8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.98 |
マカロニ・ウエスタン・ソング傑作選 vol.2 みなさん、こんにちは。さすらいの潔癖おかみ、じゃないや、それじゃ、きれい好きな熟女じゃねえか、 ええと、さすらいの一匹狼、頑固6連発です。 もはや原型をとどめていないペンネーム、わたしは誰でしょう?そんな細かいことは気にしない!なんてったってここは イタリアだから!!ぐらーっつぇ! というわけでお送りします、前回に続く「マカロニ・ウエスタン・ソング傑作選」。マカロニ音楽の代名詞、イタリア音楽界のマエストロ、エンニオ・モリコーネの傑作のうち、代表作をわたくしが好きな順番にご紹介します。(1作品1曲に限る) エンニオ・モリコーネの傑作群 「荒野の用心棒」、「夕陽のガンマン」、「続・夕陽のガンマン」、「ウエスタン」、「夕陽のギャングたち」、「夕陽の用心棒」、「続・荒野の1ドル銀貨」、「復讐のガンマン」、「帰ってきたガンマン」etc・・・・。 こら、いったいなんなんでしょう、このすごさは・・・・。 え?順列組み合わせみたいで区別がつかないって?いや、そんな話じゃないのよ。 すべてモリコーネの名曲ばかりですが、映画としても「超」がつく名作ばかりがずらり。 そもそも、「いい加減なまがい物」とバカにされ続けたイタリア製西部劇を世界的に認めさせた最初の作品「荒野の用心棒」をはじめ、セルジオ・レオーネが創り出した4作の西部劇(「夕陽のギャングたち」は時代背景からいって西部劇に含まないものとします)は、常に「映画史のトップ10」の常連作品。その他、最も知られている「ニュー・シネマ・パラダイス」など、西部劇作品以外にも名作を書き残しているモリコーネは、マカロニ・ウエスタン、というジャンル映画を超えた、最高の映画音楽作家です。 エンニオ・モリコーネは、1928年生まれで現在も現役。ローマ生まれ、ローマの聖チェチーリア音楽院卒業の音楽エリートで、作曲家としてテレビ・ラジオ等の音楽を担当しはじめ、1950年代末から映画音楽の作曲、編曲、楽曲指揮をしていました。映画音楽家デビューは61年のことでしたが、1960年代は映画監督セルジオ・レオーネとのコンビでマカロニ・ウェスタンの傑作を連発します。その後は、1986年、「ミッション」1987年には『アンタッチャブル』でグラミー賞を受賞。さらに、1989年には『ニュー・シネマ・パラダイス』が大ヒット。2007年、第79回アカデミー賞において名誉賞を受賞しています。 第1位:「ウエスタン」(68) この主題曲を聴いてみて、「なんだ、こんなの。ただのイージーリスニングじゃん」って言った人は、わたくしがレンコン機関銃で皆殺しにしてあげます!レンコンのくせに唐辛子が飛び出すんだぜー!「野郎どもお!皆カラシだぜえ!」・・・って何言ってるんだかわかりませんが。 鉄道が開通しようとしている小さな西部の町はずれで起こった一家惨殺事件。嫁いでくるはずだったニューオーリンズの娼婦が、独力で事件の謎を解こうとする話を中心に、彼女を取り巻く男たちの生き様と運命、因果応報を描いた、西部劇を超えた超大作。アメリカ西部開拓史に深くかかわる歴史物の側面もあり、ここまですごいスケールの作品だと、もはや「マカロニ・ウエスタン」という感じが全然しないのですが、アメリカ西部劇とは一線を画するセルジオ・レオーネの個性に満ちあふれた素晴らしい叙事詩的映画。ほとんどの「歴史的名画トップ10」にたいてい入っている。 アメリカからチャールズ・ブロンソン、ヘンリー・フォンダ、ジェーソン・ロバーツというそうそうたるメンバーをキャスティングし、主人公の女性ジルをクラウディア・カルディナーレが演じました。特に「アメリカの良心」といわれた、善人専門俳優、フォンダが演じた、人をなぶり殺しにすることを楽しむサディストの殺人鬼はおそらく、その意外性もあって、名演として残るキャラクターとなり、世界中に衝撃を与えました。*ラストの決闘シーンは、映画史上に残る最も有名なクライマックスのひとつ。キャラクターには、それぞれテーマ曲が与えられていることも特徴。どの曲もすべて傑作なのですが、この映画を作ったセルジオ・レオーネ監督がこの世を去ったとき、モリコーネが自分でオルガン演奏をし、天国へ見送る曲としたのが、主題曲の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」(または、「ジルズ・アメリカ」)で、これは、西部劇テーマの傑作、モリコーネの最高傑作というより、あらゆる映画音楽の最高峰のひとつと言われています。