ROCK FIREBALL COLUMN by NANATETSU Vol.130

 特別の理由もなく、突然ロックの「リスペクト・ナンバー」ってのを聞きたくなった七鉄じゃ。 って実は列記とした理由はあるんじゃ。 ちょっとした知人のツッコミに気分を害してリスペクト・ナンバーのセレクトに駆り立てられたんじゃが、The-Kingのニュー・イタリアン・シャツのシャドウマテリアルに感動した後ではそんなことはどうでもええわ! 気になる方は「酔眼雑記」を読んでくれたまえ。 とにもかくにも「リスペクト・ナンバー」じゃ。
 “リスペクト”とは敬意を表するという事じゃ。 ロッカーのほとんどは、その全盛期においては「オレがオレが!」「テメーは引っ込んでろ!」の超ジコチューなのが圧倒的に多いだけに、他者に対して敬意を表することなんて滅多にないもんじゃ。 そんな傍若無人なエネルギーもまた、ロックを創出する重要なファクターであることは否定出来ないがのお。 あるとしたら憧れの先輩か、既に故人となっておる伝説的なロッカーに対してだけじゃろう。 そしてその想いが曲として発表されるほとんどは故人に対してじゃ。 まあ故人に対するリスペクト企画は前々回に「トリビュート作品セレクション」でやっておるので、今回は存命者、現役ロッカーに対して敬意を表したナンバーってのを取り上げてみたい!
 
 存命者に対して「リスペクト・ナンバーを捧げる」ってのはなかなか難しいもんじゃ。 そりゃそうじゃ、相手に聞いてもらうことが前提だからじゃ。 相手も相当のネームバリューを持っておるからケナサレでもしたら大変じゃ! ラブソングなら、困ったらどストレートにワメキ散らして「プロデューサー、あとたのんまっせ!」という逃げ道もあるじゃろうが、オリジナルのリスペクト・ナンバーは絶対にそうはいかんじゃろう。 ある意味でそのロッカーの力量の奥深さが証明される、やるべきかやらぬべきか大いに迷うテーマではないだろうか。 カヴァーよりも遙かにやりづらいことは容易に想像できるな。 ここにわしの好きなリスペクト・ナンバーをご紹介するので、もっとも難しい楽曲のテーマに踏み切ったロッカーの大いなる勇気を感じながら読んでいただきたい!



意外に少ないロック・リスペクト・ナンバー
 強過ぎる畏怖、緊張、憧憬の果てに現役の諸先輩に捧げられた一曲  

 
★パコ・デ・ルシアに捧ぐ★ ♪マラゲーニャ/ブライアン・セッツァー

拝啓 師匠殿。 僕の腕前はいかがでしょうか!

 まずは、わしがブライアンのセッションワークでもっとも好きなナンバーを! 03年公開の映画「レジェンド・オブ・メキシコ」に挿入された、エレキによる強烈なフラメンコ・ナンバー。 わしは主演のアントニオ・バン・デラス目当てでロードショーを観に行ったが、映画開始から10分も経たない内に館内で炸裂したこのサントラに驚愕した! 映画のヒロイン&ヒーローが酒場で悪党どもをなぎ倒すアクションシーンのBGMでなんじゃが、シーンの壮絶さを越えてBGMの方に心を奪われてしまった。 恥ずかしながら、サントラ盤を買うまでブライアンのプレイだなんて夢想だにしなかった。 我々の知っておる「ブライアン・ギター」の枠を飛び越えた鳥肌が立つようなエネルギッシュなプレイじゃ。 (サントラ盤テイクはコチラ) なお、「マラゲーニャ」とはスペイン舞踊ファンタンゴの一種じゃ。
 何かのインタビューで「フラメンコギターの巨匠パコ・デ・ルシアへのオマージュさ!」と語っておったが、この超絶テク&悶絶エモーションはルシアの域を超えとるぞ!  「ギター上達の秘訣? 憧れの人に憧れ続けて追いかけ続けることだよ」とブライアンは語っておったが、これ、何にでも言えるな! そういう情熱を持って生涯を通したいものじゃイエイッ!


★ジャガー&リチャーズに捧ぐ★ ♪キース・ドント・ゴー/ニルス・ロフグレン

アニキ〜俺たちを置いて行かないでくれ!

 ブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドのギタリストであり、長きにわたってソロ活動も並行しておるニルス。 童顔でやんちゃなステージ・アクションもオモロイ、永遠のギター小僧じゃ。 ロカビリーあり、ビートルズあり、ストーンズあり等など、ロックの古典に対する敬意を隠さないプレイやソングライティングは名高いが、そんなニルスのリスペクト・ナンバーがコレ!
 1975年に発表した初のソロ作品に収録されており、当時クスリと酒でヘロヘロになっていたストーンズのキース・リチャーズに向かって「お願いだから行かないでくれ!(死なないでくれ!)」という切なる思いをぶつけたノリノリ・ナンバーじゃ。 死ぬなよキース!ってのはファンの共通の切望じゃったが、曲にして発表するとなると、誰がやるのが相応しいか難しいところじゃ。 熱狂的キース・ファンから「テメーごときがエラソーにほざくな!」「神様(キース)の不幸をネタにすんのかコノヤロー!」とかイロイロありそうだもんのお! まあキース・ファンを代表したメッセンジャーとしては、“永遠のロック弟分”というキャラのニルスなら適任だったじゃろう! なお、キースが逝ってしまったらジャガー&リチャーズ・コンビは消滅してしまうから、コンビ自体の存命を祈ってサブタイトルは「グリマー・ツインズ(ミック&キースの別称)に捧げる」とクレジットされておる。


★ロイ・ブキャナンに捧ぐ★ ♪哀しみの恋人たち/ジェフ・ベック

センパイ、ご指導ありがとうございます!

 ミスター・テレキャスターと言えば、初代がジェームス・バートン。 2代目がキース・リチャーズ。 3代目がジョー・ストラマー。 更に70年代にはもう一人テレキャスターを愛器とするシブ〜イお方がおった。 このわしじゃ!じゃのうて「メシアが再び」という絶品のマイナーブルースでロック史にその名を刻するロイ・ブキャナンじゃ。
 この「メシアが再び」にいたく感動したのがジェフ・ベック。 その思いをファースト・ソロに収録された「哀しみの恋人たち」のプレイに託し、「ロイ・ブキャナンに捧げたんだ!」と大っぴらに発言しておったな。 「哀しみの恋人たち」もまた「メシアが再び」と同系列の名曲として賛辞を浴びることとなり、70年代のテレキャスター2大名曲となったんじゃ。 名人、達人を純粋に敬う気持ちってのは、己の能力を高めるもんじゃの〜。
 なお「哀しみの恋人たち」に心を打たれたロイ・ブキャナンは、ジェフ・ベックの気持ちに応えたアンサーチューンともいうべき「マイ・フレンド・ジェフ」を後に発表しとる。 こういうロッカー同士の精神交遊によるナンバーを追いかけることは、70年代ロックを聞く上でのタマラナイ!魅力じゃったなあ〜。



★ジェフ・ベックに捧ぐ★ ♪ザ・ロナー/コージー・パウエル

その節は大変お世話になったのお〜
 70〜80年代のブリティッシュ・ロック界のスタードラマーだったコージー・コーナー、いや違ったコージー・パウエル。 ドラマーとしては異例のソロアルバム制作オファーという名誉の報がやってきた時、コージーは即座にかつての朋友、恩人だったジェフ・ベックの参加を熱望したらしい。 結局スケジュールの関係でジェフは参加出来なかったが、コージーはその思いをプレイに託し、この曲を“ジェフ・ベックに捧げる”とクレジットしたのである。 自分をメジャーシーンに引き上げてくれたジェフへの感謝の念だったそうじゃ。
 コージーという男の義理堅さは有名であり、レインボウ脱退を決意した際は「今日のオレがあるのはレインボウのお蔭だから、今のうちに後釜を探しておいてくれ」とマネージャーに事前の通達をしておいたり、依然として脚光が当たっていないかつての実力派メンバーを自分のソロアルバムで起用してギャラをはずんだりと、数多くの美談を残しておる。 最初の給料をもらったら会社の備品をかすめて即バックレるバイトくん、社員に内緒で利益を独り占めしようとする社長さんなんかに聞かせてやりたい話じゃのお。 この曲も、そんなコージーの男気によって光り輝いている曲じゃ。 なおジェフもまたコージーへの感謝として、セカンド・ソロでは共演に駆けつけておる!


