8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.86
                                                                                       
                          頑箱セットのご紹介第2弾


 こんばんは。田村です。田村、もうダウン!
ジジイになりすぎて基礎体力が・・いや、まて、違う、頑固8鉄でした。
というわけで、タムラ=モータウン、知ってますよね?
ベリー・豪邸、じゃないや、ベリー・ゴーティ・ジュニアが起こした、60年代ソウル音楽を支えたレコード・レーベル。最高にかっこいいソウル音楽を聴きたければ、まず、タムラ=モータウンかスタックスから手に入れろ!ベイベエ!ってなことを昔から言い伝えられていますよね。
天ぷら定食、じゃなくてテンプテイションズ、魔法瓶芸、じゃなくて、マーヴィン・ゲイ・・・すいません、ギャグネタばっかりで。これが言いたくてわざわざこの記事書いてるんじゃないかって?鋭いですな・・・。ま、とにかく、かっこいいんです、みんな。マジな話。

そんななかで、わたくしの最高のお気に入りが、女性ソウル・グループのザ・マーヴェレッツ!今回は前回に引き続き、最近ゲットした箱セットの紹介ですが、とうとう、マーヴェレッツの決定的な大全集が出た!快挙だ!と喜びの声(もちろん私の)をご紹介しましょう!
ザ・マーヴェレッツ・フォーエヴァー&フォーエヴァー・モア(ザ・マーヴェレッツ)
The Marvelettes Forever:The Complete Motown Albums Vol. 1
The Marvelettes Forever More: The Complete Motown Albums Vol. 2

ザ・マーヴェレッツは、モータウン・レコードで最も大当たりした女性グループの片方。(もうひとつは、ダイアナ・ロス&ザ・スプリームス。)
最大のヒットは、1961年にナンバー1になったミリオンセラー、「プリーズ・ミスター・ポストマン」で、ビートルズもカーペンターズもカヴァーした有名曲ですから、ご存じの方も多いでしょう。
ただ、オリジナルのマーヴェレッツは聴いたことがない、という方も結構いるみたいですし、モータウンのことは知っていても、マーヴェレッツは知らないという方も多い。スプリームスは知っているがマーヴェレッツを知らないという方もいる。なぜか日本では本国ほど名前が知られていない印象があります。
実は、本国でも、あまりいいベスト盤が出ていない。そのくせ、コンピにはちょくちょく混じっているので、なんとなく「一発屋」と誤解されがちなんですが、実際は、スプリームスに並ぶ大ヒット連発の有名グループです。
そんなマーヴェレッツの、今頃になってやっと出た、究極の箱セット2組がこちら。
第1集の「フォーエヴァー」のほうが、1961年から1966年までに出た、彼女たちのアルバムを丸ごと網羅した3枚組。第2集の「フォーエヴァー・モア」がそれ以降(1967年から1970年)のアルバムを収録した4枚組です。モアのほうの4枚は2枚がオリジナル・アルバムを収録、1枚は同じアルバムのレアなモノラル録音、残り1枚は、1961年当初からの24曲に及ぶ未発表音源集となっています。
「プリーズ・ミスター・ポストマン」が出た1961年というのは、まだ、ソウル・サウンドというよりも、古式ゆかしいドゥーワップやティーン・ポップに近く、第1集では、初期から中期のマーヴェレッツの看板を貼ったリード歌手、グラディス・ホートンのざらざらした、ブルースっぽい、強力な声が特徴的。50年代の名残を感じる、ドゥーワップなサウンドのマーヴェレッツを中心に聴くことが出来ます。続く、第2集では、主にリードがワンダ・ロジャースに移り、67年の「ホエン・ユア・ヤング・アンド・イン・ラブ」、68年の「マイ・ベイビー・マスト・ビー・ア・マジシャン」など、中期以降の、かっこいいソウル・サウンドが満載。
やー、それにしても嬉しいなあ。唯一の欠点は「限定版」なことくらい。実際、1のほうは、あっという間に完売。どんどんプレミアがついて、3800円だったのが万単位になってしまい、すでに入手困難という有様。2のほうも同じ運命をたどるのは時間の問題でしょう。お好きな方は、できるだけ早めに入手されることをお勧めしますよ。

