8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.69 |
1978年のジャパニーズ・グラフィティ 17歳・・・・。 そのころというのは、男だったりすればほとんど誰もが、女の子にのぼせあがっているものです。 「ああ、○○ちゃんが好きで死にそうだー」 「ああ、○○ちゃんの○○を○○してえー」 「ああ、○○ちゃんの(以下略 ま、そんなこともあるわな、というのは、すっかりハゲオヤジになったわたくしだから思うことで、もちろんそのころは、もっともっと鼻血ブーなエロ小僧でありました。 しかし、ま、そんな照れくさい思い出をさらに悪化させるのが、そんな恋多き青春の思い出の風景の背後に流れていたBGM。テレビとかラジオとか有線で流れていたはずの当時のヒット曲です。 こいつが、今聴くと、ひどく間抜けなものに思えたりするのは、かっこいいような気がしていた17歳の自分の写真を見てがっかりしたり、当時好きだった女の子の写真をよくよく見るととんでもなくスットコドッコイだったことに気づいたりするのと似てるかもしれません。 というわけで、今でもかっこいい頑固8鉄です。(とほほ・・・) で、そんなわたくしが17歳だったのは、1978年のことで、当時のヒット曲をながめてみると、いろいろと面白いことがわかります。 第20回日本レコード大賞 大賞 UFO/ピンク・レディー ・ 最優秀歌唱賞 LOVE (抱きしめたい)/沢田研二 ・ 最優秀新人賞 かもめが翔んだ日/渡辺真知子 ・ 金賞 かもめはかもめ/研ナオコ グッド・ラック/野口五郎 しあわせ芝居/桜田淳子 シンデレラ・ハネムーン/岩崎宏美 たそがれマイ・ラブ/大橋純子 故郷へ…/八代亜紀 ブルースカイブルー/西城秀樹 プレイバックPart2/山口百恵 ・ 新人賞 失恋記念日/石野真子 青葉城恋唄/さとう宗幸 Deep/渋谷哲平 東京ららばい/中原理恵 なんなんでしょう、これは・・・。 ゆーふぉーですよ、ゆうーふぉー♪ (休符)ちゃっちゃっちゃっちゃちゃちゃちゃっ・・・ こんなもんがデートのクライマックスの背後に流れていたら、一気にぶっこわれちゃいます!絶対にボッコボコにされます!彼女だって、いきなり、志村けんのように踊り出したりしそうです。 「シンデレラハネムーン」なんて、コロッケのモノマネのほうしか覚えていません! かもめが2羽も飛んでるし、青葉城で青春してるし、もうなにがなんだか・・・・ ちなみに、ピンクレディーが独占状態の3位以下のオリコン・チャートトップ10を並べてみると、 4位 堀内孝雄:『君のひとみは10000ボルト』 暑苦しい・・・・ 5位 キャンディーズ:『微笑がえし』 恥ずかしい・・・ 6位 ピンク・レディー:『透明人間』 意味不明・・・ 7位 平尾昌晃・畑中葉子:『カナダからの手紙』 エロい昼メロ・・・ 8位 サーカス:『Mr.サマータイム』 9位 矢沢永吉:『時間よ止まれ』 ちょっといいかも! 10位 中島みゆき:『わかれうた』 くらー・・・・ばた といったところで、ほとんど、17歳の甘く切なく楽しい恋物語とはぜんぜん結びつかないものばかり。それに、ラブソングが全部、ヤケに暑苦しいのは時代のせいでしょうか。 そもそも、このころのヒット曲連発組は、アリス、世良公則&ツイスト、松山千春などで、存在そのものがめちゃくちゃ濃くて暑いです。そして、やっと、サザンオールスターズが勝手にシンドバッド(23位)でチャートに顔を出したところでもありますが、当初はこれまたひどく暑苦しい感じの人たちでした。 風変わりなところでは、 21位 増位山太志郎:『そんな女のひとりごと』 28位 平野雅昭:『演歌チャンチャカチャン』 ああああ・・・・・暑い!暑い!暑いよおおお!! なんだかなあーーーー ねえー。どうですか? 