NANATETSU ROCK FIREBALL COLUMN Vol.108

 ロックの本場アメリカ、イギリスにも一応は四季(Four Seasons)ってのはあるが、日本ほど4つの季節が明確に分かれてはいないことは知っておるな、諸君。 簡単に言うと「暑い夏」か「寒い冬」かのどっちかじゃ。 だから上着や防寒着を脱ぐか、着るか、で1年を過ごしてしまうという、ファッションに無頓着な者は案外多いのじゃ。 そういう点においては、わしは四季があり、1年で4パターンのファッションが楽しめる日本人に生まれて良かったと思っておるぞ。
 さて、2010年の本格的衣替えの季節到来じゃな! 長過ぎた夏にキレイサッパリ別れを告げるべく登場した、新作ナッソー&エドワードをオーダーして気分一新!爽快!!になってくれい。 そして新たなるロック・スピリッツが宿ったところで、この108回目を読んでくれ~い。 タイトルは、


ファッションチェンジ、イメージチェンジが物語る
ロッカーの心意気


 様々なロッカーのファッションを検討してみるとだな、意外と大胆なモードチェンジを試みた者は少ないのじゃ。 年齢の推移に従ってセンスが地味になっていくか、お金持ちになって服地が高等になるぐらいなんじゃよ。 (この場合、プロモーションのために突然貴族趣味のお洋服を着たがる女性ロッカーは対象外)
 そこで数少ないロッカーの大胆なファッション・チェンジ、イメージ・チェンジをピックアップすると、そこには「装いを変えて気分一新」というよりも、ロッカーとしての「鋼のような強い決意表明」の産物であることがよく分かるのじゃ。 「決意」が先か「ファッション・チェンジ」が先か、それは分らん。 そんなもの「卵が先が鶏が先か」みたいな不毛な推測じゃ。 わしらが知っておくべきことは、新しい装いで新たなる前進しようとするロッカーの「見果てぬ夢」に思いを馳せることじゃ!

時代に逆行して喝采を浴びる。 コレがロッカーの真髄!!
       キングが満天下に示した、忘れえぬ復活の装い!!
 
■エルヴィス・プレスリー■

 ご存知1968年12月のエルヴィスの「カムバック・スペシャル」が、ロック史上初のロッカーの大胆なファッション・チェンジじゃった! 映画出演の乱発で、少々硬派なイメージが薄れたエルヴィスのカムバックに当たり、その戦闘服にセレクトされたのはレザー! 映画「乱暴者」で有名な50年代のバイカーファッションを彷彿とさせるエネルギッシュな男性美をダイレクトに引き立てるレザーのしっとりとした輝きこそ、エルヴィスの屈強のロック魂の原点であり、「カムバック・ファッション」に相応しい!とパーカー大佐は判断したんじゃろうか。いやこの時はもう一儲けしたいパーカーを裏切ったとも聞いておる。
 時代はサイケデリック文化の影響で原色が飛び交うピーコック革命期であり、ロック自体も異様な多様化状態じゃったが、ファッションもサウンドもあえて時代に逆行するスタイルで挑んだエルヴィスは、もう気絶しそうなほどクールじゃった。 しかしその後、このレザー・ファッションが踏襲されることはなかったので、まさに希少な特別仕様ってことじゃな。

 ところで、このレザーというアイテム、他のロッカーで記念碑的に着用されたことはないかのかと調べたが、あったぞ! 1980年クイーンが全米制覇を真正面から意識して制作したアルバム「ザ・ゲーム」のジャケで、メンバー全員がレザーファッションで統一。 先行シングル「愛という名の欲望」もロカビリー風アレンジ。 これが功を奏してメデタク彼らはアメリカでも大成功した! 「エルヴィスのレザー伝説にあやかったな!」とわしはニヤリとしたもんじゃった。


