8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.79
                                                                                                                                
 懐かしのアメリカンTVドラマ(3)



 すっかり季節は秋。こんなときには、うすらぼんやりとテレビの前に座っているのが一番・・・なんて言ってる暇もなく、せっせと原稿を書いている3年H組、ガンバチセンセーの頑固8鉄です。

さて、お送りしています「懐かしのアメリカンテレビドラマ」、読者の意向、THE KINGの意向、野田総理の意向などものともせずに、独断と偏見で3回目に突入。そう、男のコはこのようにワガママでないとなりませぬ。

今回は、70年代に大流行だった刑事、探偵物を中心にどうぞ。

どうぞ、ったらどうぞ!(押し売り風)





15 ロックフォードの事件メモ(1974)

ドッグフードの実験メモ、じゃないんですよ。

1974年から1980年まで6シーズンにわたり、アメリカNBCで放映された、ジェームズ・ガーナー演ずる私立探偵ロックフォードが主人公の探偵もの。

私立探偵心得5カ条:

1 探偵は容姿端麗・眉目秀麗・・・・であってはならない

2 探偵はセックスアピールがなくてはならない!

3 探偵はマイホームを持ってはならない

4 探偵はマラソンが強くなくてはならない!

5 探偵は銀行預金があっては・・・・ならない

日本語版ではロックフォード(名古屋章)の声で、このコミカルな私立探偵心得5カ条が流されましたが、これが全体のトーンを一番よく表していたと思います。

無実の罪で5年間、カリフォルニア州サン・クエンティン刑務所で服役生活を送ったジム・ロックフォードは、出所後その体験を生かし、私立探偵となるのですが、彼の自宅兼事務所は、マリブ・ビーチに停めたポンコツのトレーラー・ハウスで、探偵料金は、1日200ドル+必要経費、という設定。

「えっ?200ドル??たっかー!」などといつも言われながらも、絶対に値引きなどしない強気なロックフォード!・・なんですが、人情に弱く、困った人がいるとついつい金目関係なく助けてしまう、というキャラクターでした。

あと、あのトレイラー・ハウスは衝撃でした。海が好きなわたくし、「俺もオトナになったら、家なんて買わずに、海辺にトレイラー・ハウスを泊めて住むんだ!」と、決心したものですが、土地買わなくちゃとか、通勤経路はどうすんだとか、ややこしい問題だらけで、いまだに実現していません。

よく言われるように、ロックフォードはレイモンド・チャンドラー(探偵フィリップ・マーロウ)の流れを汲むハードボイルド系なのですが、ジェームズ・ガーナーという、タフだけれど、おとぼけという言葉がよく似合うコミカルな感じの俳優を得て、軽いギャグとシリアスなストーリーとの絶妙なブレンドで、大ヒット作になりました。警察組織からは嫌われているロックフォードの唯一の理解者ベッカー刑事や、引退したトラック運転手の父親ジョゼフ、刑務所仲間のエンジェルといった協力者とのやりとりが、本筋とは関係なくても、とても面白かった。

父と海辺を歩きながら、「とうさーん、カタギになれ、っていうのはもう勘弁してくれよう。あたしゃ、好きでこの仕事やってんだから!」という、およそハードボイルドには似つかわしくない人間味のある会話がこのシリーズのもうひとつの魅力でした。

ロックフォードを演じたジェームズ・ガーナーは、1977年にエミー賞の主演男優賞を受賞、同賞ではエンジェル役のスチュワート・マーゴリンも、1979年に助演男優賞を受賞。また、バックで流れるマイク・ポスト作曲のオープニング・テーマも、まぎれもない名作で、ビルボード1975年のシングル・チャートで10位になっています。



16 名探偵ジョーンズ(1973)

名短パン・ジーンズじゃないんですよ。

1973年からCBSでクイン・マーチンが制作した60分の探偵ドラマ。

バーナビー・ジョーンズは、一年前に息子に探偵事務所を譲って引退し、悠々自適の生活をおくっていたが、息子が何者かに殺害されたことで犯人を探すため、息子の未亡人を助手に、探偵家業に復帰する、という設定。

トーンとしては、かなり地味な作品なのですが、売りは「年寄りの探偵」という設定で、「じゃじゃ馬億万長者」の主人公のジジイ、ジェド役が有名なバディ・イブセンがジョーンズを演じました。

しかし、イブセンがピストルで撃ち合いしたり、カーアクションもあったりと意外とアクションシーンもたくさんあって、ヨボヨボのじいさんが、座ったまま謎を解く、といったものではありませんでした。すげえ、おもしれえーというわけではないけれど、「渋い」という表現がそのままマッチするような、地味に楽しいドラマだったと思います。

それにしても、当時イブセンは60代。ジジイジジイと軽はずみに言いますが、わたくしだって、すでに50代ですから、名探偵ジョーンズまでそう遠くない。なんだか複雑な気分です。



17 探偵キャノン(1971)

プリンターの会社じゃないんですよ。

1971年からCBSで放映され、日本では1975年にNHKで放映され、その後フジテレビでも放映された60分の探偵もの。警察官として犯罪取締りの限界と抵抗を感じたフランク・キャノンが一匹狼の私立探偵となって犯罪捜査に挑む、というもので、「名探偵ジョーンズ」と同じクイン・マーチン制作でした。

「クイン・マーチンもの」は、主人公のアクが強く、キャラクターで売ってるところがありまして、キャノンの特徴は、ずばり「デブ」。175cm105kgのウィリアム・コンラッドが巨体パワーで難事件を解決。