フィル・スペクター・プリゼンツ・フィレス・アルバム・コレクション
PHIL SPECTOR PRESENTS PHILLES ALBUM COLLECTION

フィル・スペクター・ストーリーというのは、モータウンの歴史と同じく、それだけで大変膨大な物語であって、ちょこっと触れる、というのは難しいのですが、無理矢理、ちょっとだけ触れますと、要するに、アーティストタイプの伝説的音楽プロデューサー。その功績の中で、最も有名なのは、「ウォール・オブ・サウンド」と言われるものです。これは、多重録音を駆使したレコーディング技術を用いて大人数のオーケストラを同時収録していくものだったそうです。当時のメジャーどころの音作りは、楽器のセパレーションがいい、すっきりしたサウンドで、それが時代の要請だったのですが、スペクターは、ある意味、逆行ともいえる手法で「音の塊」「「音の壁」を作り上げたのです。壮大でロマンチックなサウンドは、すぐにそれとわかる特有の音圧を持った、まったく独創的なサウンドで、「10代音楽のシンフォニー」と呼ばれました。
我が国でも、大瀧詠一、山下達郎、など、多くの有名アーティストが、ウォール・オブ・サウンドを思わせるサウンドを作り出していますが、オリジナルのスペクター音源は、やはり、聴けばすぐにそれとわかるくらい個性的だということがこのボックスセットを聴くと改めてわかります。
さて、このボックスに収録されているのは、スペクターの会社「フィレス」からリリースされた6枚のオリジナル・アルバムで、すべて当時のLP紙ジャケットを再現すべく、凝った装丁がなされています。CDなので、いわばLPのミニチュア復刻盤、という感じですね。
7枚目は、シングルリリースのB面曲集で、すべてインスト。ラジオでかけてもらうときDJがすべてA面しかかけないようにするため、わざわざB面にはどうでもいいようなインストを入れた、と言われているようです。(現代は、カラオケ、とか入れて売ってるよねえ)
オリジナル・アルバムのほうは、1と2と4がザ・クリスタルズ、3がボブ・B・ソックス&ブルージーンズ、5がオムニバスのベストもの、6がおなじみのロネッツとなっています。
CD One ' THE CRYSTALS TWIST UPTOWN by The Crystals
(Philles PHLP-4000, originally issued 1962):
62年に13位まで上がった「アップタウン」を中心に、初期のスペクターサウンドがどんなだったかよくわかります。

CD Two ' HE'S A REBEL by The Crystals
(Philles PHLP-4001, originally issued 1963):
ナンバー1になった「ヒーズ・ア・レベル」と、DVをテーマに唄ったために、発禁になった「ヒ−・ヒット・ミー」以外は、CD1と同じ。「ヒーズ・ア・レベル」を実際に唄っているのは、クリスタルズではなく、ダーリーン・ラヴ。シングルが当たったら、ほとんど「ジャケット違い」同然でのアルバムでも出す、というのがスペクター流。商売上手でもあり、また、プロデューサーが歌手や器楽奏者、作詞作曲家を使ってひとつの作品を作り上げる真の立役者だという自己表明、スペクター・スタイルの現れでもあったのでしょう。
CD Three ' ZIP-A DEE-DOO-DAH by Bob B. Soxx and the Blue Jeans
(Philles PHLP-4002, originally issued 1963):
8位になった、「ジップ・ア・ディードゥーダー」を中心に出されたアルバムですが、ボブ・B・ソックスなんてグループは実際にはなくて、スペクターがレコード作りのためにでっち上げた仮面グループのようなもの。ここでも全面フィーチャーされるのは、「スタジオ歌手」だったダーリーン・ラヴ。近年、彼女は、その抜群の歌唱力と歴史的功績から、はじめて正当に評価されるようになりましたが、長年、表舞台に立たない黒子として地味な活動をしてきた人です。
CD Four ' THE CRYSTALS SING THE GREATEST HITS, VOLUME 1 by The Crystals (PHLP-4003, originally issued 1963):
クリスタルズのベスト盤と銘打っていますが、要するに、先のクリスタルズのふたつのヒット、「アップタウン」と「ヒーズ・ア・レベル」に続く3つめの大ヒット(3位)、「ダ・ドゥー・ロンロン」(こちらは、クリスタルズが実際に唄っている。リードはララ・ブルックス)が出たので、3曲まとめたいう感じのアルバムリリースです。あとの曲は、これまでの2つのクリスタルズアルバムから持ち寄ったものですが、なぜかロネッツが4曲も混じっている。今でこそ、ロネッツやクリスタルズは、確固たる名グループとして歴史にその名が残っていますが、当時は、スペクターがあくまで中心であって、グループがなんだろうがそんなには二の次、という姿勢が濃厚ですね。