戦うロッカーにセレブの香りはいらぬ!?
 ロック・スター放棄のファンファーレとなった普段着という戦闘服 

■ジョン・レノン■
 「カムバック・スペシャル」の約半年前、ビートルズのジョン・レノンは、敬愛するエルヴィスよりも一足早いファッション・チェンジを公表しておった。 ビートルズの新曲「ヘイ・ジュード/レボリューション」のプロモ・クリップで、かつてのアイドルとしてのイメージを捨て去った、普段着としか言いようのない飾り気の無いファッションで登場。 髪の毛も伸ばしっ放しで、丸眼鏡をかけ、「もうアイドル芝居なんざクソくらえだ!」って勢いじゃ。
 ほとんどのビートルズ・ファンは、「ジョンはオフの装いそのままで登場したんだろう」ぐらいにしか思っていなかったので、「ファッション・チェンジ」と騒がれることはなかったが、鑑識眼スルドイわしの様なファンは、ジョンの決意を感じ取っておったぞ!
 髪の毛振り乱して「革命を起こしたいって? それならアンタのアタマん中を先に変えな!」と歌うジョンはメッチャいかしておった。 以降ジョンの曲は、ヨーコさんへの愛を歌い上げる一方で、政治的ニュアンスの強い過激なテーマに包まれていくのじゃ。 同年の年末、ローリング・ストーンズのTVショウ「ロックン・ロール・サーカス」にゲスト出演した時も洗いざらしのブルージーンズだったので、エルヴィスのレザー同様、ジョンの普段着もまた戦闘服だったのじゃ!


セックス・シンボルから老いぼれブルースマンへ!
 アート・ピュアリストがセレクトした空前絶後の自己変革!?

■ジム・モリスン■
 エルヴィスが変わり、ジョン・レノンも変わった68~69年。 もう一人過激に変わったロッカーがおった。 ドアーズのジム・モリスンじゃ。 既に全米のセックス・シンボル&狂熱のロックシンガーという地位を確立しておったが、デビューからわずか2年後の当時、別人の様に太ってしまい、髪の毛も髭もぼうぼう、じゃもじゃ・・・。 わずか25歳にして、さながらヨボヨボ、ボロボロのブルースマンじゃった。
 誰もが羨むトップスターに一体何が起こったのか。 それはジムの世間に対する反抗だったのじゃ。 レコードは売れまくり、ライブは満員なのに、一体何が気に食わなかったのか? それはドアーズの真摯なアート思考に対する、世間とショウ・ビジネス界の無理解じゃった。 ここでグレてファンの幻想を潰そうという思考回路はジョン・レノンと同じじゃが、ジムはもっと破滅的なまでに徹底しておった。
 アルコールを死ぬほどかっ喰らい、故意に堕落的な生活を追求し、ライブステージはブチ壊すわ、レコーディングはすっぽかすわ、ファンを罵倒するわのやりたい放題。 その反面、詩人としての才、ヴォーカリストとしての凄みが益々磨きあげられていったんじゃから、やはりこの男はタダモノではなかった。
 しかしそんな超人ぶりが長く続くわけもなく、2年後の71年7月についに死んでしもうた。 パンクが登場する10年も前、更にグランジが登場する20年も前から、ジムはライフスタイル全体で、「反逆のロックン・ローラー」をやっておったのじゃ。 ジムの容姿の急変は、とどのつまり「世間様、大衆嗜好とのオサラバ」ってことだったのじゃ。



稀代の伊達男ロッカーが魅せた、ロックン・ロール・スーツ!

■デヴィッド・ボウイ■
 70年代のファッション・チェンジの代表例はデビッド・ボウイじゃろう。 キンキラ衣装のグラム・ロックの世界と完全に手を切るために、ボウイが選んだ道は「アメリカ制覇」。 楽曲、アレンジ、そしてファッションまで、すべてアメリカン・エンターテイメントのエッセンスを意識。 まさかエルヴィスのような「ジャンプ・スーツ」というわけにはいかず、ボウイは今で言う「ソフト・スーツ」でダンディにキメた!
 これが大好評! もう誰も「気が狂った格好をした宇宙人」とは言わなくなった! ロック史上有数のファッション・ロッカーであるボウイの第二期黄金時代のスタートは、実は「ソフトスーツ」だったのじゃ! まあ何を着ても似合ってしまう伊達男なんで、1回ぐらいはナッソーでキメてほしかったのお~。
 ちなみに、目論見通りの成功を収めたとはいえ、アメリカン・エンタメの世界は、やはりヨーロッパ人のボウイにはしっくりこなかったようで、この路線が長く続くことはなく、徐々に「ヨーロッパ・アート」へ再びシフト・チェンジしていくことになるんじゃが、ファッションだけはこのソフトスーツ路線が基本になっており、それはやがて80年代の「ニューロマンティクス」のブームへと繋がっていくのじゃ。



“元祖パンク野郎”が生まれ変わって、責任感溢れる衣替えを断行!