コンラッドはラジオで「ガンスモーク」のディロン保安官を演じるなど声優として有名になった人ですが、プロデューサーや監督もつとめる才人で、後の1981年には、推理作家レックス・スタウトが創造した有名な巨漢探偵ネロ・ウルフを演じ、ハマリ役として評判になりました。ウルフはデブすぎて動けないので、座ったまま、頭脳だけで謎を解く、いわゆる「アームチェア・デテクティブ」の代表として知られていますが、キャノンは、あの巨体で走るわ、飛ぶわ、銃で撃たれるわ、どろまみれあせまみれ脂肪まみれの大活躍をしたのが印象的。

それにしても、クイン・マーチンは年寄りだのデブだの酷使するひどいプロダクションだったのかも。そのうち、「宇宙人刑事」とか「竹馬警部」とか、どうしようもないものが出てくるんじゃないか、と思っちゃいました。



18 刑事トマ(1973)

刑事トンマ、じゃないんですよ。

1973〜74年にABCで放映され、日本では1975年に日本テレビ系で放映された刑事ものなのですが、他の刑事ドラマと比べると、かなりな異色作。というのも、実在の刑事を主人公にした実話のドラマ化であるため、地味な風貌の主人公で、安直な作り物めいたところが極めて少なく、扱うテーマも「誤認逮捕」だったり「正当防衛とは何か」だったり「裁判のあり方」だったりと、極めて重くてリアリティ一重視の作品に仕上がっていました。

ニュージャージー州ニューアーク警察に実在するデビッド・トマ刑事は、変装による潜入捜査が得意であり、機敏な行動力と捜査法で検挙率も高く全米でも有名な警官。トニー・ムサンテ演じるトマ刑事は掃除婦,ホームレス,電話修理屋,ポン引き,売人などあらゆる職業の人物に変装して犯罪捜査を行うという、このあたりはよくある軽いノリの刑事ドラマ風ではあるのですが、話が進んでいくと、なんというか、やりきれない、リアルな人生や社会の真実が暴かれていくような重いドラマ展開になっていくのです。しかし、決してつまらないドラマではなくて、思わず考えされられる、たいへんによく出来たNHKの特番のような良さがありました。

本国でも高い評価を受けており、視聴率もよかったのですが、原作者のトマ本人からシナリオや演技への注文が多く、制作側でもトラブルが発生し、最終的にトニー・ムサンテが番組を降りてしまって、短い期間で打ち切りになってしまいました。



19 刑事バレッタ(1975)

刑事ばれちゃった、じゃないんですよ。

制作トラブルから「刑事トマ」を降板したトニー・ムサンテに代わって起用されたロバート・ブレイクが、トマのキャラクターでは自分には合わないと設定変更を要求して生まれた刑事もの。1975年〜78年まで4シーズンに渡ってABCで放映され、日本では1976年にテレビ朝日から吹替版で放映。トマの続編、というので期待して観たのですが、なんつか、まるっきりフツーの軽い刑事アクションみたいになっていて、ちょっとがっかりしたものです。

しかし、設定はなかなかよくて、ニューヨークの古いホテルを改装したアパートに住み、ボタンオウムをペットにしている、とか、乗っているクルマが、コロンボも真っ青のスクラップ同然だとか、なかなかキャラが立っていました。変装が得意という設定はトマと同じなのですが、ブレイクはムサンテほど器用じゃなかったところがちょっと痛かったかも。吹き替えも中尾彬で(ムサンテは青野武)重厚感がありすぎ、誰に変装しても「中尾ですが、なにか?」って感じなんで、ちょっと変でした。

なお、ロバート・ブレイクは2002年に殺人容疑で逮捕され、裁判が行われましたが、無罪となったようです。



20 刑事コジャック(1973)

刑事コンニャク、じゃないんですよ。

1973年から1978年までアメリカ・CBSテレビで放映された刑事ドラマですが、これは、当時人気を誇っていた『刑事コロンボ』に対抗する刑事ドラマとして制作されたもので、古典的な推理ドラマを踏襲していたコロンボと全く異なるリアル系。

ギリシア系でスキン・ヘッドとダンディな風貌のテオ・コジャックを演じたのは、テリー・サヴァラスで、その個性的な名演と、高水準の脚本、ニューヨークでのロケ撮影を中心にしたドキュメンタリータッチの演出で評判を呼び、高視聴率を維持したまま5シーズンも続けられた人気番組でした。その後も、テレビ映画として何度か復活もしています。

強面のタフな刑事でありながら、部下や友人にはふと人間的な暖かみも見せる、という、奥行きのあるキャラクターで、吹き替えの森山周一郎も名演。

これも、刑事トマと同じように、なかなかつっこみようがないマジメなドラマでした。

1985年2月に2時間のTVムービーで復活。1989年には、「ABCミステリー・ムービー」のひとつとして、コジャックの新シリーズをスタートさせたものの、「ABCミステリー・ムービー」そのものの視聴率が振るわず、わずか5回で終了となってしまいました。

その後、主演のテリー・サヴァラスが死去。2005年には、俳優を変えてリメイクがされるなど、今日でも伝説的なテレビドラマとなっています。



さて、みなさんもご覧になったことがある作品、ございますでしょうか?

では、次回も、テレビの・・もとへ、パソコンの前の、あなたと!またお会いしましょう!

さいなら!さいなら!さいなら!


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