NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.195

 諸君の中にアナログ盤世代はどのくらいいらっしゃるんじゃろうか? なんて時々考えたりもするが、わしは当然アナログ盤世代じゃ。 なんせCDってヤツを初めて鑑賞した時、全曲再生が終わったのに盤をひっくり返してセットし直して「音が出ねーぞ!」ってクレーム入れようとしたぐらいバリバリのアナログ野郎じゃ!
 ってしょーもない話から始めてしまったが、実はな、アナログ盤ってのは現在欧米では密かなブームであるらしい。 「嘘だろ?」って思うかもしれんが、それを象徴するようなニュースが入ってきよった。 元ホワイトストライプス(21世紀ハードロックバンドの代表格)のジャック・ホワイトなるギタリストの新作「ラザレット」(左写真)が発表され、CDと同時にアナログ盤でもリリースされており、しかも様々な仕掛けがなされておってな。 これが音楽マスコミを結構賑わしておるのじゃ。 アナログ・マーケットってのが存在することを証明しておるような、すごい仕掛けの数々なんじゃ。 ジャケットの方ではないぞ。 盤そのものに、じゃ。

 詳しくは後ほど述べるとして、ジャック・ホワイトがアナログ盤に仕掛けたアイディの数々は、アナログ世代にとっては実に懐かしく、更に「オーディオ・テクノロジー」はそこまで進化していたのか!って驚くもんもあるんじゃ。 そこで今回は、かつて我々アナログ盤愛好家を驚かせ、今回ジャック・ホワイトの手によって復活、進化したアイディアの数々をご紹介、懐古してみたい!
 CD盤からしか知らない世代の方は「なんじゃ、そりゃ?」じゃろうが、何事も「温故知新」のスピリッツを忘れんようにな。 古きを温めて新しきを知るじゃよ。 毎回諸君を驚喜させておるThe-Kingの新作だって、50sの単なる復刻ではなくて、あくまでもモダニズムとのミクスチュア(融合)じゃろう! 歴史っちゅうもんを侮ってはいけませぬぞ~。


ジャック・ホワイトの新作“アナログサービス”から見る、アナログ盤の過去&未来

■まったく新しい驚愕のアイディア■

①盤面の内側から外側に向けての再生
 
一瞬、え?って思うじゃろうな。 通常のアナログ盤再生の場合は、盤の外側からじゃろう。 それが真逆なんじゃよ!  自動移動&昇降式のアームがいきなり盤の内側にまでウイ~ンっていっちゃうわけだ。 この内側から再生されていくっつう方式だと、全曲再生終了の後にアームが静止位置までもどる時間が従来のプレーヤーよりも短縮されるから、全曲再生が終わったら、盤をすぐに反対面にひっくり返す事が出来るって利点はあるな。 それに手動式のプレーヤーの場合なら、恐る恐るレコード盤の端に針を落とす緊張感から開放感されるか。 酔っ払いながら聞くわしのようなリスナーにはいいかもしれんな!


②33 1/3 、45、78回転の3テイク収録!
 1枚のレコード盤の中に、異なる再生回転数による曲が一緒に収録されておるのは、いまだかつてお目にかかったこともない。 78回転って・・・云十年前にわしの自宅にあった四足で立つ古~いレコードプレーヤーには78回転変換装置があったと思うが、わしは78回転でレコードを再生した覚えすらない! この歳で78回転で回るレコードを見たら目が回るかもしれん!? しかし、これはどうも有り難みが理解出来ないが、現代テクノロジーを駆使した形式っつう、物としての価値のアピールなんじゃろうか。
 そう言えば、その昔ジョージ・ハリスンが「33 & 1/3」なるタイトルのアルバムを出したな。 発表当時の自分の年齢(33歳4ヶ月)とLP盤の再生回転数をひっかけたタイトルじゃが、ジャック・ホワイトの新作の中に78回転があるってのは、わしの年齢に対するアテツケか、バカモノ!そこまで歳とってはおらんわい!ってクダラナイ被害妄想は止めて、次に行こう!


