8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.64
                                                                                                                                  
        パナマ・ハットの聖地 モンテクリスティ

 みなさん、こんにちは。
おひたしぶり大根!とりあえず生ビールね!の、頑固8鉄です。
ちょっと火星まで行っているうちに、日本は気温が40度もある熱中地獄と化していて、間違って金星に戻って来ちゃったのかと思ったくらいです。
帰ってきたとたん、あまりの暑さに、ちょっとの間、液体化していました。

さて、そんな夏い熱、じゃない、暑い夏に必要なのは、パナマハットです。
パナマハット、はっきり言って、ぜーんぜん涼しくなんかありません。
頭、汗かいて、ムレムレのハレハレのホロヒレ状態になります。
たしかに、あまり快適なものではないので、帽子を嫌う人が多いのもわかります。
だけど、すでに、「亜熱帯化」したと言われている日本で熱中症にならないためには、古代からの知恵、麦わら帽はこれからの日本では、必需品になるのではないでしょうか。

そんななか、数ある「麦わら帽」の最高峰は「パナマハット」、そして、そのパナマハットで最高の品質を誇るのが、有名な「モンテクリスティ」。
著名なブランドの最高級ラインのパナマハットにも、よくつけられている名前ですが、ブランド名ではなく、「モンテクリスティ」というのは、産地名。エクアドルにある小さな街の名であります。

この有名な帽子の製造には、「カルドゥロビカ パルマタ」と言う椰子の葉が使われ、一般に「天然トキヤ草」として知られています。
この植物は一般に、海岸沿いの山中及びエクアドル東部のマナビ、グアヤス、エスメラルダス、モロナ・サンティアゴと言った地域で栽培されます。

このエクアドル産のトキヤ草を使った「麦わら帽」は、カリフォルニアの金採掘ブームで多くの労働者の必需品となり、また、1900年のパリ万博に出展されたことなどから、その名声は世界的に確固たるものになりました。
そして、1913年、合衆国のテオドア・ルーズベルト大統領が、パナマ運河の開通式に出席した際に、現地でパナマ帽の贈り物を受け以来愛用したところから、はじめて「パナマ帽」と呼ばれるようになったそうです。



というわけで、「パナマ帽」と呼ばれていても、なにもパナマで作られているわけではなく、エクアドルで生産されているのです。生産工房では代々手作業で作られ、その主産地はクエンカとモンテクリスティです。

全ての工程が手作業で行われるため、一つとして同じものはなく、細心の注意が払われています。製品はどれも機械で編むことはできません。あくまで人の手でしか編み込めないのです。
それは、繊維も生き物、ちゃんと綺麗に編むためには、湿度の高くなる夜にのみ、熟練職人のいる家庭で、行われる必要があります。
トキヤ草の、一本の細い繊維の表側だけを出しながら編む、という作業が約3ケ月前後、目の細かい高級品になると、8か月〜1年もの間、職人の家族全員の手によって続けられ、編み始めからツバ先まで、細かく均一に編みこまれていきます。まるで一枚の布のように滑らかなになるまで仕上げられるのです。それが、最上級の「パナマ帽体」(ブロッキング、すなわち、型どりするまえの原型)となります。 



イタリアの高級帽子メーカー、ボルサリーノ製の「モンテクリスティ」名がつけられたモデルは、値段があまりに高額(25〜75万円ほど)なので、一般人の手にはなかなか手に入りにくく、「被って歩く実用品」というより、「ガラスケースに陳列して眺める芸術品」みたいになっています。
帽子眺めてどうすんだ!帽子変態!と言われそうですが、もう、うっとりするほど綺麗なんですよ!わたくし、昔々、ホノルルの有名ホテル「ロイヤルハワイアン」内にある、古式ゆかしい高級店「ニュート」で、当時は、買えませんでしたが、ホンモノのモンテクリスティパナマをいろいろ見せてもらった記憶があります。
実際にはボルサリーノなど高級ブランドの最高級ラインの「モンテクリスティ」は、「モンテクリスティ産の帽体の中でも、名人が1年かけてひとつ作るような非常に目の細かい手の込んだ最高級素材を使ったものだから、大変な値段がするのです。ボルサリーノの名誉のために言いますが、やたらとぼったくっているわけではありません!



ブロッキングの形としては、主に、フェドーラ(クラシック)、C−クラウン、オプティモ、ボガート、プランター(ギャンブラー)、ハヴァナなど、微妙にかたちの違ったモデルが多数ありますが、デザイン、形は、市場価値、価格には関係ありません。
基本的にパナマ帽のグレードは、繊維素材の善し悪し、職人が編んだ原型の目の細かさ、編み目の均一さなどによって決められます。



お手頃な値段のパナマハットは、たいていモンテクリスティではなく、基本的にはエクアドル国内でも比較的安価に工場を介した工程で作られ、多くが目の荒い日数のかからない編み方をされた、クエンカ製品が使われており、各国の有名帽子メーカーは、クエンカからそういった原型を輸入して、それぞれ独自に型抜きやつばうちなどの最終処理をした上で、手頃な価格で売られるのです。

さて、一方、最高品質のパナマハットが作られているのがモンテクリスティなのですが、実際にはモンテクリスティの町中ではなくて、近郊のPileというとても静かな小さな村で、家内工業的に、手作業で編まれています。

