニアックなもんを含めてベスト30曲をピックアップして、前編、後編の2回に分けてご紹介することにした! どうか皆様、you tubeの映像と一緒にお楽しみ頂きたい! 曲数が多いんで、コメントは最低限(?)にしておきます(笑)


雨はロックの原動力!? 
 洋楽史を彩る素晴らしき
“レインソング”ベスト30!(前編)



PART 1 〜レット・イット・レイン、雨よ降れ!

♪tune-1 レイン/エディ・コクラン

 1997年に発表されたリマスター・ベスト盤「Don't Forget Me」のラストに収録された謎のインスト曲。 1960年イギリス・グラスゴーに滞在していたコクランがギターの師ともいえるデュアン・エディの為に演奏したテイクらしい。 いまだに「これ、本当にコクランが弾いているの?」って物議を醸しておるらしいが、真偽の程やいかに? でも“レイン・ソング”と言われたら、今はまっさきにコイツが挙がったぐらい、わしオキニの静かなる名演じゃ。 スコールが炸裂する前もその予兆ともいうべき“しとしと”はあるもんで、ここでも最初は“しっとり”といこう


♪tune-2 レイン/ジョニー・ウインター
 ではスコールのごとき、エンジン全開で参ろう! もうスコールでも土砂降りでもハリケーンでもなんでも来やがれ!ってなご機嫌なブルース・ギターが炸裂! 1988年発表「ウインター88」の収録曲であり、当時ブームだった、ZZトップらの壮大なアメリカン・テキサス・ロック・サウンドを意識したかのような豪快な一曲じゃ。 広大なアメリカの大地に恵みをもたらすレイン・パワーってとこじゃな!


♪tune-3 雨よ降れ/エリック・クラプトン
 1971年発表のクラプトン初のソロアルバム収録曲じゃ。 クラプトンにしては珍しくハッピーなアップテンポのブルースナンバー。 ピアノ、ドラム、コーラスの絡み方というか、囃し方が「雨雨、降れ降れ、もっと降れえ〜」って感じで(八代亜紀様じゃねーぞ!) ブルースというよりもカントリーロックに近いノリじゃ。


♪tune-4 雨を見たかい?/クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル
 前の2曲でブルースやカントリーの香り、っつうか雨に濡れたアメリカの土の匂いを感じてきたので、ここらで土臭い曲をおひとつ。 アメリカン・カントリー・ロックの第一人者CCRの代表曲じゃ。 もう数え切れんほどのシンガーがカヴァーしておるが、やはりジョン・フォガティーのしゃがれ声が炸裂するオリジナルテイクが一番ええ。
 ちなみにここで歌われる“雨”とは、ベトナム戦争で米軍が投下した焼夷弾の事らしい。 明るいメロディとは正反対の強烈な反戦ソングなのじゃ。


PART 2 〜もっとにリリカルに、もっとメランコリックに


♪tune-5 雨に濡れても/B.J.トーマス

 恐らく世界中で最も知れ渡っておる“レイン・ソング”じゃろう! 西部劇の名作映画「明日に向かって撃て!」に挿入されて一躍有名になり、以後は時代を越え、国境を越えた名曲になっておる。
 最初この曲を聞いた時、てっきしシャンソンのカヴァーだと思ったわい。 それほど一般の洋楽ではあまり聞けない特殊なエモーションを感じてな。 実際はその逆で、シャンソンでカヴァーもされておるのじゃ。
 歌詞の意味とは全然違うが、“雨が降ったら、彼女と愛愛傘でステップ踏みながら歩こうぜえ〜”ってノリ、欧米人のその楽観主義がとても羨ましい! 本当の歌詞には“〜僕は元気だし、雨の後は晴れるって知ってるから〜そして、僕には時間がたっぷりあるのさ〜青空になるよ〜”って節がある。 ただ今、旅の空におるわしの心境にぴったりじゃ。