■キース・リチャーズ■
 「キースほどパンクしている男はこの世にいないぜ!」とはミック・ジャガーの談。 その日、その時の着たい物を着る、付けたいアクセを付けるってのが長らくキースのファッションじゃった。 特に70年代後半は、極度のドラッグ中毒のためだったのか、やつれ切った顔のように、身に付けるものは何だかダラ~ンとした締りのないモンが多かった。 それがまたイカしてはおったがのお。
 そんなキースに「パッと見」の大変化は現在までないが、わしが「おやっ?」と思うたのは、86年に発表された「ダーティ・ワーク」のジャケ。 ミックではなくてキースが中央にドン!と腰を据え、タイトな着こなしを披露しておるではないか。 アルバム発表後に数多く発表されたインタビューや、シングル「ワンヒット」のビデオクリップのファッションも、1本ビシッと筋の通ったキメ方になっておった。
 どうやら当時はミックがソロ活動に忙しくて、キースがストーンズを引っ張っていかなくてはならん立場だったようじゃ。 ドラッグもすっぱりと止めて、リーダーとしての自覚が高まったがゆえにファッションにもだらけたところが無くなったんじゃろうな。 やはり地位が人を変える!ってのはキースのような無頼漢にも言えることなんじゃろう。


身なりを整えて、真の黄金時代を走り出したギターの神様

■エリック・クラプトン
 この男もキース・リチャーズ同様、70~80年代のファッションは「そこら辺にあった物をテキトーに身につけて来た」ってなズボラな感じで、なおかつそれがまたいいセンスをしておるんで、ニクタラシ~ヤツじゃった! そんなクラプトン・ファッションに大きな変化が訪れたのは90年「ジャーニーマン」を発表した頃じゃった。
 計算されたルーズ感がカッコいいロン毛に、ベルサーチのスーツをキメだした。 ブラック、ホワイト、パープル、ピンクと、原色のベルサーチをホイホイと着こなすクラプトンには恐れ入った! このお方、ギターだけでなくて、スーツの着こなしもサラリッ!とやってしまうんだから、まさに天は二物を与えた!ってもんじゃ。 
 「ジャーニーマン」の前作「オーガスト」の頃からドラッグとも手を切り、バンドメンバーにも恵まれ、アルバムもツアーも大好評。 さらに待望の子供も誕生して、まさに「人生再スタート」だったんじゃろう。 仕事にも私生活にも恵まれてくると、やはり人間ってもんは輝いてくるもんじゃのお~。 しかしながら、「ベルサーチ」とか「アルマーニ」なんてセレブ・ファッションのブランド名がロック界で取り沙汰されたのは、クラプトンのベルサーチが初じゃろうな~。



“ボス”の髭剃りは正解だったのか?
  全米が騒然となった早過ぎたイメージ・チェンジ!!

■ブルース・スプリングスティーン
 ブルースがデビューした74年頃の騒ぎは尋常ではなかったもんじゃ。 あっという間に「ロック界最後のヒーロー」とまでマスコミは煽りまくっておった。 わしに言わせれば「正真正銘の労働者階級の英雄」じゃよ。 重工業地帯でうごめく無数の貧民の心情をすくあげた歌詞、ロックの原始的なエネルギーを炸裂させた演奏。 汗と泥とガソリンの匂いが染み込んだようなTシャツと無精髭。 絵に描いた様なアメリカン・ドリームの体現者じゃったよ。 熱狂的なファンはブルースを「ボス」と呼んだもんじゃ。
 そのブルースが4枚目の作品「闇に吠える街」のジャケでは、トレードマークの髭を剃り、こざっぱりした風体でご登場。 何かのパーティーの写真では、礼服ナッソーみたいなジャケットやシルクのシャツを着ておったもんだからファンは大騒ぎになった。 礼服ナッソーはいいとしても、「ボスは俺たち庶民を捨てたんだ!」とまあ喧々諤々。 オメーラだってお金持ちになったら、そーしたいじゃろうがバカモノ!ってドツキたくなったもんじゃったが、そこまでファンに愛されておったから、その分だけイメージ・チェンジは失望感を呼んでしもうたのじゃ。
 
 しかしさすがはボス、「闇に吠える街」も、次の「ザ・リバー」も作品自体が素晴らしく、彼の魂がファンとともにあることを証明する快作だったので、ボスが失墜することにはならんかった。 「成功しようが、金持ちになろうが、オレのロック・スピリッツは変わんねーぞ!」あの時の衝撃的なイメージ・チェンジの意味はここら辺にあったんじゃろう!
 