★エリック・クラプトンに捧ぐ★
  ♪ブルース・ブレーカー/ブライアン・メイ&エドワード・バン・ヘイレン


センセー、僕
たちもそろそろやってもいいですかね?
 クイーンのギタリストであるブライアン・メイの初のソロ・プロジェクト「スターフリート・プロジェクト」ってのが1983年に発足したんじゃが、その作品の中にエリック・クラプトンに捧げたというブルースジャムが入っとった。 ブライアンとともにそのジャムをやったのがエドワード・バン・ヘイレンじゃった。 が、しかし・・・いやいや、わしのようなモンがとやかく言うべきじゃないな。 捧げられたクラプトンの当時のコメントをご紹介しておこう。
「あれはブルースじゃないね。 弾けてないよ。 どういうつもりなんだろうか・・・」
 敬意とはおいそれと作品にするべきではないというか、捧げ物を間違ったというか、若きビッグロッカーの勇み足というか・・・雑誌のインタビューでクラプトンのコメントを読んで、わしも胸をなでおろしたもんじゃ。 ブルースへの道はかくも遠いものなのであった!っつうことをはからずも証明したってことで記憶に残る異例のリスペクト・ナンバーじゃった。 しっかり、すっかりヘソを曲げてしまったエドワード君の立場はどうなるんでしょうかね〜。 


★ジョニー・サンダースに捧ぐ★ ♪ソー・ファイン/ガンズ・アンド・ローゼス

センパイって、どうしてそんなにイカシテいるんですか!
 1993年4月に逝去したカリスマ・パンク・ロッカーのジョニー・サンダースに捧げられた曲。 ガンズの中でもっとも強いパンク嗜好者だったダフ・マッケイガン(ベース)が書いて歌った、ステージでも人気の高かったバラードじゃ。
 収録されたアルバムの発表がサンダースの死から半年後だったので、訃報によって書かれたとされておるが、それは違うぞ! アルバムの発売自体が半年近くも伸びたし、レコーディングはずっと以前だったという記録もある。 それに歌詞を読めば、生を共に出来る喜び(&近づけないもどかしさ)を感じとることができる。
「どうしてそんなにステキなんだ」
「どうしてそんなにクールなんだ」
「どうしたらオレのものになってくれるんだ」
 「あれえ〜どうして、“どうしてどうして〜”ばっかりなんだあ〜?」ってパー太郎は引っ込んどれ! 神聖な雰囲気ブチ壊すなアホンダラ!! まるで死ぬほど片思いをしている女性への思慕の念をふりしぼっておるラブソングのようじゃの。 途中からボーカリストのアクセル・ローズとダフとの掛け合いになるが、ここら辺はサンダース訃報後のテイクであり、訃報前テイクとつなぎ合わせて美しい完成品に仕上げたようじゃ。


★シド・バレットに捧ぐ★ ♪狂ったダイヤモンド/ピンク・フロイド

オレたちは今でも君とともにあるのだ!
「若かった頃を思い出すんだ おまえは太陽のように輝いていた 
                       輝け 狂ったダイアモンドよ」
「鋼鉄でできたそよ風に乗って船出するんだ
 さあ 少年であり子供 勝利者にして敗北者であるおまえ」
「さあ 真実と妄想を掘り続ける鉱夫よ 輝くのだ」

 じ〜んとするのお、この素晴らしい歌詞は。 精神異常者となってしまい、バンド脱退を余儀なくされた初代リーダーのシド・バレットに捧げられた、バンドからの哀悼歌じゃよ。 そしてもうひとつのキキドコロは、ロック史上最長!の9分近いイントロじゃ。 いや、インストのスタートから歌入りまでが9分というべきか!? アレンジの劇的なチェンジもなく、まるでゆっくりと日が沈んでいく一大抒情詩のような長大なオープニングこそがこのナンバーの真骨頂じゃ。 “あっち側”へ行ってしまったシドの精神世界が悲しいまでに美しく描写された胸が締め付けられるようなロック・シンフォニーじゃ。


★ジョニー・ライドンに捧ぐ★ ♪ヘイヘイ・マイマイ/ニール・ヤング

君たち、なかなかヤルじゃないか! 
 
 さて最後は、珍しく先輩から後輩へ送られたリスペクト・ナンバーじゃ。 それも一度ロックの歴史の流れをぶった斬ってしもうたパンク最大のヒーロー、ジョニー・ライドンへのリスペクトじゃ。 アメリカン・ロック界の大御所であって、あたらしもの好きでもあるニール・ヤングが、後輩の勢いを讃えながらも、真実を諭すような言葉を送っておる。
「お前たちよ ロックは日々の生活に根ざしている 
          燃え尽きる方がいい 消え行くよりは」
「ロックが死ぬことはあり得ない 
          表層の状況には目に見えない深層があるんだ」
「キング(エルヴィス)は去ったが、彼が忘れられることはない」
 パンクってのはオールド・ロッカーから概ね好意的に語られることが多かったが、きちんと歌にして敬意を表したのはニール・ヤングだけじゃったなあ〜。 パンク全盛時代のわしじゃったら、「ヤカマシーッ! 何考えてんだこのワカゾー!! 顔洗って出直して・・・」とかシャウトしてしまったじゃろうなあ〜。

