ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.117


ロバート・ジョンソン生誕100周年に送る 
   「キング・オブ・デルタ・ブルース」の基礎知識 Volume 5〜番外編その2

ロック版“ああ無情”〜ビッグネームになり損ねた世にも不運なロッカーたち


 
このシリーズのVolume 2において、ロバート・ジョンソンが人様の女房に手を出した挙句に毒殺され、カーネギホールでの一大音楽フェス「スピリチュアル・トゥ・スイング」に出演出来なかった事を書いたな。 生前にビッグネームになれるかもしれなかった「千載一遇」のチャンスを、ロバートは女癖の悪さで逸してしまったのじゃ。 「七鉄さん、あんたも酒癖の悪さで〜」ってやかましーわい! わしは人様の酒をこっそりくすねたりせんぞバカモノ! それに女性に対してだって、どんなエエ女でも、人様の女にゃあ〜って、そんなことはどーでもいい!
 もしロバートがフェスに無事出演出来てだな、その存在が広く注目されるようになっていたら、ブルースやブルースの強い影響下にあるロックの歴史、そしてロバート自身の運命も・・・。 まあ今風に言うと“不適切な”行動の果てに殺されてしもうたんじゃから、これは同情の余地なし、自業自得じゃなあ〜。 悲劇、悲惨というよりも人道的には筋の通った運命だったと言えないこともないな。 これがロバートの運命だったのじゃ。

 ところで、ビッグ・ネームに成れるか成れないかっつうのは、力量もさることながら、やはりその人が持っている「運」というものが大きく左右するもんじゃ。 ひとつのバンド(ロッカー)がビッグに成る過程において、必ずと言っていいほど「運命の天秤」によって振り落とされてしまう不幸な者がおる。 今回は七鉄コーナー恒例の横道路線として、そんな不幸なロッカーに光を当ててみるとしよう。 彼らの手から「幸運」がスルリと逃げてしまう有様を書いておくので、諸君なりに「ロッカーの運命」ってやつを考察してくれ〜い。 まあまあ、何もくら〜く思い悩む必要などはないぞ。 なにせ諸君にはロッカーとしての幸運のシンボルThe-Kingブランドがあるからな! まずはホースシューリングを薬指にセットし、ここはビシっと新作イタリアン・カラーシャツをめかしこんで、腕組でもしながら、なおかつ憐れみの気持ちを忘れずに「そんなコトもあった、そんなヤツもおったなあ〜」とロック歴史学者のような泰然とした態度で読んでくれっ! 
 

■ ピート・ベスト (元ビートルズ) 

 まず、ロック史上もっとも不幸な男として永遠に語り続けられるであろうこのお方からじゃ。 そう、ビートルズのデビュー直後にクビを切られてしもうたドラマーじゃ。 泣くに泣けんわな〜ビートルズの一員に成り損ねたんじゃからな〜かけて差し上げる言葉もないわな〜。
 クビの理由は、「ドラムがヘタクソだった」「性格がおとなし過ぎた」「飛びぬけたハンサムだったので、他のメンバーが嫉妬していた」等など。 ビートルズの地元リヴァプールにおいてピートが人気があったことは確かなようで、ジョージ・ハリスンは「アンタが辞めなさいよっ!」って女性ファンに殴られたぐらいじゃ。
 でもこの男、偉かったね。 恨み事、泣き事を一切言わず、マイナーな音楽活動を数年続けた後に静かに引退しおった。 その後は堅実な公務員的仕事で生計を立てて、ビートルズ時代の思い出話も気軽に話していたというナイス・ガイじゃった。 反対にお袋さんの方がいきり立ってしもうてな。 ビートルズが超有名になってから「うちのピーちゃんの解雇は不当だわ!」と裁判起こしたり見苦しいことをしておったそうな。
 しかもピートは品行公正であり、 「ビートルズ解雇の真実」なんて書けば世界中で超ロングランの歴史的大ベストセラーになったんじゃろうが、それすらもやらなかった。 このジェントルマン・スピリッツ、ダンディズムを貫くことが、神様がピートに与えた人生だったのかのお・・・。
 ・・・と切なくも美しい人生として語り終わらせたいところじゃが、世の中ってのは無粋なことをどうしてもやりたがるモンがおる! 1992年、日本人の物書きさんがピートを口説き落として、封印されたピートの辛い過去を暴いてしまった! 題して「ビートルズになれなかった男」。 その物書きさんの職業根性は大したもんなのかもしれんが、他人様の人生には絶対に立ち入ってはならん部分がある・・・とわしは思うが、諸君はどうじゃ? わしも物書きのハシクレとしての美学、モラルがあるんで、今だにこれは読んではおらん。 
 しっかし写真を見るとピート君ひとりだけがリーゼントをしてキメておる! ジーン・ヴィンセントに代表される初期のロックンロールに憧れていたイギリスのワルの匂いがプンプンするのお〜♪ いい子ちゃん風に仕立て上げられたビートルズの中にも、こんな男が一人はいてもよかったんじゃないか、なんて思いたくもなるほど極めてクールじゃ!