ホンモノのモンテクリスティ産の高品質パナマハットはほとんどがナチュラルで、自然そのものの色合い。クリームがかった白のような見事が色をした一番よい素材を使うからです。
もう少し素材がよくない色合いの場合は、ブリーチ(漂白処理)されるか、着色され、モンテクリスティ産であっても、これは、多少、ランクが落ちます。

一方、クエンカ産のものは、ほとんどがブリーチ処理されて真っ白か、カラフルな着色がされているものも多いですが、とりわけ「着色したパナマ帽」というのは、ほとんどがチーピー(安物)です。質の高いパナマ帽を編むのに必要な高品質のトキヤ草は、着色すると硬くなるため編むのに適さないのです。だからどうしても、「イロモノ」は、堅く、目の粗いものになりがちです。
それでも、クエンカ産とモンテクリスティ産のパナマは、ぱっと見た感じではほとんど区別がつかないものもあります。
その場合は、裏側から光源に透かしてみると、編み目のパターンが部分部分で変わっていたり、隙間だらけだったりするほうが安価なクエンカ産、すべて同じパターンで編まれていて、薄く透き通る布のように隙間がないほうが、高級モンテクリスティ産です。



グレードはさまざまで、統一した基準が定められていないのですが、だいたい1平方インチ(2.5センチ四方)の編み込み数により決まります。
一般にフィノ(ファイン)と呼ばれるものは、編み込み数が250〜400、エクストラ・フィノで400〜600、スーパー・フィノで600〜800、さらに、フィノ・フィノ(800〜1000)、スペシャルリザーブ(1000以上)など、どんどん細かくなっていき、最高のものでは、わずか1インチ四方で2500もの編み目があります。

また、たいていのメーカーが、型くずれを防ぐため、また、目の粗さをごまかすために、スティファー(糊)を使って帽子を固めてしまうのに対して、上質な素材を極めて目の細かい編み込みで製作するホンモノの高級モンテクリスティ産パナマは、糊加工もしませんし、人の手で、アイロンと古い木型でブロッキング(型どり)されるのみです。だから、大変に柔らかく、くるくると丸めることすらできます。



よくある柔らかい紙でできた安物や堅い素材の麦わら帽がせいぜい1から2シーズンもてばよい、とされているのと違って、よごれたら、中性洗剤で洗うことも、また、ブロッキングをしなおすこともできますから、まさに、「一生モノ」。「孫子の代まで伝えることができる」とされており、ある意味、常識を超えた「スーパー麦わら帽」だといえます。

pileでは、1999年にはこの伝統的な技術を保存していくための学校が作られました。
こどものころから帽子を編み続けている熟練の職人が作成を手がけています。

しっとりと涼しい夜、木のブロックの上にクッションを置き、胸を守りながら織工はパナマハットを編み上げます。織職人は藁がしなやかになるよう、水を入れたボールを編工の両脇に置きながら、パナマハットを製作します。織り込みは大変きつくされていきます。そのため、編まれたパナマハットはまるで布のようにしなやかで美しく、また軽く仕上がります。
こうした大変な根気のいる地道な職人芸で作られるパナマハットは、モンテクリスティのみならず、エクアドルの誇る世界的な名品であり、多くの人々に尊敬される職人芸は子供達にとっても誇りですが、この作業、じつは大変な肉体労働。
というのも、ほとんどが中腰で、体を半ば折り曲げた形で何時間もぶっとおしで編み込み作業を続けなくてはならず、ほとんどの人が音をあげてしまうのだそうです。
60年ほど前まで2000人もいた名人、熟練職人が現在では、お年寄りを中心にわずか20人足らずしかいない、とすら言われています。モンテクリスティ・パナマは、もはや、絶滅の危機に瀕している、という人もいます。

現在活躍する、世界最高の職人は、サイモン・エスピナルというモンテクリスティの方で、どこからどうみても、「麦わら帽子」(パナマといえどもいわゆるストローハット、です)にはとても見えず、機械で編み込まれたシルクよりも繊細、と言われています。そこまで来るとこれは、もはや立派な芸術品。エスピナル作のパナマは、1000万円近い値段で美術館で買い上げられたりもしています。



このように、美しい海岸線の小さな村で、世界に名高い一級品がたっぷりと時間をかけて作られている、というと、のどかで美しい夢のようなイメージがありますが、ほとんどの職人さんたちの年収は日本円にして数十万円程度。ぼったくりとはとてもいえない高品質なもののみをリリースする、ボルサリーノのようなホンモノの高級ブランドもあれば、内外通貨レートの問題もあり、十把一絡げには言えませんが、世界的にさわがれているコーヒー農家の問題と同じく、先進国の後処理メーカーだけが儲けていて、本当の作り手である職人さんたちには微々たる金銭しか渡らない、という傾向もあるのかもしれません。

なかなか日本では、お目にかかることができない、ホンモノの「モンテクリスティ・パナマ・ハット」。じつは、わたくし、極秘ルート(?)から、近々、入手することになっており、長年の夢がかなう!とばかり、現在、我が家に到着するのを首を長くして待っておるのです。



え?THE KINGとなんの関係もないって?
いえいえ、とんでもない!
50年代のアメリカでも多くの人に愛されたパナマハット。THE KINGのある意味、リゾート着でもあったナッソーなどと合わないわけがない!
モンテクリスティの高級品とまではいかなくとも、 十分に上級なイタリア製ボルサリーノあたりのパナマ、検討されてみてはいかがでしょうか?

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