ROCK FIREBALL COLUM by NANATETSU Vol.21


 うむっ! よくぞわしのビール専用のフリーザーをクリックしおった! 今宵は少々おごそかに飲みたい気分だったのじゃ。 そんな時のスタートは適度に冷えたビール以外あるまい!春の気配をそこかしこで感じるこの季節に浮かれとる訳ではないぞ。 暖かく穏やかな日差しってのは有り難いもんじゃが、心を躍らせニコニコするってのは諸君のご家族や恋人に任せておけ〜い。 ロッカーたる者はそんなことでウキウキしたってはじまらんぞ。
 そこで“ひねもすのたりのたり”がやって来る前に諸君にかましておきたいことがあったのじゃ。 それは、わしや諸君が愛するホンモノのロック、ひいては人々を
感動させる音楽ってもんは、必ずしも温室的環境からは生まれてこないっつうことじゃ。 今回は身も心も引き締まる、ロック界の有名な「悪魔とミステリートレイン伝説」の復習指導をしてしんぜよう! まあまあ、ビールでも飲みながらリラックスして読むように。


七鉄版ロックむかし話
悪魔とミステリー・トレイン伝説
  〜ロックにそんな時代もあったねと、いつか笑える日がくる・・・か?〜


 諸君の中には、古くからブルースの世界に伝わる「悪魔伝説」を既に知っとる者もおるじゃろう。 「真夜中の12時にクロスロードでブルースを奏でていると悪魔が現われ、己の魂と悪魔のブルース魂との交換契約をする」っつうあれじゃ。 この悪魔と契約した者は、誰もマネできんゴキゲンのブルース・フィーリングを獲得できるが、人生そのものは滅茶苦茶になるっつう伝説じゃったな。
 この伝説の最初の体現者といわれるロバート・ジョンソンは、永遠の名演と名曲を残す偉大なるキング・オブ・デルタブルースになった。 しかし大酒飲みで、しかも人妻を寝取るのが趣味っつうどーしようもない性根のため、ジョンソンに激しく嫉妬した男性に劇薬入りのウイスキーで毒殺されてもうてのお〜、これが。 ブルースマンとして絶頂期における死であり、しかも長らくその正確な生死状況すら確認されることはなかったんじゃ。

 さてと、この悪魔伝説がモチーフになったとも言われておるナンバーが、キング・エルヴィスの名唱の誉れ高いあの「ミステリー・トレイン」じゃ。 エルヴィスの華麗なスタイルでブレイクしたこのナンバーを、今だにゴキゲンなビートが鳴り響く「ウキウキ! ロックンロール列車」と勘違いしているオオバカもんが多数おるが、トンデモネーぞ、こらぁ〜。 氷○きよしの〜ズンズンズンドコ○○列車〜じゃねえっつうんじゃ。 また“恋人が汽車に乗って行ってしもうたあ〜”つう単なる悲恋の曲でもないぞ。
 ブルースやロックの名曲には、ダブル、トリプル・ミーニングの歌詞が多いことを忘れんようにな。 オッホン! 表向きは多くのファンを獲得するためのポップな言い回しじゃが、実はとんでもなく深〜い意味が二重にも、三重にも潜んでおる。  この辺のワザとセンスは、残念ながらジャパニーズ・ロッカーにはマネのできんところなんで、是非とも注意しておくように!

 「ミステリー・トレイン」の歌詞とリズムの根底には、悪魔と契約したブルースマンの悲惨な人生への哀悼の意が表されておるのじゃ。 また同時に、ブルース〜ロカビリー〜ロックと劇的な変貌を続けるアメリカン・ポップスへの憧れと恐怖とが唄われておる。 

〜一度乗ってしまったら二度と降りることはできない悪魔の汽車・・・激しい音楽で絶頂を体現するしか幸福はな〜い〜
 さらにじゃ。 このナンバーには別名「ブラックトレイン・ソング」と呼ばれる裏テイク、一種のシークレット・ヴァージョンも存在するんじゃ。 「ブラックトレイン」とはブルースの隠語で「棺おけ」という意味じゃ。 こちらのヴァージョンはロックに真剣に関ることの恐ろしさ、悲壮な結末、避けることのできない不条理なんかが、ぞっとするような冷たいテイストで暗示されておる。 
 ちなみに棺おけと言えば、THE-KINGのボスいわく.... 「ここに入る時でさえ、ホースシューリング、ナッソー、フラップ・シューズにピストルパンツをまとっていくぞ」とあっさり語っておったぞ! 
お、恐ろしいお方じゃ。

