8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.78
                                                                                                                                

 
 懐かしのアメリカンTVドラマ(2)



 「犯人はおまえだ!!」

・・・・なんとなく叫んでみたけど、自己フォローが出来ない頑固8鉄です。

前回に続き、懐かしのバタ臭アメリカンドラマを振り返るシリーズの2をお送りします。さて、今回はほぼ60年代でひときわ印象的な作品を、完全に8鉄の独断と偏見によりセレクト!



8 FBIアメリカ連邦警察(1965)

1965年から1974年までアメリカABC系で、9シーズンに渡り240話が放送された60分枠のテレビドラマ。いわゆる「警察もの」で、犯人捜しのような推理ドラマではありません。本物のFBI(盗聴事件などで現在は悪名高い、初代長官のエドガー・フーヴァー)が全面協力し、同局が実際に扱った事件に基づいて作られた、とされているとおり、かなりのマジメ路線。主演は、『サンセット77』でスターとなった、エフレム・ジンバリストJr.で、声をあてていた黒沢良がどんぴしゃりの名演。

毎回のオープニングでは、事件の発端が描写された後、ファイル・ナンバーと犯人の名前、その罪状がクレジットされ、テーマ曲が始まるという渋い出だしで、観ていたガキ(わたくし)は、なんだかちょっとオトナの男になったみたいな気分になれたものでした。ま、所詮、モデルガン命のガキなので、「なーんだ、スパイ小道具が出てこねえじゃんよ!」だの「拳銃撃ちまくりがねえのかよ!」と、内心では不満たらたらでしたけど。



9 奥さまは魔女(1964)

フツーのリーマンと結婚した魔女一家が巻き起こすドタバタコメディ。これは、今でもとてもよく知られていて、未だにCMなどでパロディにされたりする大人気番組。(オリジナルは1964年から1972年までアメリカのABCで放送された全254話。)

何をやっても紳士的でオシャレな感じがする名声優、中村正のナレーション、『奥さまの名前はサマンサ。そして、だんな様の名前はダーリン。ごく普通の二人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。でも、ただひとつ違っていたのは……奥さまは魔女だったのです!』が有名ですが、これは、日本版だけのものだったそうです。

「スパイが大活躍のアクションもの」だの、「拳銃バキューン!の西部劇」だのじゃないのに、なんでわたくしのような、銀玉鉄砲野郎が観ていたのかっていえば、たぶん、アメリカの豊かさに心惹かれたからじゃないかなー、と思います。なんといっても、子供心に一番印象に残ったのはストーリーでもギャグでもなくて、アメリカ郊外の風景でしたから。

当時の日本は1ドル360円時代ですから、アメリカ製品を買うなんて夢のまた夢。「奥様は魔女」の中のアメリカは、「フツーのリーマンでも広い庭があるかなり大きくてオシャレな家に住めるんだ、いいなー」「あんなかっこいいクルマに普通のおっさんが乗ってるんだ。いいなー」「アメリカ人は上司や上級生でもタメ口でいいんだ、自由でいいなー」「サカナはあぶったイカがいいなー」・・あ、最後のは関係ない、など、うらやましい光景ばかり。もちろん、当時のアメリカの影の部分やバブリーな部分なんて知るはずもなく、「俺は将来、アメリカ人になりたい!」なんて真剣に思ったこともあります。

サマンサ役のエリザベス・モンゴメリーが良家のお嬢さん風だったり、ダーリン役のディック・ヨーク(2代目はディック・サージェント)もナイスガイのヤンキーだったりするのですが、サマンサの母のエンドラ(アグネス・ムアヘッド)や、くだらない自爆ギャグしかいわないアーサーおじさん(ポール・リンド)、ダーリンの2枚舌の上司ラリー・テイト(デビッド・ホワイト)、いつもコソコソ様子をうかがってばかりいるお隣さんのグラディスさん一家など、脇役がみな、アクは強いがいかにもいそうな人物ばかりなので、全体的にバランスがよくて、見飽きることなく楽しめました。

なお、あまりに人気があるので、アメリカでは類似企画の『かわいい魔女ジニー』が登場したり、日本では『魔法使いサリー』以下一連の「魔法少女もの」と呼ばれるジャンルまで作られるくらい大きな影響力を持った番組でした。

日本でも、リメイクが作られたりしましたが、こちらはあまりよく出来てなくて、短期間で終了してしまいましたねえ。



10 タイムトンネル(1965)

アーウィン・アレンが製作・監督したアメリカのタイムトラベルを主題としたSFテレビ映画ですが、これはかなり先進的な伝説的名作。現在でも科学上の定義としてよく使われる「タイムトンネル」という言葉自体のルーツでもあります。

