8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.97
                                                                                       
              
            マカロニ・ウエスタン・ソング傑作選 vol.1

 どうもこんばんわんつーぱんち!水前寺8鉄です。歩かないで寝よう〜♪
すっかりアつもナつい残暑、残暑、そーざんしょ?の季節、みなさまお頑固?

わたくしなどは、クソ暑い中、ビールばかり飲んでいるものだから、そのうち、自分がビールになってしまうのではないか?と恐れている体たらく。事実、脳味噌がが泡立ちはじめていま・・・せん!
さて、以前にも書きましたが、子供の頃(1960年代〜1970年代)に、主にテレビで、たくさんの西部劇を見ました。懐かしい、木枠にブラウン管が組み込まれて4本脚がついてる家具調の、ガチャガチャ「チャンネル」を回す、「テレビジョン放送受像器」ですよね。この頃観た、本場アメリカの西部劇も大好きで、今では500円の2本立てDVDで投げ売りされている「シェーン」や「荒野の決闘」も、わたくしは今でも大傑作だと信じています。展開がちょっとたるいけど。
ま、しかし、当時は、所詮ガキですから、西部開拓精神の崇高さだの大人の世界の哀愁だの人情の機微なんて、そんなにわかるはずもなくて、かっこいいガンプレイで、人がバタバタと死ぬのがおもしれー、ってのが、興味の中心なわけですよ。銀玉鉄砲ごっこからモデルガンマニアに移行していったようなガキなんですからね。必殺のスペシウム光線で怪獣をやっつけるウルトラマンだの卍固めを決める猪木がかっこいい!っていうのと同じ発想。これにドンピシャリ!とはまったのが、当時ブームだった、マカロニ・ウエスタン。

当時の日本の庶民は、メザシと味噌汁にご飯が普通ですから、「マカロニ」って言ったら西部劇と決まってました。最近は、不況だ不況だといいながらメタボ大国になってますから、「マカロニ」なんていったら、すぐに、「ぐるなびの話?」って言われちゃいそう。まして、最近の若い人は「西部劇ってなんですか?」って真顔で言ったりしますから、もう、おじさんはどうしていいのかもわからない状態でございます。
ま、そんなこんなのマカロニ・ウエスタン、これは、なぜかイタリア人がアメリカ西部を舞台にした物語を描く、という、後で考えてみれば妙な代物。欧米では、spaghetti westernと呼ばれていましたが、日本では語呂が悪いとかなんとかで、マカロニ、と呼ぶことにしたらしいとか。庶民は食べたこともない人がたくさんいたのにねえ。
例えば、インド人が幕末の日本を舞台にした赤穂浪士の出てくる「カレー時代劇」を作ったら、僕らはやっぱり「ヘン!」と思うだろうけど、おんなじように、60年代初頭からスペイン・ロケで作られ出した初期のイタリア製西部劇は、アメリカ人から「ヘンテコなバッタモン」扱いを免れませんでした。それが大きく評価を変えだしたきっかけは、1964年のことで、「荒野の用心棒」(セルジオ・レオーネ監督/クリント・イーストウッド主演。黒澤 明 監督の映画「用心棒」のパクリ!)が公開され、思わぬ世界的大ヒットになったときでした。その後、数年間続いたブームで製作されたマカロニ・ウエスタンは300本以上、日本で公開された作品数は劇場、TV放映あわせて150本以上と言われています。
さらに、このジャンルで名をなした無名俳優もたくさん。アメリカからの出稼ぎ組では、「荒野の用心棒」(64)、「夕陽のガンマン」(65)、「続・夕陽のガンマン」(66)で主人公「名無しの男」を演じたクリント・イーストウッドや、「いぶし銀」の代名詞のような名優リー・ヴァン・クリーフがいますし、イタリア人では「続・荒野の用心棒』(66)で「ジャンゴ」を演じたフランコ・ネロ、元体操選手でさわやかな人柄と甘いマスクで日本でも人気アイドルとなったジュリアーノ・ジェンマ、どこ国の人だかさっぱりわからない阿部寛(嘘)など、マカロニ出演をきっかけに世界的大スターへと躍り出た人がたくさんいます。日本からも本当に名優が出演。(丹波哲郎「五人の軍隊」と仲代達矢「野獣暁に死す」だよね。)

