ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.116

ロバート・ジョンソン生誕100周年に送る 「キング・オブ・デルタ・ブルース」の基礎知識 Volume 4
映像作品から探るロバート・ジョンソンの世界


 
最初に断っておかねばならんが、ロバート・ジョンソン自体の映像は“1秒たり”ともありましぇ〜ん。 だから今回はお休みってことで、ほなさいなら〜とズラカルか!? もしくは「70年も前の無名のブルースマンの映像が残っとるわけねーじゃろうが、バカモノ!」と逆ギレでもするか! しかしびっくりレア〜な映像が続々と発掘される現代において、アーティストを知る上で映像作品は欠かせないシロモノじゃし、「無くてもなんとかするのがテメ―の使命だろう!」と強制されても不思議はないのお。 The-Kingのカスタマーは神様じゃから、よぉしっ、お引き受けするとするかの!

 ではこれからロバート・ジョンソンの本拠地じゃったミシシッピまで映像を探しに行ってくるんで、おあとのフォローは8鉄センセーよろしゅ〜ですぞ! え〜ホントはマジでThe-King新作の多彩なピックペンダントやらハンチングをぜ〜んぶ持参でミシシッピまで行きたい気分じゃよ。わしのナッソーやロングコートを見ればブルース/ロック愛好者がぎょうさん寄ってきて、耳寄りな情報をゲットできるかもしれんからな〜。 まあここはグッとこらえてだな、ロバート自身の映像は無くとも、真実の一端に迫ろうとした製作者渾身の一撃!の映像作品をご紹介するとしよう。 わしが長年探し集めたものもその数わずか10本程度。 しかも日本語字幕の入った作品はその半数にも満たないが、ロバートの映像が無くてもおそろしくクオリティが高く、ロバート・ジョンソンという存在が放つ抗(あらが)い難い魔力のキョ―レツさを思い知らされた力作じゃ。 「テメ―そんなんでお茶を濁そうとしているな!」と憤慨される前に、まずは観てほしい。 アメリカの中央社会とは断絶状態にあった1920〜1930年代のミシシッピ周辺の黒人社会、黒人音楽の世界、そしてロバート・ジョンソンというブルースマンの本質を垣間見ることの出来る作品じゃ!
 (写真は、映画「クロスロード」でロバート・ジョンソンに扮した俳優ティム・ラス)


■ 「ロバート・ジョンソンへの旅」(ドキュメンタリー) ■

 
 ロバート・ジョンソンという謎めいたブルースマンを知るためには、この作品はまさにうってつけの名作じゃ。 企画者や製作者のロバート・ジョンソンへの個人的な思い入れを感じさせることなく、極めて冷静に、そして的確にロバートの生涯をコンパクトにまとめ上げておる! まず出演者がすごい! ロバート・ジョンソン研究家の権化として著名なマイク・マコーミックとゲイル・ディーン・ウォロード、更にロバートのマブダチだったブルースマン、ハニー・ボーイ・エドワーズとジョニー・シャイン。 この4人の数々の証言が作品の核を成しておる。 そしてロバート・フリークである白人ブルース・ギタリストのジョン・ハモンド・ジュニア(アメリカ音楽業界の伝説的A&Rマンでありコロンビア・レコードのプロデューサーだったジョン・ハモンドの息子)がインタビュアー兼、作品のガイド役じゃ。 この顔ぶれだけでも、いかに気合が入って制作された作品かが分かるってもんじゃ。 
 どっかのアホなパー子ちゃんタレントが「ここがあーロバートちゃまがよぉーく通ってたパブでーす! わ〜スゴ〜イ、バーボンいっぱい! おいしそ〜♪ パー子もう酔っちゃったみたいでーす!」なんつったふざけたドキュメンタリーではないぞ。
 
ジョニー・シャイン : あんたもブルースやるんだろう?
ジョン・ハモンド・ジュニア : ええ、少々。
ジョニー : じゃあ魂を見せてくれよ。 
ジョン  : はっ? そんな・・・出来ませんよ。
ジョニー : 元々持ってないものを差し出すことは出来ねーだろう?
ジョン  : は、はあ・・・おっしゃる通りで・・・。

 こんなジョークだか何だか分からない不思議なやりとりも交えながら、「クロスロード伝説」「ギタリストとしての力量」「悪魔とは何なのか?」等が次々と語られていくのじゃ。 またジョン・ハモンド・ジュニアはロバートゆかりの地を順を追って訪問し、関係者の証言や思い出話をかき集めていくんじゃが、ロバートの幼馴染やガール・フレンドたち、この世の忘れ形見(実の子供)とその家族までも登場するのが圧巻じゃ。 またロバートの結婚証明書、息を引き取ったとされる家屋、三か所にある墓、謎めいた歌詞を解明する手掛かりとなる場所なども紹介されていくので、ロバート本人が出演せずともまったく落胆も退屈もするこのない素晴らしい作品じゃ。 何だか観ているこっちが、ギター1本かつぎ、ミシシッピ各地で「ロバート・ジョンソンを巡る旅」をしておる気分になってくるんじゃな。 もちろん鑑賞する時はロバートが愛したコーン・ウイスキーは欠かせんぞ〜♪ わしはこの作品のお陰で、今まで何本ボトルを空けてしまったことか! ロバート・ジョンソンは「姿なき主役」として、間違いなくこの作品に出演しておる!
 


