NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.110

 The-Kingの秋冬もんの新作が待ち遠しい今日この頃、いらんもんに浪費せんと資金を貯めにゃあならんと節約に努めておるわしじゃ。 しこたま貯め込んだ(!?)甲斐あり!のナッソー6連発で気分爽快! 諸君より一足早くゲットしてさっそくストリートへ繰り出し、向かった先は映画館。 「ウォーク・ザ・ライン/君に続く道」以来の前売りチケットをゲットしての鑑賞じゃ。 その映画とは、フィフティーズ・サウンドのフリークは興味が薄いかも知れんが、1967~73年に存在したアメリカのドアーズというバンドのドキュメンタリー映画「まぼろしの世界/WHEN YOU'RE STRANGE」じゃ。

 「Strange」とくりゃあ「Stranger/ストレンジャー」! ロック・スピリットには欠かせないフレーズじゃ。 ドアーズの楽曲テーマの根底には、「革命家」「開拓者」「創造者」といったまったく新しいスゲー才能や感性をもった者を「よそ者(ストレンジャー)」としてノケモノにするアメリカの一般社会に対する激しい反骨精神があったのじゃ。 これぞまさしくロック!なスピリッツであり、映画でも、そこら辺のドアーズのアクションが色濃くアピールされておったようじゃ。 映画の原題を直訳すると「オマエがノケモノにされている時」じゃ。 

 「オレはストレンジャーだ」‐これは「ロックな青春」を送ったものなら誰でも感じたことがあるハズじゃ。 ロックと言うだけで、親御さんやガッコのセンセから「やかましい!」と怒鳴られ、歌謡曲しか知らない学友からは「頭おかしいんじゃねえのか?」と奇異の目で見られ、カノジョさんからは「トチ狂ったオトコなんか嫌い!」ってフラレた(?!)ことはなかったかいのう。 そうなったらなったで、より一層ムキになってロックにのめりこんでいったハズじゃ。 映画「まぼろしの世界」のお陰で、わしはそんな遠いストレンジャーだった青春時代を思い出してしもうた。 あの頃はThe-Kingがあればな~。 つまり諸君は幸せもんじゃぞ! 
 そこで、今や忘れかけられておるロック・スピリッツの原点「ストレンジャー意識」が歌われたナンバーをピックアップすることにした! 自分がストレンジャーだと感じた時、それは自分はパンピー(チト古いギャル語じゃったな)じゃないから、自分の身体ひとつで世の中を渡っていかなければならん!ってなり、そこに大いなる「前進」と「創造」が生まれるのであ~る!



よそもの“Stranger”パワーこそ、ロック・スピリットの原点!
 ロック史に孤高の輝きを放つ、“Stranger ”からの一撃!!


■♪tune-1  夜のストレンジャー/フランク・シナトラ■
 
 “ストレンジャー”と言えば、何はともあれこの曲じゃろう。 これはストレンジャーのための子守唄じゃな。 古~いスタンダード・ポップスのイメージが強いが、実は1966年の発表じゃ。 原題は「Strangers in the night」であり、見知らぬ者同士の男女が真夜中に出会い、一夜限りだったはずの恋が永遠の恋になるっつう、なんともロマンチックな歌じゃ。
 じゃがその歌の根底には、生きるためにストレンジャーであり続けなければならなかった不幸な者への深い憐れみと慈愛の精神が脈打っておるんじゃ。 だからこそ、いつの時代にも世界中の人たちから愛され続けるナンバーになったのじゃ。 こういう不特定多数の人々の切ない心情をすくい上げ、深~い情念で綴られた歌が最近は少なくなったもんじゃ。 何度聴いても、ストレンジャー同士の男と女が寄り添う映画のワンシーンのような光景が目に浮かんでくるようであり、ストレンジャーをもっともロマンチックに描いた永遠の名曲じゃな。


♪tune-2 ホームタウンのストレンジャー/エルヴィス・プレスリー■

 「バック・イン・メンフィス」に収録されていたわしの大のお気に入りの曲じゃ。 ムショ暮らしを終えてやっと故郷に帰ってきたのに、ドイツモコイツモ冷たいぜ。 今にみてろよコノヤロウ・・・っつうのを、エルヴィスが感情を抑えて抑えて冷静沈着に歌っておるのがタマラナクかっこいい~♪ わしならシャウトしてまうがな。
 「音楽はコミュニケーションの最良の手段だ。 話し合いよりもずっといい」とはジョン・レノンの有名な言葉じゃが、この言葉が曲解、早合点されて最近では「みんな集まろう~♪」ってなお歌ばっかじゃ。 「今にみていろよコノヤロウ」って歌を、しかも慌てず騒がず歌ってコミュニケーションの原点に出来るのがエルヴィスのスゴサであり、それが本物のロックじゃ!