ジャンル全体として言えば、肝心要なテーマや主人公のスタイルはもちろんのこと、そのカメラワークや衣装、アクションシーンの作り方も含めて、後年の映画製作に与えた影響は非常に大きなものがあります。
特に、言えるのは、西部劇の本場アメリカが、50年代から、世間がやたらと押しつけがましい「人道主義」を唱えだして、すぐに政府のいいなりになるハリウッドは、「復讐を正当化するような作品は作ってはならない」とか、めんどくせー規制だらけになっていった時代背景。だらだらと男女のすべったころんだばかり描いたような西部劇なんて誰が観るかよ!単なる娯楽なんだからどうだっていいじゃんか!と思っている人も多かった。そんななか、なんの規制もないおおらかな国イタリアで作られた、「やられたらやりかえせ」とバッサバッサ悪人を退治する復讐劇ばかりのマカロニ・ウエスタンは、世界一庶民受けする、痛快な娯楽映画になったのでした。
まあ、しかし、いろいろと意見はあるようですが、わたくしとしては、ばっさり言えば「マカロニは、ごく一部を除くそのほとんどが、一山当てることを企んだイタリア映画人が、著作権だの時代考証など無視して、ドンパチで人が殺し合うばかりの筋の通らない話を、低予算でデタラメに作った、安物見世物映画」だと思います。「いい歳したおっさんの裏山の拳銃ごっこ」みたいな代物がたくさんある。そうでない、本物、というか、復讐、底知れぬ欲望、人間の業、怨念といったものをテーマに、1本の映画としていつまでも感動を与えつづけられる大傑作はほんの一握りに限られる、と思います。こんなことを書くと、熱心なマカロニファンに決闘を申し込まれて、蜂の巣にされてしまいそうなんでいいわけしておきますと、わたくし、当時テレビ放映されたマカロニ・ウエスタンはほぼ全部に近く観ているはず。ひとつひとつは覚えてはいないけど、そういう映画はそれなりに面白いし、衣装だの美術だの見所もたくさんあって大好きなんですよ。特に、多くのマカロニ作品で、セットや建物デザインを中心に美術監督をつとめたカルロ・シーミの衣装デザインはすごい!従来の西部劇の衣装の常識をすべてくつがえしたばかりか、現在大人気のダメージ加工ファッションの先駆者じゃないか、とすら思うのですが、なぜかこの天才に関するデータがどこを探してもないので、長年くやしい思いをしています。

簡単に言って、マカロニファンやマニアには、マカロニ・ウエスタンを有名にした神様であるセルジオ・レオーネ監督支持派と、後を追って全く異なるスタイルを築き上げたセルジオ・コルブッチ監督支持派がいて、なかなか意見が合わないようですが、わたくしとしては、どちら、といわずに、この2人の作品群は双方とも「必見!観ないと、通称「マカロニ機関銃」(「ガトリングガン」もどき。「ガトリング」がんもどき、ではない。どっちかっつーとレンコンに似てる)で地獄に送られます」くらいの名作ぞろいと思っています。あとは、なんつーか、「観るも観ないもあなた次第。勝手にすれば?」くらいな感じでしょうか。
しかし!しかし、ひとつだけ、他のジャンルとは異なって、どんな駄作、クズ、ヘンテコ映画でもキラリ!違うな、ギラギラギラー、と汗まみれ油まみれでてかりまくる素晴らしい要素があるのです。
それは、テーマ曲だけに限らず、劇中にも使われた、音楽の数々。マカロニ・ウエスタンは音楽を非常に重要視し、大げさなまでにあおり立てる、壮大な音楽をこれでもか!とばかりに散りばめ、どんなにつまらないカメラワークでも、理屈の通らないへんてこりんな脚本でも、イタリア人のボンクラ主演俳優であっても、無理矢理みせきってしまうという、絶妙な演出が独特の、そして最大の売りだったように思います。逆に言うと、マカロニの作劇法は、「音楽を聴かせるためにあった」とすら思えるくらいなのです。そこは、さすが「音楽の国」イタリアなのです!!
ちなみに、わたくし、小学生のときにはじめて、親にリクエストして買ってもらったお誕生日プレゼントが「西部劇テーマ大全集」というRCAビクターリリースの(当時の貧乏家庭にとっては高額な)豪華2枚組LPレコード。1枚目は、本場アメリカ製の西部劇名作の主題曲がずらりと並んでいて、2枚目はマカロニ・ウエスタンという構成。父が西部劇が好きでしたから、いつもは厳しい恐い親父がニコニコして買ってくれたときのうれしさは死ぬまで忘れないでしょう。