■ グレン・マドロック (元セックス・ピストルズ) 
 
バンドをクビになるタイミングとしちゃあ、ピート・ベストよりももっと悲惨だったのが、セックス・ピストルズの初代ベーシストのグレン君じゃな。 イギリス中に狂熱のピストルズ・ブームが大爆発した直後に、「オマエいらーねよ!」って言われたんじゃからな。 公的なクビの理由がまた前代未聞。 「あのクソ野郎、いまだにビートルズが好きなんだぜ!」(by ジョニー・ライドン)って、いやはや、ピストルズたる者は、音楽の趣味までチェックされにゃいかんようじゃ!
 んで後任があのシド・ヴィシャス! コヤツはビートルズどころか、音楽の素養なんて“まるでなしお君”で、ろくすっぽベースなんざ弾けやしない!? まっ何が本気か冗談か分からんところがピストルズっちゅうことなんじゃろう。 その後シドの人気はフロントだったジョニーを食ってしまうほど爆発し、ほどなくしてドラッグで命を落とす「伝説のパンカ―」になった。 これほどのハチャメチャ野郎に居場所を奪われたんだから、マドロック君もクビは運命として諦めるしかなさそうじゃな。 存在そのものが常識ハズレじゃったピストルズを代表するようなエピソードじゃ。
 ちなみにマドロック君の名誉のために書き加えておこう。 「アナーキー・イン・ザ・U.K.」「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」「プリティ・ヴェイカント」等、ピストルズの曲のほとんどはマドロック君が書いたのじゃ! ピストルズをクビになってもその作曲能力を買われて、パンクバンドとして同期の雄であったクラッシュやジャムに参加を要請されていたほどじゃ。 昨年一時的に再結成されたフェイセズにベーシストとして参加したのはまだ記憶に新しいのお。 著書「俺もセックス・ピストルズだった!」はオモロカッタ!


■ ジミー・クレスポ&リック・ダフェイ (元エアロスミス) ■

 アメリカン・ロック史を代表する長寿バンドといえばエアロスミス。 1973年からもう40年近く第一線で活動しておるが、正確に言うと彼らは70年代末期にまったく売れなくなってしもうて解散同然の時期もあったんじゃ。 その低迷期のギタリストって、今ではすっかり忘れ去られておる。 ジョー&ブラッドのオリジナル・ギタリストの代わりに、ジミー&リックという若手が起用されておったんじゃよ。 この二人はエアロに起用されるまではまったくの無名じゃった。 しかもエアロ自体がひどい低空飛行状態にあったために、このメンバー交代劇はたいして話題にもならんかった。
 ジミー&リックにしてみれば当時のエアロは「腐っても鯛」。 「オレたちの手で必ずエアロを復活させたるっ!」って天にも昇る気分だったじゃろうが、アルバム「美獣乱舞」のセールスは惨敗。 無情にも世間はまったく振り向いてもくれんかったなあ〜。 そしてエアロは数年後にオリジナル・ギタリスト・コンビが復帰して、MTVブームにも乗っかり第二期黄金時代に突入して今日に至っとるわけじゃ。 しかしこれではジミー&リックの存在はまるで無かったも同然じゃな。 「オレたちゃ一体何だったんだ・・・」と悔し涙にくれたこともあるに違いない。 胸中察するにあまりあるのお。 わしじゃったら、ネオン街のテーブルの一つや二つひっくり返して悔しがったじゃろう!
 エアロスミスのディスコグラフィの中に、オリジナルメンバーで復活した直後に発売された「クラシック・ライブ」という演奏データのクレジットが不明瞭なライブ盤があるんじゃ。 熱心なファンならば、これがジミー&リック在籍時の演奏であることは分かるんじゃが、恐らくセールスを考慮されてのことだったのじゃろう。 ジミー&リックのクレジットは無かった・・・。 ビジネスは、どこまでも彼らに冷酷じゃった。 彼らが参加したアルバムは、いつの日か再評価される日が来るのじゃろうか。