■ ♪tune-3 まぼろしの世界/ドアーズ ■


 原題は「People are strange」。 映画のタイトル・ソングとも言うべきナンバー。 ドアーズのバンドキャラやサウンドは、ロック史上いまだにフォロワーやクローンが出現していないほどユニークかつ孤高であり、ましてや40数年前にデビューした時の周囲の奇異の目はすさまじかったに違いない。 理解者を得ることなく世間を渡っていくストレンジャーの荒涼とした心理を訥々と歌いあげるジム・モリスンの声は、ぞっとするほど不気味であり、若干23、4歳のシンガー、詩人とは思えない絶望感が圧倒的じゃ。 ちなみにジム・モリスンは、この曲をレコーディングする時、大ファンだったフランク・シナトラを思い浮かべながら歌ったと言われておる。 スタジオ・エンジニアは、ジムのためにわざわざシナトラ愛用と同じモデルのマイクを用意したらしい。
 この曲が収録されたアルバム「Strange Days」は、自分たち(ドアーズ)を旅芸人に見立て、旅の先々で直面する疎外感を色彩感豊かに演奏しているような仕掛けがなされており、今では考えられない、そして誰も真似のできない超芸術的アルバムに仕上がっておる。


■ ♪tune-4 ストレンジャー/ビリー・ジョエル ■

 70年代末期、日本でのみシングルカットされてバカ売れしたのお~。 枯葉舞うむなしい人生という長い道をたった一人で歩いて行く男の哀愁を表現したようなイントロの口笛は、日本人の心をガッチリつかんだもんじゃった。 評論家諸氏は「演歌にも通じる云々かんぬん」と語っておったのお。 確かに口笛の後に、♪~これがあ~、男のお~、生きるみちい~♪なんつって歌われても全然いけそうじゃ!
 実のところ、歌詞の内容は演歌よりももっともっとヘヴィなんじゃ。 「激しく愛した女は去り、新しい女はいつまで経っても他人のようだ。 オレはどこへ行っても死ぬまでストレンジャー~」とまあ、生まれついての独り者のつぶやきじゃよ、これは。 演歌でもここまで孤独感を突っ込んだ曲はないじゃろうな。


■ ♪tune-5 ビューティフル・ストレンジャー/マドンナ ■

 今をトキメク、レディ・ガガも真っ青!の衝撃的アクションの数々で音楽シーンを突っ走ってきたマドンナ。 その彼女のテーマソングともいうべき曲じゃ。 ドアーズの最大のヒット曲「ハートに火をつけて」とそっくりなイントロで始まる60年代ポップス風の曲調は、「アタシはストレンジャー」と言いながらもそれを楽しんで生きているような歌であり、マドンナの華やかな強さにはピッタリじゃ!
 無一文同然で大都会に出てきて、その美貌とフェロモンを駆使して業界人やマスコミ関係者を次々と“取り込みながら”、スターへの階段をわき目も振らずに駆け登っていったとされるマドンナ。 まさにビューティフル・ストレンジャーだからこそ出来た荒技じゃ。 アッパレ! しかし「ストレンジャー/ビリー・ジョエル」と聞き比べると、“女ってえのは逞しいのお~かなわんわい!”とその生き様に脱帽してしまうな。



♪tune-6 パーフェクト・ストレンジャース/ディープ・パープル

 
 1984年に再結成された時のアルバムのタイトル・ソング。 当時ロックシーンは、きらびやかなLAメタル全盛時代時代じゃった。 ディープ・パープルはヘヴィ・メタルの偉大なる大先輩として、いわば時代の声に後押しされた形で再結成しおった。 それなのにこのタイトル!(“カンペキなよそものたち”) 「おコチャマ・メタルと一緒にされてたまるか!」ってトコなんじゃろう。
 こういう世間に対して斜に構えたところがいかにもブリティッシュ・ロッカーらしいカッコよさじゃな。 「でもそれは正しいストレンジャーの姿ではないぞ、リッチー・ブラックモアさんよ」って思うとったが、リッチーはアルバム2枚であっさり脱退。 お次はレインボウを再結成して、アルバムタイトルは「孤高のストレンジャー」ときた。 リッチー・ブラックモアにとっては「ストレンジャー」とは、「自分がやりたいことをやる者」ってことなのかもしれない。


♪tune-7 ストレンジャー・イン・ディス・タウン/ミック・テイラー

 ローリング・ストーンズがもっともカッコよかったと言われる時代(60年代末期~70年代中期)のリードギタリストがミック・テイラーじゃ。 ストーンズ脱退後の一時期は、「ギターと着替えしか持ってない」と自ら語ったように落ちぶれてしまい、ドラッグの後遺症で美しかった容姿もボロボロになっとったもんじゃ。 しかし周囲の支えにより、1992年に約15年ぶりのソロ・アルバムを発表。 そのタイトル・ソングがコレじゃ。
 かつての名声をかなぐり捨て、裸一貫の出直しのために「ストレンジャー」と名乗ったのはクールじゃった。 アルバム発表後は日本での小さなコンサート会場まわりもやったし、「プレイできる所ならどこでも」って姿勢は涙ものじゃった。 来日の際、わしは楽屋でサインをもらったんじゃが、テイラー氏はわしの名前まで丁寧に書いてくれた。 その元スターらしからぬ厚意に感動し、テイラー氏の復活を心情的に熱望したもんじゃったが、あれから18年・・・。