でも、「なんかなー、1枚目はつまらない。2枚目のほうがかっこいいなあ。」と思っていたので、2枚目に入っていたわずか12曲を暗記しちゃうまで毎日聴いていたものです。これは40年たった今でも、我が家にありますが、いまだに定期的に聴いていて、一生捨てることはあり得ないもののひとつです。
ですから、そんなふうに耳になじんだ、わたくしが大好きな歌や作曲家を少しだけご紹介しましょう。
え?なんで少しだけなのかって?だって、そんなに詳しくないんだもん。映画のほうは、たくさん観たけれど、記憶の中でごく一部の傑作を除いてみんなごっちゃごちゃになってる。だってさあ、水戸黄門みたいに、同じようなものが延々続くもんだからねえ、マカロニは。

「南から来た用心棒」(66)(フランチェスコ・デ・マージ)

さて、まずは、マカロニ・ウエスタン音楽の王様、エンニオ・モリコーネをとりあえず脇に置いて、この人、この歌!
ラオールが歌う「南から来た用心棒」は、フランチェスコ・デ・マージ作曲の大傑作!しかし、ミケーレ・ルーポ監督がジュリアーノ・ジェンマ主演で撮った映画そのものは大失敗作!マカロニの顔、といってもいい最多出演悪役俳優フェルナンド・サンチョ(スペインのコメディアン)が滝口順平の声で「やろうどもおお!皆殺しにしろおお!」とか叫びながら、6連発リボルバーからなぜか100発くらい弾が出て人を殺しまくることしか印象に残らないという・・なんなんでしょうね、これ。ジェンマなんて出てたっけ?つーくらい印象薄いの。ま、明るい楽しい映画ですけどね。
しかし、デ・マージは、映画としての名作ばかりに恵まれたモリコーネ(レオーネの親友だった)と違って、こんな凡作、駄作を、音楽の力で無理矢理観るに耐える作品にしてしまう名人と言っていいでしょう。それほどにこの人の作る音楽は見事で、マカロニ、というと誰でも連想する個性的なモリコーネ節に対抗し得るだけのものすごい力量でした。それでいて、なんだか実験音楽みたいに斬新なモリコーネよりはずっとオーセンティックで、親しみやすい。なんだか、下町の職人名人芸を観ているかのような音楽家でありました。他にも、「地獄から来たプロガンマン」、「荒野のプロファイター」「荒野のお尋ね者」などなど、たくさんの「名作映画」、じゃない、名作「映画音楽」を残しています。
「さすらいの一匹狼」(66)(ニコ・フィデンコ)


 御大モリコーネは後送りにして、それ以外で目立つのといえば、こんなのもある。2010年に待望の単独アルバムが発売された、ニコ・フィデンコの代表作の一つです。
なんてったって、この人の特徴は、もともとがシンガーソングライターだってことでして、ローマでクラシックの正式な教育を受けた作曲家が群れをなしているイタリア映画音楽業界では珍しい独学の人。モリコーネ流の疾走するようなマカロニサウンドの中にあっては、淡々としたフォークソングのような生ギターが中心の風変わりな作風です。しかし、これが名曲であることは間違いません。映画のほうは、高性能なスコープ付きライフル(19世紀にすでに実在していました。意外とリアル路線)で淡々と敵をしとめていく賞金稼ぎの物語(西部劇版の「ゴルゴ13」と思えばいいです)。監督はレオーネの助監督だったトニーノ・ヴァレリ、主演はクレイグ・ヒル、共演はまたしてもフェルナンド・サンチョ。こちらはかなりの力作で、日本では1967年に劇場公開され、DVDもリリースされています。
「怒りの荒野」 (67) (リズ・オルトラーニ)

 これもトニーノ・ヴァレリ監督が撮った作品で、マカロニ2大スター、ジュリアーノ・ジェンマとリー・ヴァン・クリーフが共演した傑作映画。最後に対決することになる師匠と弟子を描いたシリアスな作品で、劇中に登場した「ガンマン十戒」も非常に有名です。日本でも劇場公開され、もちろんDVDもリリースされています。後に20世紀のスタンダードとなる名作「モア」(世界残酷物語の主題歌)を書いた、リズ・オルトラーニによる熱いテーマ曲も大傑作で、あまりに格好よく、わたくしも、「西部劇音楽大全集」に入っていなかったものですから、おこずかいを貯めて、シングル盤をわざわざ買った思い出の曲です。
「続・荒野の用心棒」 (65) (ルイス・バカロフ)


