ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.102


そのジャケにピン!ときたら「グッド・ロッキン・アルバム」!! 〜前編

 夏にも羽織れるロック・ブルゾン5連発に早くもハイ・モードのわし! 今年の夏もエエことありそーじゃ! ってゴキゲン・モードなんで、ここは一発わしの「得意技」のオハナシをかましてしんぜよう! 若かりし時よりわしは「ロック豆知識」的なもんが仲間内でも多かったので、ちょっと鼻が高かったもんじゃよ。 それはジャケットを隅々まで、それこそ印刷された一言一句まで逃さずチェックしていたお陰なのじゃ。 まあ人よりジャケット自体への愛着も強かったのじゃろう。 そしてジャケットへの愛着は、やがてわしの感性からもうひとつの得意技を引き出すことになったのじゃ。
 それは事前にサウンドを聞いたことがなくても、また一切情報がなくても、ジャケットを見ただけで、お気に入りのロック・アルバムを判別できるってことじゃ! 
 こんな話をすると「情報が無いだとお〜? 日本盤の帯にはしっかりと概要が紹介されてんだろう!」とイジワルなツッコミを入れる輩がおるかもしれんな。 あのなあ〜人のハナシは最後まで聞かんかい、バカモノ! わしらの時代は輸入盤屋さんの方が価格も安くて品揃えが断然豊富だったので、レコードコレクションに目覚めてからは、それこそわしの休日は輸入盤屋さんとともにあったも同然じゃ。 じゃから帯なんぞは見ておらんぞ!!
 「Discroad」「disk Union」「新宿レコード」「CISCO」「Edison」等など、お世話になった輸入盤屋さんを思い出すと、今でも輸入盤特有の塩化ビニールとインクの混ざった様なあの特殊な匂いがプ〜ンと漂ってきそうじゃ。 そして自分の勘だけで買ってきたレコードが“ドストライク”だった時のあの喜び! そんな日々を延々と繰り返すことで、七鉄青年のロック感性は磨かれ続けたのであ〜る!
 では、わしが「ジャケットで即買い!」したアルバムをいくつかご紹介してしんぜよう。 以下ご覧の通り、幅広いロック・ジャンルにおいてわしの「勘」は発揮されておったので、多少はエラソーに語っておる部分があってもどうかご容赦頂きたい!

 
★ Part-1 アンチ・ポップ路線のシンボル的デザイン! ★

 
●フリートウッド・マック/「ファースト」「英国薔薇」
  オハナシがカタクならんよう、最初は「笑劇!の出会い」から始めるとしよう〜♪
 1968年に出会ったこのジャケ(←)、ロックのアルバムと思うかフツー? ひねったアイディアなんて、まだまだお呼びじゃない時代じゃったのに、それがコレじゃ! 見つけた途端「なんじゃ〜こりゃあ〜」と素っ頓狂な声が出てしもうたのをよお覚えておる。 よく見ると女装した男性だし(多分、大道芸人じゃろう)、カッコ良さを微塵も感じさせないフォトに対してその内にムショーに腹が立ってきた! だからわしもまたこんな顔になっておったんじゃろう!
 そしてその後ろにあったのがこっちのジャケ(→)。 「ストレイキャット・ストラット」が漂う雰囲気だが、こちらは野良犬が路上でゴミをあさっているようなバックストリートのうらぶれた写真。 アーティストがビシッ!ときめるか、ニッコリ笑うかのレコジャケを見慣れた者にはこりゃ〜笑劇、いや衝撃じゃった。
 この二作の共通点は大衆性を拒絶しているというか、完全に世間をコバカにしておるところじゃな。 じゃがわしは、このアンチポップの香りから、ロックの本場ではロックが単なる人気商売の枠を越えて進化しておることを感じ取った。 「ほっほぉ〜、大した自信じゃのお〜。 そんならイッチョ聞かせてもらうか!」となって買ったもんじゃ。 当時最高のブルース・ロック・バンドのクリームよりも、もっとシブクてアダルトなホワイト・ブルース・バンド、フリートウッド・マックとの幸運な出会いとなった。