映画は、普通、撮影をしてから後でラッシュを観ながら、画面に合わせて作曲家が曲を作っていくのが常識でしたが、「ウエスタン」では、音楽が先に作られていて、そのイメージで場面を作っていく、という逆の手法をとったはじめての映画だと言われています。現代のミュージックPVの元祖とも言える。エッダ・デル・オルソの伝説的なスキャットをフィーチャーした奇跡のような名作。 第2位 「続・夕陽のガンマン」(66) これも、マカロニ云々を超えて、もっとも有名な映画の一つ。アメリカでは、公開後45年たった現在でも、常に映画トップ10の常連で、どこかの映画館で上映しているといういわくつきの作品。セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演。隠された金貨をめぐって争う三人のガンマンの物語。 原題及び英題は日本語で「善玉、悪玉、卑劣漢」という意味で、映画に登場する三人のガンマン。冒頭とラストにいちいち字幕付きで「good」とか「bad」とか出てくるあたりがコミカルで、どちらかというとユーモラス系の西部劇です。かなりの大予算大作なのですが、アメリカのスターシステム(有名主演俳優のギャラにほとんどもっていかれちゃう)にのっとった大作と比べたら安いものだったそうです。本作品はセルジオ・レオーネの他の監督作品である「荒野の用心棒」、「夕陽のガンマン」と共に三部作となっているといわれています。(話につながりはない。)なんでかというと、三作に主役をつとめたクリント・イーストウッドが似たような服装と演技を見せるためで、その役は「名無し」と名付けられました。 最も、三人のうち、「善玉」イーストウッドと、「悪玉」リー・ヴァン・クリーフの台詞は少なく、ほとんどしゃべりまくっているのは、三人目の「卑劣漢」イーライ・ウォラック。 音楽も革命的なもので、それまでのアメリカ西部劇がまるっきりのんびりしたカントリー&ウエスタン調だったのに対して、エンニオ・モリコーネによる主題曲は、静かなオーボエからはじまり、一気に、どっかの未開部族の雄叫びみたいな「アイヤイヤー!」の奇声コーラスに突入。ギンギンのエレクトリック・ギター・サウンドに分厚いブラス・セクションが吠えまくる中、ドッカンドッカン砲声が混ぜられていて、一度聴いたら忘れられないものでした。モリコーネはこのテーマ曲をコヨーテの遠吠えに似せたつもりだったと語っているそうです。この映画にはテーマ曲以外にも、クライマックスで流れる「黄金のエクスタシー」も傑作です。 第3位 「夕陽のガンマン」(65) これは、「マカロニ・ウエスタンの最高傑作」、という人が最も多い映画。セルジオ・レオーネのドル三部作の2作目に当たります。主演はイーストウッドとリー・ヴァン・クリーフ。親子ほど歳が違うふたりの賞金稼ぎが、出し抜き合いつつ、ギャングの首領の凶悪犯インディオ(ジャン・マリア・ヴォロンテ)を追い詰めていく話。ラストのどんでん返し、まるで絵画のような決闘シーンの美しさ、怨念のこもった美しいオルゴール時計のメロディー、高まる緊迫感と決闘、そして夕陽に向かって去っていく相棒との感動の別れ。「ウエスタン」や「続・夕陽のガンマン」と比べると、予算規模が小さいために、割合こじんまりした印象ですが、深い映画的感動に満ちた傑作となりました。 主題曲は、前作「荒野の用心棒」に引き続き、印象的な口笛を全面的にフィーチャーした名曲。映画を知らなくても、この曲は聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。 第4位:「荒野の用心棒」(65) レオーネ&モリコーネ、そして主演のイーストウッドの西部劇、さかのぼってとうとう「マカロニ・ウエスタン」そのものの原点、「荒野の用心棒」。 これの元ネタが、我が国の黒澤明「用心棒」だというのは有名な話ですが、レオーネ監督は、「元ネタはアメリカのハードボイルド小説だ」と言っていたらしい。実際、ダシール・ハメットの「血の収穫」は、黒澤明の「用心棒」そのものの元ネタ(盗作ではない)なのは確かですが、レオーネは「日本映画のリメイクを作る」といいながら、用心棒の配給元だった東宝には断りもなしに作ってしまい、訴えられて敗訴しています。(ただ、黒澤本人は、「荒野の用心棒」をいたく気にいっていたらしい。) ま、それはさておき、映画は「用心棒」に匹敵する出来映えで、西部劇というジャンルに大革命を起こしたと同時に、アート寄りすぎて庶民娯楽としては採算が合わないものが多かったヨーロッパ映画において、巨額の利益を生み出し、その後のイタリア娯楽映画のお手本となった記念碑的作品となりました。 しかし、面白いですよね。アメリカの現代小説を、日本がサムライの物語に置き換えて映画化し、それをさらに、イタリアがアメリカを舞台にした西部劇に置き換えて成功したわけですから。ぐるっと回って、元に戻ったというか。 