ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.113

 「サイコーだよ。 彼のことを知らないヤツとは
 口もききたくなかったもんだよ」
 (エリック・クラプトン)
 
 「オレもブルースがやれる歳になったかなと思うが、
彼のレコードを聞くと、まだまだダメだと思っちまうぜ」
 
                       (キース・リチャーズ)


 うむ。 年の最後にThe-Kingからジ〜ンと感動させる横綱、いや理事長級のナッソースーツが発表され、オシャレ気分もビシッと引き締まっておるわしじゃ。 ここはハイ・グレードのオシャレ・モードに見合うコトを書いてこの一年を締めてみたいところじゃ。
 人はエルヴィスを「キング・オブ・ロックン・ロール」、マイケル・ジャクソンを「キング・オブ・ポップス」と呼ぶよのお。 そして洋楽界にはもう一人「キング」の称号で呼ばれる人物がおる。 つまりわしのことじゃ!のワケネーじゃろう。 それは上記のクラプトンやキースをはじめとする数多くのビッグロッカーたちが称賛してやまない
「キング・オブ・デルタ・ブルース」のロバート・ジョンソンじゃ。
 来るべき2011年は、実はこのロバート・ジョンソンの生誕100年に当たるのじゃ。 普通なら未発表音源やら未公開写真集やらが乱発されるところじゃが、なにせ72年も前の1938年にロバート・ジョンソンはこの世を去っており、今まで発掘された音源はたったの29曲42テイク、写真は2枚だけじゃ。 今さら「大発見」なんぞは期待できんじゃろう。
 しかし噂によると、ロバート・ジョンソンと同時代を生きたブルースマンたちによる「新証言」や、今まで「これはロバート・ジョンソンでは?」と物議を醸してきた写真や映像に関するブルース研究者たちの考察をまとめた書籍がいくつか出版されるらしいぞ。 いずれにせよ、来年はアメリカ洋楽界で「ロバート・ジョンソン・ブーム」が少なからず起こることは間違いなかろう。 諸君の耳にも必ず入ってくることじゃろうが、そこで「はあ? ロバート・ジョンソンって誰でっか?」なんてことにならんよう、今のうちにわしから最低限の情報を提供しておくとしんぜよう! 



2011年はロバート・ジョンソン生誕100周年!
 押さえておきたい「キング・オブ・デルタ・ブルース」の基礎知識 Volume 1



◆Point-1 ブルース界のジェームス・ディーン!?


 まずだな、1911年5月8日生まれのロバート・ジョンソン以前にも、レッドベリー、サン・ハウス、チャーリー・パットンといったブルース界の偉人はおるが、ロバート・ジョンソンほどは伝説化、神格化はされておらん。 それは何はともあれロバート・ジョンソンが1938年に27歳の若さで絶命したからじゃ。 次にヤサ男的二枚目だったこと。 更に残された作品が少ないこと。 そして信望者、追随者が多くても、「第二の〜」が現れないことじゃ。 まさにロバート・ジョンソンは、伝説になるべくしてなったブルース界のジェームス・ディーンだったのじゃ。

 更に言えば、事故死や病死ではなくて毒殺されたという無残な死因がロバート伝説に悪魔的な色彩を加えており、「過去の偉人、英雄」とは異質の存在感を音楽史で放つことに繋がっておる。 一体何をしでかしたのかって? モテ過ぎが高じてだな、他人の女房に手を出してしまい、嫉妬にかられたダンナがロバートのウイスキーに毒をもったのじゃ。