■ 映画「クロスロード」 ■
 
 ロバート・ジョンソンほどの人物に伝記映画が製作されておらんってのは、どうも解せんのお。 やっぱりレイ・チャールズやビリー・ホリディぐらいにまでビッグじゃないと、黒人ミュージシャンは商業ベースに乗らんのか? いや、下手にB級レベルで終わってしまうと、膨れ上がっておる「ロバート神話」を崩壊させてしまい、更にブルースの悪魔のタタリがあるって、製作側も及び腰なんじゃろうか? とかいろいろと原因を考えてしまうわな。
 現在のところ準主役としてロバートを扱っておる唯一の作品がこれじゃ。 天才クラシック・ギタリストとして将来を嘱望されておる白人少年が、ロバートのかつての相棒である老ハーピストのウィリー・ブラウン(実在者)と共にロバート・ジョンソンの“幻の一曲”を巡る旅をするってのが映画のストーリーじゃ。

 この映画、コッテコテのブルース・フリークにはとにかく評判が悪いのお。
「ブルースはそんな甘いもんじゃねーぞコラア〜」
「幻の一曲なんてあるわけねーだろうがっ」
「なんでブルースがクラシックに負けなきゃならねえんだよ!」
(詳細はここでは省略)等など。 まあまあ皆様、これは“映画”なんじゃから、そんなにムキにならんでもええじゃないでっか! わしなんか結構ミーハー気分で、「ぉおっ!ロバート役の俳優(ティム・ラス)かっこええのお〜」とか、大好きなギタリストのライ・クーダーの吹き替え演奏に聴き惚れたり、半世紀が経っても変わらないミシシッピのジューク・ジョイントやブルースの生演奏シーンに“じ〜ん”としたりと、思いっきり楽しんでしまったもんじゃ。

 DVDに製品化されてからは何度も観直したが、ブルースやロバート・ジョンソンに造詣の深い人物が製作に関わって、いろいろとジョークというか、シャレをたくさん効かせておるのがポイントじゃ。 「悪魔」ってのが出てきてしもうて、ブルースマンと「契約」するシーンがあるし、その「契約」を破棄するための悪魔との壮絶なギターバトルがあったり、「幻の一曲」とはそれを深く求める者にロバートの魂(亡霊?)が新たに書かせる曲っつうオチとか、ブルースを愛するがゆえに生まれた罪のないジョークの数々がわしは好きじゃがのお〜♪
 それにロックンロール・ファッションの原点と思えるブルースマン・ファッションのお勉強にもなるんじゃ。 ストリングス・タイやその結び方とか、スーツのセンスだとか着こなしとか、わしにとっては映像を停止して画面を拡大チェックしたくなる場面がいくつもあるぞ! 「ブルースとは、ロバート・ジョンソンとはなんぞや?」なんて大アメリカ音楽研究協会のイシアタマ教授(!?)みたいに肩肘張らずにだな、どうかリラ〜クスしながら観て頂きたい!



■ 「ギター・スタイル・オブ・ロバート・ジョンソン」 ■
 
 いやあ〜ありがたい世の中になったもんじゃのお〜♪ ブルースギターの教則ビデオを何本も発表されていることで知られる打田十紀夫センセーが、ロバート・ジョンソンの曲を弾きながら、「ロバート奏法」を懇切丁寧に解説して下さるギター教則のDVDじゃよ。 自分の目と耳との両方でロバート・ジョンソン・サウンドを楽しみ、確認させてもらえるのじゃ! ほとんどのブルースマンが数種類の単純コードの使い回しで演奏していた時代において、ロバート・ジョンソンだけが自在に操っていた、複雑怪奇でカッコいいコードの詳細が画面ではっきりと分かる! それが約30年後からロックシーンでも使われることになるワケじゃから、これは感動じゃ!
 打田センセーの音色は極めて明るい。 お人柄も大変によろしい方のようで、それが音色に反映されとるようじゃ。 え? ブルースって、どこか憂いを帯びていて哀しい音楽なのでは? と感じる輩がいるかもしれんが、これはあくまでも教則用の演奏じゃ。 純粋にギターフレット上の指の運びを知りたい者が、飽きることなく楽しみながら学習するためのものじゃから、「こんな音はブルースじゃねえ!」などと早合点せんようにな!
 でもこの明るく楽しい音色にしている打田センセーのテクニックが、ブルースの奥深さを逆説的に教えてくれておるようじゃ。 譜面上は同じでも、聴かせる目的や相手によって音色が豹変するのがブルースマジックってもんなんじゃろう。