■ スティーブ・ゲインズ (元レイナード・スキナード) 

 レイナード・スキナードと言えば、1970年代にもっともアメリカで成功したロック・バンドじゃったな。 アルバムの売り上げ、ライブの観客動員は凄まじく、「ストーンズだって、アメリカじゃレイナードの前座さ!」と彼らの本拠地・南部のファンは誇らしげに豪語しておったもんじゃった。 彼らの異常な人気を決定的にしたアルバム「ワン・フロム・ザ・ロード」(ライブ)と「ストリート・サバイバー」には、ニュー・ギタリストとしてスティーブ・ゲインズが参画しており、スティーブの作曲能力とギタープレイが、レイナード・サウンドの格を極上にした!とまで絶賛されておった。
 当然ながらスティーブはスーパー・ギタリストの座を約束されたような脚光を浴びることになるのじゃが、1977年10月、ヴォーカりストでありリーダーのロニー・ヴァン・サントとともに、ツアー移動中の飛行機事故によって突然この世を去ってしまうのじゃ。 実力によって手繰り寄せたかに見えた「富と栄光」が目前まで迫っておったのに、ロックの神様はその運命を突然断ち切ってしまったのじゃ。 残酷極まりないハナシじゃのお。
 古くはバディー・ホリー先生から始まり、オーティス・レディング、ランディ・ローズ、スティーブ・レイボーン、そしてスティーブ&ロニーと、洋楽界の巨人が飛行機事故で命を落としておるが、アーティストとしての成長過程と金運とを考え合わせると、もっとも不幸な運命だったのはスティーブかもしれんなあ〜。 彼の遺作となった「ストリート・サバイバー」のジャケは、炎の中にレイナードのメンバーが立っており、後の凄惨な飛行機事故を暗示していると言われて発禁となってしもうた。 約20年後にこのオリジナル・ジャケットはCDで再発売になったが、わしは今でもこの呪われたジャケットを買い直す気にはなれんのじゃ。


■ おまけ〜コージー・パウエル ■
 悲惨なオハナシばかりだったんで、ラストはさわやか〜な(!?)不運をひとつ。 HR/HM系の知識がある方なら、この人選に「ぇえ!?」と思うじゃろうな。 コージーはジェフ・ベック・グループやレインボウなど、幾多の一流ハードロック・バンドを渡り歩いた有名ドラマーじゃ。 それぐらいわしだって知っとるわな。 じゃがな、有名っつったって、それは日本とイギリスでのオハナシ。 コージーは生前から現在でもアメリカでは無名のドラマーじゃ。
 コージー・パウエルというロッカー、実は恐ろしく大金に縁の薄い男なんじゃよ。 彼が70年代後半から80年代に在籍したレインボウ、マイケル・シェンカー・グループ、ホワイトスネイクは、コージーが脱退してから短期間の内に「アメリカ進出」を成功させておるのじゃ。 彼のキャリア・ハイのスタートとなったジェフ・ベック・グループも、アメリカでアルバムが売れ始めて「さぁこれから!」って時に解散。 要するにコージーはポンドには恵まれたが、ドルには徹底して嫌われ続けたのじゃ。
 その事実に対してコージーは「なぁ〜に、チンタラしたポップ・ロックなんてやってらんねーよ!」と一笑に付しておる。 バンド成長期の初期段階、または低迷期に颯爽と現われては起爆剤的な大活躍をするのが彼の十八番、真骨頂だったのじゃ。 おあとはドルの札束くんがやって来るまで辛抱して在籍するか、本来の役割は果たしたんでさっさと退散するか。 う〜ん、仕事人としてもっとも難しい選択じゃが、コージーは常人では考えられない方の選択に徹したってことか。
 その後の彼の渡り鳥人生は、トニー・アイオミ(ブラック・サバス)に、ブライアン・メイに、ピーター・グリーンに、イングヴェイ・マルムスティーンと、スーパーギタリストを擁するバンドを次々と支え続けておったが、1998年4月愛車の交通事故によって突然この世を去ってしまった。 最後の最後までカッコ良すぎるスタイルを全うしたコージーに次の言葉を捧げたい。
 「バンドが今何をするべきなのか、コージーはそれを素早く的確に教えてくれる男だったよ。 ロックを知り抜いていたね」(by 七鉄じゃなくて、ロバート・プラント)
 