「タイムトンネル」が設定上画期的だったのは、1960年代当時の宇宙開発計画を思わせる国家プロジェクトの産物である巨大な装置により時間航行する、という近未来的なリアリティにありました。

タイムスリップして戻れなくなってしまった主人公たちが、なんとかして元の時代に戻ろうとするという、シリーズ全体を貫いているストーリー設定がスリリングで、毎回ラストが楽しみだったものです。

しかし、残念ながら、SFドラマとして他作品への影響も大きいエポックメーキング的作品にも関わらず、予算の関係からはやくに打ち切りになってしまい(わずか31話)、しかも肝心なストーリーのラスト部分がないまま終わってしまったため、テレビドラマの歴史の中では「埋もれた名作」として伝説化することになってしまいました。ただし、これは、後に、『2001年宇宙の旅』や『ジョーズ』、『未知との遭遇』が登場してくるきっかけになった作品でもあり、非常に高い評価を得ていることは確かです。

小学校の理科の勉強だってロクに出来やしないアホなガキだったわたくしにも、「うーん、時間とか宇宙って不思議だなあ。」などと真剣に思わせてくれた、良質なドラマであったと思います。



11 スパイ大作戦(1966)

本国では、1966年から1973年まで放送されたスパイものの代表作。1時間枠の番組で全171話放送されました。

謎の組織である「IMF(Impossible Mission Force)」のリーダーが立てた作戦を、メンバーが秘密裏に遂行するスパイ作戦の模様を描くというもの。リーダー役のピーター・グレイヴスが秘密の場所でオープンリール式の録音テープを発見すると、「おはよう、フェルプス君・・・そこで今回の君の任務だが・・・例によって、君、もしくは君のメンバーが捕えられ、或いは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る・・・なーんつって、うそぴょーん」と再生されるのがお約束(最後のは嘘ぴょーん)。のっけから、観ている日本のガキを「すべてが極秘にされているアメリカの一流諜報部員」気分にさせてしまう、渋いオープニングでした。指令録音の最後部分には、「このテープは自動的に消滅する」と録音されていて、「ボワン!」と発火してなくなってしまうところもかっこよかった。

毎回放送されるエピソードは、よーく観ていないと途中でわからなくなってしまうほど込み入っていて、今みたいに簡単に録画なんて出来ませんから、トイレに行くのを我慢して観ていたものです。最近、ミステリチャンネルでやっている再放送を久々に観てみましたが、安普請なセットやチャチな小道具のわりに、記憶よりずっとスリリングで演出もうまく、思わず手に汗にぎっちゃいました。

トム・クルーズでリメイクされた映画「ミッション・インポシブル」も大ヒットだそうで、わたくしも観ましたが、なぜでしょうか、オリジナルのテレビ版に比べて、全然印象に残ってません。テレビシリーズのほうは、マーティン・ランドーだのレナード・ニモイだの、びっくりするほどひどい、もとへ、濃い顔の個性派名優が出ていたからかもしれません。

それにしても、今でもみんな知っている、ラロ・シフリンによる、あの有名なテーマ曲は、たまらない!!番組そのものだけでなく、音楽も文句なしの大傑作だと思います。





12 マニックス(1967)

「スパイ大作戦」と同時期にパラマウントTVが制作した60分の探偵アクションドラマ。1967年からCBSで8シーズン放映され、日本でも「マニックス」「鬼探偵マニックス」「新マニックス」「マニックス特捜網」「8時だよ!全員マニックス」と何度も改題されて放映されました。(最後のは嘘・・)

クリエイターのリチャード・レビンソン&ウィリアム・リンクは、「刑事コロンボ」を作り上げた名コンビとして有名ですが、コロンボとほぼ同時期に、マニックスも作っていました。こちらは、渋い筋運びに派手なカーチェイスや銃撃戦がからむハードボイルドなドラマで、コロンボとは違った意味で楽しめる傑作シリーズ。背中のホルスターにワルサー32口径を付けたマニックスを演じたマイク・コナーズは、地味な風貌ながら、渋いスーツがよく似合うヒーローを演じきり、彼の代表作となっています。吹き替えをした、悪役俳優としても高名な田口計もどんぴしゃりで、水戸黄門で悪代官をやっていても、つい「あ!マニックスだ!」と思ってしまうほどでした。



12 鬼警部アイアンサイド(1967)

鬼探偵だの鬼警部だの、アメリカのヒーローは鬼ばっかりかい!と思いますが、実際は、知的で鬼らしくない紳士のレイモンド・バー主演。

1967年から1975年まで、8シーズンにわたって、アメリカNBCネットワークで放送されたロングランヒットの刑事ドラマ。日本では、1969年から1975年まで、TBS系列で放送されました。

