8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.60 |
OO WOPPIN' AND DREAMIN' みなさん、こばんは食べ過ぎないようにしましょう! 違うなー、それは「ごはん」だな。 というわけで、よくわからないギャグで始まります、頑固8鉄のコーナーです。 ごはんわんは。それも違う! さて、わたくし、現在、50年代ドゥーワップを唄う「ザ・ジルコンズ」で活動を始めて、そろそろ5年。月に1回程度ではありますが、あちこちの店にお邪魔して、ライブ活動をさせていただいているところです。 そんなわたくしの大好物のドゥーワップ音楽については、はじめのころのコラムにも書きましたが、「ザ・ジルコンズ」でカヴァーさせていただいている、名作、傑作を改めていくつか紹介させていただきます。 1 ザ・クローサー・ユー・アー〜アール・ルイス&ザ・チャネルズ 「アール・ルイス&ザ・チャネルズは、『ニューヨークのベスト』といわれているけど、違います。彼らは、すべてのグループのベストです。……(中略) 『クローサー・ユー・アー』や『フレイムズ・イン・マイ・ハート』といった、彼らオリジナルのラブソングはまっすぐに心に届くようなもので、私の実際の人生の中で、『本物の親愛』とは何か教えてくれました。……(中略) ドゥーワップ・サウンドは、私たちを、男の子と女の子がもっと、お互いを気遣いあっていた時代へ引き戻してくれます。 50年代は、人生や生活そのものがもっとのんびりしていて、ゆるやかで、恋愛もとてもシンプルで純粋で、現在のように複雑なものではありませんでした。 このCDは、車輪を回し続けるねずみみたいな現代生活から抜け出し、恋や情熱が、もっとずっと人生の重要な事柄だった時代へと引き戻してくれます。 当時は、こんなにせわしない世の中ではなく、今みたいにやたらと不安がる人々はずっと少なくて、子供たちは本当に面白いことが何かよく知っていました。 アール・ルイス&チャネルズのラブソングの数々は、ハッピーで、明るくて、純真で、希望に満ちています。 彼らは今でも、現役で活躍しています。みなさんも、彼らを見て、聴いて、また、『スローダンスの生活』に戻りませんか?」 アマゾンコム(アメリカ)のCDレビューは誰でも投稿できるのですが、これはスーザン・サミーという方が書いたものを僕が簡潔に訳したものです。彼女はたぶん60代か70代でしょう。わたくし、頑固8鉄も、とても彼女に共感します。 チャネルズは、50年代のドゥーワップグループで、地元では大変よく知られているし、ドゥーワップ名曲選集などのアンソロジーを組めば、必ずといっていいほどとりあげられるグループですが、全国ヒットとは関係ないグループです。 でも、ニューヨーカーなら誰でも知っている「ニューヨーカーズ・スタンダード」とでも言うべき作品をたくさん残しました。最も有名な唄が、美しい歌詞とシンプルなメロディーをもった「ザ・クローサー・ユー・アー」(1957年)です。 The closer you are The brighter the stars in the sky And darling, I realize That you're the one in my life My heart skips a beat Every time You and I meet My life, my love, my dear I can't defeat The yearning deep in my heart To have only you WhenIfirst sow you, I did adore you, And all your loving ways But then you went away, But now you 're back to stay, And my love for you grows stronger every Doy-ahhh Way-ahhh Way The closer you are, The brighter the flames in my heart, And darling, We'll never part We'll always be in love どうもこの手の唄は、日本語にすると陳腐化するのですが、一言で言って「君が近寄るとどきどきして、心がときめく」というたったそれだけのことなのに、とてもリアリティがあって誰にもわかりますよね。ヘンに精神的に高邁なことを言ったり、状況説明をするより遙かに説得力があります。 アール・ルイスは、70代ですが、現在も現役バリバリで、活躍中。それが何よりも素晴らしい。 この手の人たちって、やたらにケバい衣装を着てますが、アール・ルイスも例にもれず、真っ赤っかでド派手です。そして、お客さんと一緒になってステージを盛り上げる一流のショウマンです。 だけど、この人、昔から唄はあまりうまくないんです。レコードがそういう出来ですから。 平気でどんどん音程はずれたりすることもあります。それでも、全然意に介しません。 にこやかに、高らかに歌い上げます。でも、すっばらしーーーーーいんです。感動のあまり椅子から落ちてしまいます。目がキラキラしてるんです、このじいさんは。 やはり彼が書いたチャネルズの名作、「フレイムズ・イン・マイ・ハート」を本当に失ってない人なんです。見ればそういう人なのがわかります。ホントに、ダンディーな男です。 ちなみに、この人、15年ほど前の定年まで郵便局に勤めていました。チャネルズは、ブロンクスの郵便局のグループなんです。 現在は、ライブ活動をしながら、自宅で奥さんと作った手作りのCDを、欲しい人に売っているようです。この人の場合、「老後」という感じはしませんが。 この「唄うポストマン」の、絶大な信奉者だった人に、故フランク・ザッパがいます。60年代から80年代にかけて、ロックの革命児といわれた天才音楽家です。ザッパは、ドゥーワップ音楽のマニアで、50年代当時に出た無数のレコードをほとんどすべて持っていたといわれています。そのザッパが残した遺作アルバムの冒頭曲は、チャネルズの「ザ・クローサー・ユー・アー」でした。非常に理知的でシニカルな音楽家として知られた彼が、本当に欲しかったのは何かを物語るエピソードではないでしょうか。 次回は、私の白人系ドゥーワップ・グループのフェイバリットのひとつ、ジミー・ボウモント&ザ・スカイライナーズを御紹介いたします。 |
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