♪tune-6 クライング・イン・ザ・レイン/エヴァリー・ブラザース
 最近歳のせいか!? エヴァリー・ブラザースってエガッタな〜と思う。 基本的にハッピーソングは少なく、人生の様々な叶わぬ想いを嘆きもせず、勿論わめきもせず、メランコリックに上品に歌うセンスは絶品じゃったなあ〜。 さしずめ、この曲はその代表例じゃろうな。
 タイトルを直訳すると、モロ演歌であり、イギリス人や日本人が同じテーマを歌うなら“こぶし”入っちゃうだろうなあ〜と思うとったら、実際そーいうのがあった! 次回後編tune-19を参照してチョー。

♪tune-7 悲しき雨音/カスケーズ
 何が“悲しい”のか今だによくワカラン邦題じゃが、60年代ポップスを代表する名曲じゃろう。 原題は“Rhythm of the Rain”であり、“雨のリズムを聞いてみよう。 過ぎ去りし日々の憂いが見えてくる”ってな大意であり、それをザックリと「悲しき」って付けちゃうのはいかがなものかのお。 ってかつての邦題に妙にイチャモンつけたくなるほど、この曲のコズミックなイマジネーションの広がりは美しい〜。

♪tune-8 アナザー・レイニーディ・イン・ニューヨーク・シティ/シカゴ

ニューヨークと雨っつったら、なんだかムーディーな連想をしがちじゃが、全然正反対ですぞ。「雨に濡れても」に続いて配列されてるべき、オポチュニティなレインソング。シカゴお抱えの大編成のブラス隊が“はしゃぎ”まくる、“ブラス・ロックの雄”と称された彼らの面目躍如なナンバー

♪tune-9 ブルー・アイズ・クライング・イン・ザ・レイン/ジーン・ヴィンセント

 この曲は1975年にウイリー・ネルソンが吹き込み、翌年エルヴィスが歌ってメジャーになったが、実はヴィンセントが1957年に歌っておる! ロックンローラーのヴィンセントには似合わない選曲の様にも思えるが、ヴィンセントのシンガーとしての原点を思い知らされるような陽気な歌いっぷりに拍手じゃ!

♪tune-10 ザ・レイン・ウォッシュド・エヴリシング・アウェイ/ブライアン・セッツァー

 クラシック・ポップスな香りが続いたので、次のPART3はモダニズムでいきたいが、その橋渡しはブライアン・セッツァー殿にお願いしよう。
 1983年に発表されたソロアルバムのラストナンバー。 諸君もよくご存知な曲じゃろうが、あらためて聴き直してみると、20歳代のロッカーの歌唱力じゃねえな! 数多くの大物プロデューサーたちがブライアンの才能を我が物にしようとしていたっつうエピソードも頷けるな! ちなみにこの曲のプロデュサー、デイヴ・スチュワートは♪tune-11でご登場頂くユーリズミックスのメンバーじゃ。


PART 3 〜世界を席巻した80年代エレクトロニックなレイン・ソング

♪tune-11 ヒア・カムズ・ザ・レイン・アゲイン/ユーリズミックス

 80年代のエレクトロニック・サウンド・ブームを代表するバンド・ユニット、そしてナンバー。 シンセとブルーグラスが一体化した!とかワケワカンナイ評価をされとったな。 そんな事よりも、自らの覚醒、改革が再びやってくる恐怖と喜びを確かな歌唱力で歌い上げるアニー・レノックスの存在感が何故か怖かった! アンタが“再びやって来たら”そら〜怖いわ!

♪tune-12 ユーロ・アフター・ザ・レイン/ジョン・フォックス
 欧州一帯で爆発的にヒットしていた記憶のある忘れがたきレインソング。 シンセでこの味は、アメリカ人には絶対出せません!
 あの当時、こんな神経質そうな顔したイギリスの新顔が多かったな。 みんな、今で言うオタク、“シンセ・オタク”じゃったが、結局インテリジェンスをもってエレクトロニック・サウンドをこさえることが出来た数少ない存在がジョン・フォックスだったと記憶しておいて頂きたい。