「シックスティーン・キャンドルズ」をバックに、恋人とチークダンスを踊ったりした人なんていない。「ラブ・ミー・テンダー♪」なんて言って女の子口説いた人なんてひとりもいないんじゃないか、という世界です。 せいぜい、よくて、彼女とこたつでみかん食べながら、バカなオヤジみたいに「ゆっふぉおお!」なんて言ってたんですよ、みんな。 1955年くらいからはじまったアメリカのロック=ポップ音楽革命は、要するに、ティーン文化革命であって、ヒットのほとんどがティーンネイジャー向け(カップル向け)のバラード中心だったことを考えると、ずばり「日本では、本当の意味でのロックムーブメントは、実は一度たりとも起きていない」というのが本当のところではないか、と思います。 ちなみに、1955年(ロック・アラウンド・ザ・クロックのロック革命元年。昭和30年)当時、日本は、まだ「日本レコード大賞」(1959年からスタート)すらありません。 主なヒット曲は、 渡り鳥いつ帰る(コロンビア・ローズ)、 田舎のバス(中村メイコ) 、小島通いの郵便船(青木光一)、 おんな船頭歌(三橋美智也)、 高原の宿(林伊佐諸)、囚人の歌(高英男)、 弁天小僧(三浦光一)、 月がとっても青いから(菅原都々子)、 ガード下の靴磨き(宮城まり子) などなど・・・・・。 渡り鳥・・・田舎・・・小島・・・・船頭・・・・囚人・・・ガード下・・・・? ガード下の囚人が船頭に言いました。「おらの田舎のあの小島に連れてってけろ。」 渡り鳥がガァーと鳴きました・・・・ わかりました、はっきり言いましょう! ロックどころか、日本人は、アメリカ人みたいに「恋愛」だってしないんです! 恋愛なんてする人は、非国民なんです!そんな・・・・ハンズカスィーッ!オラ、ハンズカスィーだあああ!!! なんてったって日本は敗戦国・・・・いうノリ全開のラインナップだと思いませんか?曲は、素晴らしいものが多い、とわたくしは思いますが、少なくとも、エルビスみたいに「ラブ・ミー・テンダー・・」なんて歌う人なんて、いません。あり得ませんね、これでは。 実は、これが「日本人」の現実です。 わたくし、現代のヒット曲はあまりよく知りません。聴いても歌詞が聞き取れないものが多くなりました。英語っぽい発音で日本語を唄う、なんていうのは、わたくしどもの世代ではすごくウケが悪くて、誰もやらなかったのですが、今では平気でまかりとおるようです。 しかし、なにげに流れているのを聴く限り、日本人の文化、恋愛観、などはあまり変わっていないのではないか、とわたくしは思います。 と、ここまで書いたところで、ちょっと若い女性の友人(20代)に、この原稿を見てもらったのですが、かなーりキツイ感想を一言。 「恋愛観が変わってない?いいえー、それどころか、今の女の子はもっともっとドライで、恋愛なんてしないんじゃないかなー。だって、こんな不況が永遠に続くんなら、安定安心が一番。みんな打算でしか行動しませんねー。」 む、確かにそうかもしんない。 わたしらが若いころは、まだ、経済的にバブル前で、まだまだ余裕があった時代。 今は、それに比べたらかわいそうなくらいのエンドレス不況の真っ只中です。 冬のかさかさ乾燥肌にしもやけあかぎれ痔にアレルギーがいっぺんにきたみたいな荒れ果てた心じゃ、ロマンチックなポップバラードなんてあり得ないかもしれません。 そんな中、不況に反旗を翻すかのごとく、あくまで50年代の豊かなアメリカ文化を蘇らせようとしているのがTHE KINGであります。 日本ではどんなにマイナーであっても、必ず、分かってくれる人はいるはず。世界のミュージシャンからオファーが来ているTHE KINGが「日本はダメだわ・・」なんて言って、本当に海外に出て行ってしまわないように、日本人のわれわれもロックな魂を忘れずに、がんばらなくてはなりませんよー! |