テーマ曲「さすらいの口笛」は、おそらく「口笛の曲」としては、「夕陽のガンマン」と並んで、世界一有名なものでしょう。マカロニ音楽のお手本になったスタンダードです。映画を見終わって余韻にひたりながら、印象的で覚えやすいメロディーなので口笛でならすぐに吹ける、だからますます印象に残る・・といった計算もされていたようで、モリコーネの職人芸全開という感じですね。 さて、ここまでが、セルジオ・レオーネの、常に「西部劇トップ10」だの「名画トップ10」だのの常連4作。あと「夕陽のギャングたち」という名作がありますが、西部劇というジャンルからははずれるので、とりあえず、今回はとりあげません。 第5位「復讐のガンマン」(66) レオーネ、コルブッチと並ぶ3人目の「セルジオ」と言われた名匠セルジオ・ソリマ監督の最高傑作。 予算的には、レオーネよりもぐっと小規模なのですが、その凝ったプロット(原作は荒野の用心棒と同じく、警察小説)と、レオーネ組の美術デザイナー、カルロ・シーミの衣装、テーマ性などから、「マカロニ・ウエスタン・トップ10」には、たいてい入っている作品です。そして、なにより、冒頭のタイトルに使われた、モリコーネ音楽の中でも最も強烈といわれるテーマソング(クリスティが歌った)がなによりも印象に残ります。 まだ幼い少女が強姦され殺される残虐な事件が起こり、犯人とみられるメキシコのアウトロー(トーマス・ミリアン)を、街の有力者の依頼で、冷徹な保安官(リー・ヴァン・クリーフ)が執拗に追っていくのですが、結局、ラストで、真犯人は、クリーフを雇った有力者の娘婿で、それを闇に葬り去るための策略だったことがわかり、追う者と追われる者が力を合わせて巨悪と対決するという物語。 極貧出身のミリアンが途中でクリーフに言う、「あんたが言う、「法」なんて知らない。それは金持ちが良いように決めた取り決めに過ぎないじゃないか。おれなんかには関係ないのさ。」という台詞は、この作品のテーマをよく現していましたね。 最後までニコリともしなかった冷徹な法の権化、クリーフが笑みを浮かべ、やけくそな笑いで押し通していたアウトローのミリアンが真顔で、お互いに「達者でな」と言いつつ別れていくさわやかなラストは、「夕陽のガンマン」と同じく、深い感動を呼びました。 第6位 「さすらいの用心棒」(aka;暁のガンマン)(68) どちらかというと見過ごされてきている作品で、ジュリアーノ・ジェンマがコミカルな演技を見せるコメディ系の西部劇。 映画としてよりも、むしろモリコーネの音楽の素晴らしさがひときわ目を引くのですが、これまた、CD化もなく、幻のサントラと言われていました。(今ではリリースされているようです。) 口笛をフィーチャーした、シンプルに美しい曲で、雄大なロマンチシズムを感じます。 第7位 「夕陽の用心棒」(65) 第8位 「続・荒野の1ドル銀貨」(65) ジュリアーノ・ジェンマものが続きますが、ややこしいことに、7の続編が8。「荒野の1ドル銀貨」というジェンマ映画もありますが、8はその続編でなくて、全然関係ありません。映画としての評価は、どちらも高く、7はジェンマの出世作、8は、トップ10クラスになりますが、ともに、モリコーネの主題歌も素晴らしい。特に、わたくしは7の哀愁あふれるメロウさにまいってしまいます。モリコーネは、インストだけでなくて、こうした歌ものを作っても超一流だったことがわかります。 第9位 「帰ってきたガンマン」(66) こちらは、あまり作品としての評価は高くないほうですが、音楽の格好良さは、折り紙付きの名作。冒頭の静かなハーモニカが、オーケストレイションを巻き込んで、どんどん盛り上がっていくあたりは、「ウエスタン」にフィーチャーされた名曲「MAN WITH HARMONICA」(復讐のバラード)と同じ構造です。 第10位 「ロンサム・ビリー」(GUNS DON'T ARGUE)(64) 最近買ったモリコーネ作品のオムニバスCDに入っていて、はじめて知った曲です。「荒野の用心棒」と同時期に作られた最も初期のマカロニ・ウエスタン「GUNS DON'T ARGUE」(日本未公開)という映画にフィーチャーされた歌のようです。映画の内容は見ていないので、わかりません。 まだまだ、モリコーネの名曲はたくさんあります。特に、これらの映画の主題曲だけでなく、劇中に使われた曲もほとんどが印象深い名曲ばかりなので、ここに挙げた映画だけで、軽く50曲くらいはいってしまいます。 いずれにしても、映画を観るのが一番ですが、モリコーネ作品は、サントラだけ聴くもよし、というレベル。みなさんも機会があれば是非、観て聴いて、馬乗って走り回っちゃってください!銃は撃たないでねっ! 捕まっちゃうからねっ! じゃあ、アディオス!チャオ!さいなら、さいなら、さいなら。 |