■ 「ギター・オブ・ロバート・ジョンソン/ロリー・ブロック」 ■


 こちらは女性ブルース・ギタリストとして長年シブ〜イ活躍をしとるロリー・ブロック女史の教則DVDじゃ。 ロリー女史のデルタ・ブルース狂及びロバート狂がすさまじいことは有名で、2006年には完全ロバート・ジョンソン・カヴァー・アルバム「Lady & Mr Johnson」を発表しとるほどじゃ。 これは随所でロバート・ジョンソンが乗り移った巫女さんのようなテンションになるのがオソロシ〜作品じゃ。
 この教則DVDも然り。 ライブ映像でもないのに、ロバート奏法を披露するロリー女史からはすさまじい熱情が発せられており、わしは何度観ても圧倒されてしまうのじゃ。 「Lady & Mr Johnson」と同様のゾッとするようなテンションになり、ロバート奏法のチェックなんざ忘れてしまい、彼女の真剣な姿に引き込まれてしまうんじゃ。 何かとオンナに甘くて性懲りもなく“人生回り道”を繰り返しておるアホなわしじゃが、ロリー女史のロバート狂にはマイッタ! この稀に見る「ロバート愛」、五重マルじゃー!!!!!
 「チョイとそこのアンタ! ロバートを弾くには生半可な根性じゃ出来ないわよ!」「アタシの実演講義はハンパじゃないから覚悟なさいっ!」って感じじゃ。 元来スター志向が希薄で、信じるブルース道を貫く!ってな男顔負けの女傑なんで、「激アツ講義」を求める諸氏には大変にヨロシイ作品。 リラックスしながらの「じっくり講義」なら上記の打田センセーの作品がええじゃろう。


■ 「セッションズ・フォー・ロバート・J /エリック・クラプトン」 ■

 2004年にロバート・ジョンソンの完全カヴァー・アルバム「ミー・アンド・ミスター・ジョンソン」を発表し、ロバートを終生敬愛し続けることを世に宣言したエリック・クラプトン。 一部のファンからは「あれはクラプトンの趣味、オアソビだからさっ」と軽〜く流されておったが、クラプトンは“本気”じゃった! 翌年には「ミー・アンド〜」の追伸映像作品とも言うべき本作を発表。 未発表カバー演奏を含むCDプラスDVDのセットで“ロバート命”ってトコを大々的に公表! しかもロバートが約70年前に実際にレコーディングしたテキサスのホテルの部屋で演奏するなどのイレコミ方じゃ!
 わしはクラプトンのカヴァー演奏に関しては“まあまあかのお〜”的な評価じゃったが
エラソーでスンマセン この「ロバートがレコーディングした場所」ってのを観たくて即買いしてしもうた! 酔っ払って観ておると「ロバートの亡霊が見えた!」ってことは今んとこないな、残念ながら。
 ロバートの作品に向かうクラプトンのお姿は実にシンプルで飾り気がない。 演奏もまた然りで、ロバートが残した“音楽の形”を愚直なまでになぞっていくのじゃ。 クラプトン独自の解釈なんてものはまず無いかもしれん。 ここら辺が、クラプトン・フリークからすれば物足りなんじゃろうな。
 しかしだな、ロックスターでもなく、スーパーギタリストでもなく、ロバートを熱狂的に聞いていた若かりし日の自分に立ち返ったスタイルでプレイすることこそ、クラプトン流「ロバートへの敬意」だったんじゃろう。 その為にも、蓄積された知恵、技術(&クセ)なんかをクラプトンは封印しておきたかったんじゃろうな。 スーパーギタリストの素の部分が拝めるってことでも価値の高い作品とも言えるじゃろう。
 
 ご紹介してきた5本の映像作品じゃが、わしはこれらを何百回(!?)も繰り返し観たもんじゃが、それでもロバート・ジョンソンというブルースマンの正体はつかみきれておらん気がする。 そこがまたロバート・ジョンソンの魅力なのかもしれん。 伝説の人物というのは、そういうものじゃ。 「ロバート・ジョンソンへの旅」のラストシーンで、ジョン・ハモンド・ジュニアは次の言葉で作品を締めくくっておる。
 「どうやって調べてもロバート・ジョンソンというブルースマンは謎が多くて分からない。 恐らく彼の真実の多くは、彼の歌の中に隠されているのだろう」
 