♪tune-13 パープル・レイン/プリンス
 このナンバーにはいろんな意味でぶっ飛んだわい。 “紫の雨”が何を意味するのかなんて事よりも、ブルースでありゴスペルでありエレクトロニックであり、そしてロックであるという信じ難い波状攻撃には、さしものわしもたじろいだわい(笑)  “紫の雨”、それはジミ・ヘンドリックスの“紫の煙”以来のニューセンセーションっつう広義な意味として受け取るしかなかったな。

♪tune-14 レッド・レイン/ピーター・ガブリエル
 “ある夜、赤い海と黒い海の間で溺れそうなる夢を見た”というピーター本人の出来すぎたコメントが残されておるが、70年代からジェネシスのリーダーとしてプログレブームの一端を担ってきたロッカーだからこそ成し得た、ロックの新境地サウンドがここにある!
 革命、革新、また情熱のシンボルとしてレッドという色はよく使われるが、「レッド・レイン」のタイトルに相応しい斬新で普遍的なテーマを掲げる重厚なナンバーじゃよ。


 諸君の中には、「おい、アレがねーぞ!」とか「コレが入ってねーってどーいうことだ!」とか憤慨なさっておる方もいらっしゃるじゃろうが、アレもコレも分かっとるわい! 次回後編があるんで、しばしお待ちを。 そっちにアレやコレが入るかどうかは分からんが、エルヴィスとかストーンズとかヴィンテージ・ロッカーのレイン・ソングを後編でたくさんご紹介する予定じゃ。
 日本人って、雨が降るとどうもテンションが下がってしまうし、これからの季節は寒いから、そこに雨にやられると余計引きこもりがちになってまうな。 そんな時こそ、マイルームの中で洋楽のレイン・ソングでもBGMにしながら、入手したての新作イタリアンカラーシャツの試着会じゃよ! クールな音楽、クールなファッション、そしてクールなフィーリングで、憂鬱なレイニーディを彩り豊かな時間にして頂きたい!



七鉄の酔眼雑記 

 自分で挙げておいて何じゃが、洋楽のレインソングはいいですな〜今回はただ今毎日のように体験しとるスコールに触発された!?テーマじゃったけど、「雨」じゃなくて「スコール」そのものが歌われた曲ってあるんじゃろうか? 残念ながら東南アジアのポップスにはまったく興味が無いんで知りましぇ〜ん!

 ところで邦楽のレイン・ソングとなると、八代亜紀の「雨の慕情」とか、朝丘雪路の「雨がやんだら」、それに“雨にい〜濡れながらあ〜佇む人がいるう〜”の「雨/三善英史」ってトコか。 欧陽菲菲(知ってますよね? オーヤン・フェイフェイって読みます!)の「雨の御堂筋」なんてのもあったな。 あれは確かヴェンチャーズが作曲したんじゃなかったかいのう? 八神純子の「水色の雨」ってドラマチックな曲もよお聞いた。
 どれもええ曲なんじゃが、どうしても“しんみり”きちゃうもんな〜。 RCサクセションの「雨上がりの夜空に」って軽快なナンバーがあったが、アレは雨が上がった後だしい・・・。 日本は雨っつうとマイナスのイメージが強いのが原因かもしれんな。 そうじゃの〜陽気な雨の歌っつったら、「ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、らんらんらん!」の「あめふり」だけか?(笑) あらためて調べてみたら、あの曲、作詞は詩人の北原白秋じゃった! 由緒正しい楽曲なんじゃな(笑) まあ、B.J.トーマスの「雨に濡れても」なんてタイプの曲は、絶対にこの日本からは生まれんじゃろうな。

 たった今、思い出したぞ。 小林麻美というモデルさんが歌った「雨音はショパンの何とか」って、日本のレインソングにしちゃあシャレた綺麗な曲があったな! あっ、でもあれはガセネタ、いや違った、ガゼボとかいうあっちのシンガーが歌った曲の日本語版じゃったな。 原曲の「アイ・ライク・ショパン」は雨とは全然関係ないみたいじゃし。 やはり日本人は、日本独自の情緒性で雨を歌うのがよろしいようですな。



GO TO TOP