◆Point-2 クリームが、ストーンズが、ツェッペリンが極上カヴァー
 
 ロバート・ジョンソンはロックファンにも知名度が高い存在じゃ。 それはビッグロックバンドのカヴァーがメッチャクチャにカッコええからじゃ。 
クリーム「クロスロード」、ローリング・ストーンズ「ラブ・イン・ヴェイン」「ストップ・ブレイキング・ダウン」、レッド・ツェッペリン「トラベリング・リヴァーサイド」。 どれもリードギターが暴れまくるバンドの歴史を代表する名演じゃ。 新し目のトコでは、ホワイト・ストライプスの「ストップ・ブイレイキング・ダウン」やレッド・ホット・チリペッパーズの「ゼア・レッド・ホット」」のカヴァーも人気があるぞ。
 わし個人的には「クロスロード」が挿入され、ロバート・ジョンソンの人生観(死生観?)を表現したような
ドアーズの「ミステリートレイン・メロディー」や、日本では無名のブルース・ベーシストのコリン・ホッジキンソンベースのみでやったカヴァーも名演じゃったと思う。 どのカヴァーもモダンでユニークなアレンジがなされているのに、ロバートへの敬意が払われておるように聞こえるのが不思議じゃ。 若くして死んだロバートも、孫ほどに年の離れた後輩たちの真摯なカヴァーの数々に、あの世でさぞかし喜んでおるじゃろう。 

 

◆Point-3 悪魔に魂を売った男


 悪魔に魂を売った男、悪魔と取引した男。 長らくロバート・ジョンソンはそう呼ばれておる。 エルヴィスのロックン・ロールも最初は「悪魔の音楽」、エルヴィス自身も同じような言われ方をされたが、その元祖はロバートじゃよ。
 ブルース界の有名な伝説にこういうのがあるのじゃ。
 「毎週土曜日の午前0時、あるクロスロード(交差点)に行って楽器を弾くと悪魔が現れる。 楽器を渡すと悪魔が1〜2曲弾いて楽器を返してくる。 その瞬間から自分が望むどんなプレイでも可能になる。 と同時に、人生は破滅の一途を辿ることになる」
 ロバート・ジョンソンは、短期間のうちに超人的なギター名人になった。 サン・ハウス、ジョニー・シャイニングらのロバートと同時代を生きたブルースマンたちが証言しとるから本当なんじゃろう。 さらにロバートは早死、しかももられた毒に三日間七転八倒した末の壮絶な死に様を迎えるハメになった。 この二つの事実が「悪魔伝説」を実践した者として、ロバートを殊更に伝説化しておるのじゃ。 「でさあ〜、本当に悪魔っていたのお〜? 悪魔って誰え〜?」なんて聞くんじゃねーパープリンガールどもっ!

 ちなみにこの「クロスロード」とは現在のミシシッピ州にあるルート61と49との交差点とされており、現在では派手なモニュメントが建てられて観光名所になっておる。 わしは30年ほど前の渡米の折、シャレで土曜日の午前0時にこのクロスロードへ出かけてみたが、酔っぱらった得体のしれんワカゾーどもが騒いでおるだけで、悪魔なんぞは現れてくれんかったよ。 代わりに通りすがりのポリスから「パスポート見せろ!」とか脅されたもんじゃった。 わしの無垢なロマンは、心ないポリスに踏みにじられてしまったのであった!?


◆Point-4 旅好き、酒好き、女好きぃ
〜♪

 バカモノ! わしのことではないわ!! ロバート・ジョンソンに限らずだな、ブルースマンはみんな「旅好き、酒好き、女好き」じゃ。 しかしロバートはチト度が過ぎておったらしい。 なにせまだ鉄道網が貧弱じゃった1920〜30年代に、故郷ミシシッピから何千キロも離れたニューヨークやカナダまで、無賃乗車を繰り返して演奏旅行をしてたっつうからこれは尋常じゃない!
 また禁酒法の時代なのに酒に対する欲望がハンパじゃなかったらしい。 当時の演奏場といえば、密造酒を売る安酒場じゃ。 ギャラは現金で1〜2ドル。 さらにもっとも客ウケしたらウイスキー飲み放題! ロバートはこの「飲み放題」を目当てに、旅をしながら「道場破り」ならぬ「酒場破り」を繰り返しておったそうな。 その気持ちはわしにもよぉ〜分る!
 そして女! ロバートはとにかく女にモテた!! 綿花畑の重労働が一般的黒人の唯一の収入源だった時代に、ロバートは畑仕事をサボっとったらしいが、そのお陰なのか、細身でしなやかな身体を維持し、しかも顔は元々細面。 おまけにスーツを好むシャレ男。 これでギターが上手けりゃ女にモテないはずがないわな! いやあ〜全てのブルースマン、いや男の憧れじゃな。
 (右の写真はイメージフォト)
 