 こうしてロック史の代表的なイメージ・チェンジを並べてみると、ワイルドになるか、ジェントルになるかに大別出来ないこともない。 しかしいずれも「鋼のような強い決意表明」があり、 「単なる衣替え」の意識だけでは新しいファッションは輝いてこないことを教えられるような気がするのお!
 なんて書いてしまうと、「う~ん、オレの衣替えは、ロッカーとしての決意表明になるのだろうか?」とマジメに悩んでしまわれる輩もおるじゃろうが、心配ない! 諸君にはThe-Kingブランドがあるではないか! アグレッシブなロック・スピリッツから生まれたグレイトなアイテムが次々と繰り出されておるではないか! コイツを身につけときゃ~諸君の魂に新たなる熱いロック・スピリッツが注入されるに違いない! ロッカーとしての正しい「衣替え」へと導いてくれるぞ! ちなみにだな。 近いうちに「ファッションが全然変わらん、脅威のワンパターン・ロッカー」ってのも集めてみたいので、乞うご期待!

 
  

七鉄の酔眼雑記
 
~エルヴィスが復活させてくれた親戚とのご縁

 過日、父上の四十九日の法要にて、葬儀以来再び親戚一同にお会いすることになった。 ビシッとThe-King製のナッソーをキメて、「父去って、七鉄ありっ!」ってトコを見せたかったんじゃが、ここはグッと我慢して喪服で厳かに列席。 ところがこの法要が思わぬ展開となってもうた!
 実はわしの親戚連中ってのは、普段はほとんど親交がなく、冠婚葬祭の時にしか顔を合わせんのじゃ。 しかもわしは日本に居ないことが多かったので、20年ぶりに会った親戚も多いのじゃ。 通り一遍の近況報告は葬儀の時に済んどるから、この日は何を話していいのやら。 会食の席では、女性陣は子供の話なんかでそれなりに会話が成立しておったが、男性陣の間には重~い空気が・・・。 地方公務員、自営業者、会社員、公認会計士、調理師、それにロッカー(?!)のわし。 まあこのメンツに共通の話題を探し出すのは難しいわな。
 しかしわしは喪主じゃ。「何とかせんといかんなぁ~」と思案しながらビールを注いで回っていたところ、魔法の様な一言が自然と出た!
 「わしの葬儀の時はだな、エルヴィスのゴスペル集をBGMにしてくれ!ワハハハッ!!」
 これで一気に場が盛り上がったのじゃ。 「ぁあっ!そう言えば、七鉄さんはエルヴィスが~」から始まって、気が付いてみれば音楽談義の炸裂状態。 すっかり忘れておったが、地方公務員の君はスタンダードポップス、自営業者の君はハードロック、公認会計士の君はエリック・クラプトン&ストーンズの大ファンだったのじゃ! みんなが「五十路を過ぎた今でも聞いてるぜ!」と主張を始め出して、子育て奮闘記を披露し合っていた女性陣を圧倒!(笑) いやあ~良かった良かった。 さすがはキング・エルヴィス! 我ら親戚の二十年間の空白を一瞬にして埋めてくれたのじゃ。 父上もこの状況に天空で苦笑しておったに違いない!
 場が盛り上がったのはいいが、ついでにわしの悪い癖が出てしもうたよ。 「探しとる音源があったら遠慮せずウォントせえよ。 探したるわい!」とエラソーにのたまわり、みんなとメルアド交換。 さっそく具体的な「お探し物」を与えられてしもうた! さらに帰宅の際は公認会計士の君の車に便乗をススメラレて、車中で約二時間たっぷりと超マニアックな秘蔵音源を聞かされ、その間中彼はマシンガントーク! 楽しかったけど、参った、まいった、マイッタ。 でも彼の奥様から「久しぶりに主人の楽しそうな顔を見たわ。 ありがとね」と礼を言われたもんじゃ。
 エルヴィスが復活させてくれた親戚との仲じゃ。 遅ればせながらも、今後は大切にしていきたいと願っておる次第じゃ。ありがとうキング! 




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