〜俺が死んだらハイウェイの道端に埋めておくれ。 そうすりゃ、俺の魂がバスに乗って旅を出来るからな〜
                                              (「ミー・アンド・ザ・デビル・ブルース」より) 
ロバート・ジョンソンの魂は死後73年経っても、いまだに彷徨い続けて数多くの人を魅了し続けておるのじゃ。 今日にでも諸君の元にやって来るかもしれんぞ〜♪

 ミシシッピへの「ロバート・ジョンソン調査の旅」への欲望を封印してまで(!?)書かせてもろうた今回、いかがかだったかのお〜。 現在のところ映像は無く、写真も2枚(3枚?)しかないロバート・ジョンソンじゃが、わしは真剣にミシシッピを再訪して「新発見」を実現させてみたい! ロックの神様が舞い降りたようなThe-Kingブランドがわしの身なりを保障してくれとるから、必ずやブルースの神様もまたわしの情熱にほだされることじゃろう! 諸君も愛するロッカーをテッテー的に追いかける場合は、それ相応の「身なり」を忘れんようにな!



 
七鉄の酔眼雑記 「ゆーちゃん」と「コーちゃん」

 いやはや「ゆーちゃんブーム」はスゴイもんじゃな。 たかがキャンプに何千人もの観衆が全国から連日押しかけ、グッズは完売状態で球団もホックホク〜。 キャンプ地の沖縄・名護も、「不景気ってどこの国のお話でっか?」みたいに大賑わい! プロで一球も投げていない新人投手がこれだけの寵児となる現象、昔っから一向に変わらない日本独特のスポーツ文化の一面じゃのお。 この「ゆーちゃんブーム」にナンクセでも付けてみたいトコじゃが、なんせ斉藤投手が「誰からも愛されるクセのないキャラ」なんで、そんな邪心も失せてしまうわい。
  
 わしは投手としての斉藤佑樹には大いに期待をしとるんで、どうか過剰フィーバーに押しつぶされないことを願うばかりじゃよ。 「ゆーちゃんブーム」を見聞するにつけ、思い出すのは今から40年ほど前の「コーちゃんブーム」。 斉藤投手と同じく、夏の甲子園の決勝で引分・再試合の激闘を演じた青森・三沢高校のエース太田幸司投手がプロ野球入りした時のことじゃ。 太田投手の人気は斉藤投手よりもはるかに凄まじく、その年わずか1勝ながらオールスターのファン投票1位になってしもうたのじゃ! 翌年、翌々年もまったく同じ現象が起きて「プロ野球って一体どーいう商売なのだ!」と物議を醸したもんじゃ。 まったく、一方的に人気を煽り立てておきながら、予測出来なかった事態が起きると問題視するマスコミなんて実に無責任なもんじゃよ。
 太田投手は、確かプロ入り4年目にして初めて監督推薦でオールスターに出場した。 ようやく人気に実力が追いついてきたのじゃ。 その時の雑誌のインタビューで素直に喜びを口にしておったが、そこには「さあ、これからだ!」という溌剌さはなく、なんだか「やれやれ、やっとここまで来られたか・・・」という達成感というか、ちょっと物悲しい老成感が漂よっておった。 太田投手はその後4〜5年ほどほどの活躍をしたが、投手として大成することはついになく引退したもんじゃ。

 周囲が勝手に騒ぎ立てて出来上がってしまった人気というバケモノと戦うことは斉藤投手の宿命になってしもうたが、太田投手のようにプロの選手のレベルになることで精も根も尽き果ててしまったら悲劇じゃよ。 選手がプロなら、球団もプロであるべきで、超人気選手を「守る」、そして「育てる」という企業システムをビシっと見せてもらいたいものじゃ。 しかし斉藤投手の所属する北海道日本ハム球団に、そんなノウハウがあるんじゃろうか? 40年前に太田投手が所属していた近鉄バッファローズの、異常な太田人気に対する無策ぶりと、大して変わらんような気もするがな〜。
 昨今のプロ野球界は、パ・リーグ人気がセ・リーグ人気を凌駕し始めており、ともすればパ・リーグ球団の方が金回りもいいようじゃ。 しかしどっかのアジアの国ではないが、持ちなれない大金を持ってもモラルが伴わない・・・なんてことにならなければいいが。 球団経営のモラルとは、人気選手におんぶに抱っこで集中的に儲けまくるだけではなくて、球界の財産になるようにしっかりと育てることじゃ。 日本のプロ野球球団も、いい加減そんな当たり前のレベルに達していてほしいものじゃ。


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