サンフランシスコ市警察の刑事部長、ロバート・アイアンサイドは、犯罪者に撃たれた銃弾のために下半身不随となる。しかし、ランドール署長の厚意で嘱託警部の地位と、エド・ブラウン巡査部長、黒人の助手兼ボディガードのマーク・サンガー、婦人警官イブ・ホイットフィールドの3人の部下を与えられ、車椅子に乗りながら犯罪に挑む。というもの。

「弁護士ペリー・メイスン」で人気の出たレイモンド・バーにとっては、2つ目の大当たり役となりました。「コロンボ」や「寅さん」や「うっかり八兵衛」でもわかるとおり、普通、俳優は、当たり役がひとつあれば大成功と言われますが、ひとりの俳優が、世界的に有名なふたりのキャラクターで当たり役となる、というのは、希な例のひとつではないでしょうか。

日本では、『ペリー・メイスン』に続きレイモンド・バーの吹き替えを担当した若山弦蔵も、はまり役。また、特筆すべきは、クインシー・ジョーンズの作曲したテーマ曲で、これ聴いたことがない人はモグリの日本人、ってくらい有名です。(ワイドショーの『テレビ3面記事 ウィークエンダー』で使われたのがきっかけ。)





13 宇宙大作戦(1966)

NBCネットワークにおいて1966年から1969年まで全3シーズンが制作・放送されたテレビドラマで、今日でも続く「スタートレック」シリーズの最初の作品です。

23世紀、超光速航行技術を開発した地球人は、バルカン人などいくつかの種族と惑星連邦を結成。カーク船長率いるU.S.S.エンタープライズ号は5年間の調査飛行を行い、様々な生命体、文明、未知の驚異と遭遇し、前人未到の地へ宇宙探検を進める、というもの。

なんといっても、人気だったのは、レナード・ニモイ演じるバルカン人、「ミスター・スポック」で、とがった耳とつり上がった眉で、人間によく似てはいるけれど、どこか違う(知能がずばぬけているが感情がないという設定)役柄を熱演。というより、このおっさん、メイク落としても、宇宙人にしか見えねえじゃん、と素直に感心していました。ま、実際のキャストは、乗組員役にあらゆる人種の人がそろっており、「差別のなくなった時代」を描くという、人種差別問題が大きく変革し出した60年代当時においてはたいへんに優れたテーマ性を持った作品でもありました。

オリジナルテレビ番組の放映当時は視聴率的にはふるわず、わずか3シーズンで打ちきりになりましたが、その後の再放送からじわじわとマニアックな愛好層が拡大、1979年には、巨匠ロバート・ワイズが監督した映画版が公開されて、とうとう世界的にファンを獲得するまでになったという特異な経過をたどっています。



14 ハワイ5-0(1968)

CBS系で1968年から1980年まで12シーズンに渡り、284話が放送されたテレビドラマ。本国では12年も続いた屈指のロングラン番組でしたが、日本(関東地区)では、フジテレビから1970年に26話が放映されたきりだそうで、わたくしのようにこれを見た人はレアだったのかもしれません。

ハワイ5-0は、ハワイ州知事直属の特別捜査班で、ハワイ州内のさまざまな犯罪事件の捜査を行う他、ときには防諜活動にも従事する、という設定。

12年通して主演したジャック・ロードがめちゃめちゃ渋く、次々に変わるキャラクター(俳優)たちの中で、シリーズ全体を通した看板でありました。彼は、シリーズ終了後も、1998年に死去するまで、ホノルルに在住したそうで、まさに「歩くファイブオー」その人、といっていい存在です。このシリーズは、ある意味、アメリカ(ハワイ)版の「太陽にほえろ!」で、ジャック・ロードは石原裕次郎といった感じでしょうか。

ここで特筆すべきは、やはり音楽で、オープニング・テーマおよび劇中音楽の作曲者モートン・スティーブンスは、1970年と1974年にエミー賞を受賞しています。特に、オープニング・テーマはシリーズ開始と同時期に、ザ・ベンチャーズがカバーしており、1969年にビルボード・シングル・チャートの4位にランクイン。今日では、ブライアン・セッツァーの十八番として、ロカビリー界隈でも改めて有名になっています。



さてさて、60年代を中心にお送りした第二弾、いかがだったでしょうか。

次は、60年代の終わりから70年代を中心に、今でも存分に楽しめる名作傑作をご紹介しましょう。いやーねテレビドラマってホンットにいいもんですね!では、みなさん、さいなら、さいなら、さいなら!




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