◆Point-5 七鉄流ロバート・ジョンソンの聞き方

 さて肝心のサウンドなんじゃが、ロックに耳が慣れた者なら10人中9人が最初は「なんじゃこりゃ?」となるじゃろう。 なにせ70年以上も前の録音じゃからな。 しかもギター1本だけの伴奏とソロヴォーカルがノイズの後ろでうごめいておる感じじゃ。 そこからロバート・ジョンソンの“スゴサ”を感じ取ることはなかなか難しいかもしれん。 これが時代の厚い壁ってもんじゃ、仕方ないわな。 わしも初めて聞いた時「隣の家の窓から漏れてくるような、か細いブルース」じゃったよ。 そこでロバート・ジョンソンの現代的七鉄流聞き方を授けてしんぜよう!

 @i-podの類、もしくは部屋でヘッドフォンをひっかぶって可能な限り大音量で聞くこと。
  〜貧弱な録音技術の時代の音は、大音量で聞いて感じるしかない! わしは外出中の移動時間やカフェの窓際で一服し、都会の雑踏を眺めながらi-podで聴くのが大好きなんじゃ。
 個人的な体験談じゃが、わしが10年ほど前に東南アジアを放浪していた時、The-Kingのボスがわしの逗留先までわざわざ陣中見舞いをしてくれた時があったんじゃが、そん時のお土産がロバート・ジョンソンのアルバムじゃった。 ブルースからもロックからもしばらく離れておったわしへの最高のお土産じゃった。 放浪しながら、ポータブルプレイヤーで聞くロバートの歌とギターにホレボレしたもんじゃ。 ロバート・ジョンソンのブルースには「移りゆく景色」がよく合うのじゃ。

 
Aオリジナル盤2枚から聞くべし!
  〜オリジナル盤とは1961年に初めて世に出た
「キング・オブ・デルタブルースシンガー」の1&2じゃ。 全29曲42テイクが収録されている「コンプリート・レコーディングス」はお買い得のようじゃが、同じ曲のオルタナティブ・テイクと未発表テイクが続けて収録されており、曲順はまったく考慮されておらん「資料的な作品」じゃ。 観賞用には適しておらんから気を付けて買うようにな。 オリジナル盤はアルバム全体の流れが重視された純粋な「音楽(ブルース)作品」じゃ。
 その代わり「コンプリート〜」の方は、長年謎に包まれていたロバートの生涯を気合を入れて調査した研究者のレポート(解説書)が入っておる。 これを読めば、「ロバート・ジョンソン博士」の道をまっしぐらとなる素晴らしい内容じゃ。

 
B同時代に録音されたブルースと聞き比べてみること。
  〜おススメは「ルーツ・オブ・ロバート・ジョンソン」「ロバート・ジョンソン・クラシックス」の2枚。 ロバートが影響を受けたブルースマンの演奏のオムニバス盤じゃが、録音時期はロバート以前の時代のものも多い。 当時の録音や演奏レベルの水準が分かり、ロバートの作品と聞き比べてみると、いかにロバートの演奏や歌にケタ外れの迫力とエモーションが横溢していることがバッチリ分かるぞ。

 この@〜Bを同時に実践していたら、ある日突然ロバート・ジョンソンの虜になっている自分に気がつくかもしれんぞ。 いきなりガツン!と殴られたような衝撃によって音楽に夢中になることもええが、なにせ相手は「奥深き罪深きブルース」であり、しかも「キング」のロバート・ジョンソンじゃ。 音楽そのものを愛する魂全体にジワリジワリと浸透した果てに辿りつく「感動」もまたええもんじゃぞ! クリームやストーンズらがロバートに敬意を表してカヴァーしたように、諸君はThe-King製ナッソースーツで正装してから聞いてみるべし! 感動が意外と早くやってくるかもしれんぞ!