  

 その昔、某作家がこんなことを書いておったのが今も記憶に残っておる。
 「ロックというのは、いかにその場をカッコよく走り抜けるかっていう音楽。 ブルースというのは、いかにその場にしぶとく居座り続けるかっていう音楽」
とな。 分かるような、分からんようなフレーズじゃが、ピート・ベスト、グレン・マドロック、ジミー&リック、スティーブ・ゲインズらは走り抜ける資格が充分にありながら、その機会を“見えない力”によって奪われたようなもんじゃな。 この世で、もしくはあの世で、第二の人生に幸が訪れることを願うばかりじゃな、ってなんだか今回は神父さんのような気分になってしもうたなあ〜。
 まあ諸君はまだ「カッコよく走り抜ける人生」をエンジョイしとると思うが、いつの日か「しぶとく居座り続ける人生」になっても心配はいらんぞ。 ロック・ライフにも、ブルース・ライフにもThe-Kingファッションはばっちりフィットするからのお〜♪ なんたって、ブルース・ファッション・バージョンの方では、既にこのわしが実践して数多くの賛辞を頂いて(?)おるからのお〜♪ 若くして死んでしもうたロバート・ジョンソンとスティーブ・ゲインズには申し訳ないが、やはり命あってのモノダネじゃ。 この先諸君にどんな運命が訪れるかは分からんが、命を大切にしておけば、そのご褒美ってヤツはThe-Kingのアイテムがもたらしてくれることはこのわしが保障しよう!


 
七鉄の酔眼雑記 

 「七鉄さんもTwitterやりましょうよ〜。 アメブロも作って連動させていっぱい“つぶやいて”下さいネ」
 割と身近な存在である女性から誘われてしもうた。 「Twitterねえ。 “つぶやき”なんていわれても、わしゃーシャウトする方がええわい!」とその場はお笑いに転じて返事をうやむやにしたが、どうしたもんかいのお。 いい歳こいたロックオヤジが、「飲み屋ナウ」なんてやってもフォローしてくれるヤングがおるんかいな???
 日本に本帰国して早や数年。 浦島太郎状態から脱却するべく、帰国当初は日本人の日常生活を既に凌駕しておったネット文化、ケータイ文化に慣れるために必死じゃった。 それからwebカメラにi-podにblueray-discにi-padケータイにと、新しいハードも懸命に追いかけてきたもんじゃが、お次はTwitterとかFacebookといったいわば「全員集合!ネット」にも慣れ親しむべきなのかいのお・・・なんて悩んでおること自体、既にオヤジである証拠じゃな。 感性がヤングだったら素直に飛びつくものなんじゃろうなあ〜。 雪解けの季節を待ちながら、そんなことがヤケに脳裏を横切る最近のわしじゃ。

 何か新しい事に興味、関心を持った時、既に携わっておる者の「カッコ(見た目)」ってのがわしの場合は人よりも余計に気になってしまうようじゃ。 だから昔っから新しい物にはソッコーで飛びつくことはあまりなかったな。 例えば、ウォークマンが世に出回った30年ぐらい前、わしはウォークマンの機能自体は「スバラシイ!」感動したが、ヘッドフォンスタイルが気に入らなかったもんじゃ。 あれをかぶって様になるヘアスタイルってのを考えてしまったのじゃ。 結局ウォークマンが似合うヘアスタイルは長髪! それもふさふさヘアーの中にヘッドフォンのアームを隠してしまうのが一番ええ!という、みもふたも無い結論に達したものの、それを実行するためにロンゲになるまで購入は我慢したもんじゃ。
 現代のTwitterとかFacebookとかでもそうなんじゃな。 電車の中とか駅のホームとかコーヒーショップとかで、一心不乱にケータイにタッチしている皆様のお姿は、わしから見るとどうもクールじゃない。 何だか命綱にでもすがるようにケータイにエネルギーを投入しとるようじゃ。 それに「顔なんか見えなくていいから、誰かと繋がっていないと不安で仕方が無い」ってな雰囲気も、どうにもブキミで情けなく見えるのお。 かと言って、笑みを浮かべながらヨユーの表情でケータイと戯れる図ってのも、これもなんだかいけ好かんのお〜。 ってことでいまだにカッコイイケータイの使い方スタイルが思い浮かばんこともあって、“つぶやき”には至っておらん! じゃからまだまだこのコーナーで時折「シャウト!」する方が健康的なんで、よろしく頼むなー諸君!

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