③ラベル部分にも曲が収録!
 これも驚いた! レコード盤中央の紙のレーベルが貼られておる部分にも曲が収録されておるんだそうじゃ。 最初はラベル部分にレコード針を落とす前にラベルを剥がさにゃならんのか?って思ったが、そんな必要はないらしい。 しかしそれではレコード針が傷んでしまうではないかって考えてしまうのはもはや時代遅れなのかもしれん。 かつてのアナログ時代よりもレコード針の材質も格段に進歩しておるってことなんじゃろう。 でもなあ、聞くたびに紙のラベルが少しづつ削れていってしまい、いつかはラベルが無くなっちゃうんじゃないだろうか? ここら辺の真相は、実体験で試すしかなさそうじゃな。


■ かつての特殊アナログ盤の再現&進化 ■

④再生が終わらない「ロックド・グルーブ」

これはだな、ほっとくと盤面ラストの曲のエンディングが延々と続く、つまりプレーヤーのアームが上がらない仕掛けじゃ。 かつてビートルズが「サージェント・ペパー」のアナログ盤で施していた形式。 ラストの曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のエンディングの「ガ~~~ン」っつうピアノの残響をいつまでもいつまでも聴かせるための仕掛けじゃった。 「サージェント・ペパー~」を何度も聞くうちに「どうして、このレコードは終了してもアームが上がらんのじゃろうか?」って気がついたものの、そういう仕掛けがされていた事を知ったのは随分後々のことじゃった。 「音楽を永遠に終わらせないってやっぱりビートルズはヤルことがスゲーな!」って感心したもんじゃ。

 このアイディアが使われたレコードはその後登場しなかったと思うが、50年近くも時を経た2014年に復活したわけじゃ。 一体どんな曲なんじゃろう?って興味をもたせる効果は十分にあるな。 ちなみに「サージェント~」はレコード内側、ジャック・ホワイトの方は上記①の形式によりレコードの外側に「ロックド・グルーブ」がかまされておる!


⑤レコード針を落とす位置によって別バージョンが聞ける「デュアル・グルーブ」

 思わず「ホンマイカナ?」って首をかしげたくなるが、こいつは手動によりB面のトップにレコード針を落とした場合、レコード盤の同じ位置に落としたと思っても、手動による微妙な位置のズレにより、時には同名曲の別バージョンが再生されるという、ちょっと信じがたい仕掛けじゃ。 手動操作によって偶発的なハプニングを起こすアイディアじゃ。 でもこれ、聞きたいバージョンが中々再生されなかったらイライラするじゃろうな。(笑)

 しかしまあ「スゲエ技術じゃな~」と感心、感心! これもまた「世界初!」ってフレコミじゃが、実は遠い昔、わしはこのアイディを聞いた記憶があるんじゃ。 1970年代の終わりに、Mというプロジェクト名を名乗ったアーティストが、ディスコ調のロックナンバー「ポップ・ミュージック」(シングル盤)において、同様の仕掛けをしておると確かな筋から情報が入ってきておった。 その革新的なアイディアに関心したわしは、渡英の際にこのシングル盤を随分と探し回ったがついに発見出来なかった。 現地のレコード屋なんかにも随分尋ねたが、「おめえ、何言ってんの?」ってテンデ相手にされなかったもんじゃ。 ネット時代になってから、時々思い出した様にMの特殊シングル盤情報を探したが、いまだヒットせず。 あの情報は何だった・・・って依然として謎じゃったところにこの「デュアル・グルーブ」の報が! これを機にMの存在にも光が当てられんかな?


⑥盤面上で動画が浮かび上がるホログラム効果

 レコードのA面再生中、ある特定の部分にレコード針が到達すると盤面から「踊る天使のホログラム」が浮かび上がるんだそうじゃ! 技術的には一体どういう加工なのかは分からんが、ここまでやられると笑っちゃうな。 でも何だかとっても欲しくなる様な遊び心装置じゃ。

 似たような効果のヤツは、その昔に1枚だけ出会ったことがある。 スティックスというアメリカのポップバンドが、アルバム「パラダイス・シアター」においてレコード再生中においてある角度から光を当てるとバンドのロゴが虹色に浮かび上がるレーザーエッチングという加工がされておった。 わしはスティックス自体にはまったく興味はなかったが、友人宅でこの現象を目の当たりにした時はビックリしたもんじゃ。 また普段はわしと音楽の話が全然噛み合わないその友人が見せた、驚くわしに対するドヤ顔もまた忘れられん! ジャック・ホワイトのホログラム効果も、このレーザーエッチング効果を参考にしたものと思われる!?