★ Part-2 白人ブルースの運命を語ったロック史上初?!のアート・ジャケ ★
 
●エレクトリック・フラッグ/ア・ロング・タイム・カミング
 記憶にある限り、わしが最初に「ジャケ買い」をしたのは1967年のこのアルバムだったと思う。 紫にカラーモード変換したステージ・フォトに、ラリッタ様なセクシーレディを重ね焼きしたデザイン。 初めて出会ったアート・ジャケットじゃったな。 このアイディアは、アメリカのドラッグ・カルチャーが色濃く反映されたものじゃが、そんなことはニッポンにいたわしゃ〜知らん! 「スゲージャケットを発見した!」みたいなコーフンに任せて買ってもうた!
 粗末な台紙に張られたカヴァーがぺロリと剥がれそうな質の悪い紙ジャケじゃったが、カヴァー同様にサウンドの方もばっちり! 60年代末期に大作化(組曲化)することで一応の完成を迎える「アメリカン・ホワイト・ブルース・セッション」の、いわゆるハシリがこのアルバムであり、シンプルで迫力あるホワイトブルースの秀作じゃ。
 結局白人ブルースとは、どこにも行き場のない音楽だったわけじゃが、後年このジャケを見直した時、ジャケ中央のレディが白人ブルースマンたちの幻想の象徴のようにわしには映った。 わしが「名デザイン!」とする最たるジャケじゃ。 


 

★ Part-3 ジャケが作品価値を暴騰させた、永遠の耽美ジャケット ★


●トゥーリーズ/オン・ザ・ショア

 ブリティッシュ・ロック史上に名高い“美デザイン”がこれ! 緑がまぶしい芝生の上で幼女が水撒きするこのシーン、わしも出会った瞬間に参ってしまった! 音なんざどーでもええ、このジャケットだけでも持っておきたい! 
(でもわしはロリコンではないぞ、念のため) と思わせる美術作品の様な重みがある! このジャケに出会ってから40年あまり。 目にした瞬間にハッと息を呑むような美しさを湛えたジャケには、この後出会っていない気がするのお〜。 実際このジャケのために、アナログディスクは一時期異様な高値で取引されておったもんじゃ。
 んでトゥーリーズってのはイギリスのトラッド・フォーク・バンド。 60年代末期からペンタングル、フェアポート・コンヴェンションといった同様のバンドが、イギリスの神話を静謐なアコギ・サウンドに乗せて歌い上げ、ちょっとしたブームを作っていたが、トゥーリーズもこのジャケの話題性により遅ればせながらブームの中心に踊り出たもんじゃ。 ちなみに、トゥーリーズもペンタングルもフェアポートも、みんな女性がリードヴォーカルなんじゃが、声質も唱法も同じじゃったなあ〜。 神話や民話の深〜い世界観をすくい上げるような生真面目なヴォーカル・・・う〜ん、ええ時代じゃった!



★ Part-4 B級プログレを彩ったアート作品 ★

●ナイス/ファイブ・ブリッジズ、
●ジェネシス/怪奇骨董音楽箱

 プログレってのは、「サウンドや歌詞だけではなくて、ジャケットもアートしていて商品価値が高い!」と日本ではよく言われてきたもんじゃ。 じゃがな、わしは正直なところ、アートしているというより、衝撃性やクソ真面目性が強過ぎて、何だか逆にシラケルもんが多いと思うとったよ。 キング・クリムゾンの「宮殿」(右写真上)、ピンクフロイドの「原子心母」(右写真下)、EL&Pの「タルカス」等など、プログレのA級バンドのジャケは聞く前からサウンドの世界観や観念が想像できてツマランかった。
 その点、日本では話題にならなかったB級プログレのジャケは、純粋に美術していたもんじゃ。 その代表例がこの2枚のアルバム。 ナイスはファイン・フォト・アートの秀作! 同じ写真の180度回転版を正規版の下にくっつけただけじゃが、元々の写真のアングルの良さが増強されとる! サウンドも、これぞクラシック・ロックの王道!でぶっ飛んだもんじゃ。 ジェネシスはニヒルな視点を童話化した画法が実に新鮮じゃった。 一見クリケットをする牧歌的な絵画じゃが、よく見るとボールは人間の頭!
 A級プログレの方は「次はどんなサウンドかいのお〜」で、B級の方は「次はどんなジャケかいのお〜」などとプログレの楽しみ方を色分けにしておったもんじゃ! もちろんジャケが気に入ったB級のサウンドも、ジャケを見ながら聞くと、意図不明な特殊な展開が理解出来る気がして、一人で悦に入っておったよ。 
 

 