 実はな、もし諸君が今後ロバート・ジョンソンをはじめとしてブルースの世界に興味を持った場合、大きな難関があるのじゃ。 それは日本で発売されとる関連書籍がコムヅカシイ研究書の類ばっかりなのじゃ。 「ブルースなんちゃって!」ってノリのもんがないんじゃよ。 そこんとこをフォローできて気軽に読めるモンをやってみたいと思っとるんで、乞うご期待じゃ。 本年もお付き合いいただき、心から感謝するぞ!  



 
七鉄の酔眼雑記 断捨離に一家言!?

 一年の終わりが近づき、諸君の中でも既に身の回りの整理整頓を始めておる方もいらっしゃるじゃろう。 整理整頓と言えば、最近ハヤッテいるらしい「断捨離(だんしゃり)」という行為をご存知か? 「断つ」「捨てる」「離れる」の文字通り、思い切って自分の周りのブツを必要最小限にまで減らして生活をすることで、自分の人生と「物」との関わりを見つめ直すという行為じゃ。 日本人は世界一「物を捨てられない」民族らしく、さらに、どういう尺度で調査したかのかは分らんが、一人当たりの所有物は日本人が世界で一番多いらしいのじゃ。 じゃから「断捨離」による新しい生活スタイルってのが少しずつ注目を集めておるらしい。

 わしも一度この「断捨離」をやったことがあるぞ。 それもテッテーして! 10数年前、わしにとっては未知じゃった「アジア大陸」ってのを無期限で放浪しようと決断して、「古本屋、中古レコード屋状態」と化しておった自分の住まいの中を一気に整理したんじゃ。 最初は残しておくべき「貴重品」とか「思い出の逸品」をピックアップしておったが、一向に作業が進まんかった。 そこで、大手中古レコード店/楽器店、古本屋、リサイクルショップの三者を呼びつけて、それぞれ取り扱えるブツを一括で引き取ってもらったんじゃ。 最低限の衣類をつめたバックパックとかわいがっていた猫一匹、そしてわしの三体だけがガラ〜ンとした部屋の中に取り残された光景を今でも鮮明に覚えておる。
 猫の世話は姉貴殿に託したので、本当に自分の身体ひとつとバックパックだけの身分になったのじゃ。 すっきりしたかって? いや違う。 心細くなったかって? それも違う。 なんつーかな、「どーってことないもんじゃな」って気分じゃったよ。 「生まれ変わった気分」なんてとてもとても・・・。 極めて冷静でいられた自分のこともまたよく覚えておる。

 まあわしの場合、「断捨離」をスパッと実行出来て、しかも後遺症にも悩まずに済んだのは、その後の放浪という生活スタイルには定着型生活の道具が一切必要なかったからじゃよ。 またまったくの異文化圏の中におったので、毎日が未知との遭遇であり、かつての文化用品(娯楽用品)もまた必要なかったからじゃ。 
 その経験から言わせてもらうと、一度「断捨離」をしてもだな、生活環境や関わる事象が同じままだと、新しい人生観、生活スタイルなんて簡単に得られるものじゃないぞ。 しかも物と情報が溢れかえっておる現代は、下手すりゃ一度捨てた物でもすぐに惜しくなって、戻ってきてしまう社会構造じゃ。 要は「身軽になったら何をするか?」じゃよ。 それが決まっとらん内は「断捨離」をやったって、気がつきゃリバウンド状態の「元のもくあみ」と思うがなあ〜。
 わしが今懸念しておるのは、溢れかえっておる「物」のほとんどが「なんちゃって」製品であること。 本物とは似てはいても異なる物。 安いから壊れたり無くなったりしてもまた買えばよろしい物ばかり。 だからどんどん身の回りの物が増えていくんじゃ。 そして物を大切にしなくなり、本物と模造物とを見分ける鑑識力も薄れてくる。 これって、言っちゃ悪いが「日本の発展途上国化現象」じゃよ。 ロックとロック・ファッションを愛する諸君にはどうか「途上国化」しないで頂きたい。 2010年師走にあたって、わしからの偽り無き懇願じゃ。 そこんとこをヨロシクお願いして、来年もロックとThe-KingともにKeep On Rockin'じゃ!
   



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