 そして
「ミステリー/ブラック・トレイン・ソング」は、ロックシーンにひとつの重大な状況を作り出すことになるんじゃ。 それはこのナンバーが概してデリケートでアーティスト志向が強いロッカーを虜にする傾向が強く、 彼らは好んでライブレパートリーに取上げているうちに、本当にミステリートレインに乗ったまま帰って来れなくなったことが続出したことじゃ。 冗談抜きに本当の“棺おけソング”になったのじゃ。 こ、これは、シャレにならんぞ。
 ロックには「既成概念の破壊」「現実との戦い」という厳し〜い「永遠の試練」が課せられておるが、そいつと真っ向勝負するということは、すなわち“悪魔と契約してミステリー・トレインに乗車する”という暗黙の法則がこうして出来上がったんじゃな。
 しかしロックは1970年代中期から巨大ビジネスと化し、サウンドはソフトでメロウになり、 それから既に30年あまりが経過しおった。 その間 「悪魔とミステリー・トレイン」式ガンバリズムはすっかり衰退し、それはもはや伝説と化したいってもよかろう。


 若もんがぎょーさん集まって楽しく騒ぐ時のBGMがロックだ、みたいに認識され、プロモートする側も音楽活動というより、半ばマネーゲームをやっとるようになった最近のロックシーンを見るにつけ、つくづく時代が変わったことを痛感する。 しかしわしとしては
人類そのものの歴史と同じように、 数多くの血と涙が流れた不幸な出来事を経ながらロックの歴史が作られたことを、今を生きるロッカーたちに決して忘れないでほしいんじゃ。 そこんとこをよ〜く理解してからロックという文化を味わってほしいと、わしから諸君にお願いしてひとまず筆を置くとしよう。 では酒の用意をするとしよう。早くビール飲みたいし〜!

 う〜ん、珍しく終始シリアス・テイストでキメてみたので(?)緊張したわい。 こんな時は(も)やっぱり酒じゃ!  じゃが今宵はブルース&ロックの剛健なフィーリング漂うブラックのロカタイで襟元を正してからブルージ〜に飲んでみるかのお〜。 ブラックタイプのナッソーもより気分が出てええもんじゃろう。 しかしわしはまだ「ミステリー/ブラック・トレイン」には乗ったことがなくてのお〜。 ひかれそうになったことはあるぞって、自慢にもなりゃせんわい!

P.S. 上の写真は映画「ラストワルツ」のDVDじゃ。 豪華ゲストが多数共演するザ・バンドの解散コンサートとして有名じゃが、ポイントはもうひとつ。 「ミステリー・トレイン」に乗って帰ってこなかったロッカー、そして奇跡的に帰ってきたロッカーの両者の好演を鑑賞できることじゃ。 ザ・バンドとポール・バターフィールドのすさまじくへヴィな「ミステリー・トレイン」の演奏も聴けるぞ。 「悪魔伝説」のオハナシも聞けるし、チェックしておくべき一枚じゃ。



 七鉄・雑記編   

 誰しもある程度年齢を重ねたある時、長生きしてよかったあ〜と実感することがあるもんじゃが、わしも最近それをよく感じる時がある。 歳食って、昔わからんかった事が理解出来るとか、そーいうことではなくて、もっとミーハーチックに、若かりし日に夢中になったTV番組がDVDになって続々と登場してくれるからじゃ! 歴史モンの大河ドラマやら、スポ根アニメやら、特撮ヒーローものやら、青春ドラマやら、マルチな感性と多趣味なわし(おっほん!)の人格形成に貢献して下さった作品の化粧直しは途切れることがない! いや〜時間がいくらあっても足りんなあ〜。
 ただ単に思い出にひたっとるのではないぞ。 20、30年前の作品がデジタル化されとる訳じゃから、映像が素晴らしいことは当たり前だが、わしが感心しとるのは、昔の作品の脚本の素晴らしさじゃ。 また脚本の素晴らしさがキャストのキャラや演技を引き立たせておるんじゃな。 動画の編集や加工処理の技術に限界があった分、まずは脚本の奥深さが作品の出来栄えのキーになっとるんじゃ。 今のTV番組や映画はどちらかというと、脚本よりもキャストの既成イメージ優先の時代じゃから余計にそれを感じるんじゃな。 
 脚本が奥深いということは、何回見てもその都度新しい味わい方が出来るっつうこっちゃっ! うまい酒と同じじゃな!! しかも最近になってマニアックな品揃えのレンタルビデオショップを発見したこともあり、四半世紀以上も昔の名作に出くわす頻度が一気に高くなってしもうた。 お陰でようやくぎっくり腰が完治したのに、今度は寝不足じゃあ〜。 当然酒はススムにススムし、我ながら困ったモンじゃわい! 状況がどうであれ、酒がわしから離れる気配は一向にない。 う〜ん、「ミステリー・トレイン」には乗れなかったが、「ウイスキー・トレイン」からは降りられそうもないわい! どこにでも連れていけ〜い!


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