★ Part-5 問答無用の美女ジャケと、深層心理学的エロジャケ ★

●泉の詩/フランシス・レイ
●FANX,TA-RA/サッド・カフェ

 ジャケに拘るから、当然絶世の美女のご登場をいつも期待しておるが、エラソーに言わせて頂くと、わしのおめがねにかなったロックの「美女ジャケ」はない! それもこれも、コイツ(←)が強烈過ぎたからじゃ!! フランス映画史上最上級美女と言われたカトリーヌ・ドヌーブ嬢がどど〜んとあしらわれたこのジャケのせいじゃ! う、美し過ぎる! 見つめているのが怖いぐらいの極上ショット・・・。
 フランス映画音楽界の巨匠フランシス・レイが、ドヌーブに捧げると題して発表したシングル曲「泉の詩」を飾った永遠の「美女ジャケ」じゃが、レイの作品がCD化されても、このフォトはお目見えしておらん・・・分ってないのお〜どいつもこいつも。 曲だって、ドヌーブ嬢に会いたくなって胸がつぶれそうになる名曲なのにのお〜。 (You Tubeにもアップされておらん! どーいうことじゃ!!)
 さて、ロックの「美女ジャケ」はない!と言い放ったものの、番外編ならあるぞ。 右写真のジャケに写る女性、別にわしは美女とは思わんが、表情が見事なアート! 鏡に映る男性が部屋を出て行こうとしているし、それに女性の服装の乱れ具合を重ね考えると、どうやら情事の後のシーンじゃろう。 虚脱感? 哀しみ? 恨み? いろんな感情を一度に湛えた女性の表情があまりにもナイス! サウンドの方は、わしが食わず嫌いしておった70年代中期のパワーポップ(ロック的ポップス)を見直すきっかけとなった、センスのいいブリティッシュ・へヴィ・ポップじゃ。

 音楽ソフトが本格的にLP時代になったのは60年代後半じゃったな。 それまではデザイン的にはテキトーなシングル盤がほとんどだったので、わしの場合のレコジャケの思い出は、どうしてもLP時代以降ということになる。 日本盤シングルの、あの折り紙を切り張りしたような日本語タイトルの書体がダセーって当時から感じておったからのお。 だから50〜60年代のシングル盤のジャケ買い記憶の方は、また機会を改めて思い出してみようと思う。
 ところで、ジャケ買いとはイコール衝動買いじゃ。 衝動買いなら、もうひとつ今でもやっとるわい! 言わずとも分かるじゃろうが、それはThe−Kingの新作じゃ! 役得により、HPにアップされる前にボスから写真が送信されてくるが、最近では超高速無条件反射!でオーダーしとる!!ハズレなんざ一度もない、どころか、実物はいつも予想を越えた完成度じゃ。 諸君もウダウダ考えずに即オーダーせよ! 
 

 
七鉄の酔眼雑記
 〜七鉄ジジイのオヤジさん

 わしの終生変わらぬ「ロック狂」、「旅狂」に加速度がついて、もうどーにも止まらんようになったのは、ガッコ卒業して、社会人になった20代初頭からじゃ。 身分は社会人なのに一向に気持ちを改めることなく、少年期の嗜好そのままで突っ走るわしに、ついに両親はサジを投げた。 もうわしの生き方に一切ノーコメントになったもんじゃ。 しかし何も言われんようになるとだな、今度は子供の頃から言われ続けていたことが、事ある毎にフィードバックしてきたもんじゃ。
 わしの父上は次の3つをよく言っておった。 「メカと英語の勉強だけはやっておけ」「本だけは読んでおけ」「外国で仕事をするなら、現地人の嫌がる仕事からやれ」と。 「メカ」ってとこは、やがて「コンピュータ」になった。 ロックの影響により、根本的な視点がいつも海外に向いておるわしの人生じゃが、振り返るとこの3つのアドバイスを多少なりとも実行したことで、随分と助けられてきたもんじゃ。 「コンピュータ」っつっても数種類のソフトを扱えるだけ。 英語も自己流のロックな英語。 「読書」も乱読、つんどく!「現地人の嫌がる仕事」も掃除や謝り役を買って出る程度じゃ。 それでもそのお蔭なのか、困った時もわずかな希望を光が差し込んできて、何とかここまで生き延びてこれたのは事実じゃ。
 父上のこのアドバイスは全然具体的ではない。 「どうやって勉強するか」「勉強、努力したら何が得られるか」なんて手っ取り早い上達や状況の進展が期待出来て、俄然やる気モードになるようなアドバイスじゃない。 父上にしても、決してわしの将来を案じて「英語」だの「コンピュータ」だの言っておったわけではないと思う。 特に酒が入るとしつこいぐらい繰り返しておったので、自分が身に染みてきた苦労をわしにさせたくないという親心がそう言わせたのじゃろう。 じゃが予言ともいうべき的確なアドバイスに、親ってのはスゴイもんじゃのお〜と感心するばかりじゃ。
 そんな父上が先日亡くなった。 柔道で鍛え上げたガタイは半分くらいになっておった。 棺に向かって「これからも有難いアドバイスを胸に・・・」と誓うつもりじゃったが、安らかな死に顔を見たら何も言えなくなった。 その顔はハッキリとわしに語っておったな。 「やれやれ、ようやくオレの言ったことが分ったか、ドラ息子よ」と。 わしも既にいい歳をこいておるが、ほんの少しだけ子供に戻ってしんみりしてしもうた・・・合掌。

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