 セルジオ・レオーネの一連の傑作とはまた別の意味でマカロニ・ウエスタンを代表する作品。監督はセルジオ・コルブッチ。主演はフランコ・ネロ。ちなみに、レオーネの「荒野の用心棒」とは全然関係ありません。いきなり冒頭、馬に乗らない主人公ジャンゴが登場、しかも雨の中ぬかるんだ荒野を棺桶をずるずると引き摺りながら歩くオープニングから、これまでの西部劇の作法をすべて無視、観る者はぐいぐいとコルブッチの世界に引きずり込まれてしまいます。
その棺桶から出てくるのが有名な、穴がたくさん開いたレンコンみたいな「マカロニ機関銃」(モデルは実在するが適当な張りぼての作り物)。これで、大勢の敵を一気になぎ倒したりもするのですが、全体のトーンが暗い、観たらトラウマになりそうな陰惨な話で、悪役が「羊たちの沈黙」のシリアル・キラー、ハンニバル・レクターがたいしたことない小物に思えるくらいのサディストの異常者という設定。当時の小学生にはショッキングでした。しかし、絶体絶命、瀕死の主人公が、7歳で死んだ子供の墓の金具に拳銃の引き金をひっかけ、リンチでぐちゃぐちゃにつぶされた腕を捨て身で使って、「アーメン」といったとたんに、一気にキ○ガイ一味をなぎ倒すラストでは身震いするほどの感動が!そこにかぶる哀愁の傑作主題歌!これは忘れたくてもそれだけは無理!っていうレベルの大傑作であります。作品の見事さと音楽の見事さが相互作用して、ものすごい歴史的名作ができあがったという、いい例ではないでしょうか。
ちなみに、日本製もあり。(「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」主題歌はオリジナルのカバーで、なんと北島三郎!)
また、今年12月クリスマスに、マカロニマニアのタランティーノ監督が、これを元ネタに撮った、「ジャンゴ・アンチェインド」が公開。21世紀のマカロニ・ウエスタンが復活します。まさに、時代を超えた名作。
「皆殺し無頼」(66)(ノラ・オルランディ)


イタリア映画音楽界では異色の美人女性作曲家、ノラ・オルランディが書いた有名な曲で、「さすらいの一匹狼」を歌ったワイルダー・ブラザースが歌いました。疾走するマカロニ特有の音楽ですが、モリコーネやデ・マージなどとは違い、バンジョーの響きがどことなく牧歌的で、女性らしいロマンティックさを残したサウンドがかっこいい。原題の「ジョニー・ユーマ」はややこしいことに、50年代アメリカでヒットしたテレビ西部劇「レベル」の主人公と同名で、アメリカでも有名なこのテレビ番組の主題歌「ジョニー・ユーマ」(ジョニー・キャッシュが歌った)があるので、ごっちゃにしないでね。キャッシュのほうは、なんだかのんびりしたほんわかソングで、まあ、これはこれで・・・。
映画のほうはどうかって?あれ?どんな映画だったかしら・・・いろいろあって撃ち合いがあって、悪人が滅びてめでたしめでたし・・・。あまりよく覚えてませんが、ま、マカロニなんてそんなもんじゃやき、ってことで。
「真昼の用心棒」(66)(ラッロ・ゴーリ&セルジオ・エンドリゴ)


これまた、映画自体は、えらく個性的な作品で、なんでかっていうと、よく話がわからないからなんですよ。脚本がデタラメなのかなあ。ま、いいや、マカロニだから!とにかく、土手っ腹に至近距離からシャツが黒こげになるくらい何発も弾を撃ち込んだり、ひとりの悪漢を主人公2人がかりで何十発もあびせて蜂の巣にしたり・・と残虐趣味が横行。というのも、後に「サンゲリア」とか、すげーグログロな映画ばかり撮って有名になるグロ系ホラー映画の巨匠ルチオ・フルチの監督デビュー作だからです。
なんかもう、これでもか!ぐちゃぐちゃになって死ね!このクソサディスト野郎が!!っていう痛快さはたしかに恍惚とさせるものがありますが、これこそアメリカ映画なんかでは今日でも絶対無理!って感じですね。さて、音楽のほうはというと、宇宙猿人ゴリ、じゃない、ラッロ・ゴーリが作曲、カンツォーネ界の大物、セルジオ・エンドリゴが歌詞を書いて自ら歌うという超豪華版。痛快系のマカロニソングナンバー1に選ぶ人も多い名曲です。

 他にもブルーノ・ニコライ、スティルヴィオ・チプリアーニ、ジャンニ・フェリオなど、たくさんの作曲家が活躍しました。そしてどれもが必ず、ぎょろり!じゃないや、ギラリ!と光る何かを持っている。これがマカロニ・ウエスタンの一番いいところなのかもしれません。
おっと!マカロニ・ウエスタン音楽の神様、一番肝心なエンニオ・モリコーネは?
それはまた次回!次回が本番!今回は前置きでしたのことよ!
アディオス、アミーゴス!じゃあ、またね、チャオ!

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