♪tune-8  ロンリ―・ストレンジャー/エリック・クラプトン

 確か「アンプラグド」からシングルカットされたヒット曲じゃったと思う。 作詞作曲のクレジットはクラプトンになっとったが、わしゃあ~どう聞いても、クラプトンが敬愛するブルースの王様ロバート・ジョンソンのテーマのリメイクに聞こえるんじゃがのお~。 「ストレンジャー扱い」されながら街から街へと旅を続けるブルースマンの悲哀を歌ったロバートの精神が息づいておる曲じゃよ。 
 クラプトンはブルージーになり過ぎないように流麗に弾いておるが、そこがクラプトン風超一流の処世術(ヒット・テクニック)のセンスなんじゃろうな。 はるか昔のブルースマンの精神を美しく蘇らせたクラプトン。 何をやっても上手いのお~。 


 今やロック・コンサートは愛好者たちが予定調和を求めて集まる「仲良し広場」の感じがするが、エルヴィスの活躍した50年代、ドアーズの60年代のロック・コンサートは、「ストレンジャー」たちが自分と世の中との隔たりの大きさを再確認しながら、その飢餓感を強烈なロックビートで埋め尽くそうとする「ロック道場」みたいじゃったよ。 コミュニケーションをとりたいという他者との共存願望ではなくて、日常生活のストレンジャー気分に心が折れてしまわないための強さを授かるためにコンサートに出かけていったような気がするな。 「ストレンジャー・ナンバー」を聞き返すと、あの頃の「強さを求める意識」が蘇ってきそうじゃ。
 ロックを取り巻く環境も、時代とともにつくづく変わったもんじゃと痛感するが、時代が変わって良かった点は、ズバリ!現代はThe-Kingがあることじゃな。 ロックが生まれ、それと同時に生まれたロック・ファッションの正統的な流れを感じながら身にまとうことが出来るからじゃ。 本物のロック・ファッションは、本物のロック・スピリットをもっているストレンジャーたちの身も心も包み込んでくれるのじゃ。


七鉄の酔眼雑記 ~ど根性老いぼれロッカーか、ロック仙人か!?

 背中に大きなデキモノができて手術したってのは前回ご報告させてもらったな。 今でも酒もほどほどにしておとなしゅーしとるわしじゃが、傷の治りがどうにも悪くてマイッタ。 消毒の度に病院のセンセーに「浸出液(体内からの膿)が止まりませんねえ」と言われる。 どうやらこれは体質からくる一種の手術の後遺症なんだそうじゃ。 さらに「長年の深酒のせいで、糖尿病かもしれない。 血液検査もしましょう」ってことで採血させられたよ。 糖尿病があると傷の治りが遅くて、薬の種類を変えなきゃいかんらしい。
 検査の結果、糖尿病は無し! しかしホッとしたのもつかの間、「中性脂肪値が異常に高い」と言われてしまった。 「余計なことまで調べるんじゃない!」と言いたいところじゃが、運動したり、食事を変えたり、酒を控えたり、要するに生活習慣を根底から改善して、体質を変えないといかんらしい。 ついに来たか、このお達しが・・・。
 「この年で今さらそんなことを言われてもなあ~」と悶々としてしていた先日、インドから二カ月ぶりに帰国した旧友の帰国歓迎パーティがあった。 その友人が異常に痩せていたので、衛生状況の悪いインドで食中毒にでもかかったのかと思ったらその反対で、インドのヒンズー教の修行道場アシュラムに似た、「なんとか体質改善トレーニング講座」みたいのに参加しておったらしい。
 二ヶ月間山の中の施設にこもっての禁酒、禁煙、1日2回の菜食生活。 更にヨガや冥想などのプログラムをこなすという期間限定の仙人のような生活をしとったらしい。 結構有名な「講座」らしく、世界中から体質改善や持病克服を目的とする人が集まってくるらしく、老若男女、職業や人生観も様々な人々との集団生活はとても意義があったとその友人は目を輝かせて語っておった。 痩せてはおったものの、新しいパワーが宿ったような、今までの姿とは一味違うオーラを友人は発しておった。 

 わしの現状を話したところ、「ぜひ七鉄さんも参加してみたら?」とススメラレテしもうた。 まだまだ老いぼれてたまるか!と意気軒高のわしじゃが、身体は確実に老化現象や長年の不摂生生活の後遺症が出ておるから魅力的なオハナシではある。 しかし「講座」が終了しても、三か月間は禁酒禁煙は当たり前で、食生活に関しても厳しい規制があるそうじゃ。
 友人はわしの体調を心配してくれて(?)、その後も「講座」の詳細を語ってくれたが、話を聞いているうちに既に仙人になったような気がしてきた。 わしが「講座」を受けたら年も年だし、本当の仙人になってしまうんじゃないかのお・・・。 ロック仙人なんて聞いたこともない・・・。 そうなっても諸君はわしのお相手をしてくれるだろうか。 大いに迷うところじゃ。 本音を言えば、このまま「ど根性老いぼれロッカー」路線を突っ走りたいんじゃがな~。




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