 以上のビックリ仕掛けの一部始終をまとめたプロモーション・ビデオがあるので、是非とも確認してみてほしい。 まあ驚いてしまうこと請け合いじゃ!
 ところで、このアナログ盤は通常のアナログ盤再生プレーヤーで対応するのじゃろうか? でもこれだけの仕掛けが揃ったアナログ盤ってのは他に類を見ないし、専用のプレーヤーが同時開発された、なんて情報はない。 ってことは通常プレイヤーでも問題なく楽しめるってことか。 大いに確認してみたいところじゃが、残念ながらわしの手元にはアナログ盤プレーヤーは無いんじゃよ。
 でも、更なる新しいアイディアが今後のアナログ盤に仕掛けられていくのであれば、プレーヤーの購入を前向きに検討したいところじゃな! もちろん、それはThe-Kingの新作を余すことなくゲットした後の残金によるがな(笑) アナログ盤の復権なんてのはありえない話じゃと思っていたが、長く生きておると何がおこるか分からんもんじゃ! 今後の世のアナログ盤環境を何気にチェックしてみたくなってきた! やはりThe-King同様に、古きを温めて新しきを知る(創る)スピリッツには楽しい現実と未来があるってもんじゃ!


七鉄の酔眼雑記 ~アイディア・レコード追記

 なかなかオモシロイ仕掛け満載のアナログ盤「ジャックホワイト/リザレッツ」じゃが、今後は新たにどんな仕掛けが飛び出すか、大いに期待したいところじゃ。 かつてのアナログ盤におけるアイディアも踏襲、進化させておったが、今回は施されなかった、かつてあったアイディをもう二つばかりついでに紹介しておこう。

■オートチェンジ・プレーヤー用?特殊プレス盤■
 オートチェンジ・プレーヤーってのは、かけ続けたいレコード盤を右側に何枚もキープしておけば、左側で再生しているレコード盤が終了したら自動で右側のレコードと交換して再生してくれる、結構すぐれたプレーヤー。 日本ではあまりお目にかかれなかった代物じゃったが、欧米では割と出回っていたらしい。
 そのオート・チェンジ・プレイヤー用にと、2枚組のレコードにおいて1枚目A面の裏がB面ではなくてC面、2枚目がB面とD面のカップリング。 つまりA面とB面、C面とD面を盤をひっくり返すことなく連続して再生するためのアイディ・プレス盤。 わしのかつてのレコード・コレクションの中では「ドアーズ/ジム・モリスンの遺産」「レイナード・スキナード/ワン・フロム・ザ・ロード」がこの特殊プレス盤じゃった。

■シークレット・トラック
 レコードジャケットにもラベルにも記載のない曲を、レコード最終部分(たまに最初)に収録するサービス。 ビートルズ、ストーンズ、クラッシュ、CD時代になってからはガンズン・ローゼスなんかがやっておった。 「これは何という、どういう曲なのだ!」っつって必死に情報を探した覚えがある。 
 特にビートルズが「アビイ・ロード」に収録したシークレット・トラック「ハー・マジェスティ」なんかは、中々芸が細かった。 B面の壮大なメドレーが終了して感動の余韻に浸りながら「いやはや、スゲエ作品じゃったのお~」なんてひと息、ふた息入れた瞬間に「ジャ~~~ン」ってジャケットにクレジットされていないもう一曲をスタートさせて驚かせる心憎いばかりのタイミングが計られての収録じゃった。 まあ驚くのはせいぜい数回程度でその内に慣れてしまったが、やることがイキじゃのお~。 
 大体シークレットトラックってのは小曲ばかりじゃが、「なんだ、これは!」ってファンが情報を求めることに意義があるんじゃな。 そうやってバンドとファンとの距離が縮まっていくものなのじゃ。 まあ、ダウンロードして音楽を入手する現代においては、な~んも意味のないような仕掛けなのかもしれんが、アナログ盤世代のファンには忘れ難きサービスだったな。



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