 個人的には名曲、佳曲が多いと思うが、それは曲の絶対的なテーマが「敬意」なんで、自己満足や他人任せが許されないっつう強い責任感が楽曲を支えているからじゃろうかのお。 収録されたアルバム全体の流れの中では異彩を放っておるように聞こえる時もあり、プレイする者の知られざるセンスを感じ取ることもできる。 ロッカーといえども、やはり世間の常道通り、時には自己を忘れて他人様の事を思って仕事することが、その人の幅を広げるってことなんじゃろうな! 自分の事ばっか考えておったら、案外人生は狭くてつまらないものになるのかもしれんな。  わしも襟元を正さにゃあ〜いかん。 身近に良いお手本、そうThe-Kingブランドがあるから見習おう! グレイトな伝説的ロッカー、また今を生きる現役ロッカーたる諸君への敬意を忘れることなく、今後もビシッと仕事をさせてもらうとしよう!なんだそのエラソーな言い方は!


七鉄の酔眼雑記 〜わしを臆病者扱いしおって、あのガキャア〜(涙)

 「世界一住みやすい都市はバンクーバー。 大阪12位。 東京18位・・・」というネット記事が目に入ったぞ。 旅好きのわしは、こういう記事には無条件反射で目を通してしまうが、ベスト10の中でわしが行ったことのあるのは、3位のウィーン(オーストリア)だけじゃった。 反対のワースト10ってのもあり、つまり「住みにくい都市」じゃが、こちらは4か所も行ったことがあったから、なんだかゲテモノ好きにされたような気がしてしまったわい。 その4か所とも「住んだ」といえるほど長逗留はしておらんが、いずれも「二度と行きたくない!」のでワーストのランキングの方は納得じゃ。 
 このランキングを発表したのは、アメリカの経済紙「エコノミスト」。 社会的地位の高い方々を主な購読者にしとるそうじゃが、「生涯一ロッカー」を意地でも貫こうとしとるわしも、嫌いな都市だけはお偉い様と似ているって、なんだか変な気分じゃのお〜。 「エコノミスト」のランキングだけに、評価基準は「物価」とか「治安の程度」とか「政情」とかなんじゃろうが、そんなもんはわしにはあんまり関係ない! ベストランキングなら、ロックの匂いが強いか、スポーツは何があるか、独特のファッションモードがあるか等。 あっ、「安酒場が多いか」ってのが一番大事じゃな!  ワーストランキングなら基準は「衛生状態」ただひとつ。 「郷に入ったら郷に従え」で、どこの国、どこの都市へ行っても出来る限り現地の料理を食べることにしておる(火を通したものに限る)が、それがアダで某都市では急性食中毒で死にかけたことがあるからじゃ。 もっとも瀕死のわしを助けてくれたのは現地人だったので、その御恩があるので国名、都市名は伏せるがな。

 とまあ、そんな持論、経験談をかましていた先日の飲み会じゃったが、ケッコー的を得たツッコミをされて少々うろたえてしもうた。 「ってことはさあ、七鉄さんは旅人だけど、冒険家じゃないってことですよね。 キレイ、キタナイなんて言ってたら未開地、秘境には行けないですもん!」と。 くぅーーーー当たってなくもないだけに、く、く、くやしい〜。 「冒険家ではない→肝っ玉が小さい」と言われたようでなあ〜。 年はふた回り近くも下のあのガキャア〜許せん! 「テメーの旅は冒険じゃなくて、ただの無鉄砲じゃろうが!」って反撃したかったが、ぐっと堪えて我慢のジジイのわしじゃった。
 その晩は「年配者をリスペクトせんようなヤツはロクなもんじゃねえぞ!」って思いを胸に秘め、イモ焼酎片手にロックのリスペクト・ナンバーをとっかえひっかえ聞き続けておったら夜が明けた!っつうか、とっちらかったCD、レコードの中で朝方目が覚めた。 ってことで、今回「リスペクトナンバーセレクション」をやってみたくなったのじゃ。
 それにだ、こういう朝ってのは醜態を反省するどころか、逆に妙な充実感を覚えるのじゃ、わしは。 我が青春時代の目覚め方そのものではないか。 このままくたばってたまるか!って気になるからわしも根っからの楽天主義者じゃのお。 「よぉ〜しみとれ、あのガギャア〜。 そのうち、ぎゃふんと言わせるような旅をしてみせるからな!」

GO TO TOP