CD Five ' PHILLES RECORDS PRESENTS TODAY'S HITS by Various Artists (PHLP-4004, originally issued 1963):
クリスタルズ、ロネッツ、ボブ・B・ソックスの大ヒットばかり集めた文字通りのベスト盤。ダーリーン・ラヴも、ここでやっと、自己名義のものが2つ入っています。
CD Six ' PRESENTING THE FABULOUS RONETTES FEATURING VERONICA by The Ronettes
(PHLP-4006, originally issued 1964):
これは、もう、復刻を延々と繰り返していて、広く知られている、ウォール・オブ・サウンドの完成形、ザ・ロネッツの唯一のアルバム。フィレス・レコード最大のヒットである「ビー・マイ・ベイビー」をはじめ、珠玉の名作揃いで、ヒットした、しないに関わらず、アルバム全体が、20世紀アメリカポップ音楽の金字塔、と言っていいと思います。これ以上のものを探すのは簡単ではありません。
あとは、先に述べたように、ある意味、どうでもいいインストを集めたB面集として、ボーナスCDがついて、7枚組。有名な「クリスマス・アルバム」だけは入っていないので、ご注意を。

ゼアズ・ア・ライオット・ゴーイン・オン(ザ・コースターズ)
THERE'S A RIOT GOIN' ON -THE COASTERS ON ATCO (THE COASTERS)

おまけに、ドゥーワップ大好きなわたくしの特選品をご紹介。
創世記のロックンロールで最も重要な役割を果たしたグループのひとつ、ザ・コースターズの決定盤4枚組。アトコ・レーベルに残した重要曲ヒット曲ほか、失敗テイクからステレオ録音盤まで、ありとあらゆる音源を網羅したマスターピース。
もともとはスパークレコードからのリリースだった、コースターズの前身、ロビンズ時代から収録されており、その大半は、このグループのソングライターコンビ、リーバー&ストウラーの手によるコミカルなものです。未発表音源もあり、これ以上のコースターズコレクションは望めないでしょう。ベア・ファミリーと同じく、この手の復刻仕事をしたら抜群のライノ・ハンドメイドから限定リリースなので、完全に売り切れる前に買わないといけません。
http://www.youtube.com/watch?v=aqwNVxBHun0
さて、駆け足で紹介してみました、50年代R&B、60年代ポップ、ソウルのボックスセット3つですが、アマゾンなんか見ていると、モータウンの復刻ものなんかは次々とリリースされてきている。こりゃたいへんだ、とても追いつかないぞ、金星旅行だ、飲み会だ、3時のおやつだ、なんてもの使ってるおこづかいなんてないのだ!貧乏なお父さんには!と、なぜか鼻息荒く焦ったりしている頑固箱鉄でありました。(THE KINGの服は別だよね、当然!)



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