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| 8鉄風 ROCK COLUM by 8TETSU Vol.331 |
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楽器の思い出 第2回 「フラットトップ編 ドレッドノートの巻 ![]() さて、時代はかなり飛ぶ。 トーカイキャッツアイがほぼ使用不能になり、修理も無理だろうと判断したわたしは、 キャッツアイを捨てた。 文字通り、粗大ごみである。 そして、40代も差し掛かってから、初めてマーチンのギターを買った。 それまでの間、わたしのメインはギブソンのアーチトップだったり、 サックスであったり、アコーディオンであったり、さまざまだが、それは置いておいて、 まずは、フラットトップ、いわゆる普通の生ギターの話である。 D-1は、1993年にマーチンが出した廉価版で、アーチトップが好きなわたしとしては、 これで十分と思える価格だった。10万円くらいだったと思う。 数十万もする高額な出費をするなら、アーチトップを買う、という意味である。 ドレッドノートというのは、万能なアコースティックギターだけれども、 古式ゆかしいジャズのリズムギターなど、 これはさすがに無理があるという奏法、ジャンルもあるのだ。 わたしは、ドレッドノートが一番苦手とするサウンディングの音楽が一番好きなのだった。 で、マーチンのDシリーズは、大型戦艦、ドレッドノートの頭文字ではなくて、 マーチンがお手本にしたディットソンギターの頭文字Dをとってつけられた 一群のギターを指している。 最も高額なDは、モデル45で、最廉価は15だったと思うが、 あまり詳しくは知らない。 D-1が出たときは、よくはわからないが、弾いてみると、マーチンらしい音がした。 アコースティック・ギターは、モデルごとに音色に差があり、 ひとつひとつ個体によっても違う。 それはわかるが、ドレッドノートに関して言えば、わたしの悪い耳には、 どれも似たり寄ったりである。なにしろ、18と28の差もほとんど聞き分けられないのだ。 45にいたっては、現在まで手に取ったこともない。 そんな「ドレッドノート音痴」なわたしが、D-1を買ったのは、 実用として使う目的があったからだ。こうなったらいよいよ、 本家マーチンだ、しかし、できるだけ安いほうがいい。 話はさかのぼるが、わたしは、大学バンド以降、10年近く、 さまざまな音楽活動を続けたが、93年で辞めた。 それからほぼ10年間、バンドはおろか、 自宅で楽器を触ることもほとんどしなかった。 きっかけは、いろいろあるけれど、結成したアコーディオンバンドを解散したこと、 参加していたインディーズのソロアルバム企画が流れたことなど、 活動が行き詰ったのと、交通事故がもとで健康を害したこと、 結婚して子供が生まれたのが重なったからだと記憶している。 人前でのバンド演奏も自宅の多重録音も、一 切合切全部やめてみると、実にすっきり爽快な気持ちになった。 ただでさえ、過酷な4時間通勤残業付きのサラリーマン生活なのに、 麻痺しそうな左腕を使い、無理やり楽器を演奏しつづけるなんてことをしていたら、 病気になって苦しむだけだとわかってもいた。 のちに知り合った若い有望なミュージシャンが、 就職と同時にピタッと音楽を辞めたことがあるが、 あれは正解だとわたしには思える。 事実、音楽に徹底して深くコミットした人は早死にが多い印象があるのだ。 実際、当時カントリーやブルーグラスを演奏していた同年配の仲間だって、 実は、ほとんど9割くらいの人は就職と同時に辞めてしまっている。 わたしは、仕事以外、できる限り、家にいると決めた。 まっとうな家庭人を目指したというより、そのほうが楽だし、楽しかったのである。 時間があるときは、大好きなテレビゲームをしていた。 コンピュータゲームにいたっては、自分でモンスターマシンを設計して、 秋葉原にあった九十九電機に特注したこともある。 わたしは、オンラインゲームの中で、世界中の人と英語で交流した。 インターネットリレーチャット機能がすごかったのである。 当時の楽しかったこと、苦しかったことを思い出してみても、 その中に音楽も楽器もいっさい登場しないのである。 ドレッドノートが復活したきっかけは、大学サークル時代の後輩が バンドをやろうと言ってきたからだ。 わたしは、古臭いサムピックとフィンガーピックの奏法で、 トラディショナルなものしか出来ないといったが、 それでもかまわないからやろうということになった。 たしか、数回スタジオで合わせたと思う。 しかし、ライブ開始前そうそうに、この企画は流れてしまったのである。 発案者の後輩が吸収転勤になり、帰ってくる見込みがないという。 やっと手に入れた初マーチンは出番もなく、中古楽器屋へと渡っていった。 売ってみれば、二束三文。さすが廉価版である。 さて、さらにずっと時代が飛んで、今から10年ほど前だったか、 急に思い立って、マーチンDー18を買った。 中古格安品でも、28万くらいのものである。 さすがに、よく鳴るし、使い勝手がいい。軽いというのも素晴らしい。 しかし、実用目的もなく買うと、やはり、飽きて中古市場流れになる。 買った店で売ったらそれほど買いたたかれることもなく、 ちょっとレンタルで使ったくらいの感じで済んだのが幸いだった。 同じころ、同じような流れでギブソンJ-45も入手しては、手放した。 比べてみるのも変だが、まったく違うノリのサウンドで、 私的にはギブソンのほうが使い勝手がある気がする。 マーチンDはよく言われるように、普通に使うとブーミーすぎる。 その点、J-45は、バランスが良かった。カントリー歌手にはこっちがいいのではないか。 これで、すべてのドレッドノートが我が家から消えた。それきり、復活したことはない。 ![]() |